第54回(H31) 作業療法士国家試験 解説【午前問題16~20】

16 17歳の男子。自閉症。自分なりの特定のやり方にこだわり融通が利かず、臨機応変に振る舞えずに失敗体験を積み重ね、自尊感情が著しく低下している。
 この常同性に関わる特性を踏まえた上での作業療法上の配慮として、最も重要なのはどれか。

1. 静かな環境で作業する。
2. 用件は具体的に伝える。
3. 図や表を用いた説明を行う。
4. 1つずつ段階を踏んで作業する。
5. 予定変更がある時は前もって伝える。

解答
解説

 選択肢はいずれも自閉症に対する配慮として重要である。しかし、常同性に関わる特性を踏まえた上での配慮を問われている。常同行動とは、①ぴょんぴょん飛び跳ねたり、②手で何かをたたき続けたり、③手をひらひらとしたりすることである。変化に戸惑うので新しい作業の導入は慎重に行う必要がある。

1.× 静かな環境で作業するなどの環境調整は必要であるが、常同性に対する配慮とはならない。
2~3.× 自閉症では暖味さは通じないため、用件は具体的に伝える・図や表を用いた説明を行うことは大切なことだが、常同性に対する配慮とはならない。
4.× そもそも常同性をもつ患児にとって、1つずつ段階を踏んで作業するのは得意である。
5.〇 予定変更がある時は前もって伝える。常同性をもつ患児にとって、急な予定変更は混乱を招くことになり、変更への臨機応変な対応は困難である。予定変更があるときは前もって伝えておく必要があるため、この選択肢が最も重要である。

 

 

 

 

17 35歳の男性。交通事故による外傷性脳損傷で入院となった。受傷10日後から作業療法が開始された。運動麻痺や感覚障害はみられなかった。些細なことで怒りをあらわにし、作業療法中も大きな声をあげ、急に立ち上がってその場を去る、というような行動がしばしばみられた。患者はこの易怒性についてほとんど自覚しておらず病識はない。
 この患者の怒りへの対応で最も適切なのはどれか。

1. 原因について自己洞察を促す。
2. 感情をコントロールするよう指導する。
3. 周囲に与える影響を書き出してもらう。
4. よく観察し誘発されるパターンを把握する。
5. 脳損傷との関係について理解が得られるまで説明する。

解答
解説

 本症例は、易怒性病識の欠如がみられていることから、外傷性脳損傷により前頭葉が障害されていると考えられる。病識が欠如している状態であるため、言動に対する本人の気づきや理解を求めることは難しく、どのような場面や周囲からの刺激が言動を誘発するか注意深く観察して対策を講じる必要がある。よって、解答は「4. よく観察し誘発されるパターンを把握する」となる。
1~3.× セルフモニタリング能力が低下しており、他者からの注意は受け入れられず、かえって怒りを誘発する可能性がある。
5. × 脳損傷との関係について理解が得られるまで説明するのは、器質的な障害が原因で病識が欠如しているため困難である。

 

 

 

 

18 50歳の女性。10年前に義母の介護に際して突然の視力障害を訴えたが、眼科的異常はみられなかった。1か月前に夫の単身赴任が決まってから、下肢の冷感、疼痛を主訴として、整形外科、血管外科などを受診するも異常所見は指摘されなかった。次第に食事もとれなくなり、心配した夫が精神科外来を受診させ、本人はしぶしぶ同意して任意入院となった。主治医が、身体以外のことに目を向けるようにと作業療法導入を検討し、作業療法士が病室にいる本人を訪問することになった。本人は着座すると疼痛が増強するからと立位のままベッドの傍らに立ち続けて、他科受診できるよう主治医に伝えてほしいと同じ発言を繰り返す。
 この患者に対する病室での作業療法士の対応で最も適切なのはどれか。

1. 他科受診できるよう約束する。
2. 夫の単身赴任をどのように感じているか尋ねる。
3. 痛みが軽減することを約束して作業療法への参加を促す。
4. 身体的には問題がなく、心の問題であることを繰り返し伝える。
5. 他のスタッフの発言との食い違いが生じないよう、聞き役に徹する。

解答
解説

 本症例のように、異常な検査結果などがみつからないのに、下肢の冷感や疼痛などの身体症状が続き、異常所見がないことを受け入れられず医療機関を転々と求めるような発言から、身体表現性障害であると考えられる。 

1.× 他科受診できるよう約束しても、身体表現性障害では器質的な障害はないため、解決には至らない。他科受診に関しては主治医と相談するように改めて伝え、患者の意向を代行しないようにする。
2.× 夫の単身赴任をどのように感じているか尋ねるのは、不適当である。身体表現性障害の特徴として、原因となるストレスについては無関心であることが多い。夫の単身赴任は、身体表現性障害の原因になっていると考えられるが、現段階では身体的症状に関心が向けられているので、夫の単身赴任をどのように感じているかを尋ねてもそれには本人の関心は向かず、治療にはつながらない。
3.× 痛みが軽減することを約束はしてはならない。さらに、痛みに固執することもあり得る。主治医の指示通り、身体症状以外のことに関心を向けるアプローチが必要である。
4.× 身体的には問題がなく、心の問題であることを繰り返し伝えるのは、不適当である。身体表現性障害の特徴として、原因となるストレスについては無関心であることが多い。仮に、心の問題であることを繰り返し伝えても、現段階では受け入れられないと考えられる。
5.〇 正しい。作業療法の導入の段階であり、他のスタッフの発言との食い違いが生じないよう、聞き役に徹することが現段階での適切な対応といえる。

