第54回(H31) 理学療法士国家試験 解説【午後問題81~85】

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81. 心理療法で正しいのはどれか。

1. 陽性転移の出現を目標とする。
2. 逆転移を認識したときは治療を中止する。
3. 自律訓練法では不安階層表を作成させる。
4. 絵画療法は統合失調症急性期に有効である。
5. バイオフィードバックはオペラント条件付けを用いた手法である。

解答

解説

転移とは?

転移とは、患者が今までの生活史における重要人物に示してきた感情や態度を治療者に向けることを言い、一方、逆転移とは治療者が患者に向けることである。

1. ×:陽性転移は治療者に対する好ましい感情であるが、陽性転移の出現を目標とはしない。なぜなら、陽性・陰性転移の出現についての理由を明確化して、洞察を深めていくように導くのが洞察的心理療法の目的である。
2. ×:逆転移を認識したときは治療を中止する必要はない。転移・逆転移は心理治療中で容易に起こり得ることで、逆転移を認識したら、治療者自身で解決するか、別の治療者に相談するのが良い。
3. ×:自律訓練法は、不安階層表を作成するものではない。自律訓練法は、シェルツによって開発されたもので自己催眠法の手続きの一つで、事故に暗示をかけてリラックスを促し心身を整える方法である。不安階層表を作成させるのは、ウォルピによって創始された系統的脱感作である。徐々に不安を感じる刺激を与えて慣れさせる方法をとる。
4. ×:絵画療法は、統合失調症の「急性期」ではなく、慢性期に有効である。絵画療法は、患者に絵を描いてもらい言語化できない患者の精神内界を表現させ、それについて患者と言語的あるいは非言語的に交流することにより症状の改善をはかるものである。「禁忌はない」といわれるほど多くの疾患に適応があるが、統合失調症では慢性期の治療に有効である。
5. 〇:正しい。バイオフィードバック法は、精神生理学に関連した方法で、生理現象を計測しながら良い状態であれば対象者に信号を出して、良い状態を保つよう訓練する方法で、オペラント条件付けを用いた手法である。

 

 

 

 

82. ASIAの評価法における脊髄の髄節とその感覚支配領域検査ポイントの組み合わせで正しいのはどれか。

1. C5:鎖骨上窩
2. T7:臍
3. T12:鼠経靭帯の中点
4. L5:足関節内果
5. S4:膝窩

解答

解説
1. ×:C5は、腕橈骨筋起始(上腕骨外果)である。鎖骨上窩(肩峰)はC3である。
2. ×:臍は、T10である。T7は第7肋間、T6は胸骨剣状突起高位、T4は乳首である。
3. 〇:正しい。T12は、鼠経靭帯の中点である。
4. ×:L5は、足背内側である。足関節内果はL4である。
5. ×:S4は、肛門皮膚粘膜移行部である。膝窩はS2である。

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【共通問題のみ】ASIAについての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

83. 【採点除外問題】歩行障害と病態の組み合わせで正しいのはどれか。(※解答なし)

1. 鶏歩:ハムストリングスの筋力低下
2. 踵足歩行:深部感覚障害
3. 動揺歩行:錐体外路障害
4. 小刻み歩行:運動失調
5. Trendelenburg歩行:腸腰筋の筋力低下

解答 解なし(選択肢に不適切があるため)

解説
1. ×:鶏歩は、総腓骨神経麻痺で生じる足関節背屈筋力低下で起こる。
2. ×:踵足歩行(らくだ歩行)は、L4,5脊髄損傷や二分脊椎、ポリオで起こる。足関節底屈筋麻痺が原因で起きる変形である。
3. ×:動揺歩行は、両側中殿筋の筋力低下により腰を左右に振りながら歩く様子をいう。主に、多発性筋炎などの肢帯筋の障害により起こる。
4. ×:小刻み歩行は、Parkinson病に特徴的な歩行である。錐体外路障害により起こりやすい。
5. ×:Trendelenburg歩行は、動揺歩行と同様に、中殿筋の筋力低下により腰を左右に振りながら歩く様子をいう。

多発性筋炎(皮膚筋炎)とは?

多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。

(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

84. 高齢者の長期の安静臥床の影響で正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 記銘力の低下
2. 1回換気量の増加
3. 循環血液量の減少
4. 予備呼気量の増加
5. 安静時心拍数の減少

解答1,3

解説
 長期臥床では、心肺機能が低下し、下肢からの静脈還流量の低下による心拍出量の減少、脈拍数の増加、最大酸素摂取量の減少などの生体に影響がある。

1. 〇:正しい。記銘力の低下を引き起こし認知症につながる。
2. ×:1回換気量は、「増加」ではなく減少する。換気能低下が起こるためである。
3. 〇:正しい。循環血液量の減少が起こる。心機能の低下、筋肉量の減少や萎縮のため起こる。血液粘稠度も増し血栓ができやすくなる。
4. ×:予備呼気量は、「増加」ではなく減少する。残気量が上昇し、肺活量は低下する。
5. ×:安静時心拍数は、「減少」ではなく増加する。なぜなら、循環血液量の減少により、全身に酸素を送るためには安静時心拍数は代償的に増加するため。

 

 

 

 

 

85. Milani運動発達評価における反射や運動のうち消失する時期が最も遅いのはどれか。

1. 手掌把握反射
2. 自動歩行
3. 足底把握反射
4. 非対称性緊張性頸反射
5. Moro反射

解答

解説

1. ×:手掌把握反射の消失する時期は、3~4か月である。
2. ×:自動歩行の消失する時期は、1~2か月である。
3. 〇:正しい。足底把握反射の消失する時期は、9か月である。
4. ×:非対称性緊張性頸反射の消失する時期は、4~6か月である。
5. ×:Moro反射の消失する時期は、4~6か月である。

 

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

【暗記用】姿勢反射を完璧に覚えよう!

 

4 COMMENTS

匿名

82 選択肢1 の鎖骨上窩はC3ではないでしょうか?

解説にはC4と記載されていたので、確認お願いいたします。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
修正しました。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する

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