第51回(H28) 作業療法士国家試験 解説【午前問題6~10】

 

6 52歳の女性。関節リウマチと診断されて3年が経過した。SteinbrockerのステージⅡ、クラス2。日常生活で両手関節の痛みを訴えている。観察された動作を図に示す。
 関節保護の指導が必要な動作はどれか。

解答4

解説

関節保護の方法

①手指など小さな関節に負担をかけない。

②関節にかかる力を分散させる。

③変形の進みやすい向きでの荷重がかからないようにする。

1.× 図のような「カップを持つ」動作は、関節保護できている。なぜなら、両手でカップを持って、特定の関節への過度な負担がなく行えているため。
2.× 図のような「茶碗を持つ」動作は、関節保護できている。なぜなら、茶碗の底を手掌全体で保持し、関節への負担が少ないため。
3.× 図のような「テーブルを拭く」動作は、関節保護できている。なぜなら、手掌と手指全体でテーブルに圧をかけ、台拭きを前後に動かしているため。ちなみに、尺屈・橈屈方向に過度な力がかからないようにする。
4.〇 正しい。図のような「フライパンを持つ」動作は、関節保護の指導が必要である。なぜなら、片手でフライパンを持ち、手関節が尺屈している様子がみられるため。この動作は、手関節の尺側偏位を助長する。
5.× 図のような「ポットで水を注ぐ」動作は、関節保護できている。なぜなら、ポットを両手で保持し、特定の関節への負担がかからないため。

 

 

 

 

 

 

7 56歳の女性。右利き。脳出血で右片麻痺となり、保存的療法にて発症後7日が経過した。意識は清明。右上肢および手指はBrunnstrom法ステージⅠ。右肩関節に軽度の亜脱臼を認めるが、疼痛や浮腫はない。
 現時点でこの患者の右上肢に行う治療として最も適切なのはどれか。

1. 筋再教育訓練
2. 利き手交換訓練
3. 間欠的機械圧迫
4. 渦流浴
5. パンケーキ型装具装着

解答1

解説

 本症例は、保存的療法にて発症後7日が経過していることから、脳卒中急性期である。右上肢および手指の麻痺が弛緩性であり、肩関節に軽度亜脱臼がみられることから、①拘縮や疼痛防止のための良肢位保持や、②関節可動域訓練などを行う時期である。ただし、弛緩性麻痺であるため、愛護的に関節可動域訓練を行う。随意性が低いため、他動運動を日に数回行う。

1.〇 正しい。筋再教育訓練とは、骨格筋の随意運動の回復を目的とした訓練である。本症例の麻痺は、弛緩性であるため、随意運動を促す必要がある。意識も清明であることから、自動介助運動を指導するとよい。また、肩関節亜脱臼に対して、肩甲骨周囲筋、肩関節周囲筋の神経筋再教育や筋力増強が有効である。
2.× 利き手交換訓練は、左上肢に対して行う。なぜなら、本症例は右利きであるため。
3.× 間欠的機械圧迫とは、患肢から体幹へのリンパを促すものであり、主に浮腫に対して行われる。本症例は、現時点で浮腫はみられていないため、優先度は低い。
4.× 渦流浴は温熱療法の一種で、主に疼痛緩和の目的で行われる。本症例は、現時点で疼痛はみられていないため、優先度は低い。
5.× パンケーキ型装具装着は、主に脳卒中で手指の麻痺による変形に対して矯正する装具である。本症例は、現時点で弛緩性麻痺の段階で、痙縮がみられていないため、優先度は低い。

 

 

 

 

 

 

8 55歳の男性。脊髄小脳変性症。発症後3年経過。協調運動障害によってSTEF右46 点、左48点である。
 この患者のパーソナルコンピュータ使用に適しているのはどれか。

解答4

解説

 脊髄小脳変性症は、小脳・脊髄に病変を持つ原因不明の変性疾患である。症状として、運動失調・測定異常があるため目的物に到達することが難しい可能性が高い。本症例ではSTEF(Simple Test for Evaluating Hand Function:簡易上肢機能検査)が100点満点のうち右46点、左48点であり、年齢から考えても両上肢の把持・移動の能力は著しく低下しており、障害が進行していることがわかる。

