第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説【午後問題21~25】

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21 医療機関における患者の個人情報の取扱いで誤っているのはどれか。

1. 本人に開示する。
2. 漏えい防止対策を行う。
3. 正確かつ最新の内容に保つ。
4. 利用目的をできる限り特定する。
5. 医療機関の判断で利用目的を変更できる。

解答:5

解説

個人情報とは?

個人情報保護法(第2条)

『個人情報』とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名・生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)をいう。

1.〇 正しい。本人に開示する:第25条(開示)。個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの開示を求められたときは、本人に対し、政令で定める方法により、遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならない。
2.〇 正しい。漏えい防止対策を行う:第20条(安全管理措置)。個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。
3.〇 正しい。正確かつ最新の内容に保つ:第19条(データ内容の正確性の確保)。個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つよう努めなければならない。
4.〇 正しい。利用目的をできる限り特定する:第15条(利用目的の特定)。個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的をできる限り特定しなければならない。
5.× 誤っている。医療機関の判断で利用目的を変更できない:第16条(利用目的による制限)。個人情報取扱事業者は,あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。

 

 

 

 

 

22 陽性尤度比の説明で正しいのはどれか。

1. 検査的中率と同義である。
2. 陰性尤度比を足すと1になる。
3. 「感度÷(1-特異度)」で計算できる。
4. 値が小さいほど臨床導入の妥当性が高い。
5. 実際の該当者のうち検査で陽性となる割合である。

解答:3

解説

 陽性尤度比は、心の陽性の確率である感度が、偽陽性の確率である「1 - 特異度」の何倍であるかを求めている。「陽性の」という結果がどれだけもっともらしいものであるかを知ろうとするものである。感度、特異度が高ければ陽性尤度比は高くなり、この値が5以上であれば検査法としてふさわしいと考えられる。よって、選択肢3. 「感度÷(1-特異度)」で計算できる。が正しい。

 

1.× 検査的中率と同義でない。なぜなら、検査的中率とは、検査陽性者のうち、実際に疾患を有する者の割合であるため。
2.× 陰性尤度比を足すと1にならない。陰性尤度比は、「(1 - 感度) ÷ 特異度」であるため。
4.× 値が「小さい」ではなく大きいほど、臨床導入の妥当性が高い。5以上であれば検査法としてふさわしいと考えられる。
5.× 実際の該当者のうち検査で陽性となる割合であるのは、「感度」である。陽性尤度比とは、「陽性の」という結果がどれだけ尤もらしいものであるかを知ろうとするものである。

 

 

 

 

 

23 立位で外乱による体の前方への傾きを足関節の運動で制御する際、外乱直後に最も活動する筋はどれか。

1. 腓腹筋
2. 大胸筋
3. 腹直筋
4. 前脛骨筋
5. 大腿四頭筋

解答:1

解説

立位時姿勢制御反応の足関節戦略

前方への傾きでは、背側にある脊柱起立筋ハムストリングス腓腹筋が活動している。

1.〇 正しい。腓腹筋は、足関節を底屈させる筋である。前方への傾きの制御で活動する。
2.× 大胸筋は、肩関節を屈曲・内転・内旋・水平内転させる筋である。
3.× 腹直筋は、体幹を屈曲させる筋である。後方への傾きの制御で活動する。
4.× 前脛骨筋は、足関節を背屈させる筋である。後方への傾きの制御で活動する。
5.× 大腿四頭筋は、膝関節を伸展させる筋である。後方への傾きの制御で活動する。

外乱による立位時姿勢制御反応について

以下の2つの方法で転倒防御に立位バランスをとる。

  1. 足関節戦略:足関節の運動でバランスをとる
    ①前方に重心が移動したとき → 脊柱起立筋・ハムストリングス・腓腹筋。
    ②後方に重心が移動したとき → 腹直筋・大腿四頭筋・前脛骨筋。
  2. 股関節戦略:足関節戦略の小さな動きでバランスを保ち、それでもバランスをとれなくなった際に股関節伸展・屈曲でバランスをとること。
    ①前方へ重心が移動したとき → 腹直筋、大腿四頭筋。
    ②後方へ重心が移動したとき → 脊柱起立筋、ハムストリングス。

※上記の戦略だけでは姿勢を保てない場合に、平衡反応の一つであるステップ反応が起こる。

 

 

 

 

 

24 運動による疲労時に筋内で増えるのはどれか。2つ選べ。

1. ATP
2. 乳酸
3. グリコーゲン
4. 水素イオン(H+)
5. クレアチンリン酸

解答:2,4

解説

嫌気的代謝(解糖系)とは?

