第53回(H30)理学療法士 国家試験解説【午前問題21~25】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

21.研究に関する用語と説明の組合せで正しいのはどれか。

1.母集団:実際の研究の対象となるもの。
2.順序尺度:重さ、長さ、時間などの物理量を表す尺度。
3.名義尺度:大小関係や程度のような順位を有する尺度。
4.交絡因子:2つの要因の関連をかく乱するほかの因子。
5.Likert尺度:階層性を持った質問などに対する回答についての比率尺度。

解答:4

解説

1.× 母集団とは、「実際の研究の対象」となるものではなく、調査対象となる集合全体のことである。ちなみに、実際の研究の対象となるもの(母集団から選び出された一部の集合)は、「標本」という。
2.× 順序尺度とは、「重さ、長さ、時間などの物理量を表す尺度」ではなく、順位に従い数値化したもの(MMTなど)である。他にも、Ⅰ~Ⅳ期示される病気分類などのことをいい、名義尺度の性質に加えて、順序を持つ変数に用いられる。ちなみに、重さ、長さ、時間などの物理量を表す尺度のことは、「間隔尺度」という。
3.× 名義尺度とは、「大小関係や程度のような順位を有する尺度」ではなく、質的な違いに対して数値や名前を割り振ったもの(学籍番号など)である。他にも人種や血液型など、種類はあるが順序はない変数に用いられる。ちなみに、大小関係や程度のような順位を有する尺度のことは、「順序尺度」という。
4.〇 正しい。交絡因子とは、2つの要因の関連をかく乱するほかの因子である。要因と結果(疾病など)の両方に関連する別の要因を交絡因子という。
5.× Likert尺度(リッカート尺度)とは、「階層性を持った質問などに対する回答についての比率尺度」ではなく、順序尺度(間隔尺度)である。Likert尺度(リッカート尺度)とは、ある質問項目について、二極の範囲(当てはまらない~当てはまるなど)によって評定を求める方法である。順序尺度や間隔尺度として解釈される。ちなみに、比率尺度とは、量的データのうち、ゼロ(原点)が決まっているものに用いる。

データの区分(尺度の種類)

① 量的データ(量的変数):枚数、身長、金額など、数値で推し測ることができ、数字の大小に意味をもつデータのこと。比例尺度と間隔尺度に分けられる。

比例尺度(比尺度):原点があり、間隔や比に意味がある。つまり、原点(0)からの等間隔盛付けができるものをいう。間隔尺度と違い、数値間の比にも意味がある。(例:年齢、身長、血圧)
間隔尺度(距離尺度):目盛が等間隔であるが、数値間の比に意味がない。つまり、数値の差のみに意味がある。等間隔の目盛り付けができるが、原点を持たず、0が絶対的な無を示さないものをいう。(例:気温、年号、知能指数)

② 質的データ(質的変数):好きなスポーツ、血液型、自動車のナンバーなど、単に分類や種類を区別するためだけのデータや、順位、学年など順序に意味があるデータのこと。順序尺度と名義尺度に分けられる。

順序尺度:順序付けができるもの。大小関係はあるものの、間隔には意味はない尺度である。(例:成績、順位、MMT)
名義尺度:数値や名前を割り振ったものである。数値の順序、大きさに意味はない、(例:性別、血液型、学籍番号)

 

 

 

 

 

22.理学療法診療ガイドライン第1版(日本理学療法士協会)における理学療法介入の推奨グレード分類で、「行わないように勧められる科学的根拠がない」に該当する推奨グレードはどれか。

1.A
2.B
3.C1
4.C2
5.D

解答:4

解説

1.× Aは、行うように勧められる強い科学的根拠がある
2.× Bは、行うように勧められる科学的根拠がある
3.× C1は、行うように勧められる科学的根拠がない
4.〇 正しい。C2は、「行わないように勧められる科学的根拠がない」に該当する推奨グレードである。
5.× Dは、無効性や害を示す科学的根拠がある

 

 

 

 

 

 

23.歩行について正しいのはどれか。

1.身長が高いほど重複歩距離は短くなる。
2.進行方向と足の長軸がなす角度を足角という。
3.両脚支持期は歩行速度が速くなると長くなる。
4.水平面上の進行方向に対して垂直方向の両足の開きを歩幅という。
5.一側の踵が接地してから再び接地するまでの時間をステップ時間という。

