第54回(H31) 理学療法士国家試験 解説【午前問題31~35】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

31. 尺骨骨幹部骨折と橈骨小頭の脱臼を生じるのはどれか。

1. Barton骨折
2. Colles骨折
3. Galeazzi骨折
4. Monteggia骨折
5. Smith骨折

解答

解説
1. ×:Barton骨折(バートン骨折)は、橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。
2. ×:Colles骨折(コーレス骨折)は、橈骨遠位端骨折で、Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する。橈骨遠位端骨折のうち最多である。
3. ×:Galeazzi骨折(ガレアッチ骨折)は、橈骨骨幹部に尺側頭脱臼を伴ったものである。
4. 〇:正しい。Monteggia骨折(モンテジア骨折)は、尺骨骨幹部骨折と橈骨小頭の脱臼を生じる。
5. ×:Smith骨折(スミス骨折)は、橈骨遠位端骨折で、Colles骨折とは逆に骨片が掌側に転位する。

 

 

 

32. 疲労骨折が最も多いのはどれか。

1. 脛骨
2. 骨盤
3. 中足骨
4. 腓骨
5. 腰椎

解答

解説

疲労骨折とは?

 疲労骨折とは、1回の大きな外傷でおこる通常の骨折とは異なり、骨の同じ部位に繰り返し加わる小さな力によって、骨にひびがはいったり、ひびが進んで完全な骨折に至った状態をいう。好発部位は、腰椎が半数以上を占める。次に、中足骨35%、脛骨27%、肋骨12%、腓骨9%、尺骨・大腿骨・足関節の内側がそれぞれ3%である。

 したがって、選択肢5. 腰椎が正しい。腰椎における疲労骨折は、腰椎分離症(腰椎分離すべり症)とも呼ばれる。腰部の繰り返しのスポーツ動作によるストレスで起こる関節突起間部の疲労骨折である。日本人男性の約8%にみられ、また成長期のスポーツ選手の腰痛の原因の30~40%を占める。L5に好発し、腰部から殿部の痛みと圧痛・叩打痛がみられる。

 

 

 

 

33. 上腕二頭筋腱炎で陽性所見を呈する検査はどれか。

1. Adsonテスト
2. Apleyテスト
3. Finkelsteinテスト
4. Kempテスト
5. Yergasonテスト

解答

解説
1. ×:Adsonテスト(アドソンテスト)の陽性は、胸郭出口症候群を疑う。患者の頭部を検査側に回旋させ、患側上肢を伸展・外転位に保持し、橈骨動脈の拍動を確認したのち、患者に頭部を伸展・深呼吸させる。そして、再び橈骨動脈の拍動を確認する。
2. ×:一般的にApleyテスト(アプレーテスト)といっても、アプレー・スクラッチテスト(Apley scratch test)やアプレー圧迫・牽引テストとApleyとつくテストがいくつかある。アプレー・スクラッチテスト(Apley scratch test)は、棘上筋腱の変性性筋炎を疑う。アプレー圧迫テストは半月板損傷、アプレー牽引テストは、側副靭帯損傷を疑う。
3. ×:Finkelsteinテスト(フィンケルスタインテスト)の陽性は、長母指外転筋と短母指伸筋の狭窄性腱鞘炎を疑う。患側手の母指を4指に握らせて、さらに手関節を尺屈させる。
4. ×:Kempテスト(ケンプテスト)の陽性は、脊椎管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアを疑う。検者は患者の両肩に手を置き、患者の体幹を回旋しながら左右の斜め後方に伸展させる。
5. 〇:正しい。Yergasonテスト(ヤーガソンテスト)の陽性は、上腕二頭筋腱炎を疑う。患者の肘90°屈曲させ、検者は一側の手で肘を固定して、他方の手で患側手首を持つ。次に患者にその前腕を外旋・回外するように指示し、検者はそれに抵抗を加える。

上腕二頭筋腱炎(上腕二頭筋長頭炎)とは?

