第51回(H28) 作業療法士国家試験 解説【午前問題6~10】

 

6 52歳の女性。関節リウマチと診断されて3年が経過した。SteinbrockerのステージⅡ、クラス2。日常生活で両手関節の痛みを訴えている。観察された動作を図に示す。
 関節保護の指導が必要な動作はどれか。

解答4

解説

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は7:3前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

関節保護の原則とは?

関節リウマチ患者に対する日常生活の指導は、関節保護の原則に基づき行う。関節保護の原則とは、疼痛を増強するものは避けること、安静と活動のバランスを考慮すること、人的・物的な環境を整備することがあげられる。変形の進みやすい向きでの荷重がかからないように手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具が求められる。

1.× 図のような「カップを持つ」動作は、関節保護できている。なぜなら、両手でカップを持って、特定の関節への過度な負担がなく行えているため。
2.× 図のような「茶碗を持つ」動作は、関節保護できている。なぜなら、茶碗の底を手掌全体で保持し、関節への負担が少ないため。
3.× 図のような「テーブルを拭く」動作は、関節保護できている。なぜなら、手掌と手指全体でテーブルに圧をかけ、台拭きを前後に動かしているため。ちなみに、尺屈・橈屈方向に過度な力がかからないようにする。
4.〇 図のような「フライパンを持つ」動作は、関節保護の指導が必要である。なぜなら、片手でフライパンを持ち、手関節が尺屈している様子がみられるため。この動作は、手関節の尺側偏位を助長する。
5.× 図のような「ポットで水を注ぐ」動作は、関節保護できている。なぜなら、ポットを両手で保持し、特定の関節への負担がかからないため。

Steinbrockerの病気分類

Steinbrockerのステージ分類とは、関節リウマチ患者の関節破壊の程度を病期に合わせて分類する方法である。一方、クラス分類とは、関節リウマチの機能障害度をクラス別に分類する方法である。ステージ(クラス)ⅠからⅣの4段階に分類し、進行度を評価する。

【ステージ分類:リウマチの病期】
ステージⅠ:X線検査で骨・軟骨の破壊がない状態。
ステージⅡ:軟骨が薄くなり、関節の隙間が狭くなっているが骨の破壊はない状態。
ステージⅢ:骨・軟骨に破壊が生じた状態。
ステージⅣ:関節が破壊され、動かなくなってしまった状態。

【クラス分類:機能障害度】
クラスⅠ:健康な方とほぼ同様に不自由なく生活や仕事ができる状態。
クラスⅡ:多少の障害はあるが普通の生活ができる状態。
クラスⅢ:身の回りのことは何とかできるが、外出時などには介助が必要な状態。
クラスⅣ:ほとんど寝たきりあるいは車椅子生活で、身の回りのことが自分ではほとんどできない状態。

 

 

 

 

 

 

7 56歳の女性。右利き。脳出血で右片麻痺となり、保存的療法にて発症後7日が経過した。意識は清明。右上肢および手指はBrunnstrom法ステージⅠ。右肩関節に軽度の亜脱臼を認めるが、疼痛や浮腫はない。
 現時点でこの患者の右上肢に行う治療として最も適切なのはどれか。

1. 筋再教育訓練
2. 利き手交換訓練
3. 間欠的機械圧迫
4. 渦流浴
5. パンケーキ型装具装着

解答1

解説

本症例のポイント

・56歳の女性(右利き、脳出血、右片麻痺)
・保存的療法にて発症後7日が経過。
・意識清明。右上肢および手指はBrunnstrom法ステージⅠ。右肩関節に軽度の亜脱臼を認めるが、疼痛や浮腫はない。
→本症例は、保存的療法にて発症後7日が経過していることから、脳卒中急性期である。右上肢および手指の麻痺が弛緩性であり、肩関節に軽度亜脱臼がみられることから、①拘縮や疼痛防止のための良肢位保持や、②関節可動域訓練などを行う時期である。ただし、弛緩性麻痺であるため、愛護的に関節可動域訓練を行う。随意性が低いため、他動運動を日に数回行う。

