第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説【午後問題36~40】

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36 水の物理的特性で水中運動療法における生理的な作用に影響しないのはどれか。

1. 水圧
2. 浮力
3. 抵抗
4. 屈折
5. 熱伝導率

解答:

解説

水治療法の生理学的作用
  1. 温熱寒冷作用
  2. 浮力による作用
  3. 静水圧による作用
  4. 同水圧による作用
  5. 精神作用

1.〇 正しい。水圧は、水の物理的特性で水中運動療法における生理的な作用である。水圧の特性として、水面から深いほど水圧がかかる。また、水中で立位をとると下肢に強い圧力がかかり、静脈血が押し出されて、静脈還流量が増加する。
2.〇 正しい。浮力は、水の物理的特性で水中運動療法における生理的な作用である。浮力により下肢への荷重量が軽減する。そのため、間接に対する負荷を軽減しながら訓練を行える。
3.〇 正しい。抵抗は、水の物理的特性で水中運動療法における生理的な作用である。空気中よりも水中の方が抵抗が大きいため、感覚フィードバックを受けやすい。抵抗の種類として、①摩擦抵抗、②粘性抵抗、③渦抵抗、④造波抵抗などがあげられる。
4.× 屈折は、生理的な作用に関与しない。なぜなら、屈折は椎中を光が進む方向の変化であり、運動には関与しないため。ちなみに、物理療法の中で屈折に密接に関与するのは、極超短波である。
5.〇 正しい。熱伝導率は、水の物理的特性で水中運動療法における生理的な作用である。水中の熱伝導率は、空気中の23倍であり、空気中より効率よく温熱効果・寒冷効果が得られる。

 

 

 

 

 

37 持久力トレーニングの効果として正しいのはどれか。

1. 呼吸数の増加
2. 1回拍出量の減少
3. 安静時心拍数の減少
4. 末梢血管抵抗の増加
5. 最大酸素摂取量の減少

解答:3

解説

1.× 呼吸数の「増加」ではなく減少する。なぜなら、心拍数の減少や毛細血管から骨格筋への酸素供給効率が良くなるため。したがって、肺活量と一回換気量・最大換気量が増大する。
2.× 1回拍出量の「減少」ではなく増加する。なぜなら、心機能が改善する効果があるため。1回拍出量とは、一回の心拍で心臓から送り出す血液量のことである。安静時・運動時それぞれの心拍出量増大を認める。
3.〇 正しい。安静時心拍数の減少である。なぜなら、持久力トレーニングにて、安静時と運動時それぞれ心拍出量増大を認め、一回拍出量も増加するため。
4.× 末梢血管抵抗の「増加」ではなく減少する。なぜなら、持久力トレーニングにて、末梢血管が開くこと(末梢血管抵抗が低下すること)により、毛細血管から骨格筋への酸素供給効率が良くなる(末梢での酸素供給が潤滑になる)ため。骨格筋の毛細血管密度は増加する。これにより高血圧リスクを低下させる。
5.× 最大酸素摂取量の「減少」ではなく増加する。なぜなら、心拍出量の増加によって全身の筋肉に酸素が供給されやすくなり、運動耐性が増加するため。運動負荷テストで徐々に運動負荷を強くしていくと、酸素を消費できる量は増えていくが、ある程度まで運動負荷が上がると、酸素消費(取り込み)量が頭打ちになる。最大酸素摂取量とはこの値のことで、肺からの酸素の取り込み、心臓などの循環機能などが影響する。

 

 

 

 

 

38 慢性非特異的腰痛の理学療法介入方法について、理学療法診療ガイドラインで強く推奨されているのはどれか。

1. 超音波
2. TENS
3. 腰椎牽引
4. 寒冷療法
5. 認知行動療法

解答:5

解説

1.× 超音波は、推奨グレードDである。
2.× TENS(経皮的末梢神経電気刺激法)は、腰痛に対して推奨グレードDである。ちなみに、頚部痛に対しては、推奨グレードAである。電気刺激により疼痛軽減の効果が期待できる。
3.× 腰椎牽引は、推奨グレードDである。
4.× 寒冷療法は、推奨グレードDである。ちなみに、温熱療法は推奨グレードAである。
5.〇 正しい。認知行動療法は、推奨グレードAである。

 

 

 

 

 

 

39 慢性閉塞性肺疾患のADL動作で最も息切れが生じやすいのはどれか。

1.食事
2.排尿
3.歯磨き
4.洗髪
5.ズボンの着脱

解答:

