第53回(H30)理学療法士 国家試験解説【午前問題16~20】

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16.脳卒中後の左片麻痺患者の生活環境を整えることとした。
 ベッドとポータブルトイレの位置で適切なのはどれか。

1.①
2.②
3.③
4.④
5.⑤

解答:1

解説

起き上がりから考えると、麻痺側に起き上がることパターンは考えにくい(③④⑤除外できる)。
移乗を考えると、90°移乗の方が安定して行えるだろう(②除外できる)。
よって、適切なのはとなる。

 

 

 

 

 

17. 45歳の女性。右変形性股関節症。先天性股関節脱臼の既往がある。1年前から荷重時の右股関節痛があり、2か月前から安静時痛も出現した。起居動作時や歩行時の疼痛が強くなってきたため受診した。
 ADLの指導として適切なのはどれか。

1.階段は右足から昇段する。
2.階段は左足から降段する。
3.できるだけ低い椅子に座る。
4.T字杖を使用する場合は左手に持つ。
5.左足よりも右足を手前に引いて椅子から立ち上がる。

解答:4

解説

本症例のポイント

・45歳の女性(右変形性股関節症
・既往:先天性股関節脱臼。
・1年前:荷重時の右股関節痛あり。
・2か月前:安静時痛出現。
・起居動作時や歩行時の疼痛が強くなってきた。
→本症例は、右変形性股関節症で右足(患側)として、負担がかからない日常生活動作を指導する必要がある。

1.× 階段は右足(患側)からではなく、左足(健側)から昇段する。
2.× 階段は左足(健側)からではなく、右足(患側)降段する。
3.× できるだけ低いのではなく、高い椅子に座る。なぜなら、座面の高い椅子の方が、股関節の屈曲が少なく、立ち座りの時の重心移動が少なくて済むため(負担が少ない)。
4.〇 正しい。T字杖を使用する場合は左手(健側)に持つ。なぜなら、左手(健側)に持つことで、右足と同時に荷重をかけられ荷重を軽減できるため。
5.× 左足(健側)よりも右足(患側)手前に引くのではなく、左足(健側)を引いて椅子から立ち上がる。

先天性股関節脱臼

先天性股関節脱臼は、女児(男児の約 5~7 倍)、骨盤位出生に多く、また冬季の出生に多い。また右より左に多く、最近の傾向として家族歴(血のつながった家族に先天性股関節脱臼や変形性股関節症など股関節の悪い人が存在する)のある赤ちゃんが多くなってきている。完全脱臼の発生率としては 0.1~0.3%(1000の出生に1~3 人)である。

 

 

 

 

 

18.55歳の男性。トラックの荷台(2m)から転落して受傷した。来院時の足関節エックス線単純写真及び冠状断CTとCTの模式図別に示す。
 保存的に加療したとき、今後最も起こりやすい合併症はどれか。

1.凹足
2.踵足
3.内反尖足
4.変形性関節症
5.無腐性骨壊死

解答:4

解説

MEMO

・55歳の男性。
・トラックの荷台(2m)から転落して受傷。
・CT画像:踵骨に骨折線あり。
→本症例は踵骨骨折が疑われる。

1.× 凹足の原因の多くは、遺伝やシャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth病)である。凹足とは、土踏まずであるアーチが高まった状態である。腓骨筋の筋力低下や後脛骨筋の緊張により起こる。
2.× 踵足は、小児脳性不全麻痺、脛骨神経の損傷などの麻痺、アキレス腱などの治療(今回のケースでは保存的治療)の結果としてなりやすい。踵足とは、足関節が背屈位に変形した状態である。
3.× 内反尖足は、脳血管障害などで、強い痙性があるとなりやすい。内反尖足とは、足関節が内反・底屈位に変形した状態である。
4.〇 正しい。変形性関節症の他にも、踵骨骨折は外傷性の扁平足になりやすい。
5.× 無腐性骨壊死は、距骨骨折舟状骨骨折に起こりやすい。なぜなら、それらの骨は血流が阻害されやすいため。無腐性骨壊死とは、特定の部位の骨組織が、感染症以外の何らかの理由により壊死に陥り、そのため力学的に脆弱となり、圧潰陥没変形を生じ、更に二次的に軟骨病変が引き起こされ、関節症に至る疾患群をさす。起きやすい部位は股関節で「特発性大腿骨頭無腐性壊死症」と呼ばれる。