1.× タイピングエイドは、主に関節リウマチや手指に麻痺がある人に用いられることが多い。
2.× PSB(ポータブル スプリング バランサー)は、高位脊髄損傷、筋ジストロフィー、腕神経叢麻痺、多発性筋炎、筋萎縮性側素硬化症、Guillain-Barre症候群などで適応となる。わずかな力でも自由に自分の意思で上肢を動かすことができる。
3.× BFO(Balanced Forearm OrthosisまたはBall bearing Feeder Orthosis)は、主に第4,5頭髄損傷者に用いられる。患者の前腕を支えてごくわずかの力で上肢の有益な運動を行なわせようとする補装具の一種である。
4.〇 正しい。キーボードカバーは、振戦があっても他のキーに触れずに目的のキーだけを押すことを補助するものである。適応疾患は、運動失調のある脊髄小脳変性症アテトーゼ型脳性麻痺などに用いられる。
5.× トラックボールマウスは、ボールを転がすことでPC上のマウスポインタを移動させることができるマウスである。通常のマウス操作が困難(マウスが重たい)場合などに用いられ、主に脊髄損傷者に用いられる。

STEF(Simple Test for Evaluating Hand Function:簡易上肢機能検査)

 上肢の動作能力、特に動きの速さを客観的に、しかも簡単かつ短時間(20~30分)に把握するための評価法である。10種類のテストからなり、それぞれ大きさや形の異なる物品を把持して移動させ、一連の動作に要した時間を計測し、所要時間を決められた点数(1~10点)に当てはめて、右手と左手との差を左右別に合計点数を算出する。また参考値との比較も可能である。

 

 

 

 

 

 

9 57歳の女性。2か月前から夜間に右手の痛みで目が覚めることが続いている。3週前から右の母指示指と中指とにしびれが生じ、近くの整形外科を受診したところ手根管症候群と診断された。保存療法でスプリントを装着することになった。
 この患者に適したスプリントはどれか。

解答1

解説

 手根管症候群は、屈筋支帯の背側(手根管領域)で正中神経が圧迫されることによって起こる絞振性障害である。手関節を掌屈にすると、疼痛および正中神経支配域の知覚異常の増悪(Phalen test陽性)を認める。したがって、正中神経が圧迫されず、疼痛や知覚異常が起こりにくい肢位に手関節を固定できる装具を選択する。

1.〇 正しい。リストサポート装具は、手関節を中間位で固定し、安静保持を目的とした装具である。手根管症候群、手関節腱鞘炎、関節リウマチなどに適応がある。
2.× コックアップスプリントは、機能的肢位保持のための装具である。脳血管障害の拘縮予防などに適応がある。手関節を機能的肢位に保持しているが、手指を固定する必要がないため不適切である。
3.× 母指腱鞘炎などに使用される母指固定装具である。母指は橈側外転位で、母指MPおよびCM関節を固定する。手関節の固定はしない
4.× 母指CM関節症などに使用されている母指固定装具である。母指対立位を保持して固定する。手関節の固定はしない
5.× 肘から手関節にかけての固定用装具である。前腕部の骨折に対して手術後に使用される。

 

 

 

 

 

 

10 25歳の女性。脊髄完全損傷(第5胸髄節まで機能残存)。車椅子(寸法:全長85cm、全幅55 cm、前座高42 cm)での自立生活に向けて図のように住宅改修を行った。
 考えられる問題点はどれか。

1. ①のエレベーターに乗るとバックで出なければならない。
2. ②の玄関スロープを上ることができない。
3. ③のトイレに入った後で扉を閉めることができない。
4. ④の洗体台が高く移乗できない。
5. ⑤の車椅子用台所シンクに対面できない。

解答3

解説

車椅子の通行に関する基礎知識

①車椅子と人のすれちがいには140cm。
②車椅子同士のすれちがいには180cm。
③エレベータースペースとしてはドアが80cm以上。
④エレベーター内が幅135cm以上、奥行き140cm以上。

1.× ①のエレベーターに乗るとバックで出る必要はない。なぜなら、車椅子の回転直径の150cmを満たすため。エレべーター内で回転して正面から出ることが可能である。
2.× ②の玄関スロープを上ることができる。なぜなら、スロープの勾配が1/12であるため。スロープの勾配は、バリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)で1/12を超えないことと定められている。スロープに十分な長さが設定できるなど条件が整う場合は、1/15~1/20が推奨される。
3.〇 正しい。③のトイレに入った後で扉を閉めることができない。なぜなら、車椅子(全長85cm、全幅55cm)であるため。車椅子の場合は開き戸ではなく、引き戸の方が望ましい。
4.× ④の洗体台に移乗可能である。なぜなら、洗体台(高さ45cm)は、車椅子の前座高42cmと合っているため。
5.× ⑤の車椅子用台所シンクに対面できる。なぜなら、有効幅が120cmあれば、設問にある車椅子の大きさならば対面可能であるため。ちなみに、90°の方向転換は幅90cmあれば行える。

 

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