第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

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26 非圧痕性浮腫を生じる疾患はどれか。

1. ネフローゼ症候群
2. 甲状腺機能低下症
3. 肝硬変
4. 心不全
5. 熱傷

解答:2

解説

 浮腫には2種類ある。指で数秒間強く押したあとに圧痕が残る①圧痕性浮腫と、圧痕が残らない②非圧痕性浮腫である。くるぶしや脛骨前面がわかりやすい。圧痕性浮腫は間質液膠質浸透圧の上昇により、水分が貯留するためで生じる。ネフローゼ症候群、肝硬変、心不全、熱傷でみられる。一方、非圧痕性浮腫は、間質の蛋白濃度(間質液の膠質浸透圧)が増加するリンパ浮腫やムコポリサッカライドが増加する甲状腺機能低下症でみられる。よって、選択肢2. 甲状腺機能低下症が正しい。ちなみに、甲状腺機能低下症は、全身性の非圧痕性浮腫に分類されるが、局所性の非圧痕政府主として、神経浮腫(Quincke浮腫)があげられる。

 

1.× ネフローゼ症候群は、血漿の膠質浸透圧の低下により、全身性の圧痕性浮腫を生じる。全身性浮腫の原因として腎性浮腫(ネフローゼ症候群、腎不全など)が最も多く、ほかに肝硬変や心不全などがある。
3.× 肝硬変は、血漿の膠質浸透圧の低下により、全身性の圧痕性浮腫を生じる。
4.× 心不全は、血管静脈圧の上昇により、全身性の圧痕性浮腫を生じる。
5.× 熱傷は、血管透過性の上昇により、局所性の圧痕性浮腫を生じる。他にも、炎症、外傷、アレルギーがあげられる。

浮腫の分類
  1. 圧痕性浮腫:貯留した体液(水分)が周囲に移動し圧痕が残る。
    疾患:圧痕の戻りが40秒以内・・・低アルブミン血症。
       圧痕の戻りが40秒以上・・・心不全、腎不全など。

  2. 非圧痕性浮腫:ムコ多糖類、血漿由来物質(蛋白質などの蓄積)、ないし炎症細胞の浸潤による浮腫の場合、圧痕は速やかに戻る。
    疾患:甲状腺機能低下症、局所炎症(蜂窩織炎、虫さされなど)

 

 

 

 

 

27 関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準による)において、基本軸または移動軸が橈骨であるのはどれか。2つ選べ。

1. 肩外旋
2. 肩屈曲
3. 肘伸展
4. 手背屈
5. 前腕回内

解答:3,4

解説

1.× 肩外旋の【基本軸】肘を通る前額面への垂直線、【移動軸】尺骨である。
2.× 肩屈曲の【基本軸】肩峰を通る床への垂直線、【移動軸】上腕骨である。
3.〇 正しい。肘伸展の【基本軸】上腕骨、【移動軸】橈骨である。
4.〇 正しい。手背屈の【基本軸】橈骨、【移動軸】第二中手骨である。
5.× 前腕回内の【基本軸】上腕骨、【移動軸】手指を伸展した手掌面である。

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28 Danielsらの徒手筋力テストで、検査する筋の段階と測定肢位の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 腸腰筋の段階3:側臥位
2. 中殿筋の段階1:腹臥位
3. 大腿四頭筋の段階3:座位
4. 前脛骨筋の段階4:立位
5. 下腿三頭筋の段階2:背臥位

解答:3,5

解説

1.× 腸腰筋(股関節屈曲)の段階3(~5)は、「側臥位」ではなく座位である。
2.× 中殿筋(股関節外転)の段階1は、「腹臥位」ではなく背臥位である。背臥位にて台との摩擦が起きないように検査者が下肢をしたから支えた状態で股関節外転を試み、筋の収縮を触知する。
3.〇 正しい。大腿四頭筋(膝関節伸展)の段階3(~5)は、座位である。
4.× 前脛骨筋(足関節背屈と内返し)の段階4は、「立位」ではなく座位である。(※「新・徒手筋力検査法第10版」では、背臥位の方法に変更されている。)
5.〇 正しい。下腿三頭筋(足関節底屈)の段階2は、背臥位である。段階2は腹臥位で行うが、腹臥位が取れない場合には背臥位で行ってもよい。

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29 FIM について正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 運動項目の1つに排尿管理がある。
2. 認知項目の1つに問題解決がある。
3. 認知項目の完全自立は42点となる。
4. 補装具を使用して動作が自立していれば完全自立とする。
5. すべての評価項目が全介助の場合、評価点は0点となる。

解答:1,2

解説

1~2.〇 正しい。運動項目の1つに排尿管理がある。/認知項目の1つに問題解決がある。項目には18項目あり、運動13項目、認知5項目で構成されている。認知項目は、コミュニケーション(理解・表出)と社会的認知(社会的交流・問題解決・記憶)で、他は運動項目(セルフケア・排泄コントロール・移乗・移動)である。
3.× 認知項目の完全自立は、「42点」ではなく35点(認知項目5項目 × 最大7点 = 完全自立は35点)となる。
4.× 補装具を使用して動作が自立していれば、「完全自立(7点)」ではなく修正自立(6点)である。
5.× すべての評価項目が全介助の場合、評価点は「0点」ではなく1点となる。ちなみに、リスクがあって検査が行えない場合でも1点となる。全体でも18点となる。

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30 骨盤帯付長下肢装具の適合判定で正しいのはどれか。

1. 骨盤帯は側方では腸骨稜と上前腸骨棘の間に設置する。
2. 下腿半月上縁は腓骨頭下端の直下である。
3. 股継手軸は前額面で小転子より2cm上方を通る。
4. 膝継手軸は矢状面で膝の前後径の1/2の点と後方1/3の点の中間点を通る。
5. 足継手軸は前額面で内果中央を通る。

解答:

解説

1.× 骨盤帯は、側方では「腸骨稜と上前腸骨棘の間」ではなく上前腸骨棘(腸骨稜)と大転子の中間・床面と平行に設置する。
2.× 下腿半月上縁は、腓骨頭下端の「直下」ではなく腓骨頭から2~3cm下方(遠位)・床面と水平である。
3.× 股継手軸は、前額面で「小転子」ではなく大転子の2cm上方・2cm前方を通る。
4.〇 正しい。膝継手軸は、矢状面で膝の前後径の1/2の点(中点)と後方1/3の点の中間点を通る。また、前額面では膝関節裂隙と内転筋結節の中間で床と平行に位置させる。
5.× 足継手軸は、前額面で「内果中央」ではなく内果下端と外果下端を結ぶ線で、脛骨長軸と約80°傾斜している位置を通る。また、床面と平行になるように設定する。

 

2 COMMENTS

匿名

26
熱傷は全身性の浮腫なのですか?
熱傷は間質液膠質浸透圧の上昇による浮腫ですが圧痕性ですか?

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大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘どおり、熱傷は局所性の圧痕性浮腫に分類されるものを間違えておりました。
非圧痕性の浮腫は、甲状腺機能亢進症やリンパ性浮腫(初期を除く)に代表されますが、蜂窩織炎や血腫などでも非圧痕性腫脹を呈するようです。ですが、ほとんどの浮腫(毛細血管圧の上昇・低アルブミン血症、血管透過性の亢進、初期の甲状腺機能亢進症、リンパ性浮腫など)は圧痕性浮腫となるようです。
今後とも宜しくお願いいたします。

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