第52回(H29) 作業療法士国家試験 解説【午後問題46~50】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

46 境界性パーソナリティ障害の患者に対する作業療法で正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 退行を許容する。
2. 集団作業への参加を促す。
3. 柔軟な枠組みを提供する。
4. 攻撃衝動の適応的発散を促す。
5. 主観的な苦悩を共感的に理解する。

解答4/5

解説

 境界性パーソナリティ障害の患者は、対人関係が不安定で、集団作業では問題を起こすことが多い。特定の人物に対して強い依存心を抱く傾向があり、またそれが裏切られたと感じたときには強い怒りをきたす。このため、患者とは一定の距離を保ち、過度の依存を形成しないよう注意が必要である。

1.× 退行を許容するとさらに歯止めが利かなくなり症状が悪化する。多少退行していることが多く、そのため依存や欲求不満、衝動行動がみられる。治療の枠組みをしっかり作って、過度に依存的な関係を作らないことが重要である。
2.× 集団作業への参加を促すのは不適切である。なぜなら、集団内で不適切な行動が露呈する可能性が高いためである。初期段階では個人作業療法が基本となる。
3.× 柔軟な枠組みを提供するのは不適切である。治療の枠組みをしっかり作って、過度に依存的な関係を作らないことが重要である。それを超える欲求に対しては応じないことが必要である。
4.〇 正しい。攻撃衝動の適応的発散を促す。衝動性は適応的に発散させ、衝動の統制を行うことができるようにする必要がある。
5.〇 正しい。主観的な苦悩を共感的に理解する。患者の言葉を傾聴するのは重要であるが、本人の言い分に過剰に肩入れしすぎないように注意が必要である。

類似問題です↓
【OT専門のみ】パーソナリティ障害についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

47 選択性緘黙児に対する作業療法導入時のコミュニケーションの方法として適切でないのはどれか。

1. 表情
2. 筆談
3. 会話
4. ジェスチャー
5. アイコンタクト

解答3

解説

 繊黙(かんもく)とは、言語発達に問題はないにもかかわらず全く会話を行わなくなること。しかし、特定の場面に限られると選択性緘黙となる。この状態である児へのコミュニケーションの方法は非言語的なものが大切となる。

1~2.4~5.〇 表情・筆談・ジェスチャー・アイコンタクトは、非言語的なコミュニケーションである。導入期には非言語的なコミュニケーションにより治療関係を確立する必要がある。
3.× 会話は、作業療法導入時には適切ではない。なぜなら、会話は言語的なコミュニケーションであるため。

 

 

 

 

 

 

48 てんかん患者が作業療法中に強直間代発作の重積状態を呈したときの対応として最も優先すべきなのはどれか。

1. 家族に連絡する。
2. 呼吸を確認する。
3. 服薬状況を確認する。
4. 四肢を押さえて固定する。
5. 心電図モニターを装着する。

解答2

解説

 強直間代けいれん発作は、十数秒間の全身性の強直期(体幹・四肢を伸展する強直発作)に続いて、数十秒持続する間代期(四肢を激しく動かす間代発作)が出現し、この間は意識が消失する。発作後は、数分間のもうろう状態を示し、その後睡眠に移行することもある。対応として、無理に発作を抑えつけないようにすることが重要である。また、重積状態では意識は消失し、呼吸機能が低下するおそれがあるので、まずはバイタルサインを確認するべきである。

 

1.3.× 家族に連絡する・服薬状況を確認するのは、選択肢の中での最優先事項ではない。それら選択肢も必要だが、まずはバイタルサインを確認するべきである。
2.〇 正しい。呼吸を確認する。まずは生命の危機を回避するため、呼吸などバイタルサインの確認をするべきである。
4.× 四肢を押さえて固定することは、骨折のおそれがあるため行わない。
5.× 心電図モニターを装着するより、呼吸などバイタルサインの確認が優先される。

