第54回(H31) 理学療法士国家試験 解説【午後問題41~45】

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41. 高次脳機能障害と検査の組み合わせで正しいのはどれか。

1. 失語:かな拾いテスト
2. 注意障害:TMT
3. 記憶障害:Kohs立方体組み合わせ検査
4. 遂行機能障害:BIT
5. 半側空間無視:BADS

解答

解説
1. ×:かな拾いテストは、注意障害の検査である。ちなみに、失語は標準失語症検査(SLTA)、WAB失語症検査を使用する。
2. 〇:正しい。注意障害は、TMT(Trail Making Test)、かな拾いテストで検査できる。
3. ×:Kohs立方体組み合わせ検査は、構成障害の検査である。各面が塗り分けられた立方体のブロックを使って、見本と同じ立体を作る検査である。ちなみに、記憶障害の検査は、WMS-R(ウエクスラー記憶検査)、RBMT(リバーミード行動記憶検査)、ベントン視覚記銘検査などである。
4. ×:BIT(行動性無視検査)は、半側空間無視のスクリーニング検査である。ちなみに、遂行機能障害は、BADS(遂行機能障害症候群の行動評価)、WCST(ウィスコンシンカード分類テスト)などで検査する。
5. ×:BADS(遂行機能障害症候群の行動評価)は、遂行機能症候群の行動評価法である。ちなみに、半側空間無視は、BIT(行動性無視検査)、線分末梢試験などで検査する。

 

 

 

 

42. Perthes病で正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 女子に多い。
2. 大腿骨頭の阻血性壊死である。
3. 発症年齢が高いほど予後が良い。
4. 免荷を目的とした装具療法が行われる。
5. 片側性に比べ両側性に発症することが多い。

解答2,4

解説

Perthes病とは?

Perthes病は、小児期における血行障害による大腿骨頭、頚部の阻血性壊死が起こる原因不明の疾患である。骨頭・頚部の変形が生じる。初期症状は、跛行と股関節周囲の疼痛や大腿部にみられる関連痛で、股関節の関節可動域制限も生じる。治療は大腿骨頭壊死の修復が主な目標であり、治療後は歩容の異常がなく、通常の日常生活を送れるようになることが多い。男女比は4:1である。好発年齢は、「6~7歳」である。発生率は1万人に1.5人と言われ、そのうち約10%が両側に発症するが、たいていは片方がなってから2年以内の違う時期に反対側が発症する。

1. ×:「女子」ではなく男子に多い。男女比は4:1で、元気のいい小柄な男児(6~7歳)に多く見られる。発生率は1万人に1.5人と言われ、そのうち約10%が両側に発症するが、たいていは片方がなってから2年以内の違う時期に反対側が発症する。
2. 〇:正しい。大腿骨頭の阻血性壊死である。
3. ×:発症年齢が、「高い」のではなく低いほど予後が良い。発症年齢は4~9歳で7歳くらいに好発する。一般的に幼稚園児などの低年齢の子は早くきれいに治り、小学校高学年になると、治るまでに時間がかかり、変形も生じやすくなる。
4. 〇:正しい。免荷を目的とした装具療法が行われる。例えば、Pogo-stick装具、トロント装具、股関節外転装具などである。股関節免荷装具として利用し、治療期間が2~3年と長期にわたる場合がある。
5. ×:片側性に比べ両側性に発症することが、「多い」のではなく少ない。つまり、片側発症が多い。たいていは片方がなってから2年以内の違う時期に反対側が発症する。片側の中殿筋萎縮を来たし、トレンデレンブルグ徴候が陽性となる。

 

 

 

 

43. 左延髄外側症候群で正しいのはどれか。

1. 右Horner徴候
2. 右角膜反射低下
3. 右上下肢の運動失調
4. 右上下肢の温痛覚障害
5. 右上下肢の深部感覚障害

解答

解説

Wallenberg症候群(延髄外側症候群)とは?

