第53回(H30)理学療法士 国家試験解説【午後問題6~10】

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6.脳出血後の頭部CTを示す。最も生じやすい症状はどれか。

1.系列的な動作が順番通りにできない。
2.脳出血発症前のことが思い出せない。
3.左からの刺激に反応しない。
4.左手の感覚が脱失する。
5.人の顏が区別できない。

解答:4

解説

本症例のポイント

画像は、視床レベルのスライスである。受傷部位は「視床」である。視床出血では、①視床痛、②運動失調、③視床手、④失語などが特徴である。

1.× 系列的な動作が順番通りにできない(遂行機能障害)は、前頭葉障害である。
2.× 脳出血発症前のことが思い出せない(逆行性健忘)は、海馬が司る。視床出血では「前向性健忘」がみられる。
3.× 左からの刺激に反応しない(半側空間無視)は、右頭頂葉障害である。
4.〇 正しい。左手の感覚が脱失する(感覚障害)は、視床の症状である。本症例は、右視床出血であり、左側に視床症候群として全感覚障害が生じる。設問と一致する。
5.× 人の顏が区別できない(相貌失認)は、後頭葉~側頭葉の障害である。

 

 

 

 

 

7. 45歳の男性。左大腿切断後。大腿義足を用いた歩行練習中、左立脚中期に過度の腰椎前弯が観察された。
 原因として正しいのはどれか。

1.義足長が長過ぎる。
2.足継手の後方バンパーが弱過ぎる。
3.ソケットが前方に位置し過ぎている。
4.ソケットの初期屈曲角が不足している。
5.膝継手の摩擦が弱過ぎる。

解答:4

解説

立脚相の腰椎前弯の増強の原因

①ソケットの初期屈曲角不足。
②股関節伸展筋力が不足し、代償動作として出現している。
③ソケットの前壁の支持力不足である。

1.× 義足長が長過ぎると、義足側の分回し歩行、健側の伸び上り歩行になる。
2.× 足継手の後方バンパーが弱過ぎると、足底が床にたたきつけられる歩行(フットスラップ)が起こる。
3.× ソケットが前方に位置し過ぎていると、義足が前に出にくくなり、歩幅の不同が起こる。ちなみに、歩幅とは、一側の踵が接地してから他側の踵が接地するまでの距離を示す。
4.〇 正しい。ソケットの初期屈曲角が不足していると、左立脚中期に過度の腰椎前弯になる。なぜなら、立脚中期以降に股関節伸展が限界に達した時に、骨盤を前傾させることで股関節伸展を補うため。
5.× 膝継手の摩擦が弱過ぎると、義足遊脚終期に下腿部が勢いよく完全伸展し衝撃が出現する(ターミナルインパクト)。また、蹴り上げの不同が起こる。

 

 

 

 

 

 

8. 70歳の男性。脳横塞による左片麻痺。Brunnstrom法ステージは下肢Ⅲ。関節可動域制限はない。ダブルクレンザック足継手付き両側金属支柱型短下肢装具を用いて歩行練習を実施している。足継手を背屈0〜20度で可動するように設定すると左立脚中期に膝折れが出現した。
 装具の調整で正しいのはどれか。

1.足継手の可動範囲を背屈0〜5度に設定する。
2.スウェーデン式膝装具を併用する。
3.Tストラップを追加する。
4.外側ウェッジを入れる。
5.装具の腫を高くする。

解答:1

解説

本症例のポイント

・70歳の男性(脳横塞による左片麻痺)
・Brs下肢Ⅲ(座位、立位での股・膝・足の同時屈曲
・関節可動域制限はない。
・歩行練習:ダブルクレンザック足継手付き両側金属支柱型短下肢装具を用いる。
・足継手:左立脚中期に膝折れが出現(背屈0〜20度)。
→本症例の歩行は「膝折れ」がみられている。膝折れは転倒の原因になりかねず、歩容にも影響するため改善要因である。【膝関節の膝折れの原因】①断端後面末梢部の痛み、②ソケットが踵に対し前方、②足部が背屈位、③膝関節伸展筋の機能不全、④ソケットの初期屈曲角が過大があげられる。

1.〇 正しい。足継手の可動範囲を背屈0〜5度に設定する(背屈角度を制限することで)、膝折れを防止できる。
2.× スウェーデン式膝装具は、反張膝を防止する。他にも、TKS・SK式膝装具・HRC式膝装具がある。
3.× Tストラップを追加するは、内反矯正に対して用いられる。
4.× 外側ウェッジを入れるのは、内反矯正に対して用いられる。
5.× 装具の腫を高くすると、膝折れがさらに誘発される。正しくは、踵を低くする。装具の腫を高くするのは、脚長差・尖足拘縮に適応となる。

 

 

 

 

 

 

9.脳卒中機能評価法<SIAS>の麻痺側運動機能の評定で2点となるのはどれか。

解答:1

解説

SIASとは?

SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)は、麻痺側運動機能を評価するためのテストであるが、非麻痺側機能の評価を含む。項目は、9種の機能障害に分類される22項目からなる。各項目とも3あるいは5点満点で評価される。

〈運動機能〉
1)上肢近位(knee-mouth test)
座位において患肢の手部を対側膝(大腿)上より挙上し、手部を口まで運ぶ。この際、肩は90°まで外転させる。そして膝上まで戻す。これを3回繰り返す。肩、肘関節に拘縮が存在する場合は可動域内での運動をもって課題可能と判断する。
0:全く動かない。
1: 肩のわずかな動きがあるが手部が乳頭に届かない。
2:肩肘の共同運動があるが手部が口に届かない。
3: 課題可能。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり。
4:課題可能。軽度のぎこちなさあり。
5:健側と変わらず、正常。

2)上肢遠位(finger-function test)
手指の分離運動を、母指~小指の順に屈曲、小指~母指の順に伸展することにより行う。
0:全く動かない。
1:
1A:わずかな動きがある。または集団屈曲可能。
1B:集団伸展が可能。
1C:分離運動が一部可能。
2: 全指の分離運動可能なるも屈曲伸展が不十分である。
3: 課題可能(全指の分離運動が十分な屈曲伸展を伴って可能)。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり。
4:課題可能。軽度のぎこちなさあり。
5:健側と変わらず、正常。

3)下肢近位(股)(hip-flexion test)
座位にて股関節を90°より最大屈曲させる。3回行う。必要ならば座位保持のための介助をして構わない。
0:全く動かない。
1: 大腿にわずかな動きがあるが足部は床から離れない。
2: 股関節の屈曲運動あり、足部は床より離れるが十分ではない。
3 ~ 5:knee-mouth testの定義と同一。

4)下肢近位(膝)(knee-extension test)
座位にて膝関節を90°屈曲位から十分伸展(-10°程度まで)させる。3回行う。必要ならば座位保持のための介助をして構わない。
0:全く動かない。
1: 下腿にわずかな動きがあるが足部は床から離れない。
2: 膝関節の伸展運動あり、足部は床より離れるが、十分ではない。
3 ~ 5:knee-mouth testの定義と同一。

5)下肢遠位(foot-pat test)
座位または臥位、座位は介助しても可。踵部を床につけたまま、足部の背屈運動を協調しながら背屈・底屈を3回繰り返し、その後なるべく早く背屈を繰り返す。
0:全く動かない。
1:わずかな背屈運動があるが前足部は床から離れない。
2:背屈運動あり、足部は床より離れるが十分ではない。
3 ~ 5:knee-mouth testの定義と同一。

1.〇 正しい。肩肘の共同運動があるが手部が口に届かないのは、2点である。
2.× わずかな動きがある。または集団屈曲可能であれば、1点である。
3.× 2点は、股関節の屈曲運動あり、足部は床より離れるが十分ではない。絵を見ると十分に床から離れてるため、3点以上はあると推測できる。
4.× 3と同様である。2点は、膝関節の伸展運動あり、足部は床より離れるが、十分ではない。絵を見ると十分に床から離れてるため、3点以上はあると推測できる。
5.× 3,4と同様である。2点は、背屈運動あり、足部は床より離れるが十分ではない。絵を見ると十分に床から離れてるため、3点以上はあると推測できる。

 

補足記事です。参考にどうぞ。

SIASとは?評価方法や評価項目は?【分かりやすく解説します】

類似問題です↓
【PT/OT/共通】SIASについての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

10. 45歳の男性。半年前から左上肢遠位部の脱力、3か月前から左上肢の筋萎縮と右上肢の脱力、さらに最近歩行障害と構音障害を認めるようになり、神経内科で筋萎縮性側索硬化症と診断された。
 現時点で認められる可能性が高いのはどれか。

1.褥瘡
2.振動覚低下
3.眼球運動障害
4.膀胱直腸障害
5.Hoffmann反射陽性

解答:5

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1~4.× 褥瘡/振動覚低下/眼球運動障害/膀胱直腸障害は、陰性徴候である。
5.〇 正しい。Hoffmann反射陽性(ホフマン反射)である。Hoffmann反射陽性(ホフマン反射)とは、最も弱い刺激によって惹起される指の屈曲反射のことであり、これによって指の屈曲が出現する場合は、反射は非常に増強しており、病的であると判断される。筋萎縮性側索硬化症は、上位運動ニューロンおよび下位運動ニューロンが系統的に障害される進行性疾患である。そのため、病的反射であるHoffmann反射が陽性となる。

類似問題です↓
【PT共通】筋萎縮性側索硬化症についての問題「まとめ・解説」

 

3 COMMENTS

匿名

PT選考の大学3年生です。腰椎前弯の漢字が前腕になってます。
国試の対策って国試の過去問を解きまくることが大事ですか?

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大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。

国試の対策についてですが、これは参考程度でとどめておいてください。
私は、選択肢の根拠とその周辺知識を「しっかり覚えること」が大事だと思っています。ただやみくもに「過去10年分解くぞ~」という目標を立ててしまうと、選択肢の答えだけ覚えて、本来大切なところを覚えてないなんてことになりかねません。大事なのは、「①問題を解く<②選択肢の中で悩んだ点や曖昧な点をメモってひたすら覚える」だと思っています。まあ、コメント主様の言う通り結果的に「過去問を解きまくる」ことにつながるのですが、、、。 今後ともよろしくお願いいたします。

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