第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説【午前問題6~10】

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6 74歳の男性。右利き。脳卒中後の右片麻痺。食事は食物を細かく刻めば左手でスプーンを用いて食べることができる。入浴はシャワー使用で洗体に介助が必要。トイレ動作は衣服の操作に介助を要するがそれ以外は自力で行える。車椅子とベッド間の移乗は見守りが必要。移動は歩くことはできないが車椅子操作は自力で行え、50m以上連続駆動が可能。
 Barthel Indexの得点が10点と評価される項目はどれか。

1. 食事
2. 入浴
3. 移動
4. トイレ動作
5. 車椅子とベッド間の移乗

解答:

解説

本症例のポイント

・74歳の男性(脳卒中後の右片麻痺)
・食事(5点):食物を細かく刻めば左手でスプーンを用いて食べる。
・入浴(0点):シャワー使用で洗体に介助が必要。
・トイレ動作(5点):衣服の操作に介助を要するがそれ以外は自力で行える。
・車椅子とベッド間の移乗(10点):見守り。
・移動(5点):歩くことはできないが車椅子操作は自力で行え、50m以上連続駆動が可能。

1.× 5点(部分介助):食事は、食物を細かく刻めば左手でスプーンを用いて食べることができる。
2.× 0点(部分介助または不可能):入浴は、シャワー使用で洗体に介助が必要。
3.× 5点(歩行不能の場合、車椅子にて45m以上の操作可能):移動は、歩くことはできないが車椅子操作は自力で行え、50 m以上連続駆動が可能。
4.× 5点(部分介助):トイレ動作は、衣服の操作に介助を要するがそれ以外は自力で行える。
5.〇 正しい。10点(軽度の部分介助または監視を要する):車椅子とベッド間の移乗は見守りが必要。

 

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7 30歳の男性。スキーで転倒して受傷した。エックス線写真を別に示す。肩脱臼整復後に肩関節内転・内旋位で固定されたが、上腕の外側上部に感覚鈍麻を訴えた。
 合併症の神経麻痺はどれか。

 

1. 腋窩神経
2. 肩甲上神経
3. 肩甲下神経
4. 尺骨神経
5. 正中神経

解答:1

解説

本症例のポイント

・30歳の男性。
・スキーで転倒して受傷した。
・エックス線所見:①上腕骨頭の位置が関節窩の前下方へと変位している。②上腕骨頭が烏口下に脱臼している。
・肩脱臼整復後に肩関節内転・内旋位で固定されたが、上腕の外側上部に感覚鈍麻を訴えた。

1.〇 正しい。腋窩神経は、上腕の外側上部に感覚領域を支配する。腋窩神経の麻痺による障害部位と一致する。肩関節前方脱臼では、腋窩神経の損傷が起こりやすい。腋窩神経の損傷では、上腕近位外側の感覚障害や三角筋の麻痺が生じる。経過は、自然回復することが多い。
2.× 肩甲上神経麻痺の多くは慢性化で起こり、バレーボール、テニスなど肩を振り回す頻回な力が掛かる人に多く発生する。肩甲上神経は、棘上筋と棘下筋を支配している。
3.× 肩甲下神経は、上肩甲下神経と下肩甲下神経からなり、肩甲下筋と大円筋を支配する。
4.× 尺骨神経は、手部尺側から小指末端辺りの感覚を支配する。障害されると指の開閉運動障害や鷲手変形を生じる。
5.× 正中神経は、母指球側から中指辺りの感覚を支配する。Phalen徽候(ファレン徴候)とは、手関節を最大掌屈位約1分間保持させると、正中神経が分布している指に疼痛やしびれの増悪がみられる徴候で、手根管症候群で陽性となる所見である。

 

 

 

 

8 44歳の女性。関節リウマチ。エックス線写真を下図に示す。身の回りのことはできるが、仕事は行えない。
 この患者のSteinbrocker の分類はどれか。

1. ステージⅡ、クラスⅡ
2. ステージⅢ、クラスⅢ
3. ステージⅢ、クラスⅣ
4. ステージⅣ、クラスⅢ
5. ステージⅣ、クラスⅣ

解答:

