第48回(H25) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題86~90】

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86 ワルファリンの作用を減弱させるのはどれか。

1.へパリン
2.抗血小板薬
3.ビタミンK
4.ペニシリン系抗菌薬
5.非ステロイド性抗炎症薬

解答3

解説

ワルファリンは、血栓塞栓予防薬(抗凝固薬)であり血圧の低下に寄与する。

 

1.× へパリンは、抗凝固薬である。ちなみに、ヘパリンに拮抗するのはプロタミンである。
2.× 抗血小板薬は、血小板凝集能を抑える。結果的に血栓をできにくくする。
3.〇 正しい。ビタミンKは、ワルファリンの作用を減弱させる。ワルファリンを服用している患者に、ビタミンKを多く含む納豆は控えるよう食事指導するのはこのためである。
4.× ペニシリン系抗菌薬は、ワルファリンの作用を増強させる。ペニシリン系抗菌薬はビタミンK産生腸内細菌を抑制する働きを持つ。
5.× 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、ワルファリンの作用を増強させる。なぜなら、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、血小板凝集の抑制作用や、消化管出血による出血傾向を助長すること、また、ワルファリンを血漿タンパクから遊離させる働きを持つため。

 

 

 

 

 

87 ボツリヌス毒素を用いた治療で正しいのはどれか。

1.ボツリヌス毒素は前角細胞に作用する。
2.痙縮のある筋に対して筋肉注射を行う。
3.65歳以上の高齢者には禁忌である。
4.注射直後から最大効果を認める。
5.効果持続は約1年間である。

解答2

解説

 ボツリヌス療法は、脳・脊髄疾患などによる痙性麻痺に対して有効とされている。ボツリヌス毒素を筋肉内に数か所注射し、筋収縮を抑制する。効果持続は、3~6か月のため、数か月ごとに再投与が必要である。ボツリヌス毒素が神経終末の受容体に結合することで、アセチルコリンの放出を阻害し、アセチルコリンを介した筋収縮および発汗が阻害される。なお、アセチルコリンの合成や貯蔵、神経伝導には影響を及ぼさない特徴を持つ。

 

1.× ボツリヌス毒素は、「前角細胞」ではなく運動神経の末端に作用する。
2.〇 正しい。痙縮のある筋に対して筋肉注射を行う。
3.× 65歳以上の高齢者でも適応になるが、2歳未満の小児には適応ではない。適応疾患は、痙性麻痺(脳性麻痺・脳血管障害ともに)である。
4.× 注射後24時間以内に効果が発現し、最大効果を認めるのは、効果が安定する1~2週間以内が多い。
5.× 効果持続は、「約1年間」ではなく3~4か月程度である。減弱のたびにボツリヌス療法を受ける。

 

 

 

 

88 変形性膝関節症で正しいのはどれか。

1.外側型が多い。
2.歩き始めは痛くない。
3.女性よりも男性に多い。
4.膝周囲筋の筋力強化は症状を改善させる。
5.内側型には内側が高い楔状足底板が用いられる。

解答4

解説

1.× 外側型(X脚)より、内側型(O脚)が多い。
2.× 歩き始めに痛みが伴いやすい。運動開始時に痛みが伴いやすく、特に歩き始めの歩行時、立ち上がり時にみられる。
3.× 逆である。男性よりも女性に多い
4.〇 正しい。膝周囲筋の筋力強化は、症状の改善を期待できる。
5.× 内側型(O脚)には、「内側」ではなく、外側が高い楔状足底板(外側ウェッジ)が用いられる。

 

 

 

 

 

89 感覚障害を合併するのはどれか。2つ選べ。

1.多発性硬化症
2.重症筋無力症
3.筋萎縮性側索硬化症
4.肢帯型筋ジストロフィー
5.慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー

解答1/5

解説

1.〇 正しい。多発性硬化症は、感覚障害を合併する。多発性硬化症とは、中枢神経系に時間的・空間的に多発する脱髄性疾患である。
2.× 重症筋無力症は、骨格筋の神経筋接合部が障害部位である。特徴は、筋力低下、眼瞼下垂、易疲労性である。
3.× 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位・下位運動ニューロンがともに変性する疾患である。ALSの4大陰性徴候は、①感覚障害、②膀胱・直腸障害、③眼球運動障害、④褥瘡である。
4.× 肢帯型筋ジストロフィーは、骨格筋の変性と壊死による筋力低下が主病態である。
5.〇 正しい。慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーの原因は不明であり、2か月以上にわたる進行性または際年生の左右対称性の多発根ニューロパチーである。末梢運動神経・末梢感覚神経がともに侵される特徴を持つ。

多発性硬化症とは?

 多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。

(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

90 重症筋無力症について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.筋電図検査において末梢神経の連続刺激で振幅の増大がみられる。
2.抗アセチルコリン受容体抗体陽性率は10%である。
3.症状の日内変動がある。
4.嚥下障害の合併はない。
5.眼瞼下垂がみられる。

解答3/5

解説

1.× 筋電図検査において末梢神経の連続刺激での検査を疲労試験(反復刺激検査)という。振幅の増大がみられるのは、Lambert-Eaton症候群(ランバート・イートン症候群)である。重症筋無力症の場合、振幅が漸減(waning:ウィニング)する。
2.× 抗アセチルコリン受容体抗体陽性率は、「10%」ではなく80~90%である。抗アセチルコリン受容体は、筋収縮に作用する。
3.〇 正しい。症状の日内変動がある。朝方は症状が軽度であり、夕方になると症状の増悪がみられる。
4.× 嚥下障害の合併がみられる。なぜなら、舌咽頭筋(構音障害・舌筋運動障害)が侵されるため。
5.〇 正しい。眼瞼下垂がみられる。初期症状になることが多い。

 

4 COMMENTS

k

第48回午前の89番
感覚障害を合併するのはどれか。2つ選べ。

3番の筋萎縮性側索硬化症の症状に感覚障害があるのに不正解扱いされている理由を教えていただきたいです。

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大川 純一

コメントありがとうございます。
筋萎縮性側索硬化症の感覚障害は、「症状」ではなく「陰性症状」のひとつです。
したがって除外されます。
今後ともよろしくお願いいたします。

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