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31 肘関節脱臼で多いのはどれか。
1. 外側
2. 後方
3. 前方
4. 内側
5. 分散
解答:2
解説
肘関節の形状から考えても、後方脱臼が最も多くを占めていると予想できる。よって、選択肢2. 後方が正しい。後方脱臼は転倒・転落などの外力により起こる。肘関節伸展位で転倒などにより肘の過伸展が強制され長軸方向へ力が働くと、肘頭が上腕骨後方に脱臼する。ちなみに、外傷性脱臼では、肩関節脱臼に次いで多い。
5.✖ 分散(回排)脱臼とは、前後型・側方型があり、前後型は橈骨と尺骨が前後に分断される形となる。一方、側方型は、橈骨と尺骨が左右に分断される形で脱臼する。
32 腰椎椎間板ヘルニアで陽性となるテストはどれか。
1. Apleyテスト
2. Patrickテスト
3. Thomasテスト
4. McMurrayテスト
5. 大腿神経伸張テスト
解答:5
解説
1.4.✖ Apleyテスト(アプレーテスト)/McMurrayテスト(マックマリーテスト)は、半月板損傷である。ちなみに、McMurrayテスト(マックマリーテスト)は、①背臥位で膝を完全に屈曲させ片手で踵部を保持する。②下腿を外旋させながら膝を伸展させたときに痛みやクリックを感じれば内側半月の損傷、下腿を内旋させながら膝を伸展させたときに生じるならば外側半月の損傷を示唆する。
2.✖ Patrickテスト(パトリックテスト)は、股関節部の炎症を疑う。仙腸関節・股関節のストレステストであり、痛みが誘発されれば陽性である。
3.✖ Thomasテスト(トーマステスト)は、股関節屈曲拘縮を疑う。
5.〇 正しい。大腿神経伸張テストは、腰椎椎間板ヘルニアで陽性となるテストである。L2~4神経根障害で陽性となる。坐骨神経へつながる下位椎間板では、下肢伸展挙上(SLR)テストが陽性となる。
椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。
L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。
33 脳卒中発症後2週間以内に生じにくい合併症はどれか。
1. 意識障害
2. 消化管出血
3. 肩手症候群
4. 摂食嚥下障害
5. 深部静脈血栓症
解答:3
解説
1.〇 意識障害は、脳卒中発症後2週間以内に生じやすい。意識障害は、脳卒中急性期に起こりやすく、脳幹の覚醒系が障害されたときや、大脳皮質が広範囲にわたって破壊された場合、また、脳浮腫によっても起こり得る。
2.〇 消化管出血は、脳卒中発症後2週間以内に生じやすい。脳卒中急性期や開頭手術後などのストレスにより発生する急性胃・十二指腸潰瘍・埋葬神経刺激による胃酸分泌促進や、交感神経刺激による胃壁の血流低下などが関与している。Chshing潰瘍(クッシング潰瘍)が有名である。
3.× 肩手症候群は、脳卒中発症後2週間以内に生じにくい。肩手症候群は、複合性局所疼痛症候群(CRPS)のひとつとされ脳卒中片麻痺の発症早期(2W~3M)からみられる。脳卒中以外にも、骨折や心臓発作などが誘因となる。
4.〇 摂食嚥下障害は、脳卒中発症後2週間以内に生じやすい。なぜなら、急性期は延髄の障害(球麻痺)により、構音障害や嚥下障害が起こりうるため。多発性の脳梗塞などで両側性の障害を起こした場合は仮性球麻痺をきたす。
5.〇 深部静脈血栓症は、脳卒中発症後2週間以内に生じやすい。なぜなら、長期の臥床や長時間の座位による静脈系のうっ滞と血液粘稠度の上昇で血栓が形成されやすくなるため。静脈の血栓症をきたす。
肩手症候群は、複合性局所疼痛症候群(CRPS)の1つと考えられており、脳卒中後片麻痺に合併することが多い。他にも骨折や心臓発作などが誘因となる。症状は、肩の灼熱性疼痛と運動制限、腫脹などを来す。それら症状は、自律神経障害によるものであると考えられている。
第1期:症状が強い時期。
第2期:痛みや腫脹が消失し、皮膚や手の萎縮が著明になる時期。
第3期:手指の拘縮と骨粗懸症が著明になる時期の経過をとる。
治療目的は、①疼痛緩和、②拘縮予防・軽減である。
治療は、①星状神経節ブロック、②ステロイド治療、③アームスリング装着を行う。
リハビリは、①温熱療法、②マッサージ、③関節可動域訓練(自動他動運動)、④巧級動作練習を行う。
『脳卒中治療ガイドライン2009』では、「麻痺の疼痛・可動域制限に対し、可動域訓練は推奨される(グレードB:行うよう勧められる)」としている。
34 筋萎縮性側索硬化症で生じにくい症状はどれか。
1. 舌萎縮
2. 構音障害
3. 上下肢麻痺
4. 眼球運動障害
5. 摂食嚥下障害
解答:4
解説
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。
(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)
筋萎縮性側索硬化症の陰性症状は、①感覚障害、②眼球運動障害、③膀胱直腸障害、④褥瘡である。他に、小脳症状や錐体外路症状、認知症なども出現しにくい。よって、選択肢4. 眼球運動障害が正しい。
1~2.5.× 舌萎縮/構音障害/摂食嚥下障害は、筋萎縮性側索硬化症の症状である。延髄の運動覚が変色し生じる(球麻痺)。
3.× 上下肢麻痺は、筋萎縮性側索硬化症の症状である。錐体外路障害である。
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【PT共通】筋萎縮性側索硬化症についての問題「まとめ・解説」
35 末梢神経損傷で予後が最も良いのはどれか。
1. ニューロトメーシス(neurotmesis)
2. アクソノトメーシス(axonotmesis)
3. ニューラプラキシア(neurapraxia)
4. 神経根引き抜き損傷
5. Waller変性
解答:3
解説
神経損傷の分類では、次の3段階に分類している。
- 一過性神経伝導障害:ニューラプラキシア(neurapraxia)
- 軸索断裂:アクソノトメーシス(axonotmesis)
- 神経断裂:ニューロトメーシス(neurotmesis)
1. ✖ ニューロトメーシス(neurotmesis:神経断裂)とは、神経の連続性がたたれており、自然回復は見込めない。
2. ✖ アクソノトメーシス(axonotmesis:軸索断裂)とは、肉眼的には神経線維が連続しているが、軸索が断裂している。一部回復を見込める。
3. 〇 正しい。ニューラプラキシア(neurapraxia:一過性神経伝導障害)とは、損傷部で伝導が障害されてはいるが一過性であり、早期に自然回復する。
4. ✖ 神経根引き抜き損傷は、神経根が強く伸展されて脊髄から断裂してしまうもので、ほとんど神経断裂を起こしており、損傷神経の回復は見込めない。強い外傷機転から、ニューロトメーシス(neurotmesis:神経断裂)をきたしており、自然回復は望めず、神経に対して手術などの直接的な修復を行うこともできない。
5. ✖ Waller変性(ワーラー変性)は、損傷部より遠位が軸索変性(軸索の連続性が絶たれる)をきたした状態で、一部回復を見込める。軸索断裂:アクソノトメーシス(axonotmesis)と、神経断裂:ニューロトメーシス(neurotmesis)の状態でみられる。