第54回(H31) 作業療法士国家試験 解説【午後問題46~50】

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46 注意欠如・多動性障害の患者の就労に関して適切な助言はどれか。

1. 優先順位にこだわらないようにする。
2. 多彩なやり方で物事を行うようにする。
3. 周囲の人に配慮を求めないようにする。
4. 自分だけの時間や場所を作るようにする。
5. 便利なハイテク機器などは利用しないようにする。

解答

解説

注意欠陥多動性障害(ADHD)とは?

注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、発達障害の一つであり、脳の発達に偏りが生じ年齢に見合わない①注意欠如、②多動性、③衝動性が見られ、その状態が6ヵ月以上持続したものを指す。その行動によって生活や学業に支障が生じるケースが多い。治療として、①まず、行動療法を行う。②改善しない場合は、中枢神経刺激薬による薬物療法を用いる。中枢を刺激して、注意力・集中力を上げる。※依存・乱用防止のため、徐放薬が用いられる。

1.× 「優先順位にこだわらないようにする」のではなく、優先順位をつけて行うようにする。順序よく物事を進められない傾向で、マルチタスクな仕事を苦手とする特徴があるためである。 
2.× 「多彩なやり方」ではなく、あらかじめやり方を決めて、物事を行うようにする。決めないと気が散って作業が続かなくなってしまう。
3.× 「周囲の人に配慮を求めないように」ではなく、配慮をしてもらうよう求める。本人の特性の理解を周囲にしてもらうことで、気が散らない環境で集中して仕事に取り組める。
4.〇 正しい。自分だけの時間や場所を作るようにする。 気が散らない環境が必要である。
5.× 便利なハイテク機器などは利用しないようにするのは間違い。ハイテク機器に興味があれば、仕事に集中できて作業がはかどることにつながるため、積極的に利用するべきである。

 

 

 

 

47 PTSD(外傷後ストレス障害)に関する対応で適切なのはどれか。

1. 曝露療法は短期間に留める。
2. 外傷体験の直後は詳しく体験を語らせる。
3. 集団の中で体験を語り合うことは避ける。
4. 心的外傷体験の一般的な心理反応を説明する。
5. 心理的動揺がある程度収まってから心理的応急処置を実施する。

解答

解説

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは、極めて強烈なストレスを受けた後、再体験、同避、認知や気分の異常、過覚醒の各症状が4週間以上持続し、著しい苦痛社会的障害を生じている状態をいう。 

1.× 曝露療法は、「短期間に留める」のではなく、時間をかけて行うべきである。曝露療法とは、トラウマとなった場面にあえて身を置くようにする治療法で、惹起される症状に少しずつ慣れていくようになる。
2.× 外傷体験の直後は詳しく体験を語らせることはしない。外傷体験の直後は、詳しく体験を語ることでさらに症状を悪化させる可能性がある。
3.× 集団の中で体験を語り合うことは「避ける」のではなく、安心と共感を得るために重要である。
4.〇 正しい。心的外傷体験の一般的な心理反応を説明する。心的外傷体験の一般的な心理反応を知ることで、患者が経験していることは多くの人が体験していることであり、治療によって軽減するという希望をもつことができる。
5.× 心理的応急処置を実施するタイミングは、「心理的動揺がある程度収まってから」ではなく、動揺が認められた場合すぐに行われる。心理的応急処置は、災害などが起こった直後から被災者に提供されるもので、心理的動揺が認められる場合にはすぐに行われる。

 

 

 

 

48 アルコール関連問題に対する二次予防はどれか。

1. 入院による治療
2. 中学校や高等学校でのアルコール教育
3. 未成年が酒類を入手しづらくする環境作り
4. 病院に受診していないアルコール依存症者の早期発見
5. 断酒会やAA(Alcoholics Anonymous)などの自助グループへの参加推奨

解答

解説

 疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼び、「健康日本21」においては、一次予防を「生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること」、二次予防を「健康診査等による早期発見・早期治療」、三次予防を「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」とそれぞれ定義している。
1.× 入院による治療は、三次予防である。
2.× 中学校や高等学校でのアルコール教育は、一次予防である。
3.× 未成年が酒類を入手しづらくする環境作りは、一次予防である。
4.〇 正しい。病院に受診していないアルコール依存症者の早期発見は、二次予防である。
5.× 断酒会やAA(Alcoholics Anonymous)などの自助グループへの参加推奨は、三次予防である(アルコール依存症の社会復帰の手段)

 

 

 

 

 

49 精神科リハビリテーション活動の説明で正しいのはどれか。

1. ACTは重症精神障害者の地域生活を支援する。
2. SSTは精神科病院内での生活技能の向上を目指す。
3. 認知リハビリテーションは集団形式で実施することは避ける。
4. ケアマネジメントは支援機関中心に必要なサービスを検討し利用者に提供する。
5. 心理教育は、援助する者とされる者とを明確に区分した構造的な治療関係の中で実施する。

解答

解説
1.〇 正しい。ACT(Assertive Community Treatment:包括型地域生活支援プログラム)は、重症精神障害者の地域生活を支援する。入退院を繰り返すなど重症の精神障害者を対象として、地域社会でうまく生活を継続することができるように多職種が24時間体制で関わる仕組みである。
2.× SST(Social Skills Training:社会生活技能訓練) は、「精神科病院内での生活技能の向上を目指すもの」ではなく、社会生活を送るうえでの技能を身につけ、ストレス状況に対処できるようにする集団療法の一つである。
3.× 認知リハビリテーションは集団形式で実施する。認知リハビリテーションは、統合失調症の認知機能障害の改善のために行われることもあり、多くは集団形式で実施される。
4.× ケアマネジメントは、「支援機関中心に」ではなく、利用者中心に必要なサービスを検討し利用者に提供する。ケアマネジメントとは、障害者が地域生活を送るうえでの必要なケアを、障害者ごとに立案して医療や福祉の支援機関につなげることであり、利用者中心である。
5.× 心理教育は、援助する者とされる者とを明確に区分した構造的な治療関係の中で実施するのではない。本人だけでなくその家族にも必要な知識や情報を提供し、問題への対処を一緒に考えるようにしていくものである。

 

 

 

50 患者が自己の心理的矛盾や課題に気づくことを促す面接技法はどれか。

1. 共感
2. 傾聴
3. 反映
4. 直面化
5. 開かれた質問

解答

解説
1.× 共感とは、「単なる同情」ではなく、治療者が患者の内的世界で起こっている様々なことを、あたかも自分のもののように感知することをいう。
2.× 傾聴とは、患者の話を遮らないようにもっぱら聞く態度であり、そのこと自体が精神療法的な意味をもつ。
3.× 反映とは、相手の感情や情動に気づき、それを伝えていく技法である。具体例として、「あなたは・・・と感じているようですね」「あなたは・・・と感じているように聞こえますが。」というようにクライエントの話すことの情緒的な側面に焦点をおく。相手は、治療者に理解してもらっているという安心感や、自分自身の感情への気づきが得られる。
4.〇 正しい。直面化は、患者の心理的矛盾点を指摘することで、患者が自分自身の感情を理解したり、課題を発見したりすることを目的とした技法である。
5.× 開かれた質問 (open question) とは、「困っていることは何ですか」など、患者の返答にある程度の自由がある質問である。一方、閉じられた質問 (closed question)とは、「はい」か「いいえ」 で答えられるものである。適宜両者を使い分けて面接を進めていくことが重要である。

 

 

51問目からは、理学療法士・作業療法士【共通問題】となります。タイトルが「第54回(H31) 理学療法士国家試験 解説」となっていますが、ご了承ください。

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