解説

レントゲン所見:過伸展のような関節変形(ボタン穴変形、スワンネック変形、両母指Z変形、MP掌側脱臼)を認めることから、ステージⅢ以上であることが分かる。さらに、①線維性強直(PIP関節が明瞭ではない)、②骨性強直(手根骨が明瞭ではない)を認めることからステージⅣと判断できる。

Steinbrockerの病気分類

【ステージ分類:リウマチの病期】
ステージⅠ:X線検査で骨・軟骨の破壊がない状態。
ステージⅡ:軟骨が薄くなり、関節の隙間が狭くなっているが骨の破壊はない状態。
ステージⅢ:骨・軟骨に破壊が生じた状態。
ステージⅣ:関節が破壊され、動かなくなってしまった状態。

 

【クラス分類:機能障害度】
クラスⅠ:健康な方とほぼ同様に不自由なく生活や仕事ができる状態。
クラスⅡ:多少の障害はあるが普通の生活ができる状態。
クラスⅢ:身の回りのことは何とかできるが、外出時などには介助が必要な状態。
クラスⅣ:ほとんど寝たきりあるいは車椅子生活で、身の回りのことが自分ではほとんどできない状態。

よって、選択肢4. ステージⅣ、クラスⅢが正しい。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

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9 78歳の女性。布団を持ち上げようとした際、背部から腹部への強い帯状痛を生じ、寝返りも困難となったため入院となった。入院時のエックス線写真とMRIとを下図に示す。
 この患者の病態はどれか。2つ選べ。

1. 骨粗鬆症
2. 脊椎分離症
3. 脊柱管狭窄症
4. 椎間板ヘルニア
5. 脊椎椎体圧迫骨折

解答:1,5

解説

1.〇 正しい。①椎体の楔状変形、②魚椎変形、③骨陰影の減少を認めることから、骨粗鬆症であると考えられる。
2.✖ 脊椎分離症とは、小児~思春期の男性に好発する疾患で椎弓の関節突起間の骨製連続がたたれた状態である。
3.✖ 脊柱管狭窄症の特徴である「脊柱管に狭窄」は認められない。腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰部で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状(しびれや疼痛、脱力など)が出現する。歩行時には腰痛があまり強くならない事が多く、歩行と休息を繰り返す間歇性跛行が特徴である。
4.✖ 椎間板ヘルニアの特徴である「椎間板の突出」は認められない。腰椎の椎間板ヘルニアは20~40歳代で重たいものを持ち上げた際に見られることが多い。椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。
5.〇 正しい。画像より魚椎変形が認められることから、椎体圧迫骨折であると考えられる。脊椎椎体圧迫骨折は、典型的には骨粗鬆症を基盤に持つ高齢者が転倒した際や軽微な外力によって発生する。ときには外傷の既往なく発生することもある。

 

 

 

 

10 62歳の男性。Parkinson病。起立と歩行は可能であるが、歩行中の方向転換時には不安定となり転倒しそうになる。姿勢反射障害もみられる。独居で日常生活はほぼ自立しているが、通院には介助が必要である。
 この患者のHoehn&Yahrの重症度分類ステージはどれか。

1. Ⅰ
2. Ⅱ
3. Ⅲ
4. Ⅳ
5. Ⅴ

解答:3

解説

Hoehn&Yahrの重症度分類ステージ

0度  パーキンソニズムなし
Ⅰ度  一側性パーキンソニズム
Ⅱ度  両側性パーキンソニズム
Ⅲ度  軽~中等度パーキンソニズム。姿勢反射障害あり。日常生活に一部介助不要になるが自力での生活可能。
Ⅳ度  高度障害を示すが、歩行は介助なしにどうにか可能
Ⅴ度  介助なしにはベッド又は車椅子生活

本症例のポイント

・62歳の男性(Parkinson病)
・起立と歩行:可能。
・歩行中の方向転換時:不安定となり転倒しそうになる。
姿勢反射障害もみられる
・独居で日常生活:ほぼ自立している。
・通院には介助が必要である。

よって、本症例はⅢ度(軽~中等度パーキンソニズム。姿勢反射障害あり。日常生活に一部介助不要になるが自力での生活可能)である。選択肢3,Ⅲが正しい。

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