第54回(H31) 理学療法士国家試験 解説【午後問題91~95】

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91. 重症筋無力症で正しいのはどれか。

1. 胸腺の異常を伴うことが多い。
2. Parkinson病より患者数が多い。
3. テンシロン試験で症状が悪化する。
4. 血清クレアチンキナーゼが上昇する。
5. 誘発筋電図の反復刺激試験で振幅の漸増を認める。

解答

解説

重症筋無力症とは?

重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。直ちに、気管内挿管・人工呼吸管理を行う。
【診断】テンシロンテスト、反復誘発検査、抗ACh受容体抗体測定などが有用である。
【治療】眼筋型と全身型にわかれ、眼筋型はコリンエステラーゼ阻害 薬で経過を見る場合もあるが、非有効例にはステロイド療法が選択される。胸腺腫の合併は確認し、胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術を施行する。難治例や急性増悪時には、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用 される。

(※参考「11 重症筋無力症」厚生労働省HPより)

1. 〇:正しい。胸腺の異常(胸腺腫を伴うことが多い。胸腺腫がなくても全身型の重症筋無力症には拡大胸腺腫摘出術が行われることが多い。
2. ×:Parkinson病の患者数は、人口10万人あたり100~150人と推定されており、神経変性疾患の中では最も頻度が高い。ちなみに、重症筋無力症は、10万人あたり5.1人である。
3. ×:テンシロン試験で症状は、「悪化する」のではなく、回復する。テンシロンは欧米の商品名であり、日本ではアンチレクスという商品名で発売されている。重症筋無力症患者では、長短時間作用型抗ChE薬であるテンシロンの静注により、一過性に筋力が回復する(テンシロン検査)。
4. ×:血清クレアチンキナーゼとは、筋の損傷が起こると上昇を示す。心筋炎、心外膜炎、進行性筋ジストロフィー、多発性筋炎などにより上昇する。重症筋無力症は、筋の障害ではないため血清クレアチンキナーゼは上昇しない
5. ×:誘発筋電図の反復刺激試験で振幅は、「漸増」ではなく漸減を認める。これをWaning(ウェイニング)現象という。

多発性筋炎(皮膚筋炎)とは?

多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。

(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)

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92. 脳腫瘍とその症状の組み合わせで正しいのはどれか。

1. 下垂体腺腫:両耳側半盲
2. 視神経膠腫:てんかん発作
3. 髄芽腫:下垂体機能不全
4. 聴神経鞘腫:尿崩症
5. 頭蓋咽頭腫:難聴

解答

解説
1. 〇:正しい。下垂体腺腫は、両耳側半盲を生じる。下垂体腺腫では、視交叉が圧迫されると視神経の一部が障害され両耳側半盲となる。視力・視野障害の他にも、下垂体前葉機能障害(成長ホルモン低下症状や卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンの低下症状など)や視床下部障害(尿崩症)が起こる。
2. ×:視神経膠腫は、無症状で、自然に消退するものも多いが、ときに視力低下・視野障害などの原因となる。てんかん発作は、膠芽腫(グリオブラストーマ)で起こる。
3. ×:髄芽腫は、通常小脳虫部に発生する。頭痛や嘔吐、歩行時のふらつきがみられる。下垂体腺腫では、腫瘍が増大し正常下垂体を圧迫することで下垂体機能不全がみられる。
4. ×:聴神経鞘腫の約95%が内耳神経(特に下前庭神経)に好発する。症状として、一側の高音域難聴、耳鳴、健側に向かう水平注視眼振(Bruns眼振)、めまいなどがある。尿崩症は、頭蓋咽頭腫や胚細胞腫瘍などでみられる。
5. ×:頭蓋咽頭腫は、視交叉圧迫による視力障害、下垂体機能低下、視床下部障害などを特徴とする。難聴は聴神経鞘腫などでみられる。

 

 

 

 

93. 急性膵炎で正しいのはどれか。

1. 胆石が最も多い原因である。
2. 重症例の死亡率は1%前後である。
3. 急性期は血中アミラーゼが低下する。
4. 膵内での消化酵素の活性化がみられる。
5. 体幹の伸展で痛みが軽減することが多い。

解答

解説

急性膵炎とは?

急性膵炎とは、膵臓の突然の炎症で、軽度のものから生命を脅かすものまであるが、通常は治まる。主な原因は、胆石とアルコール乱用である。男性では50歳代に多く、女性では70歳代に多い。症状として、飲酒・過食後に左上腹部痛・心窩部痛が発症する。悪心・嘔吐、悪寒、発熱、背部への放散痛もみられ、腹痛はアルコールや脂質の摂取で増悪する。
検査:膵臓の炎症・壊死により膵臓由来の消化酵素(アミラーゼとリパーゼの血中濃度)が上昇する。
【治療】
軽症例:保存療法(禁食、呼吸・循環管理、除痛 等)
重症例:集中治療[臓器不全対策、輸液管理、栄養管理(早期経腸栄養)、感染予防、腹部コンパートメント症候群対策]

(※参考:「急性膵炎」MSDマニュアル家庭版より)