解糖系とは、生体内に存在する生化学反応経路の名称であり、グルコースをピルビン酸などの有機酸に分解し、グルコースに含まれる高い結合エネルギー(ATP)を生物が使いやすい形に変換していくための代謝過程である。グルコースから生じたピルビン酸は、還元され最終産物として乳酸になる。このグルコースから乳酸への変換経路は、酸素の関与なしに起こりうるので、嫌気的代謝(解糖)と呼ばれる。

【クエン酸回路とは?】
クエン酸回路(TCA回路、クレブス回路、トリカルボン酸回路)とは、ミトコンドリアでアセチルCoAが二酸化炭素と水へと酸化されATPを生成する。グルコース→ピルビン酸→アセチルCoA→【クエン酸回路】(オキサロ酢酸)+クエン酸→イソクエン酸→α-ケトグルタル酸→サクシニルCoA→コハク酸→フマル酸→リンゴ酸→オキサロ酢酸となる。

1.3.5.× ATP/グリコーゲン/クレアチンリン酸/は、運動によって消費される物質である。クレアチンリン酸は、骨格筋にとって重要なエネルギー貯蔵物質である。 ADPからの無酸素的なATPの生成に使われ、2~7秒程度の反応時間でクレアチンキナーゼによってリン酸基が外され、クレアチンに戻る。つまり、選択肢1.ATPは、エネルギー源として運動時に消費されるものである。選択肢3.グリコーゲンは、肝臓と筋に貯蔵されており、筋の収縮には筋グリコーゲンを分解してエネルギー源とする。選択肢5.クレアチニン酸は、好気性代謝時に筋内で増加する。
2.4.〇 正しい。乳酸/水素イオン(H+)は、運動による疲労時に筋内で増える。乳酸は、嫌気性代謝でピルビン酸から産生される。水素イオン(H+)は、クエン酸回路において、「ピルビン酸→活性酢酸」、「クエン酸→α-ケトグルタル酸」、「α-ケトグルタル酸→コハク酸」、「リンゴ酸→オキサロ酢酸」という4つの化学反応で、水素はNADH + H+ というかたちで放出される。また、「コハク酸→フマル酸」へ変化する過程で、FADH2 というかたちで水素(H+)が放出される。

 

 

 

 

 

25 SF-36で正しいのはどれか。

1. 効用値を算出する。
2. 4つの下位尺度がある。
3. 疾患特異的尺度である。
4. アウトカムの指標となる。
5. 全般的に主観的満足感を評価する。

解答:

解説

SF-36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey)とは?

SF-36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey)は質問紙法により、対象者の健康関連QOLを包括的に評価する尺度である。
8つの健康概念を測定する。
【測定項目】①身体機能、②日常生活役割機能(身体)、③体の痛み、④全体的健康感、⑤活力、⑥社会生活機能、⑦日常生活役割機能(精神)、⑧心の健康

1.× 「効用値(健康状態への価値づけ)」ではなく、健康関連QOLを算出する。SF-36は、健康やQOLに関連する8つの概念領域を下位尺度として測定する。それぞれ0~100点の範囲の得点で表され、高得点ほど良いQOL状態を表す。
2.× 「4つ」ではなく、8つの下位尺度がある。①身体機能、②日常役割機能(身体)、③体の痛み、④全体的健康感、⑤活力、⑥社会生活機能、⑦日常役割機能(精神)、⑧心の健康である。それぞれ独立した1つの尺度として利用することも可能である。
3.× 「疾患特異的尺度」ではなく、包括的尺度である。特定の疾患や床上に限らず、すべての疾患や健康人に共通の要素を測定しようとするものである。
4.〇 正しい。アウトカムの指標となる。アウトカム指標とは、施策・事業の実施により発生する効果・成果(アウトカム)を表す指標のことである。例えば、「交通安全の推進」という施策を構成する「歩道の設置」という事業があるとすれば、「歩道を年度内に○○m設置する」というのがアウトプットであり、その成果として「交通事故件数が減少する」ということが「アウトカム」である。
5.× SF-36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey)は、「全般的に主観的満足感」ではなく、健康関連QOLを測定するため評価方法である。

 

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