類似問題です↓
【OT専門のみ】てんかんについての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

 

49 急性の幻覚妄想状態が軽減してから1週間が経過した統合失調症患者に対して行う高校復学を目標とした外来作業療法導入時の目的として適切なのはどれか。

1. 余暇活動の促進
2. 社会参加の促進
3. 生活リズムの獲得
4. 対人スキルの向上
5. デイケアへの移行練習

解答3

解説

 本症例は、「急性の幻覚妄想状態が軽減してから1週間が経過した統合失調症患者」で、病期は急性期を過ぎ亜急性期にあたる頃と考えられる。この時期の特徴として、疲れやすさが目立つため、まずは本人の休養を妨げないような作業項目を考える必要がある。

 

1.× 余暇活動の促進は時期尚早である。本症例は高校復学を目標とした作業療法である。余暇活動の促進はあまり関連がなく時期尚早である。
2.× 社会参加の促進は時期尚早である。高校復学自体が社会参加という意味でとらえられるが時期尚早である。
3.〇 正しい。生活リズムの獲得である。急性期を過ぎたばかり場合、生活リズムの回復を第一に考える。生活リズムの回復は、亜急性期と回復期に共通の作業療法の目的である。亜急性期は、幻聴・妄想などが活発な急性期を過ぎ、多少の精神症状は残存していても睡眠覚醒などの生活リズムが確立しているが、疲労感が強い時期である。一方、回復期は、疲労感が軽減してこれから社会復帰の準備を始めようとする時期であり、服薬や金銭の自己管理を支援し、学校や職場との連携を図る時期である。それぞれ亜急性期は睡眠リズムの確立、回復期は社会復帰を目指す日常生活リズムの獲得の意味合いに持つ。
4.× 対人スキルの向上は時期尚早である。なぜなら、対人刺激は本人の疲労感を増すことになるため。
5.× デイケアへの移行練習は不適切である。なぜなら、高校復学を目指しておりデイケアへの移行練習は目的に合わないためである。

 

 

 

 

 

 

50 精神障害者の就労支援方法と実施機関の組合せで正しいのはどれか。

1. リワーク:ハローワーク
2. ジョブコーチ:地域障害者職業センター
3. 職場適応訓練:保健所
4. トライアル雇用:地域包括支援センター
5. ジョブガイダンス:障害者就業・生活支援センター

解答2

解説

1.× リワークは、復職前の準備段階として、実際の仕事で使うスキル (パソコン操作やプレゼンテーションなど)に慣れていくためのプログラムを提供するものであり、医療機関が中心となって行っている。ハローワーク(公共職業安定所)とは、主に職業紹介事業を行っている。
2.〇 正しい。ジョブコーチとは、障害者が事業所で働くために、障害者と企業の双方を支援する役割をするもの。障害者が属する社会福祉法人の職員や事業所の社員などが行う。地域障害者職業センターが職場へ派遣する。
3.× 職場適応訓練は、実際の事業所で作業することにより、作業環境に適応することを目的として実施するもの。ハローワークが窓口となる。保健所とは、地域住民の健康や衛生を支える公的機関の一つである。
4.× トライアル雇用とは、原則として3ヵ月の間、常用雇用への移行を目指して試行雇用することである。ハローワークが窓口になる。地域包括支援センターとは、介護保険法で定められた、地域住民の保健・福祉・医療の向上、虐待防止、介護予防マネジメントなどを総合的に行う機関である。
5.× ジョブガイダンスとは、医療機関等の連携施設にハローワーク職員が出向いて、就職活動に関する知識や方法を教えるものである。障害者就業・生活支援センターとは、国及び県から委託を受けた地域の社会福祉法人等が運営する障害者の就労支援機関である。 

 

 

51問目からは、理学療法士・作業療法士【共通問題】となります。タイトルが「第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説」となっていますが、ご了承ください。

 

 

※注意:著者は理学療法士で、解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)