第54回(H31) 理学療法士国家試験 解説【午後問題86~90】

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86. 乳児の水頭症でみられる症状はどれか。

1. 肥満
2. 口蓋裂
3. 運動失調
4. 落陽現象
5. 弛緩性麻痺

解答

解説
 新生児・乳児期(0~2歳ごろ)に水頭症が発症した場合、頭蓋骨縫合が完全に癒合していないため、脳室の拡大に伴って頭蓋が拡張し、頭囲の拡大や大泉門の膨隆が起こる。さらに脳室拡大が高度になると、頭皮静脈の怒張や落陽現象などが出現する。落陽現象とは、眼球上転運動障害のことである。また他の特徴として、破壺音(はこおん):Macewen徴候(マキューイン徴候)、頭部を打診するとヒビの入った壺のような音がする、頭皮の伸展・光沢、下肢痙直、頭囲拡大などがあげられる。よって、選択肢4. 落陽現象が正しい。

1. × 肥満は、甲状腺機能低下症・甲状腺機能亢進症/バセドウ病・クッシング症候群などが疑われる。
2. × 口蓋裂の原因の7割は不明とされている。
3.5. × 運動失調/弛緩性麻痺は、脳性麻痺などが疑われる。

 

 

 

 

 

87. 外傷による骨折で、通常、完全骨折となるのはどれか。

1. 亀裂骨折
2. 若木骨折
3. 竹節骨折
4. 圧迫骨折
5. 剥離骨折

解答

解説
 一般的な骨折とはこの完全骨折を意味する。不全骨折とは、何らかの理由により骨が連続性を完全に失わない状態の骨折を指す。いわゆる骨にヒビが入っている状態である亀裂骨折や、緻密層以下の部分が離断しているにも関わらず骨膜に損傷がないため、外形的には変化が見られない骨膜下骨折などがこの不全骨折の典型例である。

1. ×:亀裂骨折は、ひびが入っているが、つながっている骨折をいう。
2. ×:若木骨折は、骨の膜の内側で、筋状にひびが入っている状態である。小児によくみられる。若木を折り曲げたときのように、ポキッと折れず連続性が一部保たれた不完全骨折である。
3. ×:竹節骨折(膨隆骨折)は、圧迫骨折の一種で骨の柔らかい子供に多い骨折である。上下からの圧迫で潰れ骨折部分は竹の節のような形になる。
4. ×:圧迫骨折は、高齢者に多く、背骨が押しつぶされて変形している骨折である。
5. 〇:正しい。剥離骨折(裂離骨折)は、通常、完全骨折となる。靭帯や筋、腱の付着部の骨が引き裂かれて生じた状態で、開放骨折である。

 

 

 

 

88. 骨肉腫で正しいのはどれか。

1. 肺転移が多い。
2. 運動時痛は少ない。
3. 壮年期に好発する。
4. 大腿骨近位に発生する。
5. 血中アルカリフォスファターゼが低下する。

解答

解説
悪性腫瘍は、上皮性のものを「癌(癌腫)」、非上皮性のものを「肉腫」と呼ぶ。骨肉腫には、他の臓器に発生したがんが骨に転移する「転移性骨腫瘍」と、骨自体からがんが発生する「原発性骨悪性腫瘍」の2種類があり、後者は主に肉腫と呼ばれる腫瘍がほとんどである。

1. 〇:正しい。肺転移が最も多い。しかし、5年生存率は近年70%以上にまで改善してきている。
2. ×:主な症状としては、運動時痛を含む痛みがある。骨肉腫では膝周囲の疼痛、腫脹が特徴である。
3. ×:「壮年期」ではなく、10~20代の若年者に好発する。
4. ×:「大腿骨近位」ではなく、膝の周り(大腿骨遠位部や脛骨近位部)や肩の周囲に発生する。
5. ×:血中アルカリフォスファターゼは、「低下する」のではなく高くなる。血中アルカリフォスファターゼは、肝・胆管系・骨・甲状腺・胎盤・小腸・腎などに分布し、障害されると上昇する。

骨肉腫とは?

骨肉腫は原発性悪性骨腫瘍の中で最も多い。10歳代に好発し、大腿骨遠位部と脛骨近位部の骨幹端部に多く発生する。骨Paget(骨ページェット病)などに続発する場合がある(二次性骨肉腫)。肺転移が多いが、5年生存率は近年70%以上にまで改善してきている。

 

 

 

 

 

89. 続発性骨粗鬆症発症の危険因子はどれか。

1. 肥満
2. 副腎不全
3. 関節リウマチ
4. 甲状腺機能低下
5. 副甲状腺機能低下

解答

解説
 続発性骨粗鬆症とは、閉経後や高齢者にみられる原発性骨粗鬆症と異なり、結果として二次的な骨量喪失が起こる骨粗鬆症のことをいう。例えば、骨代謝に影響を及ぼすホルモンやサイトカイン異常、不動など骨への力学的負荷の減少、骨構成細胞や物質の異常、全身的および血管障害などの局所的栄養障害などによって起こる。これら骨粗鬆症は原疾患に基づいて発症する続発性骨粗鬆症であるため、原疾患の適切な治療により正常化することが期待しうるが、骨代謝の正常化を期待するには不十分であることが多く、また先天性異常では改善は望めず、多くの症例で骨量喪失に対する治療を要することが多い。

1. ×:「肥満」ではなく、るいそうといったいわゆる痩せで起こる。
2. ×:副腎は、「不全」ではなく亢進(クッシング症候群)で起こる。
3. 〇:正しい。関節リウマチで起こる。
4. ×:甲状腺機能は、「低下」ではなく亢進起こる。
5. ×:副甲状腺機能は、「低下」ではなく亢進で起こる。

 

 

 

90. 神経系の感染症と病態の組み合わせで正しいのはどれか。

1. HIV脳症:スピロヘータ
2. 急性灰白髄炎:ウイルス
3. Creutzfeldt-Jakob病:細菌
4. 進行麻痺:ウイルス
5. 日本脳炎:細菌

解答

解説
1. ×:HIV脳症(エイズ)は、HIVウイルスによる後天性免疫不全症である。梅毒はスピロヘータの一種である梅毒トロポネーマ感染により発症し、この梅毒トロポネーマが脳の実施まで至ると、進行性麻痺となる。
2. 〇:正しい。急性灰白髄炎(ポリオ)は、ポリオウイルスの感染により脳脊髄炎を来たし、主に脊髄前核細胞が侵される。
3. ×:Creutzfeldt-Jakob病(クロイツフェルト・ヤコブ病)は、異常なプリオン蛋白が脳に蓄積する致死性神経感染症である。
4. ×:進行麻痺とは、進行性麻痺とは、梅毒に感染してからおよそ10年以降(梅毒第4期)に発症する脳疾患である。梅毒トレポネーマという細菌の一種で起こる。
5. ×:日本脳炎は、日本脳炎ウイルスで起こる。日本脳炎とは、日本脳炎ウイルスにより発生する疾病で、蚊を介して感染する。以前は子どもや高齢者に多くみられた病気である。初期症状として、突然の高熱・頭痛・嘔吐などで発病し、意識障害や麻痺等の神経系の障害を引き起こす病気で、後遺症を残すことや死に至ることもある。

 

2 COMMENTS

匿名

88
覚えるというより、肺転移、肝転移、播種から、体腔との位置関係と、門脈循環か体循環を考えれば導き出せるという、発生機序的な学習力が問われる問題では。

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大川 純一

コメントありがとうございます。
確かに、発生機序的な学習は大切ですね!
今後ともよろしくお願いいたします。

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