解説

(図引用:「息切れを増強させる4つの動作のイラスト(慢性呼吸器疾患)」看護roo!看護師イラスト集様HPより)

血中酸素飽和度が低下しやすい日常生活動作

① 排便(息を止めるため、呼吸のコントロールを行う)
② 肩まで湯船につかる(胸部が圧迫されるため、動作環境や方法を工夫する)
③ 洗髪、上衣更衣、洗体など(上肢を使うため、上肢挙上は片腕のみで、呼吸のコントロールを行う。)
④ズボンや靴下を履く(体を前屈して行うため、動作のスピードや方法を調整する。)

※入浴の生活指導:息切れがある場合は全身入浴を控え、半身浴やシャンプーハットを使用したシャワーなどで対応する。入浴中は酸素吸入を行わない場合が多いため、入浴時間は短めにする。

1.3.× 食事/歯磨きなど、呼吸が止まる(換気の減少)動作は、血中酸素飽和度は低下し息切れが起こる可能性もあるが、選択肢の中により息切れしやすい動作が含まれる。
2.× 排尿より排便の方が息切れをきたしやすい。排尿では、力んだりする動作は少ないため。一方、排便は、力んだり、呼吸が止まる(換気の減少)時が含まれる。
4.〇 正しい。洗髪が最も息切れをきたしやすい。なぜなら、洗髪は上肢を挙上して行うため負荷も大きく、胸郭の動きも制限されるため。さらに、反復動作のため血中酸素飽和度が低下して息切れを生じやすい。
5.× ズボンの着脱は、息切れをきたしやすい動作であるが、上衣の更衣の方が息切れをきたしやすい。ズボンの着脱と洗髪とを比較した場合、洗髪の方が手を上げる動作が含まれる分、息切れを伴いやすい。

慢性呼吸不全患者の日常生活における注意点
  1. 上肢挙上は片腕のみで行う。
  2. 呼吸のコントロールを行う。
  3. 動作のスピードや方法を調整する。
  4. 動作環境の工夫などを考慮する。

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40 転位のない大腿骨転子部骨折に対する観血的整復固定術後の理学療法として優先度の低いのはどれか。

1. 早期からの歩行練習
2. 脱臼予防肢位の指導
3. 早期からのROM練習
4. 大腿四頭筋の等尺性運動
5. 足関節の自動的底背屈運動

解答:2

解説

大腿骨近位部骨折の理学療法

大腿骨近位部骨折の理学療法は、身体機能低下および深部静脈血栓症予防のためにも、早期離床・早期立位歩行練習が推奨されている。また疼痛を適切に管理しながら、患側股・膝関節の可動域と筋力維持・増強を積極的に行う。

1.〇 早期からの歩行練習は優先度の高い。なぜなら、主に身体機能低下および深部静脈血栓症予防のため。歩行練習は、ベッドサイドまたはリハビリ室にて早期から開始する。目的として、歩行の安定性を高め、転倒リスクの軽減を図る。また、移動手段として実用的なレベルを早期に獲得し、活動量の低下を予防することが望ましい。
2.× 脱臼予防肢位の指導は優先度の低い。なぜなら、脱臼予防肢位の指導を行うのは、「観血的整復固定術」ではなく人工股関節置換術など骨頭を挿入した場合(脱臼の可能性が高い)であるため。つまり、大腿骨転子部骨折に対する観血的整復固定術後の脱臼リスクは、そこまで高くないため、優先度は低いと判断できる。ちなみに、大腿骨頸部骨折に対する人工股関節置換術後では、脱臼予防肢位の指導の重要性は非常に高くなる
3.〇 早期からのROM練習は優先度の高い。なぜなら、主に身体機能低下および深部静脈血栓症予防のため。したがって、術創部・疼痛などに注意しながら、術後はROMの維持・改善を目指す。術前から何らかの制限がある場合にはそれらも考慮し、股関節周囲だけでなく、腰椎・骨盤・膝関節など周囲の関節の状態・変化にも目を向けておく必要がある。
4.〇 大腿四頭筋の等尺性運動は優先度の高い。なぜなら、大腿四頭筋の筋力維持・強化は早期離床・歩行獲得にも重要であるため。また、術後は、足関節の底背屈や足指の運動を積極的に行い、下肢深部静脈血栓症のリスク回避・予防を図る。
5.〇 足関節の自動的底背屈運動は優先度の高い。なぜなら、術後は足関節の底背屈や足指の運動を積極的に行い、下肢深部静脈血栓症のリスク回避・予防を図るため。

 

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