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16 70歳の男性。身長170cm、体重60kg。慢性心不全でNYHA分類classⅡ。在宅におけるリハビリテーションを行っている。
在宅での生活と運動指導で正しいのはどれか。
1. 安静時間を長くする。
2. Borg指数で15程度の運動を勧める。
3. 体重増加は栄養改善の良い指標である。
4. 疲労感が残存しているときは運動を休む。
5. 症状に特別な変化がない場合は服薬を中止する。
解答4
解説
・70歳の男性(慢性心不全、身長170cm、体重60kg)
・NYHA分類classⅡ:「安静時は障害がないが、日常労作のうち比較的強い労作(例えば、階段昇降、坂道歩行など)によって、呼吸困難・疲労・などの愁訴が出現する」
・在宅におけるリハビリテーションを行っている。
→心不全に対する運動療法によって期待できる効果として、①運動能力が増加し、心不全の症状(息切れなど)が軽くなり、楽に動けるようになる。②不安やうつ状態が改善し、精神面で自信が付き、気分が快適になる(QOLの改善)。③動脈硬化のもとになる冠危険因子(糖尿病、肥満、脂質異常症、高血圧)が改善する。④血管が自分で広がる能力(血管内皮機能)や自律神経の働きが良くなり、血液中のBNP(心臓に無理がかかると増加する心臓ホルモン)が低下する。⑤心不全悪化による再入院や脂肪の危険性が減る。があげられる。
1.× 安静時間を長くする必要はない。むしろclassⅡ「安静時は障害がないが、日常労作のうち比較的強い労作(例えば、階段昇降、坂道歩行など)によって、呼吸困難・疲労・などの愁訴が出現する」程度であるため、1日30~60分、週3~5日程度の適度な運動が推奨される。冠動脈硬化・高血圧など心臓機能に関わる合併症を予防するのに効果的である。
2.× Borg指数で15程度ではなく、12~13程度「ややきつい」の運動を勧める。Borg指数15は「きつい」であり負荷が強すぎる。
3.× 体重増加は、一概に「栄養改善の良い」指標とは言い切れない。なぜなら、体重増加の理由として、浮腫があげられる。これは心不全の増悪徴候であったり、心拍出量低下の可能性もある。ちなみに、過去1週間以内に、体重が2kg以上増加した心不全は、運動療法の相対的禁忌である。
4.〇 正しい。疲労感が残存しているときは運動を休む。なぜなら、運動による自覚症状の悪化(疲労・めまい・など)は相対的禁忌にあたるため。
5.× 症状に特別な変化がない場合でも「服薬を中止する」のは不適切である。なぜなら、服薬を中断すると心不全悪化しかねないためである。血栓症予防・血圧コントロールのためにも服薬は続けなければいけない。また、服薬の調整は必ず医師の指示を仰ぐ必要がある。理学療法士や患者の自己判断による服薬中止はあってはならない。
Ⅰ度:心疾患があるが、身体活動には特に制約がなく日常労作により、特に不当な呼吸困難、狭心痛、疲労、動悸などの愁訴が生じないもの。
Ⅱ度:心疾患があり、身体活動が軽度に制約されるもの。安静時または軽労作時には障害がないが、日常労作のうち、比較的強い労作(例えば、階段上昇、坂道歩行など)によって、上記の愁訴が発言するもの。
Ⅲ度:心疾患があり、身体活動が著しく制約されるもの。安静時には愁訴はないが、比較的軽い日常労作でも、上記の主訴が出現するもの。
Ⅳ度:心疾患があり、いかなる程度の身体労作の際にも上記愁訴が出現し、また、心不全症状、または、狭心症症候群が安静時においてもみられ、労作によりそれらが増強するもの。
(図引用:「日本循環器学会 / 日本心不全学会合同ガイドライン」より)
17 80歳の女性。多発性脳梗塞。動作の観察から、明らかな運動麻痺はみられないが軽度の感覚障害が予想される。軽度の認知症があり、口頭での詳細な手順の説明は理解しにくい。
深部感覚検査として適切なのはどれか。
1. 非検査肢の自動運動による模倣試験
2. 非検査肢の他動運動による模倣試験
3. 検査肢の自動運動による再現試験
4. 検査肢の他動運動による再現試験
5. 関節定位覚(母指探し)検査
解答5
解説
・80歳の女性(多発性脳梗塞)
・動作の観察から、明らかな運動麻痺はみられないが軽度の感覚障害が予想される。
・軽度の認知症があり、口頭での詳細な手順の説明は理解しにくい。
