第54回(H31) 理学療法士国家試験 解説【午後問題36~40】

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36. 疼痛の評価に用いられるのはどれか。2つ選べ。

1. face scale
2. MAS
3. SLTA
4. VAS
5. WCST

解答1,4

解説
1. 〇:正しい。face scaleは、疼痛の評価に用いられる。痛みの表現を言語や数値ではなく、人の顔の表情によって評価するスケールである。0~5の6段階で患者に自分の心情に近い表情を選んでもらい、痛みを評価する。
2. ×:MAS(Modified Ashworth Scale)は、痙縮を評価する。ちなみに、MASと略される評価法として、他にもMotor Assessment Scaleがある。これは、脳卒中の運動機能の評価に用いられる。
3. ×:SLTA(Standard Language Test of Aphasia)は、標準失語症検査ともいい、失語症を評価する。
4. 〇:正しい。VAS(visual analogue scale)は、疼痛の評価に用いられる。紙の上に10cmの線を引いて、左端に0(全く痛みなし)、右端に100(今までで一番強い痛み)と書く。患者さんに「あなたの痛みはどれくらいですか?」と質問して、0〜100の間のどのあたりになるのかを指し示してもらうことによって、痛みを評価する。
5. ×:WCST(Wisconsin Card Sorting Test)は、前頭葉認知度試験ともいい、前頭葉機能を評価する。

 

 

 

 

 

37. 運動療法で正しいのはどれか。

1. 自動運動とは重力に抗して行う運動のことである。
2. 自動介助運動とは最小重力肢位で行う運動のことである。
3. 等尺性運動は等張性運動よりも筋持久力増強が大きい。
4. 等速性運動では低速運動の方が高速運動より大きな筋力が発揮できる。
5. 重錘を用いた運動では全可動域にわたって筋に加わる負荷が変化しない。

解答

解説
1. ×:自動運動とは、自分の力で動かす運動のことをいう。重力に抗して行う運動のことは抵抗運動である。つまり、抵抗がある・なしに関わらす、自動運動が可能である。
2. ×:自動介助運動とは、本人が筋収縮を起こし自力により動作を行いながら、徒手的な介助などで補助を加える運動のことである。つまり、重力の大・小(重力位・抗重力位)にかかわらず、介助を用いて行う運動のことである。
3. ×:等尺性運動は等張性運動よりも、筋持久力増強が「大きい」のではなく小さい。等張性運動は、心肺機能の維持・改善に適している。なぜなら、筋の収縮・弛緩の反復によるポンプ効果で血液循環が改善したり、強度を上げて時間を延長するにしたがって酸素消費量が多くなる特徴を持つため。
4. 〇:正しい。等速性運動では低速運動の方が高速運動より大きな筋力が発揮できる。筋力増強効果は、遠心性→等尺性→求心性の順に大きい。それに伴い、筋力の発揮は低速運動の方が大きな筋力を発揮できる。
5. ×:重錘を用いた運動では全可動域にわたって筋に加わる負荷が、変化しないのは間違いで変化する。つまり、全可動域にわたって負荷は変化する。なぜなら、モーメントアーム(トルク)が大きくなると、筋に加わる負荷量が大きくなり、逆にモーメントアーム(トルク)が小さくなると、筋に加わる負荷量が小さくなるため。

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38. 虚血性心疾患に対する運動療法の効果について適切なのはどれか。

1. 再入院頻度の低下
2. 収縮期血圧の上昇
3. 血小板凝集能の増加
4. 交感神経の緊張亢進
5. HDLコレステロールの低下

解答

解説

心臓リハビリテーションの効果

①体力が回復し、スムーズに動けるようになる(運動耐容能の改善)。
②筋肉や骨が鍛えられ、疲れにくくなるとともに心臓の働きを助ける(心拍数減少)。
③動脈硬化のもととなる危険因子(高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満)が軽減する(HDLコレステロール増加、中性脂肪の減少、肥満の改善)。
④血管が柔らかくなり、循環が良くなる(虚血徴候の軽減)。
⑤呼吸がゆっくりとして、息切れ感が軽減する(運動耐容能の改善)。
⑥自律神経を安定させ、動悸や不整脈が軽減する。
⑦不安やうつ状態が改善し気持ちが晴れやかになる。
⑧心筋梗塞の再発や突然死が減り、死亡率が減少する。

(参考:「心臓リハビリテーション(運動療法について)」神戸掖済会病院様HPより)

1. 〇:正しい。虚血性心疾患に対する運動療法の効果で再入院頻度は低下する
2. ×:収縮期血圧の「上昇」ではなく、低下する
3. ×:血小板凝集能の「増加」ではなく、低下する
4. ×:交感神経の「緊張亢進」ではなく、自律神経機能の改善される。
5. ×:HDLコレステロールの「低下」ではなく、増加する

 

 

 

 

