第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説【午前問題41~45】

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41 関節リウマチの症状と理学療法の組合せで正しいのはどれか。

1. 肩関節痛:持続伸張運動
2. 手指の変形:超音波療法
3. 足の外反母指:金属支柱付短下肢装具
4. 膝関節外反変形:外側ウェッジ
5. 環軸関節亜脱臼:頸椎前屈姿勢の予防

解答:5

解説

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

1.× 肩関節痛(疼痛)に対して、「持続伸張運動」ではなく温熱療法や薬物療法を行う。なぜなら、活動期の関節リウマチでは関節の破壊が盛んに進行しているため。したがって関節への負担を避け変形を防止し関節を保護する処置をとる。このとき関節を保護するようなADLの指導や筋力の維持のための方法の指導を行う。
2. × 手指の変形に対して、「超音波療法」ではなく手指装具などを行う。ちなみに、超音波療法(温熱療法)は疼痛緩和に対して行われるが、急性炎症が起きている場合は禁忌である。
3. × 金属支柱付短下肢装具は、「足の外反母指」ではなく麻痺による重度の痙性に適応となる。ちなみに、足の外反母趾に対しては、横アーチを保持するためのメタタルザルパットを入れた足底板や、外反母趾装具を使った装具療法を行う。
4. × 膝関節外反変形(X脚)は、「外側ウェッジ」ではなく内側ウェッジが適応である。ちなみに、外側ウェッジは膝関節内反変形(O脚)に対して行われる。
5. 〇 正しい。環軸関節亜脱臼は、頸椎前屈姿勢の予防が効果的である。ネックカラーを使用する。

 

 

 

 

 

42 エネルギー蓄積機能によって大きな推進力を得る目的で使われる義足の足部はどれか。

1. 単軸足
2. SAFE足
3. SACH足
4. フレックス足
5. Greissinger足

解答:

解説

 従来、単軸足部・SACH足部が中心でエネルギー蓄積機能はなかった。近年、より速く歩き・走りたいとのスポーツ愛好家のニーズにこたえるため、立脚相の踏み切り期に蓄えたエネルギーを放出して走ったり、ジャンプしたりできるエネルギー蓄積型足部が開発されている。Seattle・STEN・SAFE・Carbon CopyⅡ・Quantum・FLEX foot(フレックス足)などがその例である。 よって、選択肢4. フレックス足が正しい。

1.× 単軸足は、足関節に当たる軸があり、足関節の底背屈の動きを可能とし、前方バンパーによりはいくつを、後方バンパーにより底屈を制動する。
2.× SAFE足は、関節にあたるものがない無軸足であるが、前足部のキールといわれる部分の動きで前後だけでなく左右の不整地にも対応できる。
3.× SACH足は、足関節を模した無軸足部である。踵部のクッションがたわむことで衝撃を吸収する構造となっている。
4.〇 正しい。フレックス足は、エネルギー蓄積型足部であり、カーボングラファイトで作られている。常用の足部だけでなく、スポーツ専用としても開発され、吸収したエネルギーを推進力として放出エネルギーに変える特性を持つ。
5.× Greissinger足(グライジンガー足)は、距踵関節が行っている足部の回内外運動・回旋運動ができる多軸足で、リング状のゴムブロックを挟み込んだ形状で実現されている。

各義足足部の特徴
  1. 単軸足部:単軸の底に付けられたベルトやフェルト・ゴム足先の弾力性で底背屈が行われる。トゥブレークの位置と角度で歩き方が変化する。
  2. 無軸足部:踵部にクッション性のあるウレタンなどを挿入し、踵接地時の衝撃を吸収する。「SACH足」に代表される足部である。無軸足部の中には様々な素材の芯を入れることで、多軸足のような不整地での安定感を出したもの、エネルギー蓄積型足部のように吸収したエネルギーを放出する機能をもたせたものもある。
  3. 多軸足部:多数の関節軸のある足部で、Greissinger足(グライジンガー足)やブラッチフォード多軸足部が多軸足部にあたる。不整地歩行を得意とする。足関節の底背屈だけでなく、内・外反などの動きにも追従する。
  4. エネルギー蓄積型足部:接地で吸収したエネルギーをつま先離地の際に放出する機能をもつ。わずかなエネルギー蓄積をするものから競技用でも使われるような足部まで様々な足部が含まれる。単軸・無軸・多軸のどの形態にも用いられる。

 

 

 

 

 

43 3歳6か月の脳性麻痺児で、ロフストランド杖などの手に持つ移動器具を使用して歩行可能である。
 この児のGMFCSのレベルはどれか。

1. Ⅰ
2. Ⅱ
3. Ⅲ
4. Ⅳ
5. Ⅴ

解答:3

解説

 粗大運動能力分類システム(gross motor function classification system;GMFCS)は,判別的な目的で使われる尺度である。子どもの座位能力、および移動能力を中心とした粗大運動能力をもとにして、6 歳以降の年齢で最終的に到達するという以下 5 段階の機能レベルに重症度を分類している。

