第54回(H31) 作業療法士国家試験 解説【午前問題21~25】

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21 腋窩での体温測定で正しいのはどれか。

1. 側臥位では下方の腋窩で測定する。
2. 体温計は腋窩の前下方から後上方に向かって挿入する。
3. 発汗しているときはアルコール綿で腋窩を消毒してから測定する。
4. 平衡温を測定する場合は3分間測定する。
5. 麻痺のある場合は麻痺側で測定する。

解答

解説
1.× 側臥位では、「下方」ではなく上方の腋窩で測定する。下方では、圧迫により思わぬ怪我や循環が悪くなるため適切ではない。
2.〇 正しい。体温計は腋窩の前下方から後上方に向かって挿入する。体軸に対して45°を目安とする。
3.× 発汗しているときは、「アルコール綿」ではなく乾いたタオルで腋窩を拭いてから測定する。
4.× 厳密に求めるのであれば、平衡温を測定する場合は、「3分間」ではなく10分程度測定する。ただ、臨床的には3~5分で行うところも多い。
5.× 麻痺のある場合は、「麻痺側」ではなく非麻痺側にて測定する。麻痺側は血液の循環が悪く正確な体温が測れないためである。

 

 

 

 

22 作業療法の評価で正しいのはどれか。

1. MTDLPは質問紙による評価である。
2. COPMはセラピストの意見を中心に評価する。
3. 人間作業モデルを構成するのは運動面と精神面である。
4. クライアント中心の実践は、評価結果を本人に提示しない。
5. 作業遂行は人―環境—作業の相互作用の結果として生じる。

解答

解説
1. × MTDLP(Management Tool for Daily Life Performance):生活向上マネジメントは、 「そもそも評価」ではなく、極端に言うと身体的・精神的な一連の支援のことをいう。利用者が本来持っている能力を引き出し、その能力が在宅生活で生かされるために必要な要素を分析し、身体的 精神的な支援を行うことをいう。
2. × COPM(Canadian Occupational Performance Measure):カナダ作業遂行測定は、「セラピストの意見を中心」ではなく、本人または家族が主観的に重要と位置付けられている。生活機能や日常生活スキルのうち、本人または家族が主観的に重要と位置づける作業課題を選択し、その遂行度と満足度を初期評価および再評価をする。
3. × 人間作業モデルを構成するのは、「運動面と精神面」ではなく、「作業」を人間性の保持に必要なもの、健康が破綻した後の再調整をするものとして位置づけている。その人の行動を位置づけるものとして意志・習慣化・遂行技能の3要素の相互作用と、これに加えて 環境を4要素として挙げており、これらよりどの程度作業に適しているかを考える。
4. × クライアント中心の実践は、評価結果を本人に提示する。クライアントと作業療法士が作業療法のプロセスを協働して行うことであり、評価結果もクライアント本人に提示する。
5. 〇 正しい。作業遂行は人―環境—作業の相互作用の結果として生じる。作業療法士の対象者との関わり方が対象者の作業遂行に大きく影響するため、作業療法士は環境の一つと考えられている。

 

 

 

 

23 疾患と作業種目の組合せで正しいのはどれか。

1. 関節リウマチ:粘土細工
2. 小脳梗塞:切り絵
3. 脊髄小脳変性症:卓球
4. Parkinson病:上方への輪通し
5. 慢性閉塞性肺疾患:デコパージュ