 1.〇 正しい。筋再教育訓練は現時点でこの患者の右上肢に行う治療である。筋再教育訓練とは、骨格筋の随意運動の回復を目的とした訓練である。筋再教育訓練のひとつにPNF(proprioceptive neuromuscular facilitation:固有受容性神経筋促通法)があり、これは固有受容器の刺激により神経筋機構の反応を促進する方法である。末梢神経疾患のみでなく、中枢神経疾患の治療としても用いられる。①促進要素、②特殊テクニック、③促進パターンの3つから構成される。固有受容器とは、身体の位置や動きに関する情報をもたらす受容器(筋紡錘,ゴルジの腱器官,関節の受容器,前庭迷路受容器)のことをいう。本症例の麻痺は、弛緩性であるため、随意運動を促す必要がある。意識も清明であることから、自動介助運動を指導するとよい。また、肩関節亜脱臼に対して、肩甲骨周囲筋、肩関節周囲筋の神経筋再教育や筋力増強が有効である。
2.× 利き手交換訓練と判断するのは時期尚早である。なぜなら、保存的療法にて発症後7日が経過した段階であるため。利き手交換は、廃用手を促進しかねず、少なくとも発症1か月は麻痺の回復の程度を観察したい。脳卒中発症後2週間以内には、発症前と異なる皮質マッピングを再構成し始め、発症後1ヶ月はシナプス可塑性が高められる最も重要な時期であり、回復の大部分は、発症後3ヶ月以内におこるとされている。特に、運動麻痺が軽度~中等度の症例では、この時期にいかに麻痺手の使用頻度を増やすかが、機能予後に大きく影響する。(参考:「上肢機能障害に対する治療」)
3.× 間欠的機械圧迫の優先度は低い。なぜなら、本症例は、現時点で浮腫はみられていないため。間欠的機械圧迫とは、患肢から体幹へのリンパを促すものであり、主に浮腫に対して行われる。
4.× 渦流浴の優先度は低い。なぜなら、現時点で疼痛はみられていないため。渦流浴とは、患部を温水の入った浴槽につけ、浴水による静水圧、温熱効果に加えて、過流、気泡、動水圧によるマッサージ効果を局所に与えるものである。これにより、麻痺した上下肢の血行障害、慢性炎症、関節リウマチ、慢性関節炎による疼痛、筋スパズム・痙性の緩和などを図る。
5.× パンケーキ型装具装着の優先度は低い。なぜなら、本症例は、現時点で弛緩性麻痺の段階で、痙縮がみられていないため。パンケーキ型装具装着は、主に脳卒中で手指の麻痺による変形に対して矯正する装具である。上腕骨顆上骨折後のフォルクマン拘縮などにも適応となる。

 

 

 

 

 

8 55歳の男性。脊髄小脳変性症。発症後3年経過。協調運動障害によってSTEF右46点、左48点である。
 この患者のパーソナルコンピュータ使用に適しているのはどれか。

解答4

解説

”脊髄小脳変性症とは?多系統萎縮症とは?”

脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)

多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)

本症例のポイント

・55歳の男性(脊髄小脳変性症)
・発症後3年経過、協調運動障害によってSTEF右46点、左48点
→STEF(Simple Test for Evaluating Hand Function:簡易上肢機能検査)が100点満点のうち右46点、左48点であることから、脊髄小脳変性症の障害の進行、両上肢の把持・移動の能力は著しく低下していることが考えられる。

1.× タイピングエイドは、主に関節リウマチや手指に麻痺がある人に用いられることが多い。脊髄小脳変性症では、運動失調や測定異常があるため目的物に到達することが難しい。
2.× PSB(ポータブル スプリング バランサー)は、高位脊髄損傷、筋ジストロフィー、腕神経叢麻痺、多発性筋炎、筋萎縮性側索硬化症、Guillain-Barre症候群などで適応となる。わずかな力でも自由に自分の意思で上肢を動かすことができる。
3.× BFO(Balanced Forearm OrthosisまたはBall bearing Feeder Orthosis)は、主に第4,5頸髄損傷者に用いられる。患者の前腕を支えてごくわずかの力で上肢の有益な運動を行なわせようとする補装具の一種である。
4.〇 正しい。キーボードカバーは、振戦があっても他のキーに触れずに目的のキーだけを押すことを補助するものである。適応疾患は、運動失調のある脊髄小脳変性症アテトーゼ型脳性麻痺などに用いられる。
5.× トラックボールマウスは、ボールを転がすことでPC上のマウスポインタを移動させることができるマウスである。通常のマウス操作が困難(マウスが重たい)場合などに用いられ、主に脊髄損傷者に用いられる。

STEF (Simple Test for Evaluating Hand Function:簡易上肢機能検査)とは?

