第51回(H28) 理学療法士国家試験 解説【午後問題6~10】

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6 40歳の男性。2週前から腰痛と右殿部から大腿前面にかけてのしびれが生じ、徐々に右下肢の筋力低下を自覚するようになってきた。
 この患者に行う検査として適切なのはどれか。

解答1

解説

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

本症例のポイント

・本症例は、腰痛と右殿部から大腿前面(L1~L4領域)にかけてのしびれが生じ、徐々に右下肢の筋力低下を認めている。
→腰椎椎間板ヘルニアの可能性が高く、大腿神経根の圧迫が考えられる。

1.〇 正しい。設問の図は、大腿神経伸張テストである。大腿神経伸張テストは、腰椎椎間板ヘルニアで陽性となるテストである。L2~4神経根障害で陽性となる。検査する側の膝関節屈曲90度にて、さらに下腿を挙上、股関節伸展する。陽性の場合、大腿前面に痛みが発生する。
2.× 設問の図は、膝外反ストレステストである。内側側副靭帯断裂に用いられる。
3.× 設問の図は、Oberテスト(オーバーテスト)である。腸脛靭帯・大腿筋膜張筋の短縮に用いられる。側臥位で股関節中間位、膝関節屈曲位で股関節内転方向に自重にて下垂してもらう。陽性であれば、下垂せず股関節が屈曲する。
4.× 設問の図は、Patrickテスト(パトリックテスト)である。股関節と仙腸関節の疼痛を誘発させる。背臥位で評価側の足背を反対側の膝蓋骨に載せ、評価側の膝を床へ押さえる。鼠径部に痛みが出れば陽性である。
5.× 設問の図は、Thomasテスト(トーマステスト)である。股関節屈筋群の拘縮の評価に用いられる。背臥位で股関節・膝関節を屈曲する。反対側の膝が持ち上がると陽性である。

 

 

 

 

 

 

7 79歳の女性。脳卒中後の左片麻痺。プラスチックAFOを装着してT字杖歩行が可能である。装具は足尖までの長さで足継手はない。Brunnstrom法ステージでは上肢Ⅳ、下肢Ⅴ。左立脚後期が歩行周期の中で極端に短く安定性も低下している。
 歩容を改善するために有用な方法はどれか。

1. 外側フレアを付ける。
2. 足部のベルクロの固定を緩める。
3. 装具の高さを下腿中央付近まで低くする。
4. 装具の中足指節関節部から遠位部を切除する。
5. 足関節部の固定性を強化(コリュゲーション)する。

解答4

解説

本症例のポイント

・プラスチックAFOを装着してT字杖歩行が可能。
・Brunnstrom法ステージ上肢Ⅳ、下肢Ⅴ。
・左立脚後期が極端に短く、安定性も低下している。
左立脚期の延長・安定性向上のため、フォアフットロッカー(左足部・足趾の底屈運動)が可能となるよう対応する。

1.× 外側フレアは、内反矯正に用いる。
2.× 足部のベルクロの固定を緩めると、立脚後期が延長するが安定性は向上しないため不適切である。
3.× 装具の高さを下腿中央付近まで低くすれば、さらに安定性や支持性は低下するため不適切である。
4.〇 正しい。装具の中足指節関節部から遠位部を切除すると、フォアフットロッカーが機能する。
5.× 足関節部の固定性を強化(コリュゲーション)すると、左立脚期の短縮となるため不適切である。コリュゲーションとは、強度を高めるために、プラスチック面に波板状のふくらみを付けることをいう。

 

 

 

 

 

 

8 つまずきやすさを主訴に来院した70歳の患者の頭部MRI のT1強調矢状断像(下図)を別に示す。
 この患者で主訴に関連のある症状はどれか。


1. 運動失調
2. 感覚障害
3. 視野障害
4. 前庭障害
5. 歩行失行

解答1

解説

本症例のポイント

・つまずきやすさを主訴に来院した。
・MRI画像より小脳の萎縮を認める。
→小脳性の運動失調が生じていると考えられる。よって、選択肢1.運動失調が正しい。

2.× 感覚障害は、大脳などの障害で生じる。
3.× 視野障害は、後頭葉などの障害で生じる。
4.× 前庭障害は、平衡感覚を司る前庭神経に異常で生じる。
5.× 歩行失行は、高次機能障害(肢節運動失行)で生じる。

”脊髄小脳変性症とは?多系統萎縮症とは?”

脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)

多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

9 患者の鼻(A)から目標(B)に向かって患者の示指を動かしたときの水平面上の軌跡を図に示す。
 この患者にみられる可能性が高いのはどれか。


1. 折りたたみナイフ現象
2. Romberg徴候陽性
3. はさみ脚歩行
4. 断綴性発語
5. 筋強剛

解答4

解説

本症例のポイント

・鼻指鼻試験を行っている。
・Bに近づいたときに大きく乱れている。
企図振戦と考えられる。企図振戦とは、安静時にはほとんど生じないが、運動時、特に運動終了直前に生じる律動的な運動疾患である。したがって、小脳の障害が疑われる。

1.× 折りたたみナイフ現象は、錐体路障害(上位運動ニューロン障害)で生じる。折りたたみナイフ現象とは、他動的な関節運動(屈曲および伸展)の途中で急に抵抗が弱くなる現象をいう。
2.× Romberg徴候陽性は、亜急性脊髄連合変性症糖尿病性ニューロパチー前庭神経障害などがあげられる。ちなみに、小脳障害の場合、開眼の状態でまっすぐ立つだけでも動揺がみられる。そのため、Romberg徴候は陰性となる。
3.× はさみ脚歩行は,両側の錐体路障害でみられる。尖足で歩行し、両膝をするように歩くことをいう。小脳性失調の歩行は、酩酊様歩行である。
4.〇 正しい。断綴性発語は、小脳性構音障害でみられる。発声に必要な喉頭筋群の協調運動が障害されているため、会話はとぎれとぎれで不明瞭な話し方になる現象である。
5.× 筋強剛は、Parkinson病でみられる。筋トーヌスの亢進により生じる。筋強剛とは、全身の筋肉がこわばって硬くなり、体を動かそうとする際もスムーズさが無くなるものをさす。他動的に手足の関節を曲げ延ばししたときに、「歯車現象」というカクカクした抵抗がみられる。

Romberg test

Romberg test(ロンベルグ テスト)は、深部感覚の検査である。被験者に足をそろえ、目を閉じて直立する検査で、陽性(閉眼時)では、脊髄性障害(脊髄癆)では動揺が大きくなる。ちなみに、開眼時・閉眼時ともに動揺がみられる場合は小脳障害を考える。

 

 

 

 

 

 

10 52歳の女性。関節リウマチ。発症して17年が経過している。手指関節に痛みを訴えており、図のような変形がみられる。
 手指に対する最も適切な物理療法はどれか。

1. 超音波
2. 遠赤外線
3. 極超短波
4. パラフィン浴
5. ホットパック

解答4

解説

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 本症例の手指は変形が強く(ムチランス変形)、手指関節痛もある。また、皮膚の凹凸がみられる。物理療法は、凹凸の有無に関係なしに均一に温熱効果を得られるパラフィン浴が望ましい。よって、選択肢4.パラフィン浴が正しい。ちなみに、ムチランス変形(オペラグラス変形)は、中手骨や指節骨の吸収により指が短縮する変形をいう。

1~3.5. 超音波/遠赤外線/極超短波/ホットパックは、パラフィン浴と比較すると指先の変形や凹凸に対応しきれない。

類似問題はこちら↓

【PT専門のみ】関節リウマチについての問題「まとめ・解説」

 

2 COMMENTS

大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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