第49回(H26) 理学療法士国家試験 解説【午後問題16~20】

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16 22歳の男性。身長170cm、体重70kg。外傷性頸髄損傷後6か月経過。MMTは、肘関節屈曲5、肘関節伸展2 、手関節屈曲1、手関節伸展4、手内筋0、下肢0。ベッドへの移乗が自立したので、屋内で使用する車椅子を検討した。
 車椅子作製上の留意点で適切なのはどれか。 2つ選べ。

1. 背もたれの高さを肘台と同じ高さにする。
2. 駆動輪の車軸を標準よりも前方に移動する。
3. 14インチの駆動輪を使用する。
4. トグル式ブレーキを使用する。
5. 足台をスイングアウト式にする。

解答4/5

解説

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

本症例のポイント

・22歳の男性(外傷性頸髄損傷後6か月経過)
・身長170cm、体重70kg。
・MMT:肘関節屈曲5、肘関節伸展2 、手関節屈曲1、手関節伸展4、手内筋0、下肢0。
・ベッドへの移乗:自立
・屋内で使用する車椅子を検討。
→MMTの結果から、本症例はC6機能残存レベル(Zancolliの分類ではC6BⅠ~Ⅱ)である。肩・肘関節屈曲筋を用いて車いすを駆動でき実用的な車椅子駆動のほか、前方アプローチでの移乗動作が可能になる。C6機能残存レベルは、【主な動作筋】大胸筋、撓側手根屈筋、【運動機能】肩関節内転、手関節背屈、【移動】車椅子駆動(実用レベル)、【自立度】中等度介助(寝返り、上肢装具などを使って書字可能、更衣は一部介助)である。C6機能残存レベルのプッシュアップは、肩関節外旋位・肘関節伸展位・手指屈曲位にて骨性ロックを使用し、不完全なレベルであることが多い。

1.× 背もたれの高さを肘台と同じ高さにする必要はない。第6頚髄節残存レベル(Zancolliの分類ではC6BⅠ~Ⅱ)は、実用的な車椅子駆動が可能である。そのため、肩甲骨下縁から2~3cmほど低い位置に設定されることが多く、肘台よりは高く設定する。
2.× 駆動輪の車軸を標準よりも前方に移動する必要はない。そもそも駆動輪の車軸を標準より前方にするのは、キャスター上げをしやすくするためである。したがって、キャスター上げが可能となるのは、手指の機能が温存される第8頚髄節残存レベルからである。
3.× 「14インチ」ではなく自走式車椅子では22インチ24インチの駆動輪が使用されることが多い。14インチは、いわゆる介助用車椅子であり、押手部分に介助用ブレーキがある。
4.〇 正しい。トグル式ブレーキを使用する。なぜなら、本症例は、実用的な車椅子駆動が可能であるため。車椅子のブレーキには、①トグル式ブレーキと②介助用ブレーキがある。①トルグ式ブレーキは、一般的な駆動輪の隣にあるブレーキのことで軽い力で操作できる。②介助用ブレーキは押手部分にあり、介助者が操作する。
5.〇 正しい。足台をスイングアウト式にする。なぜなら、本症例は、前方アプローチでの移乗動作が可能であるため。ベッドへ直角移乗を行うときに,車椅子がベッドにより近づけるように足台をスイングアウト式にする。

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17 85歳の女性。ADLに一部介助が必要だが、屋内歩行はつたい歩きで自立している。
 3か月前に机に手をついて床から立ち上がろうとした際に転倒したが、骨折には至らなかった。
 自宅の住環境に関する助言として適切なのはどれか。

1. 敷居の段差に同系色のテープを貼る。
2. 階段や浴室に滑り止めマットを敷く。
3. 夜間の照明は視線の高さに設置する。
4. トイレの開き戸をカーテンに変更する。
5. 必要な物は手の届く範囲の床上に置く。

解答2

解説

本症例のポイント

・85歳の女性。
・ADL:一部介助
・屋内歩行:つたい歩き自立。
・3か月前:机に手をついて床から立ち上がろうとした際に転倒したが、骨折には至らなかった。
→本症例は、足腰の筋力低下やバランス能力が低下している可能性が高い。実際の臨床においても高齢者が安全に日常生活を送れるように環境整備のアドバイスを行う機会が多いため、転倒予防(環境整備)、転倒後の対応(携帯電話の所持)、二次障害の予防(クッション付きの衣類)なども念頭に入れておく。

1.× 敷居の段差には、同系色ではなく、目立つ色(コントラストがある)のテープを貼る。なぜなら、段差が見やすくなり転倒防止につながるため。
2.〇 正しい。階段や浴室に滑り止めマットを敷く。
3.× 夜間の照明は、視線の高さではなく、足元を照らせるよう複数に分散させて足元へ設置する。視線の高さでは、まぶしく周囲の状況を正確に捉えられない可能性がある。
4.× トイレの開き戸を、カーテンではなく、できれば引き戸に変更する。開き戸の場合は外開きに変更する。
5.× 特に本症例の場合、必要な物は手の届く範囲の床上に置く必要はない。なぜなら、屋内の移動は可能な(活動性の低下を助長する)ため。また、床上に物があると転倒の危険性が高まる。

 

 

 

 

18  87歳の女性。転倒による大腿骨近位部骨折に対する手術後。理学療法を行っているが、筋力増強の効果が不十分で全身の持久性も低下している。下肢の浮腫を認めたため主治医へ報告したところ、栄養障害はあるが内科的な併存症はないといわれた。
 理学療法を行う上で、特に参考となる血液検査所見はどれか。