1. ×:最も多い原因はアルコール(33.5%)で、次の原因で胆石(26.9%)がある。
2. ×:重症例の死亡率は、「1%前後」ではなく、適切に治療を行った場合でも8.9%であるとする報告がある。厚生労働省研究班による急性膵炎の全国調査(2003年)では重症急性膵炎の死亡率は8.9%と予後不良な疾患であり、約20%の症例で再発すると報告されている(※引用:「集学的治療により救命し得た重症急性膵炎の一例」著:石川 剛様より)
3. ×:急性期は血中アミラーゼ(膵酵素:アミラーゼ、リパーゼ)が、「低下」ではなく上昇する。
4. 〇:正しい。膵内での消化酵素の活性化がみられる。膵液は膵管という管を通って十二指腸に分泌され、はじめて消化酵素として活性化し、食べ物を消化する。胆石など何らかの原因で、膵液が詰まり、膵内で活性化されると、膵臓が消化され、これを急性膵炎と呼ぶ。
5. ×:体幹の「伸展」ではなく屈曲(前かがみ)で痛みが軽減することが多い。体幹伸展では増悪する。

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94. 赤血球の産生が低下しないのはどれか。

1. 腎性貧血
2. 溶血性貧血
3. 鉄欠乏性貧血
4. 巨赤芽球性貧血
5. 骨髄異形成症候群

解答

解説
 貧血(赤血球数・ヘモグロビン量・またはヘマトクリットの減少)は、赤血球産生(赤血球造血)の低下、赤血球崩壊の増加、失血、またはこれらの因子の組合せの結果として生じることがある。

1. × 腎性貧血は、赤血球の産生が低下する。腎性貧血は、主にエリスロポエチンの欠乏または、エリスロポエチンに対する反応性の低下より、赤血球を産生能力が低下する。
2. 〇 溶血性貧血は、赤血球が破壊されることによって起こる貧血である。赤血球が破壊されることを溶血と言い、溶血で起こる貧血なので溶血性貧血という。つまり、赤血球の産生は低下しないが、溶血される貧血である。
3. × 鉄欠乏性貧血は、赤血球の産生が低下する。鉄欠乏性貧血は、体内の鉄が不足することで赤血球の中に含まれるヘモグロビンが作れなくなることによって生じる、貧血の中で最も頻度が高い疾患である。
4. × 巨赤芽球性貧血は、赤血球の産生が低下する。巨赤芽球性貧血は、種々の原因により骨髄に巨赤芽球が出現する貧血の総称である。ビタミンB12欠乏や葉酸欠乏などにより、DNA合成が障害され核の成熟障害をきたし、異常な巨赤芽球が産生される。巨赤芽球は、赤血球前駆細胞である。つまり、赤血球前駆細胞である異常な巨赤芽球が産生され、赤血球の産生が低下する貧血である。
5. × 骨髄異形成症候群は、赤血球の産生が低下する。骨髄異形成症候群とは、骨髄中で健常な血液細胞が充分につくられない疾患の一種である。症状のあらわれ方は、患者によって異なる。 具体的には、赤血球減少による顔色不良、全身倦怠感、動悸、息切れなどの症状や、血小板減少による皮膚・粘膜の点状出血や鼻出血などの症状がみられる。

 

 

 

 

 

95. 地域保健法に基づく保健所の業務でないのはどれか。

1. 障害児の保険相談
2. 医療保険の審査事務
3. 感染症発症届出の受理
4. 人口動態統計に関する事務
5. 食品に関する営業所の監視

解答

解説

1. 〇:正しい。障害児の保険相談は、にあたる。
2. ×:医療保険の審査事務は、支払基金(国民健康保険団体連合会または社会保険診療報酬支払基金)が行っている。
3. 〇:正しい。感染症発症届出の受理は、にあたる。
4. 〇:正しい。人口動態統計に関する事務は、にあたる。
5. 〇:正しい。食品に関する営業所の監視は、にあたる。

保健所が実施する事業

保健所は、次に掲げる事項につき、企画、調整、指導及びこれらに必要な事業を行う。
①地域保健に関する思想の普及及び向上に関する事項。
②人口動態統計その他、地域保健に係る統計に関する事項。
③栄養の改善及び食品衛生に関する事項。
④住宅、水道、下水道、廃棄物の処理、清掃その他の環境の衛生に関する事項。
⑤医事及び薬事に関する事項。
⑥保健師に関する事項。
⑦公共医療事業の向上及び増進に関する事項。
⑧母性及び乳幼児並びに老人の保健に関する事項。
⑨歯科保健に関する事項。
⑩精神保健に関する事項。
⑪治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病により、長期に療養を必要とする者の保健に関する事項。
⑫エイズ、結核、性病、伝染病その他の疾病の予防に関する事項。
⑬衛生上の試験及び検査に関する事項。
⑭その他地域住民の健康の保持及び増進に関する事項。

(※一部引用:「地域保健法」e-GOV法令検索様HPより)

 

4 COMMENTS

匿名

急性膵炎の重症例の死亡率が50p94の設問では約9%と記載されていますが、54p93では10~30%となっています。大差は無いと思いますがどちらで覚えるべきですか。

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大川 純一

コメントありがとうございます。
私も調べなおし、文献を参考にしたより正確な数値を記載いたしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

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下る酢とマン

試験対策や国家試験用に使わせて貰ってます!
丁寧な説明で分かりやすく、いつも助かってます!ありがとうございます!!

返信する
大川 純一

こちらこそコメントありがとうございます!
コメントされると更新の励みになります。
頑張ります!!

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