第52回(H29) 作業療法士国家試験 解説【午後問題11~15】

 

11 57歳の男性。筋萎縮性側索硬化症と診断されて3年が経過。四肢や体幹に運動麻痺を生じてベッド上の生活となりADLは全介助。さらに球麻痺症状を認め、安静時も呼吸困難を自覚する。
 この患者がコミュニケーション機器を使用する際の入力手段として適切なのはどれか。

1. 舌
2. 手指
3. 口唇
4. 呼気
5. 外眼筋

解答5

解説

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位・下位運動ニューロン障害の両者を示す疾患をいう。主な症状は、四肢筋委縮、脱力、異常感覚、筋線維束攣縮、痙性麻痺、球麻痺症状である。4大陰性として、眼球運動障害、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡である。本症例のように終末期は、呼吸筋障害や球麻痺などにより発声困難になるため、比較的保たれることが多い眼球運動眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用されている。

1.× 舌は、球麻痺症状(舌の運動障害)がみられるため不適切である。
2.× 手指は、運動ニューロンの障害(手指の運動障害)がみられるため不適切である。
3.× 口唇は、四肢の動きが悪くなってからもマイクロスイッチ等を操作するために有用ではあるが、終末期では障害されている場合が多いため不適切である。.
4.× 呼気は、呼吸筋は障害されるため不適切である。本症例の問題文でもすでに、安静時も呼吸困難を自覚している。
5.〇 正しい。外眼筋眼球・眼瞼運動は、終末期でも保たれることが多い。そのため、透明文字盤などを用いてのコミュニケーションや、視線入力装置を介しての環境制御装置の操作が可能である。

 

 

 

 

 

 

12 80歳の男性。体重70 kg。介護者は腰痛のある70歳の妻で体重39 kg。誤嚥性肺炎によるか月の入院後、下肢の廃用性の筋力低下をきたしている。端座位保持は可能であるが、立ち上がりは手すりを把持しても殿部が挙上できずに全介助である。立位は手すりを把持して保持できるが、足踏み動作は困難である。車椅子への移乗介助に使用する福祉用具の写真(下図)を別に示す。
 妻の腰痛を助長しないことを優先して選択する用具として適切なのはどれか。

1. ①スライディングボード
2. ②突っ張り棒型縦手すり
3. ③移乗用介助ベルト
4. ④ベッド柵(移動バー)
5. ⑤介助グローブ

解答1

解説

 本症例の問題点は、立ち上がり動作全介助・足踏み動作困難・妻の介助力がみこめない。以上の事から、移乗パターンを立ち上がらせずに行える方法を選択する。

1.〇 正しい。①スライディングボードは、座った姿勢を保持したままベッドから車椅子に移乗するための福祉用具である。介助者は少ない力で無理なく介助できるため適切である。
2.4.× ②突っ張り棒型縦手すり、④ベッド柵(移動バー)は不適切である。なぜなら、本症例は手すりを保持しても立ち上がりができないためである。これらを用いても車椅子への移乗は困難である。
3.× ③移乗用介助ベルトは不適切である。移乗時の安全性を高める用具である。妻は腰痛あり介助力は乏しい。移乗用介助ベルトを用いても安全性を高めるだけであり腰痛の防止とはならない。
5.× ⑤介助グローブは、滑りやすい素材でできており、背中や殿部に手を差し込む際(背抜き移動介助ポジショニング)に使用する。

 

 

 

 

 

 

13 24歳の女性。統合失調症。2か月前からスーパーの惣菜コーナーで働いている。週1回、外来作業療法を利用しており、仕事や生活の様子を話題にしながら患者の体調の確認を行っている。
 作業療法士が気を付けるべき状態悪化時のサインとして適切でないのはどれか。

