第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説【午前問題16~20】

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16 46歳の男性。前日夜に冷たい風に当たり、翌朝目が覚めると右顔面の腫れぼったさを感じた。昼食時に食事が口からこぼれることに気が付き、近くの神経内科を受診した。開眼安静時の顔面の状態を下図に示す。
 この患者で正常に保たれる運動はどれか。

1. 額にしわを寄せる。
2. 眉をひそめる。
3. まぶたを閉じる。
4. 奥歯を嚙む。
5. 口唇を閉じ突き出す。

解答:4

解説

本症例のポイント

・46歳の男性。
・前日:夜に冷たい風に当たり、翌朝目が覚めると右顔面の腫れぼったさを感じた。
・昼食時:食事が口からこぼれることに気が付く。
→本症例は、右側の末梢性顔面神経麻痺が疑われる。急性の顔面神経麻痺とは、ある日突然顔の半分、あるいは一部分が思うように動かせなくなる状態である。その中で最も多いのが、「ベル麻痺」、「ハント症候群」という呼ばれるウイルスが顔面神経管の中の顔面神経に感染して生じる。

1.× 額にしわを寄せる運動(前頭筋)は障害される。中枢性の顔面神経麻痺の場合保たれる。
2.× 眉をひそめる運動(皺眉筋:表情筋)は障害される。なぜなら、表情筋は顔面神経支配であるため。
3.× まぶたを閉じる運動(眼輪筋)は障害される。なぜなら、眼輪筋は顔面神経支配であるため。したがって、兎眼となる。
4.〇 奥歯を嚙む運動(咀嚼筋)は保たれる。なぜなら、咀嚼筋は、三叉神経(下顎神経)支配であるため。顔面神経麻痺では咀嚼運動は障害されない。
5.× 口唇を閉じ突き出す運動(口輪筋)は障害される。なぜなら、口輪筋は顔面神経支配であるため。

Ramsay Hunt症候群(耳性帯状疱疹)

膝神経節付近に潜伏感染していた水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化が原因と考えられている。

【3主徴】
①一側の耳介外耳道の疱疹
②同側の顔面神経麻痺
③第Ⅷ脳神経症状(めまい・感音難聴)

 

 

 

 

 

17 右人工股関節置換術(後方侵入)後の患者の靴下の着脱動作として正しいのはどれか。2つ選べ。

解答:2,4

解説

後方アプローチの禁忌肢位は、股関節の過屈曲 + 内転 + 内旋である。ちなみに、前方アプローチの禁忌肢位は、股関節の伸展 + 内転 + 外旋である。

1.5.× 過屈曲が認められる。
2.〇 正しい。あぐら座位では脱臼のリスクは低い。
3.× 内旋が認められる。
4.〇 正しい。ソックスエイド、リーチャーなどの自助具を使って靴下を着脱する。

 

 

 

 

 

18 85歳の女性。脳梗塞による左片麻痺。歩行練習中に下肢装具の条件を変えて歩行を比較したところ、底屈制動を軽減して中足足根関節部以遠の可撓性を高めることで歩幅が増加した。
 改善に影響を与えた麻痺側の主な歩行周期はどれか。

1. 荷重応答期
2. 立脚中期
3. 立脚後期
4. 遊脚中期
5. 遊脚後期

解答:3

解説

本症例のポイント

・85歳の女性(脳梗塞による左片麻痺)
・下肢装具の歩行:底屈制動を軽減して中足足根関節部以遠の可撓性を高めることで歩幅が増加した。
→底屈制動を軽減して中足足根関節部以遠の可撓性を高めたことで、より立脚後期のフォアフットロッカー機能が働き歩幅が増加したことが考えられる。したがって、選択肢3. 立脚後期が正しい。問題文の「底屈制動を軽減したこと」→「立脚相での踵接地後の底屈について装具の制動力を弱める」、「中足足根関節部以遠の可撓性を高める」→「装具の前足部を柔らかくする(動きをよくする)」と解釈する。