Wallenberg症候群(延髄外側症候群)は、椎骨動脈、後下小脳動脈の閉塞により延髄外側の梗塞を来す疾患である。①梗塞と同側の顔面感覚障害(温痛覚)、②梗塞と同側の運動失調(上下肢の動かしづらさ)、③梗塞と同側のホルネル(Horner)症候群(一側眼の瞼裂狭小化、縮瞳、眼球陥凹)、④梗塞と反対側の半身感覚障害(頸から下の温痛覚)、⑤嗄声、嚥下障害、⑥回転性めまい、眼振、⑦味覚障害が生じる。

(※参考:「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書」厚生労働省HPより)

1. ×:「右」ではなく障害側(病巣側)の左Horner徴候が起こる。
2. ×:「右」ではなく障害側(病巣側)の左角膜反射低下が起こる。
3. ×:「右」ではなく障害側(病巣側)に倒れることが多いため、左上下肢の運動失調が起こる。下小脳脚の障害により、病側の小脳失調がみられる。
4. 〇:正しい。右上下肢の温痛覚障害は、健側(右側に起こる。
5. ×:そもそも深部感覚障害は起こらない。なぜなら、深部感覚は、延髄の内側毛帯を通るため。

 

 

 

 

44. 多発性筋炎で正しいのはどれか。

1. 男性に多い。
2. 心筋は障害されない。
3. 高い室温では筋力が低下する。
4. 四肢の遠位筋優位に障害される。
5. 間質性肺炎を合併すると予後が悪い。

解答

解説

多発性筋炎(皮膚筋炎)とは?

多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。

(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)

1. ×:「男性」ではなく女性に多い。とくに中高年層の女性である。
2. ×:心筋の障害を伴いやすい。進行例では、心伝導障害・不整脈・心筋炎・心外膜炎・僧帽弁逸脱症・心不全など多彩な心病変の合併が報告されている。
3. ×:高い室温では筋力が低下するといったことはないが、多発性筋炎では悪性腫瘍を合併しやすい。症状に、四肢近位部・頚部筋を主体に筋力低下が認められるが、室温の影響に左右されない。また、悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。
4. ×:四肢の「遠位筋」ではなく近位筋優位に障害される。また対称性に侵される。
5. 〇:正しい。間質性肺炎を合併すると予後が悪い。特に急速進行例には、そのまま進行して呼吸不全となって死に至る病型がある。また、進行例では、不整脈、心不全などがみられることがある。

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【PT/OT/共通】多発性筋炎(皮膚筋炎)についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

45. Down症候群の子供の運動発達の特徴で適切なのはどれか。

1. 後弓反張
2. はさみ脚歩行
3. スカーフ徴候陰性
4. シャフリング移動
5. 緊張性迷路性反射亢進

解答

解説
1. ×:後弓反張とは、後頚部の筋および背筋、上下肢筋の筋緊張亢進、または痙攣により頚部を強く背屈させ、全身が後方弓形にそりかえる状態のことをいう。要因として、重度の脳障害(脳性麻痺)などでみられる。
2. ×:はさみ脚歩行とは、両足をはさみのように組み合わせて歩く痙性対麻痺歩行のことをいう。要因として、痙直型両麻痺児などでみられる。
3. ×:Down症候群の場合、スカーフ徴候「陰性」ではなく陽性になることが多い。スカーフ徴候の正常(陰性)の場合、腕を首に巻きつけるようにすると抵抗するが、陽性の場合は抵抗がみられない。Down症候群の子供の他にも、フロッピーインファクト(弛緩型脳性麻痺児)などでもみられる。
4. 〇:正しい。シャフリング移動とは、お座り姿勢のまま移動する(いざり)ことである。脚の動かし方、手の使い方のバリエーションが少なかったり、下半身の筋肉の張りが弱く、筋肉量も少ないために行うことがある。Down症候群の子供では、立位歩行の獲得が遅れるため、シャフリング移動がみられる。
5. ×:緊張性迷路性反射とは、あおむけでは伸筋の緊張が高まり、うつぶせでは屈筋の緊張が高まる反射のことをいう。5~6か月には消失するが、残存している場合、脳性麻痺を疑う。ちなみに、Down症候群の子供では筋緊張低下のため、原始反射は現れにくい。

 

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