1. 不穏な状態になる。
2. 睡眠時間が長くなる。
3. 仕事を休みがちになる。
4. 仕事仲間に疑い深くなる。
5. 仕事上のミスが多くなる。

解答2

解説

 本症例は、統合失調症であり、2か月前からスーパーの惣菜コーナーで働いていることから、病期は安定期である。状態悪化時や再発前の前駆段階をよく観察する。

統合失調症の前駆期

①不安・焦燥、②抑うつ気分、③認知の変化、④注意力・集中力の低下、⑤食欲低下、⑥不眠、⑦社会的役割機能の低下、⑧社会的引きこもり

1.3~5.〇 正しい。不穏な状態になる。仕事を休みがちになる。仕事仲間に疑い深くなる(社会的役割の低下)。仕事上のミス(注意力・集中力の低下)が多くなる。
2.× 睡眠時間が長くなるのはなく、不眠に注意する必要がある。

 

 

 

 

 

 

14 55歳の男性。うつ病。職場で苦手なパソコン操作を行う業務を担当するようになり、不眠、意欲低下および抑うつ気分がみられるようになった。希死念慮も認められたため入院となった。入院後1か月経過し、作業療法が開始された。
 初回評価で優先度が高いのはどれか。

1. 体力
2. 家族関係
3. 思考障害
4. 作業能力
5. 職場環境

解答3

解説

 本症例は、うつ病で入院し急性期を終えて作業療法を始めるときである。一般的には、生活リズムとそれ以外には入院の原因となった症状の回復具合を評価していく。

1.× 体力は、社会復帰の際に評価する。この患者の入院のきっかけは、体力が原因ない。
2.× 家族関係は、社会復帰の際に評価する。この患者の入院のきっかけは、家族関係が原因ではない。
3.〇 正しい。思考障害を優先的に評価する。希死念慮は、うつ病にみられる思考障害の一つである。問題文から「希死念慮も認められたため入院となった。」とある。入院の大きなきっかけが希死念慮であるため、優先される評価事項である.
4.× 作業能力は、社会復帰の際に評価する。急性期を終えたばかりの時期に優先して評価するものではなく、かえって患者の自信を喪失させるきっかけにもなるため行わない。
5.× 職場環境の評価は、時期尚早である。この患者がうつ病を発症したきっかけは仕事のことである。しかし、うつ病の回復期前期の作業療法は①生活リズムの獲得、②身体感覚の回復、③着実に自信を回復していくことが重要であるため、職場環境の評価はまだ先でよい。

 

 

 

 

 

 

15 32歳の女性。統合失調症。デイケアに通所しているが、いつも人を避けるように過ごしていることが多い。スタッフが面談の中でその理由を尋ねると「会話をしていると、途中から何を話しているのか分からなくなります。それが恐くて人と話をする自信がないです」と訴えた。
 この患者の症状の評価で最も適切なのはどれか。

1. GAF
2. BADS
3. WCST
4. Rehab
5. BACS-J

解答5

解説

 本症例は、統合失調症であるため統合失調症の評価を選択する。

1.× GAF(機能の全体的評定尺度:Global Assessment of Functioning scale)は、心理・社会・職業的機能について0~100の数字で評価する方法で、評価は過去1週間の最低レベルを評点とする。
2.× BADS(遂行機能障害症候群の行動評価法:Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome) は、感情や人格、動機付け、行動、認知の4カテゴリー(計20の質問)で構成されており、前頭葉の遂行機能を評価する検査である。
3.× WCST(ウィスコンシンカード分類テスト:Wisconsin Card Sorting Test)は、計画をたてること・計画を達成するためにとるべき行動を決めること、状況の変化に対応すること、衝動的に行動することを抑えるなどの「前頭葉の実行機能」を調べる検査である。提示されたトランプのようなカードを色・数・形のどれに基づいて分類するかを判断する。高次脳機能障害の検査などに用いられる。
4.× Rehab(精神科リハビリテーション行動評価尺度:Rehabilitation Evaluation Hall and Baker)は、病棟・デイケア・社会復帰施設などで観察した行動を評定するものである。比較的項目が少なく(23項目)、簡便で繰り返し使用できるのが特徴である。
5.〇 正しい。BACS-J(統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版:The Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia Japanese version)は、言語性記憶と学習・ワーキングメモリー(作動記憶)・運動機能・注意と情報処理速度・言語流暢性・遂行機能の6つの認知機能領域を評価する7つの検査(言語流暢性のみ2つの検査がある)で構成される。

 

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