 上腕二頭筋腱炎(上腕二頭筋長頭炎)は、上腕二頭筋長頭腱が、上腕骨の大結節と小結節の間の結節間溝を通過するところで炎症が起こっている状態のことである。腱炎・腱鞘炎・不全損傷などの状態で肩の運動時に痛みが生じる。Speedテスト(スピードテスト)・Yergasonテスト(ヤーガソンテスト)で、上腕骨結節間溝部に疼痛が誘発される。治療は保存的治療やステロイド局所注射となる。

 

 

 

 

34. 脳卒中片麻痺患者に用いられる検査法で正しいのはどれか。2つ選べ。

1. FMA<Fugl-Meyer assessment>はADLの評価を含む。
2. JSS<Japan Stroke Scale>は関節可動域の評価を含む。
3. mRSは歩行速度の評価を含む。
4. NIHSSは意識状態の評価を含む。
5. SIASは非麻痺側機能の評価を含む。

解答4,5

解説
1. ×:FMA<Fugl-Meyer assessment>は、ADLの評価を含まない。FMA<Fugl-Meyer assessment>は、脳血管障害患者の総合的機能障害の評価である。上肢運動機能66点、下肢運動機能34点、バランス14点、感覚24点、可動域・疼痛88点からなる。
2. ×:JSS<Japan Stroke Scale>は、関節可動域の評価を含まない。JSS<Japan Stroke Scale>は、脳卒中重症度スケールであり、意識・言語・無視・視野・眼球運動・瞳孔・顔面麻痺・足底反射・感覚・運動の得点を統計的に算出された重み付けにより合計する評価法である。
3. ×:mRS(modified Rankin Scale)は、歩行速度の評価を含まない。mRS(modified Rankin Scale)は、脳卒中の病態を評価する。脳卒中の病態を「まったく症状なし(grade 0)」から「死亡(grade 6)」までの7段階で評価したものである。
4. 〇:正しい。NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)は、意識状態の評価を含む。NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)とは、脳卒中神経学的重症度の評価スケールとして世界的に利用されている。ベッドサイドでできる簡便な評価法の1つである。検査項目は、意識水準、意識障害(質問・従命)、最良の注視、視野、顔面麻痺、上肢の運動左右、下肢の運動左右、運動失調、感覚、最良の言語、構音障害、消去現象と注意障害を0点から2~4で評価する。0点が正常で、点数が高いほど重症である。
5. 〇:正しい。SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)は、脳卒中の機能障害を定量化するための評価である。運動機能だけでなく感覚障害、高次脳機能障害まで幅広く評価する事ができる。項目は、9種の機能障害に分類される22項目からなる。各項目とも3あるいは5点満点で評価される。

 

詳しくまとめたものはこちら↓↓

SIASとは?評価方法や評価項目は?【分かりやすく解説します】

 

 

 

 

35. Parkinson病に対する包括的な評価指標であるUPDRSの評価項目でないのはどれか。

1. 感覚
2. 姿勢
3. 歩行
4. 知的機能
5. ジスキネジア

解答

解説
 パーキンソン病統一スケール(Unified Parkin-son’s Disease Rating Scale:UPDRS)は、1987年にパーキンソン病の方の病態把握のための評価尺度としてFahnらにより開発された。評価項目はⅣ部に分けられ、Ⅰ部:認知・情動状態(知的機能)、Ⅱ部:ADL(歩行)、Ⅲ部:運動機能(姿勢)、Ⅳ部:薬剤の副作用の項目(ジスキネジア)を評価する。全42項目を0~4の5段階で行い、評価尺度は順序尺度である。よって、解答は、選択肢1. 感覚である。

1. △ 感覚は、Ⅱ部に「パーキンソン症候群に関連した感覚障害」という項目がある。しかし、単に「感覚」という項目は設けられていないため、これを選択する。
2. 〇 姿勢は、Ⅲ部にある。
3. 〇 歩行は、Ⅱ・Ⅲ部にある。
4. 〇 知的機能は、Ⅰ部にある。
5. 〇 ジスキネジアは、Ⅳ部にある。

 

2 COMMENTS

匿名

33番の解説ですがケンプテストは体幹後屈させると書いてありますが屈曲も行いますでしょうか。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
もしよろしければ、そのように記載されている資料もしくは教科書を教えてくだされば幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)