 

 

 

一休みに・・・。

 

 

 

19 9歳の男児。注意欠如・多動性障害。放課後デイサービスに通所している。鼻歌を唄ったり足を動かしたりとじっとしていることが苦手で、勉強の時間に立ち歩いたり他児にちょっかいを出したりすることでトラブルになった。指導員から注意されると感情的になり、暴れる行動が頻回にみられた。教科書や提出物の忘れ物も多い。
 この児に対する治療的な対応で適切なのはどれか。

1. トラブルの原因を考えさせる。
2. 運動を取り入れて体を動かす。
3. 他児との交流は最小限に留める。
4. じっとしておく取り決めをする。
5. 感情的になっても介入しないでおく。

解答
解説

 注意欠如・多動障害児では、不適切行動を注意しても自ら改善することはできないことが多い。そのため、過度の行動欲求を発散させるような対応をし、他児に対する迷惑行為については制止する必要がある。強い口調での指示は、叱責と受け止められやすく、自信喪失や自尊心の低下につながるため適切でない。問題行動はその場で指摘し、改善を図る。この積み重ねが適応
的な行動パターンの獲得につながる。褒めることで自信をつけさせ、自尊心の回復を図ることが大切となる。。

1.× トラブルの原因を考えさせるのは、本人はトラプルを起こそうと思って起こしているわけではないので困難である。
2.〇 正しい。運動を取り入れて体を動かす。運動を行うことで、ストレス発放や爽快感につながったり、達成感が得られたりする。また、感覚統合を促進することができる。
3.× 他児との交流は最小限に留める必要はない。ただ、他児の迷惑になる場合は介入して制止したり、個別に近い対応が可能な小集団で対応したりする必要はある。
4.× じっとしておく取り決めをすること自体困難である。多動は本人の意因とは無関係に起こる行動である。また、本人にフラストレーションが溜まってしまうと、行為障害(素行障害)に発展することも考えられる。
5.× 感情的になっても介入しないでおくのは、不適当である。感情的になった場合は、その場から本人を離して1対1で対応するなど、「間をおく」ような介入が必要である。

 

 

 

 

20 30歳の男性。統合失調症で5年前に幻覚妄想状態で家族に対する興奮があり、医療保護入院となった既往がある。退院後はほぼ規則的に通院し、毎食後服薬していたが、3か月前から治療を中断し、幻聴や被害関係妄想が悪化し、両親を自宅から閉め出して引きこもってしまった。注察妄想もあり本人も自宅から外出できない状況である。多職種訪問支援チームが1年前から関わっており、訪問は受け入れてもらえている。
 この患者への今後の介入で最も適切なのはどれか。

1. 本人の意思に関わらず、繰り返し服薬を強く促す。
2. 両親を自宅に同行させ、その場で本人に両親への謝罪を促す。
3. 民間救急を利用し、中断していた精神科病院の救急外来に搬送する。
4. 本人の希望や生活上の困り事を根気よく引き出し、関係を深める努力をする。
5. 訪問頻度を減らし、本人が助けを求めるのを待って精神科外来に結びつける。

解答
解説

 注察妄想とは、被害妄想の一種で、自宅にいても、いつも誰かに監視をされていると思い込んでしまう妄想のことである。

 本症例は、「多職種訪問支援チームが1年前から関わっており、訪問は受け入れてもらえている」ことから、本人とのコミュニケーションはとれており、今後も本人の意向に沿いながら、この支援チームとの関わりを強化することがポイントとなる。

1.× 本人の意思に関わらず、繰り返し服薬を強く促すのは、不適当である。まずは本人の意向を十分に聴き、その上で服薬の必要性を本人と共有することが重要である。
2.× 両親を自宅に同行させ、その場で本人に両親への謝罪を促すのは、不適当である。問題文から、両親が謝るようなことをしたのか?は書かれていない。幻聴や妄想が悪化した結果、両親を閉め出しているので、両親へ謝罪しても症状の改善は期待できない。
3.× 民間救急を利用し、中断していた精神科病院の救急外来に搬送するのは、不適当である。民間救急とは、「119番消防救急」と違い民間の事業者が搬送用自動車を用いて緊急を要しない患者を搬送する事業のことである。引きこもりの独居生活に入ったが、直ちに入院が必要なほどの緊急性の高い状態ではない。まずは、多職種訪問支援チームが訪問頼度を増やすなどして、本人との関わりを強化することが必要である。
4.〇 正しい。上記解説でも述べた通り、現在も多職種訪問支援チームとの関係性は持続している。本人の希望や生活上の困り事を根気よく引き出し、関係を深める努力をするのが正しい。
5.× 訪問頻度を減らすのは不適当である。訪問頻度を減らして本人の助けの意思を待つのは、 症状の悪化や治療の中断につながるおそれがある

 

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