踵骨骨折について

・機序:ほとんどは下肢からの墜落で起こる。
・骨折の種類:圧迫骨折
・重症化:距踵関節面が保たれない。
・治療:ほとんどは徒手整復と保存。アキレス腱付着部の裂離骨折であれば手術。
・リハビリ:踵免荷のための免荷装具を作成・利用して徐々に荷重を開始する。
・予後:骨折は治癒しても、内・外反に加え扁平足になり、関節面にも変形を来たす。

 

 

 

 

 

次の文により19、20の問いに答えよ。
 生後4か月の乳児。健診で股関節の異常を指摘された。来院時に右股関節の開排制限を認めたため、股関節のエックス線単純検査を行った。

19.股関節の図を示す。臼蓋角はどれか。

1.a
2.b
3.c
4.d
5.e

解答:5

解説

1.× aは、頚体角である。①大腿骨頭中心と頚部の中心を通る頚部軸と、②大腿骨幹部の長軸がなす角度である。
2.× bは、CE角(center edge angle)である。①大腿骨頭中心を通る垂線と、②骨頭中心と臼蓋外側縁を結んだ線とのなす角度である。
3.4.× c.dは、特に基準となる角度の名称はない。
5.〇 正しい。eは、臼蓋角である。臼蓋角とは、①ウォレンベルグ線(両側のY軟骨を結ぶ線)と、②寛骨臼蓋接線を結んだ直線の角である。

 

股関節について苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

【PT/共通】股関節についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

次の文により19、20の問いに答えよ。
 生後4か月の乳児。健診で股関節の異常を指摘された。来院時に右股関節の開排制限を認めたため、股関節のエックス線単純検査を行った。

20.この患児の股関節のエックス線単純写真を別に示す。行うべき対応として適切なのはどれか。

 

1.経過観察
2.ギプス固定
3.観血的整復術
4.オーバーヘッド牽引
5.リーメンビューゲル装具

解答:5

解説

 本症例は、生後4か月で股関節に開排制限を認めることから、発育性股関節形成不全と考えられる。無治療で放置すると、将来的に変形性股関節症を来たすことがあるため、適切な治療が必要である。発育性股関節形成不全の治療は、乳児期はリーメンビューゲル装具による装具療法を第一に行う。リーメンビューゲル装具とは、バンドを利用して股関節を開排位(屈曲・外転位)にしやすくし、股関節伸展位にならないようにする。ストレスのかかりにくい装具であることが特徴である。リーメンビューゲル装具で改善しない場合、牽引療法を、さらに治療が困難な場合は、観血的整復術補正手術を検討する。

本症例の股関節X線の解説

右側で臼蓋角が大きい。右股関節の外後方への脱臼がみられる。臼蓋角が左約25°に対して、右では約45°と大きくなっている。また、Shenton線、Calvé線が不連続であることも、右股関節が脱臼していることを示している。

・Shenton線(シェントン線):正常股関節において閉鎖孔の上縁(恥骨の中下縁)をなす曲線を上外側に延長すると大腿骨頸部の内縁に一致する線。脱臼股関節ではこの2つの線の連続性がなく乱れる。

・Calvé線(カルベ線):正常股関節においては、腸骨外縁のなす曲線と大腿骨頸部外縁をなす曲線はほぼ一致する。この線をCalvé線と呼び、脱臼股関節ではこの線は乱れる。

1.× 経過観察は不適切である。なぜなら、無治療で放置しても、脱臼は修復されず変形性股関節症をきたすため。早期に治療が必要である。
2.× ギプス固定は不適切である。なぜなら、ギプス固定は骨折後の固定に使用されるものであるため。また、股関節は皮下脂肪も多く、固定困難であるためギプス固定の部位として不適切である。
3.× 観血的整復術は、保存的治療(リーメンビューゲル装具)が困難な際に行う。第一は装具療法である。
4.× オーバーヘッド牽引は、発育性股関節形成不全に対する治療法であるが、リーメンビューゲル装具で改善しない場合に適応となる。牽引期間は約6週間である。
5.〇 正しい。リーメンビューゲル装具は、発育性股関節形成不全の患児の足を固定し、脱臼状態を治療する装具のことであり、生後4か月の乳児にまず行うべきである。

 

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