→「軽度の認知症があり、口頭での詳細な手順の説明は理解しにくい」ため、深部感覚検査は手順がシンプルなものを選択する。
1~4.× 非検査肢の自動運動による模倣試験/非検査肢の他動運動による模倣試験/検査肢の自動運動による再現試験/検査肢の他動運動による再現試験より選択肢の中で手順がシンプルなものが他にある。模倣試験は、再現試験を反対肢で同じ動作を示すことによって評価できる。再現試験とは、深部感覚のうち関節位置覚が障害されている場合、障害側を他動的または自動的に動かし、再び同じ動作をしてもらうものである。模倣試験や再現試験は、本症例のように軽度の認知症があり、口頭での詳細な手順の説明は理解しにくい場合、理解するのは困難である。
5.〇 正しい。関節定位覚(母指探し)検査は、一側の母指(固定肢)を反対側の手(運動肢)で掴んでもらう。固定肢の固有感覚機能を簡便に評価できる。選択肢の中から最も手順がシンプルであるため適切である。
・再現試験:障害側を他動的または自動的に動かし、再び同じ動作をしてもらうものである。
・模倣試験:再現試験を反対肢(健側を動かす)で同じ動作を示すことによって評価できる。
・関節定位覚(母指探し)検査:対象者の検査する上肢の親指のみを伸展させ、閉眼させた状態でその母指を他側の手でつまませる検査である。つまむ方の上肢の運動を観察することで、対側の関節位置覚(関節定位覚)の障害の程度を見極める検査である。
18 62 歳の男性。スパイログラムのフローボリューム曲線を図に示す。
最も考えられるのはどれか。
1. 肺癌
2. 肺線維症
3. 肺葉切除後
4. 上気道狭窄
5. 慢性閉塞性肺疾患
解答5
解説
(※図引用:「呼吸機能検査 フロー・ボリューム曲線」医學事始様HPより)
フローボリューム曲線とは、息をはくときのスピードと量を測定すると出てくるグラフのことである。つまり、縦軸は「気速」を示し、横軸は「気量」を示す。本症例は、薬物療法によりFlow(流速:息を出す速さ)の改善が認められる。急速に呼気流速が下がっているが、Volume(容量・気量:息を吸える量)はほぼ変化していない特徴は、「閉塞性障害(気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患)」である。ちなみに、閉塞性障害とは、1秒率の低下がおもな病気である。
1.× 肺癌は、進行期~末期になるまでは呼吸不全の症状は起こりにくい。また、肺癌の85%は呼吸不全が起こらないというデータもある。肺癌(進行期~末期)で、気管を閉塞するようになれば肺気量が低下する。
2.× 肺線維症は、呼気流速の低下はみられず、全肺気量が低下し、肺活量・残気量も低下する。肺の拡張障害のため拘束性障害である。肺実質(間質)の線維化により肺が広がりにくくなるものである。肺線維症とは、肺胞の周りの間質の壁が炎症により厚くなり、線維化している状態のこと。原因としては、職業上の粉塵吸入やペット飼育などの住環境、薬剤や健康食品(薬剤性肺障害)、関節リウマチ他の膠原病などさまざまなものが考えられる。
3.× 肺葉切除後は、呼気流速の低下はみられない。肺容積の減少により全肺気量が低下するため、肺活量・残気量の低下がみられる。
4.× 上気道狭窄は、高肺気量での呼気流速が低下する凸型のフローボリューム曲線となる。
5.〇 正しい。慢性閉塞性肺疾患である。本症例のフローボリューム曲線は、ピークフローから急に呼気流速が下がる凹型を示しており、慢性閉塞性肺疾患が認められる。肺胞隔壁の破壊により肺が縮みにくくなり、呼気が吐き出しにくくなるという閉塞性障害の病態を呈する。
(※図引用:「呼吸機能検査 フロー・ボリューム曲線」医學事始様HPより)
拘束性換気障害:肺結核、肺線維症など。
閉塞性換気障害:気管支喘息、気管支拡張症など。
混合性障害:肺気腫
19 82歳の女性。1人暮らし。2階建て住居の1階にある居室でベッドを使用していた。敷居につまずき転倒し、大腿骨転子部骨折を受傷した。骨接合術後、屋内歩行は自立し、屋外歩行はT字杖にて5分程度可能となった。
自宅に退院するにあたり適切なのはどれか。
1. 敷居の高さは5cmに統一する。
2. 居室にじゅうたんを敷く。
3. 玄関に手すりを設置する。
4. スリッパを使用する。
5. 寝具は床に敷く。