1. アルカリフォスファターゼ
2. クレアチニン
3. 空腹時血糖
4. アルブミン
5. 赤血球

解答4

解説

本症例は、主治医から「栄養障害」はあることを指摘されている。低栄養状態で理学療法を実施しても、運動のためのエネルギーを筋肉内のタンパク質が使われてしまう。したがって、運動によって逆に筋肉量が減少し疲れやすくなり、本症例に見られる「筋力増強の効果が不十分で全身の持久性も低下している」状態へとつながる。栄養状態が分かる血液検査所見を選択し、運動量・食事量の調整をチームで実施する。

1.× アルカリフォスファターゼ(ALP)は、肝機能を評価する項目である。
2.× クレアチニン(Cr)は、腎機能を評価する項目である。糖尿病の絶対的禁忌の項目として、顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)がある
3.× 空腹時血糖は、糖尿病の指標となる項目である。糖尿病の絶対的禁忌の項目として、代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)がある。
4.〇 正しい。アルブミンは、栄養状態全身状態の良否を評価することができる。ただ、アルブミンは、検査時点での栄養状態を直接示すものではなく、検査結果は20日前のデータである(半減期が20日程度であるため)。そのため、栄養摂取量が確保されても、直ちに数値が上昇するものではないので、時系列で結果を追って評価する必要がある。血清アルブミン値は、正常:4.0g/dL以上、低栄養予備軍:3.5〜3.9g/dL、低栄養:3.5g/dL未満である。栄養状態を検査できる項目として、血清総たんぱく(TP)、アルブミン(Alb)、 コリンエステラーゼ(ChE)、ヘモグロビン(Hb)、総リンパ球数(TLC)である。血清アルブミンの血中半減期は、約15~21日であり、2~3週間前の静的栄養状態を示す。
5.× 赤血球は、貧血の指標となる項目である。ちなみに、赤血球の寿命は約120日で酸素を運ぶ働きをする。

 

 

 

 

 

19 運動中に得られたモニター心電図を下図に示す。
 多源性の心室期外収縮(Lownの重症度分類グレード3)はどれか。


1. ①
2. ②
3. ③
4. ④
5. ⑤

解答4

解説

1.× ①は、心室粗動である。心室粗動とは、P波がなく、心室内の興奮が無秩序に行われている状態をいう。致命的な不整脈であり、心室粗動は心室細動に比べ規則正しい大きな波形が現れる心室頻拍から移行するので心室頻拍をみたら放置してはならない。心室頻拍とは、P波はなく、幅広く変形したQRSのRR間隔が等しく出現している状態で、心室性期外収縮3連発以上のものをいう。P波は見えない例が多く、心臓ポンプ作用が低下し、心拍出量が減少する。
2.× ②は、心室性期外収縮(Lown分類グレード2)である。なぜなら、P波はなく、幅広く変形したQRSが約20回/分出現しているため。
3.× ③は、心室性期外収縮(Lown分類グレード4b)である。なぜなら、P波はなく、幅広く変形したQRSが3連発出現しているため。
4.〇 正しい。④は、多源性の心室期外収縮(Lown分類グレード3)である。なぜなら、P波はなく、幅広く変形したQRSである心室性期外収縮が2種類みられる。
5.× ⑤は、心室性期外収縮(Lown分類グレード1)である。なぜなら、P波はなく、幅広く変形したQRSであるため。

Lown分類(心室性期外収縮の重症度評価)

grade0:心室性期外収縮無し
grade1:散発性(1個/分または30個/時間未満)
grade2:散発性(1個/分または30個/時間以上)
grade3:多源性(期外収縮波形の種類が複数あるもの)
grade4a:2連発
grade4b:3連発
grade5:短い連結期(R on T現象)

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20 60歳の女性。身長160cm、体重70kg。安静時心拍数70/分、安静時血圧140/80mmHg。現在、運動療法として、朝と夕方に散歩(3METs)を各々45分行っている。
 下記の指標を求める計算方法で誤っているのはどれか。

1. BMI : 70/(1.6)2
2. 標準体重(kg):(1.6)2 × 22
3. 予測最大心拍数(/分):220 - 60
4. 平均血圧(mmHg):(140 - 80)/2 + 80
5. 散歩による消費エネルギー(kcal):1.05 × 3 × 1.5 × 70

解答4

解説

1.〇 正しい。BMIの計算方法は、体重(kg)/[身長(m)]2である。つまり、70/(1.6)2となる。
2.〇 正しい。標準体重(kg)とは、BMIを22としたときの体重のこと。計算方法は、[身長(m)]2  × 22である。つまり、(1.6)2 × 22となる。
3.〇 正しい。予測最大心拍数(/分)の計算方法は、220一年齢である。つまり、220 - 60となる。
4.× 平均血圧とは、収縮期血圧、拡張期血圧を1つの数値で表したものである。平均血圧(mmHg)の計算方法は、(収縮期血圧 - 拡張期血圧)/3 + 拡張期血圧である。つまり、(140 - 80)/2ではなく、 (140 - 80)/3+ 80である。
5.〇 正しい。散歩による消費エネルギー(kcal)の計算方法は、1.05 × METs数 × 運動時間(時間) × 体重(kg)である。つまり、1.05 × 3 × 1.5 × 70である。

 

2 COMMENTS

大川 純一

コメントありがとうございます。
少し苦しい解説になっていましたので、修正いたしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

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