※可撓性(かとうせい)とは、たわめることが可能なことである。可撓性足継手は、下垂足や軽度の痙性麻痺に用いることが多い。

1.× 荷重応答期(足底接地期)は、底屈制動を軽減するため、歩幅の改善に働かない
2.× 立脚中期は、足底全面で荷重されているため、歩幅の改善に働かない。仮に、下肢の支持性が低く、装具の支持性を高めるのであれば、この時期が歩幅の増加に影響すると考えられる。
3.〇 正しい。立脚後期では、荷重が前足部に移り遊脚相に向けて蹴りだす準備をする。装具の前足部を柔らかくすることで、蹴りだすまでの「ため」を作ることができて、歩幅が増加(改善)する
4.× 遊脚中期/遊脚後期など遊脚相全般において、痙縮による尖足傾向にある症例では、背屈補助を強めることで足部のクリアランスが改善され歩幅が増加することはあるが、前足部を柔らかくしているため、尖足が十分矯正されず、かえって歩幅は低下する

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19 脊髄損傷患者の車椅子上での除圧動作を図に示す。損傷レベルの上位から下位への順序で正しいのはどれか。

1. B→C→D→A
2. B→D→C→A
3. C→B→A→D
4. D→B→A→C
5. D→C→B→A

解答:2(B→D→C→A)

解説

A.両手でアームサポートを把持し、push upが行えている(上腕三頭筋が十分に働いている)。C7残存と考えられる。
B.体幹・頚部伸展(僧帽筋)は、働いているように見える。自分自身では除圧困難であるため、介助者が車椅子を傾けることで坐骨部の除圧を行っている。ただ、その時に体幹の伸展はみられている。C4残存と考えられる。
C.片手で体幹回旋を伴う除圧を行っている。C6残存と考えられる。
D.体幹屈曲にて除圧を行っている。C5残存と考えられる。

したがって、選択肢2. B→D→C→Aが正しい。

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

 

 

 

 

 

 

20 2歳の女児。痙直型四肢麻痺。臥位では頭部コントロール良好で、背臥位から腹臥位への寝返りが可能である。背臥位と腹臥位での様子を図に示す。
 この時期に優先して行う理学療法で最も適切なのはどれか。

1. 下肢の筋力増強
2. 介助下での歩行練習
3. 椅子からの立ち上がり練習
4. 立位での陽性支持反射の促通
5. 座位での体幹の立ち直り反応の促通

解答:5

解説

 痙直型脳性麻痺では、錐体路障害による両下肢痙性(両股関節の内転・内旋・膝関節伸展、および尖足)となる。つまり、両下肢の分離運動が困難である。また、両下肢と比較して両上肢の麻痺は軽度である。痙性麻痺を主症状として、筋トーヌス亢進、深部腱反射亢進、病的反射亢進、クローヌス出現、おりたたみナイフ現象がみられる。理学療法では、亢進した筋緊張を抑制し、病的反射の抑制、適切な反射の促通、運動パターンの学習を行う。

1.× 下肢の筋力増強は優先度が低い。なぜなら、下肢筋力増強は、かえって下肢の筋緊張を亢進させるため。筋力増強より筋緊張の抑制を図るのが適切である。本症例は、筋緊張性迷路反射の残存(腹臥位で上下肢の屈曲位で筋緊張)がみられる。共同運動を抑制し、体幹・四肢の分離運動を行っていく。
2.3.× 介助下での歩行練習/椅子からの立ち上がり練習を行うのは時期尚早である。本症例は、現段階では寝返りまで可能であることから、次に目指すべきであるのは「座位の獲得」と考える。
4.× 立位での陽性支持反射の促通は優先度が低い。立位での陽性支持反射とは、体幹を支えながら足底をつけて立たせるようにすると、両下肢・体幹が伸展して立位を取ろうとする原始反射の1つである。通常8か月頃までに消失する。したがって、原始反射は本来消失していくものであるため、陽性支持反射を強化して利用することは原則行わない。また、陽性支持反射により、下肢全体の伸展筋の筋緊張が亢進し、股関節伸展・内転・内旋位および足部の尖足を助長させる可能性が高いため不適切である。
5.〇 正しい。 座位での体幹の立ち直り反応の促通は、選択肢の中で最も優先度の高い理学療法である。なぜなら、寝返りの次の発達段階である「座位」に移行するため。

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