第54回(H31) 作業療法士国家試験 解説【午後問題41~45】

 

41 「ビンの蓋閉めと箱づめ」、「コネクター組み立て」、「釣銭計算」、「郵便番号調べ」などの職場の作業に近い課題を実施し、適性能を測定する職業評価で正しいのはどれか。

1. GATB
2. 場面設定法
3. MODAPTS
4. ESCROW Profile
5. マイクロタワー法

解答
解説

 本問のように、実際の仕事の一部(ワークサンプル)を対象者に行ってもらい、その出来栄えを量的、質的に評価する方法をワークサンプル法(職業能力適性の評価法の一つ)という。ワークサンプル法にはタワー法マイクロタワー法MODAPTS法ワーカビリティテストなどがある。

1.× GATB(General Aptitude Test Battery:厚生労働省編一般職業適性検査)は、多くの職業で必要とされる9つの能力=適性能(知的能力、言語能力、数理能力、書記的知覚、空間判断力、形態知覚、運動共応、指先の器用さ、手腕の器用さ)を評価することにより、望ましい職業選択を行うための情報を提供することを目的として作成されたものである。本問のように、職場の作業に近い課題は実施しないため不適当である。
2.× 場面設定法では、実際の職場あるいは実際に近い作業を設定し、作業能力や職場能力を観察・評価する。問題文では、職場に近い環境設定までは行っていないので、場面設定法ではない。
3.× MODAPTS:モダプツ法(MODular Arrangement of Predetermined Time Standards) は、人間の自然な随意動作には、身体に障害がなければその動作時間には個人差はほとんどないという前提のもと、あらかじめ、動作とその所要時間値を調べたもので、実際に要した時間とを比較することにより、作業能力を評価する場合などに用いられる。
4.× ESCROW Profile(E:環境、S:社会交流、C:家族構成、R:経済状況、O:予後、W:就労)は、社会的不利の評価法である。
5.〇 正しい。マイクロタワー法は、ワークサンブル法を用いて職業能力適性を測定する作業見本法の一つであり、13の作業課題を小集団で実施する。本問通りである

 

 

 

42 総合的な認知症の重症度を評価する尺度はどれか。

1. NPI
2. CDR
3. HDS-R
4. BEHAVE-AD
5. PSMS(Physical Self-Maintenance Scale)

解答
解説
1.× NPI(Neuropsychiatric Inventory)は、援助者からの聞き取りにより、「認知症の行動・心理症状(BPSD)」を評価する方法である。 「認知症の行動・心理症状(BPSD)」に関連する12項日につき、頻度を0~4の5段階で、重症度を1~3の3段階で評価し、点数が高いほど重症となる。
2.〇 正しい。CDR(Clinical Dementia Rating:認知症の重症度評価法)は、認知症の重症度を総合的に評価する場合に用いられる。記憶、見当識、判断力と問題解決、社会適応、家族状況及び趣味、介護状況の6項目について、患者の診察や周囲の人からの情報で評価する。それらを総合して、健康(SDR0)、認知症の疑い(SDR0.5)、軽度認知症(SDR1)、中等度認知症(SDR2)、高度認知症(SDR3)のいずれかに評価する。
3.× HDS-R(改定長谷川式簡易知能評価スケール)は、認知機能をみる簡易認知機能検査である。30点満点で20点以下を認知症の疑いありとする。
4.× BEHAVE-AD(Behavioral Pathology in Alzheimer’s Disease)は、Alzheimer病の認知症の周辺症状(BPSD)の評価尺度である。介護者などからの情報に基づいて25項目について0~3までの4段階で重症度を評価する。
5.× PSMS(Physical Self-Maintenance Scale)は、ADLの評価尺度である。家族・介護者からの情報に基づき評価する。

 

 

 

 

43 統合失調症の予後を予測する因子で正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 病識
2. 身体的愁訴
3. 低ナトリウム血症
4. 初回入院時の処方薬の種類
5. 発病してから治療を開始するまでの期間