解答3
解説
・82歳の女性(1人暮らし、大腿骨転子部骨折、骨接合術後)
・受傷:敷居につまずき転倒
・2階建て住居の1階にある居室でベッドを使用。
・現在:屋内歩行自立、屋外歩行T字杖にて5分程度可能。
→自宅に退院するにあたり、「安全に生活できること」が第一優先される。まずは転倒要因となるものの排除を行っていく。
1.× 敷居の高さは5cmに統一する必要はない。受傷前も敷居で転倒されていることから敷居は解消すべきである。
2.× 居室にじゅうたんを敷く必要はない。なぜなら、じゅうたんはさらにつまずきの危険性を高めるため。
3.〇 正しい。玄関に手すりを設置する。本症例は現在、屋外歩行ではT字杖(5分程度可能)を使用している。屋外歩行後、靴の着脱・上がり框の昇降など、披露したうえで行うには店頭の危険が潜んでいる。したがって、玄関に手すりを設置することで転倒予防に有用である。
4.× スリッパを使用する必要はない。なぜなら、スリッパでの移動は、すり足になりやすく転倒の危険性が高まるため。
5.× 寝具は床に敷く必要はない。なぜなら、本症例は大腿骨転子部骨折の術後で負担をかけることは転倒のリスクであるため。ベッドの方が股関節への負担が少なく、転倒の予防につながる。
20 60歳の男性。脳梗塞による片麻痺と高次脳機能障害に対して理学療法を実施している。時折、能力以上の動作を行おうとするために転倒のリスクが指摘されていた。理学療法終了後、搬送担当者がわずかに目を離した間に立ち上がりバランスを崩して床に座りこんだが、明らかな打撲や血圧の変化はみられなかった。
対応として適切でないのはどれか。
1. 家族に経過を説明する。
2. 再発防止の具体案を提案する。
3. 口頭で速やかに主治医へ報告する。
4. 発生した状況を詳細に文書で報告する。
5. 理学療法士に責任がないことを明確にする。
解答5
解説
・60歳の男性(脳梗塞、片麻痺、高次脳機能障害)
・転倒のリスク:時折、能力以上の動作を行おうとする。
・理学療法終了後、搬送担当者がわずかに目を離した間に立ち上がりバランスを崩して床に座りこんだが、明らかな打撲や血圧の変化はみられなかった。
→チームの課題として「本症例の転倒リスクをどのように回避していくか?」である。
1.〇 正しい。家族に経過を説明する。家族に説明することで、家族への協力を得られるだけではなく、面会時や退院時での事故防止にもつながる。
2.〇 正しい。再発防止の具体案を提案する。具体策を出すことで再発防止につながる。具体策としては、理学療法士終了後、搬送担当者や他のスタッフに分かるよう転倒のリスクが高い人には「汗拭きタオルや飲水のためのコップを渡しておく」など伝えておく。「転倒注意」などのプラカードは、患者自身が読むと自尊心や自身の喪失につながりかねないため控えたほうが良い。
3.〇 正しい。口頭で速やかに主治医へ報告する。本症例は、明らかな打撲や血圧の変化はみられなかったが、文章を書いて、主治医までが読むまでに患者の状態が変わるかもしれない。速やかに口頭で主治医に報告する必要がある。
4.〇 正しい。発生した状況を詳細に文書で報告する。インシデント・アクシデントのレポート提出を行い、患者家族への説明責任や、再発防止に努める責任がある。
5.× 理学療法士に責任がないことを明確にする必要はない。本症例は、高次脳機能障害と転倒のリスクが指摘されていた。また、理学療法士が事前に搬送担当者に患者の転倒リスクを説明しておけば防げたかもしれない。インシデントレポートの目的も「責任の所在を追求すること」ではなく、「インシデントの再発や医療事故・医療過誤の発生を未然に防止すること」である。
インシデントレポートとは、医療現場で事故に繋がりかねないような、ヒヤリとしたり、はっとした出来事に関する報告書のことをいう。作成の目的は、事例を分析して類似するインシデントの再発や医療事故・医療過誤の発生を未然に防止することである。インシデントを直訳すると「出来事・事件・異変」である。一方、その行為によって患者に傷害や不利益を与えてしまった事象を、アクシデントという。なお、インシデントの本来の意味は、偶発的や付随的と解釈される。
【目的】
①事実の確認
②原因の究明
③組織全体で事例を共有・分析し、問題点を抽出する。
④将来の医療事故(アクシデント)の予防、再発の防止。