粗大運動能力分類システム

・レベルⅠ:制限なしに歩く。
・レベルⅡ:歩行補助具なしに歩く。
レベルⅢ:歩行補助具を使って歩く。
・レベルⅣ:自力移動が制限。
・レベルⅤ:電動車いすや環境制御装置を使っても自動移動が非常に制限されている。

本症例は、ロフストランド杖などの手に持つ移動器具を使用して歩行可能である。よって、選択肢3. Ⅲが正しい。

 

 

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理学療法士国家試験 GMFCSについての問題4選「まとめ・解説」

 

 

 

 

44 慢性腎不全患者に対する運動療法として正しいのはどれか。

1. 運動によって腎血流は増加する。
2. 血液透析日にも運動療法が行われる。
3. 運動療法によって糸球体濾過量が改善する。
4. 下肢の浮腫には起立台での起立練習が有効である。
5. 病期分類ステージ5の症例では5〜6METs の運動が適応となる。

解答:2

解説

1.× 運動によって腎血流は、「増加」ではなく減少する。
2.〇 正しい。血液透析日にも運動療法が行われる。透析中も運動療法を行う施設がある。透析日を利用することにより確実に運動が行われ、透析をしながらの運動療法は医療スタッフの監視下で安全に行うことができる。
3.× 運動療法によって糸球体濾過量は、「改善」ではなく減少する。また、尿たんぱく排出量は増加する。
4.× 下肢の浮腫には、「起立台での起立練習」ではなく下肢の浮腫には下肢の挙上やマッサージが有効である。起立台での起立練習は、重力下にさらされ、さらなる下肢の浮腫を助長する。
5.× 病期分類ステージ5(腎臓の機能が極度に低下している状態)の症例では、「5〜6METs」ではなく3~4METs程度(ラジオ体操程度)の運動が適応となる。過度な運動はさらに腎臓への負荷となるため控える。

慢性腎不全患者に対する運動療法の効果
  1. 最大酸素摂取量の増加
  2. 左心室収縮機能の亢進(安静時・運動時)
  3. 心臓副交感神経系の活性化
  4. 心臓交感神経緊張の改善
  5. 栄養低下、炎症複合症候群の改善
  6. 貧血の改善
  7. 不安・うつ・QOLの改善
  8. ADLの改善
  9. 死亡率の低下
  10. 前腕静脈サイズの増加
  11. 透析効率の増加など

 

 

 

 

 

45 がん患者の緩和ケア病棟におけるリハビリテーションで正しいのはどれか。

1. QOLより機能回復を優先する。
2. 肺癌では呼吸介助は禁忌となる。
3. 疼痛に対して温熱療法は禁忌である。
4. 病名告知を前提として理学療法を行う。
5. 骨転移の有無に合わせて理学療法の内容を変更する。

解答:5

解説

1.✖ 逆である。機能回復よりQOLを優先する。なぜなら、緩和ケア病棟では、その人らしく過ごすことができるようなケアを求められるため。
2.✖ 肺癌の緩和ケアでは呼吸困難による苦痛を軽減させるために、呼吸介助や体位変換を行う。したがって、呼吸介助が禁忌になるとはいえない。
3.✖ 疼痛の緩和(ペインコントロール)を目的とした、温熱療法・寒冷療法などの物理療法・マッサージが行われる
4.✖ 患者家族の希望によって病名告示が行われないことがあるため、病名告知を前提としての理学療法は行わない。しかし緩和ケアを受けるにあたっては患者本人が告知を受けていることが望ましい。
5.〇 正しい。緩和ケアでは容態の変化に応じてケアの内容を変更する。なぜなら、骨転移では疼痛や易骨折性を伴うため。症状緩和・ADL向上を目的に理学療法の内容を変更する。また、身体的な苦痛に対してだけではなく、精神的な苦痛に対してもアプローチする。

緩和ケアにおける理学療法の目的

緩和ケアにおける理学療法は,回復を目的としたトレーニングとは異なる。回復が望めない中にあってその苦痛の緩和に努め,残された機能を最大限に生かし,安全な生活を支えることが必要である。また,残された機能を生かし支えることは,ひいては患者や家族の実際的ニーズや希望を支えることにもなる。さらに,その過程においてさまざまな患者の訴えに心を傾け,患者に寄り添うことは,理学療法士が提供できる大切な心のケアと考える。

①疼痛・苦痛の緩和:リハにおいてもまず取り組む課題である。(安楽肢位、リラクゼーション、物理療法、補装具の検討、電動ベッドなどの検討)
②ADL 能力維持・援助:特に排泄動作に関する要望が多い。(移動能力維持、環境設定、ADL訓練、介助法の指導)
③精神面の援助:死を受け入れていくうえでも「どのように生きるか」が重要である。
④家族への援助:家族から要望があれば介助方法や援助方法(マッサージの方法など)を伝達する。
⑤廃用性変化の予防・全身機能維持:リハが日常生活にリズムをつくる。
※(参考:「緩和ケアにおけるコメディカルの役割と人材の育成」著:下稲葉 主一(栄光病院リハビリテーション科))

 

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