第51回(H28) 作業療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

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26 乳児期にフロッピーインファントの状態を示さない疾患はどれか。

1. Duchenne型筋ジストロフィー
2. 福山型筋ジストロフィー
3. Werdnig-Hoffmann 病
4. Prader-Willi 症候群
5. 失調型脳性麻痺

解答1

解説

フロッピーインファント(floppy infant)とは?

 フロッピーインファント(floppy infant )とは、全身の筋緊張が極度に低下し、やわらかで、だらりとしている乳幼児をさす用語である。Scarf徴候(スカーフ徴候)やfrog position(蛙様肢位)はその所見である。原因としては、脳性麻痺や染色体異常などの中枢神経障害のほか、脊髄前角細胞障害(脊髄性筋萎縮症など)、筋に原因がある場合(重症筋無力症、筋ジストロフィー)、代謝異常の場合(糖原病など)がある。

1.× Duchenne型筋ジストロフィーとは、幼児期から始まる筋力低下・動揺性歩行・登攀性歩行・仮性肥大を特徴とするX連鎖劣性遺伝病である。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。
2.〇 正しい。福山型筋ジストロフィーとは、精神遅滞・筋力低下・脳形成不全を主徴とする常染色体劣性遺伝病である。 先天性筋ジストロフィー症の中で日本では一番頻度が高く、小児期進行性ジストロフィー症では、デュシェンヌ型についで頻度が多い。フロッピーインファント(floppy infant )を呈する。
3.〇 正しい。Werdnig-Hoffmann病(ウェルドニッヒ・ホフマン病:脊髄性筋萎縮症)とは、脊髄前角にある運動神経細胞の変性がおこり、進行性に筋力低下・筋萎縮を呈する運動神経疾患である。 運動症状の程度は乳児期早期に発症する重症型から、健康な方とほぼ同様の生活をおくられる型まで、程度は多岐にわたる。生後6か月までに発症し、下位運動ニューロン障害によりフロッピーインフアントを呈する。
4.〇 正しい。Prader-Willi症候群(プラダー・ウィリ症候群)とは、生後すぐから力が弱く、呼吸や哺乳が障害される。 3歳を過ぎたころから食欲が抑制できず、過食と肥満となり、 中度の知的障害を合併する。 その他に、外性器の低形成、小さな手足、特徴的な顔貌を示す症候群である。染色体異常が原因である。
5.〇 正しい。失調型脳性麻痺とは、脳性麻痺の小児の5%未満にみられ、体の動きがうまく協調せず、筋力の低下がみられる。物に手を伸ばしたときにふるえるような動き(ある種の振戦)がみられる(小脳障害により共同運動や平衡機能障害)。

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27 OSAについて正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 自己と環境についての質問で構成されている。
2. 作業の遂行度を10段階で把握する。
3. 人間作業モデルに基づいている。
4. 自己の興味の種類を把握する。
5. 行動観察評価である。

解答1/3

解説

OSA (Occupational Self Assessment:作業に関する自己評価)とは?

 OSA (Occupational Self Assessment:作業に関する自己評価)とは、人間作業モデルの作業に関する自己評価を行うための方法である。質問紙により、患者が現在の自分自身の作業機能状態を評価し、改善したい項目の優先度を記す。これに基づいて、患者が作業療法士と協働して作業機能を高めていくものである。

1.〇 正しい。自己と環境についての質問で構成されている。「自己」と「環境」の2部構成であり、「自己」に関しては、①意志、②習慣化、③遂行技能の3つの構成要素に分け、それに「環境」が加わる。
2.× 作業の遂行度を、「10段階」ではなく3段階または4段階で把握する。「自己」の3つの構成要素と「環境」に関しての項目を設け、各々〔1点(問題あり)・2点(まずまず)・3点(非常に良い)〕の3段階、または、〔問題あり・やや問題・良い・非常に良い〕の4段階で評価する。
3.〇 正しい。人間作業モデルに基づいている。作業モデルとは、大きく分けて➀意志、➁習慣、➂遂行能力、➃環境という相互に関係する要素に着目するものである。OSA (Occupational Self Assessment:作業に関する自己評価)は、人間作業モデルの主要因(意志・習慣化・遂行・環境)に関する質問を行い、クライエントが価値を置くものは何か、また、それに対して現在どのように感じているかを自己評価により明らかにすることで、患者と医療者間のコミュニケーションを促進する。
4.× 自己の興味の種類を把握するものではない。OSA (Occupational Self Assessment:作業に関する自己評価)は、人間作業モデルの作業に関する自己評価を行うための方法である。
5.× 「行動観察評価」ではなく、質問紙を用いた自己評価である。

