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11 60歳の男性。10年前にParkinson病と診断された。日常生活は自立している。
すくみ足のため自宅で頻回に転倒するようになった。
この患者に対する指導で適切なのはどれか。
1.スリッパを履くよう勧める。
2.足関節に重錘バンドを装着する。
3.T字杖歩行を指導する。
4.車椅子での移動を指導する。
5.自宅での手すり設置の場所を指導する。
解答5
解説
・60歳の男性(10年前:Parkinson病)。
・日常生活自立(Hoehn&YahrステージⅡ程度)
・すくみ足のため自宅で頻回に転倒する。
→パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。
1.× スリッパを履くことで、すり足歩行を助長する。そのため、さらなる歩行不安定となり転倒助長するため不適切である。
2.× 足関節に重錘バンドを装着するのは、小脳障害に適応となる。これを重り負荷法(重錘負荷法)という。重り負荷法(重錘負荷法)とは、上下肢に重りを着用させることで運動学習を進め、運動・動作の改善を図る方法である。脊髄小脳変性症(運動失調)に適応となり、上肢では 200g~400g、下肢では 300g~600g 程度のおもりや重錘バンドを巻く。ほかのアプローチとして、弾性緊縛帯を装着することもある。
3.× T字杖歩行を指導するのは、脳血管障害による片麻痺患者に適応となる。Parkinson病の場合、突進現象や小刻み歩行によりT字杖などの歩行補助具はうまく使えないことのほうが多い。
4.× 車椅子での移動を指導するのは、時期尚早である。なぜなら、本症例は自宅で頻回に転倒するようになってはいるが、歩行可能であるため。
5.〇 正しい。自宅での手すり設置の場所を指導する。なぜなら、固定された手すりを設置することで、歩行障害・姿勢反射障害によるふらつきを手すり把持での立て直しが可能であるため。Parkinson病は、上肢の引っ張りによる転倒防止の方法を取りやすいため、T字杖などは適さないが、手すりの設置は有効である。
ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。
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【PT専門のみ】パーキンソン病についての問題「まとめ・解説」
12 48歳の女性。2年前に多発性硬化症と診断された。これまで日常生活はおおむね自立していたが、1週前から視力の低下、両側下肢の脱力が増悪し入院となった。薬物治療後に理学療法が開始されたが、視力の低下、両側下肢の筋力低下および軽度のしびれが残存している。
この時点の深部感覚障害の程度を適切に検査できるのはどれか。
1.運動覚試験
2.Romberg試験
3.内果での振動覚試験
4.自動運動による再現試験
5.非検査側を用いた模倣試験
解答1?
解説
・48歳の女性(2年前:多発性硬化症)
・日常生活:おおむね自立。
・1週前:視力の低下、両側下肢の脱力が増悪し入院。
・薬物治療後:視力の低下、両側下肢の筋力低下および軽度のしびれが残存。
→本症例は、①視力の低下、②両側下肢の筋力低下、③軽度のしびれが残存している。それらがありながらも正確な評価ができるものを選択する。
1.〇 運動覚試験は、患者の患肢関節を動かすと同時に①口頭試問に答えさせるか、②他側肢で模倣させるか、③母指探し試験(親指を反対側の手掌で握るという検査)がある。①口頭試問に答えさせるもの(他動運動感覚:位置覚)は、この試験は検者が他動的に動かして「上か下か」を答える検査である。患者側が動かす検査ではなく答えるだけで、上か下かを検者側が確認して障害があるのか確認することが出来、また視力低下でも口頭で説明出来れば可能であるため、本症例に適切に検査できると考えられる。
2.× Romberg試験は、深部感覚障害を評価する。Romberg徴候(ロンベルグ徴候)は、被験者に足をそろえ、目を閉じて直立する検査で、陽性(閉眼時)では、脊髄性障害(脊髄癆)では動揺が大きくなる。ちなみに、開眼時・閉眼時ともに動揺がみられる場合は小脳障害を考える。本症例は両側下肢の筋力低下、軽度のしびれが残存しているため不適切である。
3.× 内果での振動覚試験は、骨突出部へ音叉を当てる。自動運動は必要なく、筋力低下でも適切な判断が可能である。ただし、本症例は「軽度の痺れが残存」している。したがって、振動が加えられているか分からず検査は困難である。
4~5.× 自動運動による再現試験/非検査側を用いた模倣試験は、筋力低下があり自動運動が困難であるため不適切である。深部感覚障害のためか、筋力低下のせいかであるかの適切な判断が困難である。
多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。
(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)
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【PT】多発性硬化症についての問題「まとめ・解説」
13 28歳の女性。生来健康であったが、1週前に急に回転性のめまいが出現した。良性発作性頭位眩暈症と診断され、理学療法が開始された。初回評価時には座位は可能であるが立位の保持は不安定であった。非注視下での眼振を認め、姿勢変換時にめまい感が増悪する。
この障害を改善するための理学療法で適切なのはどれか。
1.背臥位での他動的関節可動域運動
2.外力を加えた座位姿勢の保持練習
3.座位での頸部回旋運動による前庭刺激
4.眼振が出現しない姿勢での基本動作練習
5.杖を用いた歩行練習
解答3
解説
・28歳の女性(良性発作性頭位眩暈症)
・1週前に急に回転性のめまい。
・初回評価時:座位可能、立位保持不安定。非注視下での眼振を認め、姿勢変換時にめまい感が増悪する。
→めまいは中枢性と末梢性に分類される。末梢性めまいには、良性発作性頭位眩暈(めまい)症(BPPV)、メニエール病、前庭神経炎がある。良性発作性頭位眩暈症は、特定の頭位をとったときにごく短時間の激しい眩暈(めまい)が生じる疾患である。理学療法にて改善が見込める疾患である。具体的に、姿勢を変化させながら耳石を移動させる方法(エプリー法)や、眩暈を誘発させて眩暈に慣れさせることで症状を軽減することができる。したがって、選択肢3.座位での頸部回旋運動による前庭刺激が正しい。
