第52回(H29) 作業療法士国家試験 解説【午前問題31~35】

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31 疾患と作業種目の組合せで適切なのはどれか。

1. Parkinson病:毛糸のかぎ針編み
2. 関節リウマチ:タイルモザイク
3. 脊髄小脳変性症:彫刻
4. 慢性閉塞性肺疾患:木工
5. 筋萎縮性側索硬化症:パソコン操作

解答5

解説

1.× Parkinson病の症状として、安静時振戦がある。毛糸のかぎ針編みといった運動範囲が狭い作業や、同じ姿勢を長時間とる必要のある作業は不向きである。
2.× 関節リウマチの症状として、関節の変形がある。タイルモザイクは、手指の巧緻性やハンマーの使用によって筋力を要する。関節の変形を助長する作業であるため不向きである。
3.× 脊髄小脳変性症の症状として、運動失調がある。彫刻は、鋭利な工具を用い危険である作業であるため不向きである。
4.× 慢性閉塞性肺疾患の症状として、呼吸苦・アレルギーを伴う閉塞性障害(喘息)がある。木工は、上肢の筋力が必要であり、細かい木の屑が飛び散り喘息や呼吸苦を助長する作業であるため不適切である.
5.〇 正しい。筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気である。パソコン操作は、四肢の筋力低下があっても可能な作業であり、構音障害によるコミュニケーシション能力の代償手段獲得の意味でも適切である。

”脊髄小脳変性症とは?多系統萎縮症とは?”

脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)

多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

 

32 右半球損傷による全般性注意障害の片麻痺患者に対する初期の基本動作支援について正しいのはどれか。

1. 移乗動作の誤りを繰り返し修正する。
2. 杖歩行は複数人とすれ違う環境から開始する。
3. 車椅子駆動練習は外乱の少ない環境から開始する。
4. 寝返りにおける性急な動作は口頭指示で修正する。
5. 起き上がり動作は一連の動作を一度に口頭で指導する。

解答3

解説

 全般性注意障害では、①持続性②選択性③転導(換)性④多方向性⑥容量性の5つが全般的に障害されている状態である。

1.× 移乗動作の誤りを繰り返し修正するのは、持続性注意障害により困難である。なぜなら、注意を一定の状態に維持することができず誤りを繰り返すことが多くためである。
2.× 杖歩行は複数人とすれ違う環境から開始するのは、持続性注意障害により困難である。なぜなら、注意を一定の状態に維持することが困難であるため。注意が散漫にならないように、複雑な環境に置かない工夫が必要である。
3.〇 正しい。車椅子駆動練習は外乱の少ない環境から開始する。全般性注意障害があるので、作業時には余計な妨害刺激(外乱)が入らないように配慮する。
4.× 寝返りにおける性急な動作を口頭指示で修正するのは、転導(換) 性注意の障害により困難である。なぜなら、特定の対象に注意を保ちつつ、他の刺激に注意を向けること、つまり、寝返り動作中に指示を理解することが困難なためである。
5.× 起き上がり動作を一連の動作として一度に口頭で指導するのは、容量性注意の障害により困難である。なぜなら、多くの情報を一度に覚えられないためである。一動作ずつ区切って指導するのが良い。

 

 

 

 

 

 

33 標準型車椅子座位姿勢で起きる座圧変化で正しいのはどれか。

1. 仙骨座り(骨盤後傾)では尾骨部に高い圧がかかる。
2. 骨盤左回旋姿勢では右大転子に高い圧がかかる。
3. 体幹右側屈姿勢では左坐骨に高い圧がかかる。
4. 円背姿勢では下部腰椎部に高い圧がかかる。
5. 骨盤前傾姿勢では仙骨部に高い圧がかかる。

解答1

解説 

1.〇 正しい。仙骨座り(骨盤後傾)では尾骨部に高い圧がかかる。仙骨座り(骨盤後傾)とは、坐骨部は前方に移動している座り方であり、尾骨部に剪断力摩擦を引き起こし高い圧がかかる。
2.× 骨盤左回旋姿勢になっても、右大転子は大腿の側面にあるために高い圧はかからない。
3.× 体幹右側屈姿勢では、「左坐骨」ではなく右坐骨に高い圧がかかる。体幹を右側屈することで重心が右に偏るためである。
4.× 円背姿勢では、「下部腰椎部」ではなく尾骨部に高い圧がかかる。
5.× 骨盤前傾姿勢では、「仙骨部」ではなく坐骨部に高い圧がかかる。

 

 

 

 

 

 

34 手背の深達性Ⅱ度熱傷に対する急性期のスプリンティング肢位で正しいのはどれか。

1. 母指掌側外転
2. 母指MP関節伸展
3. 第2〜5指MP関節伸展
4. 第2〜5指PIP関節屈曲
5. 第2〜5指DIP関節屈曲

解答1

解説

 深達性Ⅱ度熱傷とⅢ度熱傷では、二次損傷として関節拘縮伴う。熱傷部位に癒着・瘢痕拘縮が起こりやすいため、熱傷部位と近い関節については、熱傷部位が伸展されるようにポジショニングを考慮する。手背の深達性Ⅱ度熱傷では、瘢痕により手関節軽度掌屈MP関節過伸展DIP/PIP関節屈曲母指伸展内転拘縮(鷲手変形とも呼ぶ)となる。

1.〇 正しい。母指掌側外転位とする。母指伸展内転拘縮を伴うため。
2.3.× 母指MP関節「伸展」・第2〜5指MP関節「伸展」ではなく、各関節は屈曲位とする。
4.5.× 第2〜5指PIP関節「屈曲」・第2〜5指DIP関節「屈曲」ではなく、各関節は伸展位とする。

 

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

【PT/OT/共通】熱傷についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

35 関節リウマチ患者に対する生活指導で正しいのはどれか。

1. 枕は高くする。
2. 手関節は掌屈位を保つ。
3. 階段は1足1段で上る。
4. 本は眼の高さに置いて読む。
5. 茶碗は指間を広げて支える。

解答4

解説

 関節リウマチ患者の日常生活・環境整備の指導の目的は、①家庭生活の自立度を向上させ、介助量の軽減を図ること、②関節にかかる過剰な負担をできるだけ避け、骨破壊の進行を防止することである。また、関節リウマチ患者の合併症の一つに、環軸椎亜脱臼がある。

1.× 枕は高くすると頸椎が屈曲し環軸椎亜脱臼が誘発されやすいため不適切である。環軸椎亜脱臼は、頸髄圧迫症状を起こし、ときとして致命的となるため注意が必要である。
2.× 手関節は掌屈位を保つと、手関節の掌側脱臼を来しやすいため不適切である。
3.× 階段は1足1段で上ると下肢の関節に負担がかかりやすい。下肢の関節保護のため2足1段で昇降する。
4.〇 正しい。本は眼の高さに置いて読む。そうすることで、頸部が中間位となり環軸椎亜脱臼を予防できる。
5.× 茶碗は指間を広げて支えると亜脱臼をきたしやすいため不適切である。関節への負担を少なくするためにも茶碗は底を手掌全体で保持すると良い。

 

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