第48回(H25) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題96~100】

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96 統合失調症について正しいのはどれか。

1.前駆期から幻聴がみられる。
2.慢性期に軽度の認知機能障害がみられる。
3.家族の感情表出が少ないほど再発率は高くなる。
4.発症から治療開始までの期間は予後と関連がない。
5.急性期の治療で症状が軽快した場合は速やかに薬物治療を中止する。

解答2

解説

1.× 前駆期(幻聴や妄想など明らかな統合失調症の症状が出現する前の時期)は、幻聴はみられない。幻聴が認められた時点で、発症期といえる。
2.〇 正しい。慢性期に、軽度の認知機能障害がみられる。近年、統合失調症の症状を①陽性症状、②陰性症状、③認知機能障害の3種類に分けて考えることが多い。
3.× 再発率が高くなるのは、家族の感情表出が高い場合である。感情表出とは、家族が患者に対して否定的感情を表すことである。
4.× 発症から治療開始までの期間は、予後と関連する。治療開始までの期間が短いほど予後は良い
5.× 急性期の治療で症状が軽快した場合でも、速やかに薬物治療を中止しない。症状の再発、再燃をぼうしするため、生涯にわたり薬物療法を続ける場合がほとんどである。

 

 

 

 

 

97 疾患と病変の組合せで正しいのはどれか。

1.Lewy小体型認知症:白質の病変
2.Alzheimer型認知症:大脳皮質の老人斑
3.血管性認知症:黒質の神経細胞脱落
4.大脳皮質基底核変性症:運動ニューロン病変
5.前頭側頭型認知症:大脳皮質の腫大神経細胞

解答2

解説

1.× Lewy小体型認知症の病理的所見は、神経細胞内のレビー小体が溜まるためである。Lewy小体型認知症とは、Lewy小体が広範な大脳皮質領域で出現することによって、①進行性認知症と②パーキンソニズムを呈する病態である。認知機能の変動・動揺、反復する幻視(人、小動物、虫)、パーキンソニズム、精神症状、REM睡眠型行動障害、自律神経障害などが特徴である。ちなみに、白質の病変がみられるのは、多発性硬化症である。
2.〇 正しい。Alzheimer型認知症は、アミロイドβ蛋白が沈着した大脳皮質の老人斑がみられる。
3.× 血管性認知症は、脳梗塞・脳出血などの脳血管疾患後に生じる。黒質の神経細胞脱落がみられるのは、パーキンソン病である。
4.× 大脳皮質基底核変性症は、皮質下神経核の神経細胞の脱落である。運動ニューロン病変が見られるのは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。
5.× 前頭側頭型認知症は、原因不明であるが、前頭葉と側頭葉の神経細胞が少しずつ壊れていくことによって起こる。前頭側頭型認知症は、大脳皮質の腫大神経細胞を認める場合もあるが、一般的に大脳皮質の腫大神経細胞がみられるのは、大脳皮質基底核変性症である。

多発性硬化症とは?

 多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。

(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

98 雑踏の中で強い不安が生じ、その場所を避けるようになるのはどれか。

1.適応障害
2.解離性障害
3.強迫性障害
4.広場恐怖症
5.社交恐怖症

解答4

解説

1.× 適応障害は、大きな生活の変化(進学、就職、転居など)やストレス性の出来事(離別、死別など)に対して、順応するまでに様々な症状(抑うつ気分、不安など)を呈するものをいう。
2.× 解離性障害は、症状の原因となる身体的障害がなく、ストレスの多い出来事などの心理的原因があることを前提条件として、統合的な自己同一感身体運動のコントロール感直接的感覚の意識などが、部分的あるいは完全に失われた状態をいう。
3.× 強迫性障害は、自らは不合理だと思っている考えが振り替えし浮かび(強迫観念)、それを打ち消すためにやはり不合理な行為を繰り返してしまうこと(強迫行為)。
4.〇 正しい。広場恐怖症は、雑踏(多数の人で込み合うこと)、公衆の場所、不安が起こってもすぐには、安全な場所に避難できない状況を恐れ、そのような状況になることを避けることである。
5.× 社交恐怖症は、比較的少人数の集団内で、他の人々から注視をされたり、低い評価を受けたりすることに対する強い恐れを主な症状として、そのような場所をできるだけ避けようとするものである。

 

 

 

 

 

99 見捨てられ不安を特徴とするのはどれか。

1.演技性パーソナリティ障害
2.境界性パーソナリティ障害
3.強迫性パーソナリティ障害
4.非社会性パーソナリティ障害
5.統合失調質パーソナリティ障害

解答2

解説

見捨てられ不安とは、親や恋人など自分にとって重要な人物から見捨てられるのではないかという不安をいう。

 

1.× 演技性パーソナリティ障害は、過度な情動性を示し、人の注意をひこうとする特徴を持つ。
2.〇 正しい。境界性パーソナリティ障害である。境界性パーソナリティ障害は、対人関係(見捨てられ不安)・自己像、および感情の不安定と著しい衝動性を特徴とする。
3.× 強迫性パーソナリティ障害は、秩序を求めて完璧主義になりすぎて融通がきかず、生活に支障が出るような特徴を持つ。
4.× 非社会性パーソナリティ障害は、他者の権利や感情を無神経に軽視し、モラルが欠如しており、人に対しては不誠実で欺瞞(ぎまん:人の目をごまかし、だますこと。)に満ちた言動をする傾向があるのが特徴である。
5.× 統合失調質パーソナリティ障害(ジゾイドパーソナリティ障害)は、社会的関係への関心のなさ、人とのかかわりが苦手で孤独を選ぶ傾向、そして感情的な平板(へいばん:変化に乏しく単調なこと。)さを特徴とする。

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100 抗精神病薬を服用中の統合失調症患者。意識障害、37.5℃以上の発熱、発汗および身体のこわばりが出現した。
 最も考えられるのはどれか。

1.アカシジア
2.悪性症候群
3.急性ジストニア
4.遅発性ジスキネジア
5.薬剤性Parkinson症候群

解答2

解説

1.× アカシジアの症状は、①座ったままではいられない(鎮座不能)、②じっとしていられない、③下肢のむずむず感の自覚症状などである。
2.〇 正しい。悪性症候群である。悪性症候群は、不穏・興奮・拒食・不眠などの精神状態の悪化や、急激な抗精神病薬の増量または減量により起こりやすい。悪性症候群の大症状は、①発熱②筋強剛③CKの上昇などあげられる。悪性症候群をきたす薬物として、抗精神病薬以外に、抗うつ薬、パーキンソン病薬、制吐薬などがある。
3.× 急性ジストニアとは、ゆっくり・ねじれるような不随意運動である。主に体幹及び四肢近位部や頚部で起こる。
4.× 遅発性ジスキネジアとは、抗精神病薬の長期投与中に出現し、持続的な不随意運動である。主に口部周辺、頚部で起こる。
5.× 薬剤性Parkinson症候群は、Parkinson病に似た症状がでるがまったく別の病気である。Parkinson病に比べて左右対称に出現する傾向があり、姿勢時・動作時振戦も出現しやすい。

 

 

 

※問題の引用:第48回理学療法士国家試験、第48回作業療法士国家試験の問題および正答について

※注意:著者は理学療法士で、解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。

2 COMMENTS

匿名

97
5.腫大神経細胞は、軸索の傷害に伴うニューロンの軸性変化に伴う二次所見で、他の疾患や病態にも出現する非特異的所見だからでは。

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大川 純一

コメントありがとうございます。
解説を修正いたしましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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