 STEF (Simple Test for Evaluating Hand Function:簡易上肢機能検査)とは、上肢の動作能力(特に動きの速さ)を客観的に、しかも簡単かつ短時間(20~30分)に把握するための評価法である。10種類のテストからなり、それぞれ大きさや形の異なる物品を把持して移動させ、一連の動作に要した時間を計測し、所要時間を決められた点数(1~10点)に当てはめて、右手と左手との差を左右別に合計点数を算出する。また参考値との比較も可能である。

 

 

 

 

 

 

9 57歳の女性。2か月前から夜間に右手の痛みで目が覚めることが続いている。3週前から右の母指示指と中指とにしびれが生じ、近くの整形外科を受診したところ手根管症候群と診断された。保存療法でスプリントを装着することになった。
 この患者に適したスプリントはどれか。

解答1

解説

本症例のポイント

・57歳の女性(手根管症候群)。
・2か月前:夜間に右手の痛みで目が覚めることが続いている。
・3週前:右の母指示指と中指とにしびれが生じる。
・保存療法(スプリント装着)
→本症例は、手根管症候群である。手根管症候群は、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。手根管(手関節付近の正中神経)を4~6回殴打すると、支配領域である母指から環指橈側および手背の一部にチクチク感や蟻走感が生じる(Tinel徴候陽性)。Tinel徴候のほか、ダルカン徴候(手根管部を指で圧迫するとしびれ感が増悪する)やファーレン徴候(Phalen徴候:手首を曲げて症状の再現性をみる)も陽性となる場合が多い。

1.〇 正しい。図は「リストサポート装具」である。ストサポート装具は、手関節を中間位で固定し、安静保持を目的とした装具である。手根管症候群、手関節腱鞘炎、関節リウマチなどに適応がある。
2.× 図は「コックアップスプリント(手関節固定装具)」である。適応は、橈骨神経麻痺で、手関節を軽度背屈位にして、安定保持を目的とした装具である。
3~4.× 図は「母指固定装具」である。母指腱鞘炎、母指CM関節症などに使用される。母指は橈側外転位で、母指MPおよびCM関節を固定する。
5.× 図は「肘から手関節にかけての固定用装具」である。前腕部の骨折に対して手術後に使用される。

 

 

 

 

 

 

10 25歳の女性。脊髄完全損傷(第5胸髄節まで機能残存)。車椅子(寸法:全長85cm、全幅55 cm、前座高42 cm)での自立生活に向けて図のように住宅改修を行った。
 考えられる問題点はどれか。

1. ①のエレベーターに乗るとバックで出なければならない。
2. ②の玄関スロープを上ることができない。
3. ③のトイレに入った後で扉を閉めることができない。
4. ④の洗体台が高く移乗できない。
5. ⑤の車椅子用台所シンクに対面できない。

解答3

解説

車椅子の通行幅

数値:【建築物移動等円滑化基準】(建築物移動等円滑化誘導基準)
玄関出入口の幅:【80cm】(120cm)
居室などの出入口:【80cm】(90cm)
廊下幅:【120cm】(180cm)※車椅子同士のすれちがいには180cm
スロープ幅:【120cm】(150cm)
スロープ勾配:【1/12以下】(1/12以下、屋外は1/15)
通路の幅:【120cm】(180cm)
出入口の幅:【80cm】(90cm)
かごの奥行:【135cm】(135cm)
かごの幅(一定の建物の場合):【140cm】(160cm)
乗降ロビー:【150cm】(180cm)

(※参考:「バリアフリー法」国土交通省HPより)
(※参考:「主要寸法の基本的な考え方」国土交通省様HPより)

1.× ①のエレベーターに乗るとバックで出る必要はない。なぜなら、車椅子の回転直径の150cmを満たすため。エレベーター内で回転して正面から出ることが可能である。
2.× ②の玄関スロープを上ることができる。なぜなら、スロープの勾配が1/12であるため。スロープの勾配は、バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)で1/12を超えないことと定められている。スロープに十分な長さが設定できるなど条件が整う場合は、1/15~1/20が推奨される。
3.〇 正しい。③のトイレに入った後で扉を閉めることができない。なぜなら、車椅子(全長85cm、全幅55cm)であるため。車椅子の場合は開き戸ではなく、引き戸の方が望ましい。
4.× ④の洗体台に移乗可能である。なぜなら、洗体台(高さ45cm)は、車椅子の前座高42cmと合っているため。
5.× ⑤の車椅子用台所シンクに対面できる。なぜなら、有効幅が120cmあれば、設問にある車椅子の大きさならば対面可能であるため。ちなみに、90°の方向転換は幅90cmあれば行える。

 

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