1.× 背臥位での他動的関節可動域運動は、改善にはならない。主に拘縮や関節可動域制限に適応となる。
2.× 外力を加えた座位姿勢の保持練習は、改善にはならない。主に体幹の筋力低下や姿勢保持障害に適応となる。
4.× 眼振が出現しない姿勢での基本動作練習は、改善にはならない。眼振の出現する姿勢で行う。
5.× 杖を用いた歩行練習は、改善にはならない。主に脳血管障害による歩行障害などに適応となる。
14 62歳の女性。両側の変形性膝関節症で、膝関節に軽度の伸展制限と中等度の内反変形とがみられ、Mikulicz線は膝関節中心の内側に偏位している。
運動療法で適切でないのはどれか。
解答4
解説
・62歳の女性(両側の変形性膝関節症)
・膝関節に軽度の伸展制限と中等度の内反変形がみられる。
・Mikulicz線は膝関節中心の内側に偏位している。
→Mikulicz線(ミクリッツ線)とは、成人の立位荷重線で、大腿骨頭中心から足関節中心を結んだ線である。この線は、正常成人では、膝関節の中心を通過するが、大腿骨頸部の頚体角が大きい場合や、変形性膝関節症で内反変形があると、膝関節中心の内側を通過する。つまり、本症例はO脚変形しているということである。
1~2.〇 正しい。大腿四頭筋の筋力強化である。膝関節の安定性が増す。
3.〇 正しい。自動介助運動での膝関節伸展の関節可動域訓練である。膝関節軽度伸展制限の軽減を図れる。
4.× 内転筋の筋力強化である。O脚の悪化につながるため不適切である。
5.〇 正しい。ハムストリングスの筋力強化である。膝関節の安定性が増す。
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【PT/共通】股関節についての問題「まとめ・解説」
15 45歳の女性。40歳で関節リウマチを発症し、寛解と増悪を繰り返している。両手関節の腫脹と疼痛が顕著である。歩行は可能であるが、左膝関節の疼痛と変形が強いため人工関節置換術を検討している。
術前に使用する歩行補助具として適切なのはどれか。2つ選べ。
1.T字杖
2.ロフストランド杖
3.プラットホーム杖
4.松葉杖
5.四輪式歩行器
解答3/5
解説
・45歳の女性(40歳関節リウマチ)
・寛解と増悪を繰り返す。
・両手関節の腫脹と疼痛が顕著。
・歩行:可能
・左膝関節の疼痛と変形が強いため人工関節置換術を検討している。
→本症例は、両手関節の腫脹と疼痛、左膝関節の疼痛と変形が強い。それら関節を保護できる歩行補助具の選択が必要となる。関節リウマチ患者に対する日常生活の指導は、関節保護の原則に基づき行う。関節保護の原則とは、疼痛を増強するものは避けること、安静と活動のバランスを考慮すること、人的・物的な環境を整備することがあげられる。変形の進みやすい向きでの荷重がかからないように手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具が求められる。
関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。
(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)
1.4.× T字杖/松葉杖の優先度は低い。なぜなら、手関節・手指に負担がかかるため。
2.× ロフストランド杖も、T字杖同様に手関節・手指に負担がかかるため不適切である。痙直型両麻痺などに適応となる。
3.〇 正しい。プラットホーム杖は、前腕に体重をかけられるため手関節・手指を保護できる。
5.〇 正しい。四輪式歩行器は、前腕で支持するタイプがある。それらは、前腕に体重をかけられるため手関節・手指を保護できる。
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いつも訂正用・解説用としてお世話になっております。
問12の件ですが、補足として聞いて頂けると幸いです。
「1)運動覚試験」では、運動覚検査の1つとして母指探し試験があります。この試験は検者が他動的に動かして「上か下か」を答える検査なので、患者側が動かす検査ではなく答えるだけで、上か下かを検者側が確認して障害があるのか確認することが出来、また視力低下でも口頭で説明出来れば可能なので可能かと思われます。
「3)内果での振動覚試験」では、音叉等で振動を与えて振動が加えられているか否か応える検査ですが、問題文に「軽度の痺れが残存」と書いているため、患者側が答える際に痺れがあるため、振動が加えれているか分からない為、難しいかと思われます。
↑↑↑
国試対策の授業でこれに似た内容で受けた解説ですが、1)と3)がとても難しく、答えが決めにくい内容でした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
いつもありがとうございます。
おお!納得しすぎて、ほとんどそのままコメントを採用させていただきました。
適切な回答かご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。
いつも大変お世話になっております。
学生からしたらとても助かっております!
12番の解説についてなのですが、
運動覚の試験の中に、母指探し検査がある事は理解出来たのですが、母指探し検査の内容が誤っているのでは無いかと思ったのですが、どうでしょうか。
母指探し検査は、患者様に閉眼をして頂き、
親指を反対側の手掌で握るという検査で、どのような軌跡を辿って母指を握ったか。又は、握れなかったのか。というのを検査者が確認できる。
という検査だったと思うのですが、いかがでしょうか。
この設問に関しましては、母指探し検査ではなく、
運動覚の中の1つである『位置覚』の検査が正解だと思いました。
位置覚は、検者が母指を他動的に動かして、閉眼している患者が母指の関節が動いた方向を答える。という試験です。
コメントありがとうございます。
ご指摘通りですね。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。