第54回(H31) 作業療法士国家試験 解説【午前問題11~15】

 

11 30歳の男性。アテトーゼ型脳性麻痺。頸椎症性脊髄症を発症し、歩行不能となった。電動車椅子を導入し、練習開始後2週で施設内自走が可能となったが、壁への衝突等があるために見守りが必要である。
 上肢操作向上を目的とした作業療法で適切なのはどれか。

1. 貼り絵をする。
2. 木工で鋸を使う。
3. ドミノを並べる。
4. 版画で彫刻刀を使う。
5. 革細工でスタンピングをする。

解答1(※3)

解説

本症例のポイント

・30歳の男性(アテトーゼ型脳性麻痺
・頸椎症性脊髄症を発症、歩行不能。
・電動車椅子を導入し、練習開始後2週で施設内自走が可能となったが、壁への衝突等があるために見守りが必要である。
→電動車椅子自走で、「壁への衝突」があるのは、アテトーゼ型脳性麻痺・頸椎症性脊髄症による上肢操作が低下しているためと考えられる。現在の上肢操作機能も低下していることから危険なものなどを排除して考えていく。

1.〇 正しい。貼り絵をすることは上肢操作向上を目的とした作業療法である。アテトーゼ型脳性麻痺の上肢の操作性向上を目的とした作業療法は、「目と手の協調性を促すこと」「把持能力を促すこと」とある。
2.4~5.× 木工で鋸を使う/版画で彫刻刀を使う/革細工でスタンピングをすることは、本症例の上肢機能から危険と判断できる。ちなみに、スタンピングとは、凹凸のあるものや、絵の具をつけて型取りができるものに絵の具をつけて型(スタンプ)として、画用紙などに押し当てて型の模様を表す絵画技法である。
3.× ドミノを並べることより、選択肢の中に優先度が高いものが他にある。ドミノを並べるのは安全に行えるが、精神的にもストレスをかけることから、動揺性の筋緊張が高まりやすい。

アテトーゼ型脳性麻痺とは?

 アテトーゼ型は、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する。他にも、特徴として不随意運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。アテトーゼ型脳性麻痺の介助のポイントとして、体幹は包み込むようにして安定させ、四肢をフリーにしないことで安定させるとよい。また、上肢や体幹の極端な非対称性の体位は、体幹の側屈と短縮を引き起こすため避けるようにする。

 

 

 

 

12 63歳の男性。脊髄小脳変性症により在宅生活を送っている。重症度分類は下肢Ⅲ度(中等度)、上肢Ⅳ度(重度)である。日常生活で使用する福祉用具で誤っているのはどれか。

1. ポータブルスプリングバランサー
2. キーボードカバー付きパソコン
3. シャワーチェアー
4. ポータブルトイレ
5. 歩行器

解答

解説

本症例のポイント

・63歳の男性(脊髄小脳変性症)
・重症度分類は下肢Ⅲ度(中等度)、上肢Ⅳ度(重度)である。
下肢Ⅲ度(中等度):歩行はできるがほとんど常に杖や歩行器などの補助具、または他人の介助を必要とし、それらがない時は伝い歩きが主体となる状態。
上肢Ⅳ度(重度):手先の動作は抽劣で、他人の介助を必要とする状態。
→重症度分類は、57回現在の試験において出題されたことはこの一問だけであるため、詳しく内容まで覚える優先度は低い。今回の問題は、明らかに「脊髄小脳変性症」に対する福祉用具に該当しないものがあるため、こういう問題でも落ち着いて考えていく。

1.× ポータブルスプリングバランサーは、高位脊髄損傷、筋ジストロフィー、腕神経叢麻痺、多発性筋炎、筋萎縮性側索硬化症、Guillain-Barre症候群などで適応となる。わずかな力でも自由に自分の意思で上肢を動かすことができるためリーチ動作の低下・筋力低下を代償できる。選択肢以外の自助具としては、体幹のパランス機能低下や歩行機能低下、構音障害を補う道具なども適応される。アプローチ方法として、緊迫帯や重錘、スプリントがある。
2.〇 正しい。キーボードカバー付きパソコンは、振戦があっても他のキーに触れずに目的のキーだけを押すことを補助するものである。運動失調のある脊髄小脳変性症の患者に用いられる。
3~5.〇 正しい。シャワーチェアー/ポータブルトイレ/歩行器は、本症例の日常生活で使用する福祉用具である。脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。ふらつきが強く、転倒のリスクが高い。

”脊髄小脳変性症とは?多系統萎縮症とは?”

脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)

多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)

(※スプリングバランサーの写真:株式会社あうる様より写真引用)

 

 

 

 

13 76歳の男性。誰もいないのに「自分の布団に知らない子どもが寝ている」と訴え、妻に連れられて受診した。妻の話では、数年前から些細な物忘れが増え、日中ぼう然としていることも多いという。歩行中に転倒することも増えてきているという。
 作業療法室でみられるこの患者の特徴はどれか。

1. 些細なことで泣き出す。
2. 他人の物を勝手に持っていこうとする。
3. 時間どおりに来室し必ず同じ席に座る。
4. わからない質問に対し言い繕って答える。
5. 日によって意識レベルの低下度合いが異なる。

解答

解説

本症例のポイント

・76歳の男性。
・誰もいないのに「自分の布団に知らない子どもが寝ている」と訴える。
・妻の話では、数年前から些細な物忘れが増え、日中ぼう然としていることも多いという。
・歩行中に転倒することも増えてきているという。
→本症例は、幻視・物忘れ・歩行障害の点からからLewy小体型認知症であると考えられる。Lewy小体型認知症とは、Lewy小体が広範な大脳皮質領域で出現することによって、①進行性認知症と②パーキンソニズムを呈する病態である。認知機能の変動・動揺、反復する幻視(人、小動物、虫)、パーキンソニズム、精神症状、REM睡眠型行動異自律神経障害などが特徴である。

1.× 些細なことで泣き出す(感情失禁)は、血管性認知症の特徴である。
2.× 他人の物を勝手に持っていこうとする(脱抑制)は、前頭側頭型認知症の特徴である。
3.× 時間どおりに来室し必ず同じ席に座る(常同行動)は、前頭側頭型認知症の特徴である。
4.× わからない質問に対し言い繕って答える(取り繕い反応)は、アルツハイマー型認知症の特徴である。
5.〇 正しい。日によって意識レベルの低下度合いが異なる(認知機能の変動・動揺)は、Lewy小体型認知症の特徴である。

前頭側頭型認知症(Pick病)とは?

 病理所見として、前頭葉と側頭葉が特異的に萎縮する特徴を持つ認知症である。脳血流量の低下や脳萎縮により人格変化、精神荒廃が生じ、植物状態におちいることがあり、2~8年で衰弱して死亡することが多い。発症年齢が50~60代と比較的若く、初発症状は人格障害・情緒障害などがみられるが、病期前半でも記憶障害・見当識障害はほとんどみられない。働き盛りの年代で発症することが多いことで、患者さんご本人が「自分は病気である」という自覚がないことが多い。その後、症状が進行するにつれ、性的逸脱行為(見知らぬ異性に道で抱きつくなどの抑制のきかない反社会的な行動)、滞続言語(何を聞いても自分の名前や生年月日など同じ語句を答える)、食行動の異常(毎日同じものを食べ続ける常同行動)などがみられる。治療は、症状を改善したり、進行を防いだりする有効な治療方法はなく、抗精神病薬を処方する対症療法が主に行われている。

(参考:「前頭側頭型認知症」健康長寿ネット様HPより)

 

 

 

 

 

 

14 20歳の男性。1年浪人した後に大学に入学し親元を離れた。夏休みに帰省した時に独語や空笑が目立ち始め、バイクに乗って信号無視したところを警察に捕まった。事情聴取の中で「逃げないと殺される」といった支離滅裂な言動がみられたため、連絡を受けた両親に付き添われ精神科を受診し入院となった。入院から1か月後、幻聴と妄想が減弱したところで作業療法が開始となった。
 この時点での作業療法の役割で正しいのはどれか。

1. 自信の回復
2. 疲労度の調整
3. 達成感の獲得
4. 対人交流の拡大
5. 身辺処理能力の回復

解答

解説

本症例のポイント

・20歳の男性(親元離れ生活中)
・夏休みに帰省した時に独語や空笑が目立つ。
・信号無視で警察に捕まり、事情聴取の中で「逃げないと殺される」といった支離滅裂な言動がみられた。
・入院から1か月後:幻聴妄想が減弱したところで作業療法が開始となった。
→本症例は、統合失調症が疑われる。現在、入院から1カ月が経って幻聴と妄想が減弱している時期(亜急性期)で、多少の精神症状は残存していても睡眠覚醒などの生活リズムが確立しているが、疲労感が強い時期である。