解答

解説
1.× 関節リウマチ:粘土細工に関して、関節リウマチ患者は、関節を保護と負担をかけない訓練が必要である。 粘土細工は手指の関節に負荷がかかる作業であり避けるべきである。
2.× 小脳梗塞:切り絵に関して、小脳梗塞は小脳性の運動失調では企図振戦や測定障害が特徴的である。はさみを使用する切り絵は、障害上行えず自信喪失につながるほか、手元の怪我にもつながり危険である。
3.× 脊髄小脳変性症:卓球に関して、脊髄小脳変性症は運動失調を主とした慢性進行性の症候群で、進行の度合いによって手作業の拙劣さバランス障害などを生じる。卓球は、転倒のリスクが高く適切ではない。
4. 〇 正しい。Parkinson病:上方への輪通しに関して、Parkinson病は、無動・固縮・姿勢反射障害・安静時振戦・動作緩慢・前傾前屈姿勢などの症状が特徴的である。上方への輪通し(上方へのリーチ動作)を行うことで体幹・頚部・上肢の伸展を促せることなどからも適切である。
5.× 慢性閉塞性肺疾患:デコパージュに関して、デコパージュとは紙を切って小物に貼って飾る技法のことである。いわゆる張り子(はりこ)ともいう。デコパージュ専用液(接着剤)やトップコート液の中には揮発性・刺激性の物質が入っているため呼吸器疾患や慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の作業療法には適さない。慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者が呼吸困難を来さないようにADL・IADLの指導や住宅環境の調整をするのが作業療法としては適切である。

”脊髄小脳変性症とは?多系統萎縮症とは?”

脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)

多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)

 

 

24 非言語性評価で用いられる検査はどれか。2つ選べ。

1. MMSE
2. RBMT
3. WAIS-Ⅲ
4. Kohs 立方体組合せテスト
5. Ravenʼs Colored Progressive Matrices(RCPM)

解答4.5

解説
非言語性評価とは、解答に発語を要しない評価法をいう。
1.× MMSE(Mini-Mental State Examination:ミニメンタルステート検査)は、認知機能を評価する検査である。30点満満点で評価し、23点以下で認知機能低下(認知症の疑い)と判断する。検者に質問し、見当識・記憶・計算・言語能力・図形能力で、非言語性評価はない。
2.× RBMT(Rivermead behavioral memory test:リバーミード行動記憶検査)は、記憶障害の患者が日常的に遭遇する状況を想定して行う記憶障害検査である。1.氏名、2.持ち物、3.約束、4.絵、5.物語(直後・遅延)、6.顔写真、7.道順(直後・遅延)、8.用件、9.見当識で9つの項目で非言語性評価はない。
3.× WAIS-Ⅲ(Wechsler Adult Intelligence Scale:ウェクスラー成人知能検査)は、質問やイラスト、積み木などの検査キットを用いて、言語性知能尺度・動作性知能尺度から総合の知能指数(IQ)を測定する。非言語性評価はない。
4.〇 正しい。Kohs 立方体組合せテストは、各面が塗り分けられた1辺3cmの立方体を組み合わせて模様をつくる課題であり、言語能力に障害があっても知能全般が評価できる。
5.〇 正しい。RCPM(Ravenʼs Colored Progressive Matrices:レーヴン色彩マトリックス検査)は、標準図案の欠如部に合致するものを6つの選択図案の中から1つだけ被検者に選ばせる非言語性知能検查である。言語を介さずに答えられるので、被検者に負担をかけずに推理能力(知的能力)を測定できる。

 

 

 

 

25 前傾側臥位で排痰を行うのはどれか。

1. 後上葉区
2. 前上葉区
3. 前肺底区
4. 肺尖区
5. 上舌区

解答

解説

 体位ドレナージは重力を利用して痰の排出を図る方法である。痰貯留部位が上、気管支が下となる体位をとり、痰を排出する。

1.〇 正しい。後上葉区(S6・10)は、上背側にあるので、前方へ45°傾けた側臥位をとる.
2.× 前上葉区(S3)は、上腹側なので、背臥位とる。
3.× 前肺底区(S8)は、下腹側に位置するので、背臥位をとる。
4.× 肺尖区(S1)は、肺の頂部なので、背臥位をとる。
5.× 上舌区(S5)は、外腹側に位置する。後方へ45°傾けた側臥位をとる。

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