39. 開放式吸引での気管吸引で正しいのはどれか。

1. 1回の吸引時間は30秒以上行う。
2. 吸引圧は最大150mmHgである。
3. 吸引カテーテルの先端は気管分岐部の先まで挿入する。
4. 吸引操作中はSpO2 80~90%を維持する。
5. 吸引操作中は吸引カテーテルを上下前後に動かす。

解答

解説
1. ×:1回の吸引時間は、「30秒以上」ではなく10秒以上吸引をしない。挿入開始から終了までを20秒以内で行う。なぜなら、吸引中は無呼吸となるため。
2. 〇:正しい。吸引圧は最大150mmHg(20kPa)である。
3. ×:吸引カテーテルの先端は、「気管分岐部の先」ではなく気管分岐部に当たらない位置まで挿入する。
4. ×:吸引操作中はSpO2:80~90%といった厳密な数値の基準はないが、90%以上を維持すると良い。経皮酸素飽和度モニターを監視して低酸素血症や不整脈など循環不全の徴候を認める場合は、酸素を供給して、すぐに人(同僚、医師)を呼ぶ。しかし、多少の吸引中のSPO2の低下はやむ負えない。なぜなら、臨床上安定した呼吸器疾患の症例に対して鼻腔から 15 秒以内の気管吸引を行った研究では、吸引前の値と比べ全ての症例で酸素飽和度が低下していることが報告されているため。
5. ×:吸引操作中は吸引カテーテルを「上下前後」ではなく、陰圧をかけながら吸引カテーテルをゆっくり引き戻すように動かす。分泌物がある場所ではカテーテルを引き戻す操作を少しの間止める。

口腔内・鼻腔内吸引の注意事項

「気管吸引とは、人工気道を含む気道からカテーテルを用いて機械的に分泌物を除去するための準備、手技の実施、 実施後の観察、アセスメントと感染管理を含む一連の流れのこと」と定義されている。(※引用:気管吸引ガイドライン2013

【目的】口腔内・鼻腔内吸引は気道内の貯留物や異物を取り除くこと。

①人工呼吸器関連肺炎などの感染リスクを回避する。(ディスポーザブル手袋を着用、管吸引前には口腔及びカフ上部の吸引を行う)
②吸引中は無呼吸となるため必ずモニター等でSpO2の確認しながら、カフ圧は-20kPa(150mmHg)以内に保ち、に保ち1回の吸引時間は10秒以内とする。
③カテーテル挿入時は陰圧をかけず、自発呼吸がある場合は、患者さんの吸気に合わせて吸引を行う。
④終了後は気道内の分泌物がきちんと吸引できたか、呼吸音等で確認する。

(※参考:「吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コツ」ナース専科様HPより)

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40. 全身持久力トレーニング中の自覚的運動強度の指標で最も適切なのはどれか。

1. Karvonen法
2. 修正Borg指数
3. Hugh-Jones分類
4. %最大酸素摂取量
5. Modified medical research council(mMRC)息切れスケール

解答

解説
1. ×:Karvonen法(カルボーネン法)は、運動強度の目安とする表示法のひとつである。(220-年齢)-安静時心拍数)× 運動強度(%)+ 安静時心拍数にて求められる。
2. 〇:正しい。修正Borg指数は、自覚的運動強度の指標である。修正Borg指数は、運動したときのきつさを数字と簡単な言葉で表現し、標準化したものである。0~10の数字で表し、0に近づくと楽と感じ、10に近づくときついという解釈になる。4~5が運動の目安となり、7~9が運動の中止基準となる。
3. ×:Hugh-Jones分類は、呼吸器疾患患者の運動機能と呼吸困難からみた重症度(Ⅰ~Ⅴ段階)評価基準である。
4. ×:最大酸素摂取量は、1分間に体重1kgあたり取り込むことができる酸素の量(ml/kg/分)を示し、「VO2max」と略記される。したがって、%最大酸素摂取量は、求められた最大酸素摂取量に基づいて設定される運動強度のことである。
5. ×:Modified medical research council(mMRC)息切れスケールは、呼吸困難の重症度を評価するスケールである。Grade 0~5まである。

 

2 COMMENTS

髙橋愛

こんにちは。
いつもサイトを拝見し,勉強させていただいている今年理学療法士国家試験を控えた者です。
おそらくこれからも多くの受験生が利用させていただくことになるかと思いましたので文章の誤りを指摘させていただきます。

37の問題の解説です。
モーメントアーム(トルク)が大きくなると、筋に加わる負荷量が大きくなり、逆にモーメントアーム(トルク)が大きくなると、筋に加わる負荷量が小さくなるため
とあり,両文でトルクが大きい場合を書き記されておりました。

毎回とても丁寧で簡潔な解説に大変助けられています。ありがとうございます。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
更新の励みになります!!!
修正いたしましたのでご確認ください。
今後とも宜しくお願いいたします。

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