解答1.5
解説

 統合失調症の予後予測因子は、早期治療治療の継続性である。
1.〇 正しい。病識があることによって、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受け、治療の継続性が高まり、予後が改善すると考えられる。
2.× 身体的愁訴とは、うつ病の初期に見られやすい。「不安だ」、「憂うつだ」という訴えよりも、「疲れた」、「だるい」、「眠れない」、「食欲がない」など身体的な訴えである。予後予測には関係がない。
3.× 長期間抗精神病薬を服用している統合失調症患者は、強迫的飲水(水中毒)がしばしばみられ、そのあとに低ナトリウム血症を引き起こしやすい。それ自体が予後を左右することない。
4.× 初回入院時の処方薬の種類ではなく、治療(服薬)の継続性が予後予測因子として考えられる。
5.〇 正しい。早期治療が予後予測因子として取り上げられている。発病してから治療を開始するまでの期間(Duration of Untreated Psychosis:DUP)が長くなると予後は悪い。

 

 

 

 

44 双極性障害の躁状態の特徴で適切でないのはどれか。

1. 自尊心の肥大
2. 注意力の増強
3. 睡眠欲求の減少
4. 快楽的活動への没頭
5. 目標志向性の活動亢進

解答
解説
1.3~5. 〇 正しい。自尊心の肥大・睡眠欲求の減少・快楽的活動への没頭・目標志向性の活動亢進は、躁病の特徴である。
2. × 注意力の増強ではなく、低下する。注意の転導性は亢進する。

躁病の特徴

①異常に高揚した、開放的な、または怒りっぱい気分の持続
②過度の自尊心・誇大的思考
③睡眠欲求の減少
④多弁
⑤観念奔逸(考えが次から次へとほとばしり出ること)
⑥注意散漫
⑦目標指向性の異常亢進
⑧快楽的活動への没頭

 

 

 

 

45 境界性パーソナリティ障害の患者が自傷行為をほのめかしたとき、作業療法士の行うべき対応はどれか。

1. 緊急入院を勧める。
2. 死にたい気持ちの有無を確認する。
3. 作業療法を延長し関わる時間を増やす。
4. 過去の自傷行為の回数について詳しく聴取する。
5. 自傷行為をしたら作業療法は続けられないと伝える。

解答
解説

 境界性パーソナリティ障害では、感情の不安定性自己の空虚感が目立つ。こうした空虚感や抑うつを伴う感情・情緒不安定の中で突然の自殺企図、あるいは性的逸脱薬物乱用過食といった情動的な行動が出現する。このような衝動的な行動や表出される言動の激しさによって、対人関係が極めて不安定である。見捨てられ不安があり、特定の人物に対して依存的な態度が目立ち、他社との適切な距離が取れないなどといった特徴がある。関わり方としては、患者が周囲の人を巻き込まないようにするための明確な態度をとる姿勢が重要で、また患者の自傷行為の背景を知るための面接が必要である。
1.× 自傷行為をほのめかすような態度は普段から見られるものである。その度に緊急入院を勧めることは、患者を突き放すことになる。
2.〇 正しい。死にたい気持ちの有無を確認する。自傷行為の背景にある患者の思いを知るように努める。
3.× 作業療法を延長し関わる時間を増やす。なぜ自傷行為をほのめかすのか知る必要があるが、作業療法を延長するなどして巻き込まれてはならない
4.× 過去の自傷行為の回数について詳しく聴取することは、自傷行為の防止にはつながらず、むしろ患者の気を引く行為に乗せられてしまうことになる。
5.× 自傷行為をしたら作業療法は続けられないと伝えること自体、患者の同意があれば、このような決め事も可能である。しかし、この約束自体、患者の気を引く行為に乗せられてしまうことにつながったり、一方的に約束を伝えるだけでは患者を突き放すことになりかねないため、適切ではない。

 

 

 

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