1~3.× 自信の回復/達成感の獲得は、回復期後期における役制である。自信や達成感を獲得し、社会復帰の準備を始めようとする。
2.〇 正しい。疲労度の調整はこの時点での作業療法の役割である。入院から1カ月が経って幻聴と妄想が減弱している時期(亜急性期)で、多少の精神症状は残存していても睡眠覚醒などの生活リズムが確立しているが、疲労感が強い時期である。
4.× 対人交流の拡大は、維持期における役割である。社会生活技能訓練(SST)が主なアプローチである。SST(Social Skills Training:社会生活技能訓練)とは、社会生活を送るうえでの技能を身につけ、ストレス状況に対処できるようにする集団療法の一つである。社会生活の中で、患者が苦悩すると思われる場面を具体的に想起し、解決するための技能を訓練する目的で行われるものであり、パニック障害を起こしやすい状況でもパニックを起こさないような技能を身につけるのに有効である。
5.× 身辺処理能力の回復は、回復期前期における役制である。

”統合失調症とは?”

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。

(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

 

 

 

 

15 32歳の男性。通勤途中に突然激しい動悸や息苦しさ、めまいとともに、このまま死んでしまうのではないかという強い不安に襲われた。これらの症状は数分で消失したが、その後もたびたび同様の状況に陥った。また同じような強い不安に襲われるのではないかという恐れから、列車や飛行機の1人での利用ができなくなっている。
 考えられるのはどれか。2つ選べ。

1. 適応障害
2. 広場恐怖
3. 社交恐怖
4. パニック障害
5. 急性ストレス反応

解答2.4

解説

本症例のポイント

・32歳の男性。
・通勤途中に突然激しい動悸や息苦しさ、めまいとともに、このまま死んでしまうのではないかという強い不安に襲われた(不安発作:急激に訪れる不安、動悸、冷や汗などの症状)
・また同じような強い不安に襲われるのではないかという恐れる(予期不安)
・列車や飛行機の1人での利用ができなくなっている(広場恐怖)
→パニック障害を疑える。パニック障害とは、パニック発作が予想できずに頻回に起こり、それらが起こりそうな場所に行くことを避け(広場恐怖)、また同じような強い不安に襲われるのではないかという恐れ(予期不安)を伴うものをいう。

1.× 適応障害とは、大きな生活の変化(進学、就職、転居など)やストレス性の出来事(離別、死別など)に対して、順応するまでに様々な症状(抑うつ気分、不安など)を呈するものをいう。例としては、職場の勤務異動により、新しい部署の仕事や人間関係に慣れることができずに、苦悩や情緒不安定な状態が特続することが挙げられる。
2.〇 正しい。広場恐怖とは、群衆の中や容易に外に逃れられない場所(映画館、公衆便所の中、列車の中など)で恐怖を感じてそれらの場所を避けることをいう。これが重症になると社交恐怖と同様に家から出られなくなって引きこもってしまうこともある。パニック発作を繰り返すうちに「また発作が起こるのではないか」という不安が持続的に生じるようになる。
3.× 社交恐怖とは、クラスメートや職場など「ほどほどの知り合い」 の集団の場で、過剰な不安や緊張が誘発され、動悸、震え、吐き気、赤面、発汗などの身体症状が強く発現する。
4.〇 正しい。パニック障害とは、パニック発作が予想できずに頻回に起こり、それらが起こりそうな場所に行くことを避け(広場恐怖)、また同じような強い不安に襲われるのではないかという恐れ(予期不安)を伴うものをいう。
5.× 急性ストレス反応とは、「その人の生命を脅かすような大きな出来事に遭遇し、その最中またはその後に自分が麻痺してしまったような感覚が出現し、この出来事を想起させるような状況を避けるなどの症状が2日から4週間持続する反応」をいう。例えば、被災などによって大きなストレスにさらされた後に起こり、周囲や自分自身の現実が変わってしまったような感覚などの解離症状(自分が自分であるという感覚が失われている状態)を伴うものである。

 

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