 

 

 

 

 

28 Functional braceが最も適応となる骨折はどれか。

1. 橈骨遠位端骨折
2. 橈骨頭骨折
3. 肘頭骨折
4. 上腕骨顆上骨折
5. 上腕骨骨幹部骨折

解答5

解説

(※画像:Functional brace(※画像引用:砂田義肢製作所様HP)

Functional brace(ファンクショナルブレース)とは?

Functional braceは、内固定を行わずに上腕部をプラスチックで包み込み、周囲から軟部組織を圧迫することにより骨折部位を固定する装具である。上腕骨骨幹部骨折に対してよく用いられる。

1~4.× 橈骨遠位端骨折/橈骨頭骨折/肘頭骨折/上腕骨顆上骨折は、転位が小さければ整復した後に、大きければ手術後にギプス固定となる。
5.〇 正しい。上腕骨骨幹部骨折は、Functional brace(ファンクショナルブレース)が適応となる。転位が小さければ整復した後に、大きければ手術後にギプス固定を行う。その後、ギプス固定では、肩や肘の関節可動域を確保できないため、治療経過の中でFunctional brace(ファンクショナルブレース)に切り替える。ちなみに、上腕骨は重力下垂位で解剖学的整復を保ちやすい特徴を持つ。Functional brace(ファンクショナルブレース)では、①骨折部位の固定性もある程度確保できる、②肩・肘の関節可動域を十分にとることができる2点の特徴を持つため、上腕骨骨幹部骨折で適応となる。

 

 

 

 

 

 

29 加齢によって生じる嚥下機能の変化はどれか。

1. 咳反射の亢進
2. 嚥下反射の遅延
3. 喉頭位置の上昇
4. 唾液分泌量の増加
5. 咽頭通過時間の短縮

解答2

解説

1.× 咳反射の「亢進」ではなく低下する。そのため、誤嚥を起こしやすくなる。ちなみに、咳反射とは、いわゆる「せき・くしゃみ」である。鼻腔や気道に異物が入り込んだとき、その異物を排除するための反射である。
2.〇 正しい。嚥下反射の遅延が加齢に伴い起こる。加齢に伴う嚥下機能に関連した変化としては、①歯の欠損、②舌運動の機能低下、③咀嚼力低下、④唾液分泌の低下、⑤口腔感覚の鈍化、⑥咽頭の食物通過時間の延長などが挙げられる。喉頭位置の下降も認められ、喉頭挙上や喉頭閉鎖が不十分となることに加え、咽頭収縮筋の筋力低下に伴って咽頭に唾液や食物が残留しやすくなることにより誤嚥を来しやすくなる。
3.× 喉頭位置の「上昇」ではなく下降する。
4.× 唾液分泌量の「増加」ではなく低下する。そのため、口腔内は乾燥しやすくなる。
5.× 咽頭通過時間の「短縮」ではなく延長する。そのため、誤嚥しやすくなる。

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30 深達性Ⅱ度熱傷に分類されるのはどれか。

1. 表皮までの損傷
2. 真皮浅層までの損傷
3. 真皮深層までの損傷
4. 皮下組織までの損傷
5. 筋肉までの損傷

解答3

解説

熱傷の分類
  • Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
  • Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
  • Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
  • Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

1.× 表皮までの損傷は、Ⅰ度である。
2.× 真皮浅層までの損傷は、浅達性Ⅱ度熱傷(SDB)である。
3.〇 正しい。真皮深層までの損傷は、深達性Ⅱ度熱傷(DDB)である。
4.× 皮下組織までの損傷は、Ⅲ度である。
5.× 筋肉までの損傷は、Ⅲ度である。

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