解答:2

解説

1.× 身長が高いほど重複歩距離は、「短く」ではなく長くなる。重複歩距離とは、片側の踵が接地してから再び同側の踵が接地するまでの距離を示す。身長の80~90%の長さとされ、速い歩行では100~110%ほどになるが、小児や高齢者では短くなる。
2.〇 正しい。進行方向と足の長軸がなす角度を足角という。ちなみに、7~13°外旋が正常といわれている。
3.× 両脚支持期は歩行速度が速くなると、「長く」ではなく短くなる。両脚支持期とは、両脚での支持期間で、1歩行周期に2回あり、20~25%(70歩/分)を占めている。両脚支持期が消失すると走行となる。
4.× 水平面上の進行方向に対して垂直方向の両足の開きを、「歩幅」ではなく歩隔という。ちなみに、歩幅とは、一側の踵が接地してから他側の踵が接地するまでの距離を示す。
5.× 一側の踵が接地してから再び接地するまでの時間を、「ステップ時間」ではなく重複歩という。ちなみに、ステップとは、一側の踵が接地してから他側の踵が接地するまでの動作である。

類似問題です↓
【PT専門】歩行周期についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

24.腹臥位と比較した場合の背臥位の特徴について正しいのはどれか。

1.誤嚥が生じやすい。
2.上気道が狭窄しにくい。
3.機能的残気量が減少しやすい。
4.動脈血酸素分圧が低下しにくい。
5.後肺底区の換気が改善しやすい。

解答:1

解説

(※図引用:「illustAC様」)

1.〇 正しい。誤嚥が生じやすい。なぜなら、背臥位の場合、重力により口腔内容物が咽喉頭に落ちやすいため。
2.× 上気道が、「狭窄しにくい」のではなく狭窄しやすい。なぜなら、背臥位の場合、舌根沈下が起きやすいため。
3.× 機能的残気量が「減少」ではなく増加しやすい。なぜなら、背臥位は腹臥位より、腹部臓器が横隔膜を押し上げられる(横隔膜が挙上する)ため。したがって、横隔膜の動きが制限され、機能的残気量が増加する。一方、腹臥位だと脊柱と肋骨によって胸腔は守られ、機能的残気量は減少しにくい。ちなみに、機能的残気量とは、安静時呼気位の後に残っている空気量のことである。
4.× 動脈血酸素分圧が、「低下しにくい」のではなく低下しやすい。なぜなら、背臥位の場合、上気道狭窄・横隔膜挙上・心臓による肺への圧迫などの影響がみられるため。
5.× 背臥位より腹臥位の方が後肺底区の換気が改善しやすい。なぜなら、腹臥位にして下肢が上方になるようにベッドを傾斜させると後肺底区の換気が改善しやすいため。後肺底区は肺の後側(背側)に位置するため、背臥位では気道内分泌物が沈下しやすく換気が悪くなる。

 

 

 

 

 

 

25.主観的幸福感を評価できるのはどれか。

1.FIM
2.Katz Index
3.PGCモラールスケール改訂版
4.老研式活動能力指標
5.SF-36

解答:3

解説

1.× FIM(Functional Independence Measure:機能的自立度評価法)は、日常生活動作の指標である。介護負担度の評価を目的として、実際に「しているADL」を評価する。
2.× Katz Index(カッツインデックス)は、日常生活動作の指標である。①入浴、②更衣、③トイレへの移動、④移乗、⑤排尿・排便コントロール、⑥食事の6項目について自立・依存の2段階で評価する。
3.〇 正しい。PGCモラールスケール改訂版は、主観的幸福感を評価できる。高齢者のQOL評価尺度である。高齢者が自分の人生に対してどの程度幸福に感じているかを測定するものとなっている。
4.× 老研式活動能力指標は、手段的ADLの指標である。13項目を「はい」・「いいえ」で答えてもらう。
5.× SF-36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey)は、健康関連QOLの指標である。質問紙法により評価する。以下の8つの健康概念を測定する。①身体機能、②日常役割機能(身体)、③体の痛み、④全体的健康感、⑤活力、⑥社会生活機能、⑦日常役割機能(精神)、⑧心の健康。

 

6 COMMENTS

まる

24番の3なのですが、
背臥位だと重力とか胸骨に肺が押されて膨らみにくくなるから機能的残気量が増加する。腹臥位だと脊柱と肋骨によって胸腔は守られて、機能的残気量は減少しないって事だと考えていました。
これは私の考えなので適切なのか分からないのですが、発言させて頂きました。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する

24番の問題についてです。
背臥位になることで腹部臓器が横隔膜を押し上げ、それによって機能的残気量が減少するのだと思います。
また押し上げられることで横隔膜の動きが制限されるため、ギャッチアップすることで横隔膜が押し上げなくなり呼吸が改善するらしいです。
検索して調べてみたものなので絶対的な信頼はできませんが解剖学的に考えて原因の一つとして考えられると思います。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
私ももう一度調べまして、コメント様の知識とともに解説を付け加えさせていただきました。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する
大川 純一

分かりにくくなっておりましてご迷惑をお掛けしました。
解説を一部修正しました。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)