第48回(H25) 理学療法士国家試験 解説【午前問題16~20】

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16 健常な1か月児にみられる姿勢はどれか。

解答1

解説

1.〇 正しい。非対称性緊張性頸反射(ATNR)は、背臥位にした子どもの顔を他動的に一方に回すと、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、顔面側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する。生後から、生後4~6ヵ月で消失する。
2.× ランドウ反応は、乳児の腹部を検者の手掌で支えて水平にすると、頭を上げ体幹をまっすぐにし、さらに下肢を伸展する。生後3か月頃から出現し、2歳半ごろに消失する。
3.× 手で足をつかんでいる。これができるのは5か月頃である。
4.× 引き起こし反応である。定頸が見られ、この反応は3~4か月頃にみられる。
5.× 骨盤支持で座位保持可能なのは、5か月程度で行える。完全な座位保持自立は7か月程度である。

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【暗記用】姿勢反射を完璧に覚えよう!

 

 

 

 

 

 

17 頸髄損傷(第6頸髄節まで機能残存)患者に対する車椅子上の動作指導の方法で誤っているのはどれか。

1.車椅子上での位置の修正
2.車椅子とベッド間の移乗
3.車椅子上での位置の修正
4.足をベッドに上げる
5.車椅子上での除圧

解答4

解説

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

本症例のポイント

第6頸髄節まで機能残存レベルでは、手関節背屈が可能である。したがって、手関節背屈による把持作用をテノデーシスアクション(腱固定作用)が可能である。肩関節の動作は保たれ、肘関節は屈曲のみ可能で、上腕三頭筋による肘関節伸展動作はできない。トランスファーボードの利用などにより移乗ができ更衣・整容・食事も自助具を使用し自立可能である。ちなみに、肘関節伸展可能には第7頸髄節の残存が必要である。したがって、本症例は、肘関節伸展でのプッシュアップ動作ができない状態での除圧・移乗方法を選択する。

1.〇 正しい。車椅子上での位置の修正は、フレームに手をかけて、左右に体重を移動しながら回旋すれば可能である。
2.〇 正しい。車椅子とベッド間の移乗は、前方アプローチにて両側の肩関節伸展・肘関節伸展位でロックし、ハンドリムを押しながら、体幹を前屈し、肩甲帯周囲筋を利用することで可能である。 
3.〇 正しい。車椅子上での位置の修正は、上腕をグリップにかけて、上体を傾けることで可能である。
4.× 足をベッドに上げることは、第6頸髄節までの機能残存レベルでは困難である。第6頸髄機能残存患者は、ベッド側の下肢(右下肢)をベッドに乗せたい場合、反対側の上肢(左上肢)は、車椅子のグリップ部分にかけて体幹を安定・固定させ肘関節屈筋を使って下肢を持ち上げる。設問の図は、第7頸髄機能残存患者が行うことができる。
5.〇 正しい。車椅子上での除圧は、肩外旋位で肩屈曲・外転させながら上体を反り返えるように行う。

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18 70歳の女性。脳梗塞による右片麻痺。発症後5か月経過。Brunnstrom法ステージは上肢、手指、下肢ともにⅢ。金属支柱付き短下肢装具とT字杖とで病院内歩行が自立した。
 退院に向けたADL指導で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.屋内では短下肢装具を使用しない。
2.浴槽への出入りは座位移動で行う。
3.自宅トイレに手すりを設置する。
4.ズボンは立位のまま着脱する。
5.洗顔は立位で行う。

解答2/3

解説

本症例のポイント

・70歳の女性(脳梗塞による右片麻痺)
・発症後5か月経過:病院内歩行自立(金属支柱付き短下肢装具とT字杖)
・Brs上肢Ⅲ(座位で肩・肘の同時屈曲、同時伸展)、手指Ⅲ(全指同時握り、鈎形握り(握りだけ)、伸展は反射だけで、随意的な手指伸展不能)、下肢Ⅲ(座位、立位での股・膝・足の同時屈曲)。
→本症例は、発症後5か月が経過しているためリハビリの効果はプラトーに近いと考えられる。退院に向けたADL指導は、「できるギリギリに設定すると転倒・転落の危険」があるため、より安全に環境整備も活用する必要がある。

1.× 屋内でも短下肢装具を使用した方が良い。なぜなら、現在も病院内では短下肢装具を使用していたため。また、転倒は住宅内でのほうが多いという報告がある。
2.〇 正しい。浴槽への出入りは座位移動で行う。なぜなら、浴槽は転倒しやすい場所であるため。また、浴槽は短下肢装具も外している状態であることが多く、痙性が著明で転倒の危険性が高いと考えられる。
3.〇 正しい。自宅トイレに手すりを設置する。なぜなら、転倒予防のため。
4.× ズボンは「立位」ではなく座位のまま着脱する。なぜなら、立位のまま行うのは、転倒の危険性を伴うため。
5.× 洗顔は「立位」ではなく座位で行う。なぜなら、洗顔を立位のまま行えば両手を使用することが多く転倒の危険性が伴うため。

 

 

 

 

 

19 58歳の男性。身長164cm、体重88kg。高血圧と2型糖尿病で通院していた。空腹時血糖値の異常と急激な視力低下で緊急入院した。入院時の空腹時血糖値は268mg/dl、HbA1cは12 .8%であった。入院後のインスリン投与により空腹時血糖値は156mg/dlに低下した。
 理学療法で正しいのはどれか。

1.HbA1c値を日々の理学療法の指標にした。
2.運動はインスリン投与後30分以内に開始した。
3.運動強度はBorg指数で17とした。
4.短時間1回最大等尺性訓練による筋力増強を行った。
5.1日200kcalを消費させる有酸素運動を指導した。

解答5

解説

本症例のポイント

・8歳の男性(高血圧と2型糖尿病)
・身長164cm、体重88kg。
・空腹時血糖値の異常と急激な視力低下。
・入院時の空腹時血糖値:268mg/dl、HbA1c:12 .8%(基準値4.6~6.2%)。
・入院後の空腹時血糖値:156mg/dl(インスリン投与)
→本症例は、入院時の空腹時血糖値268mg/dlで運動療法の絶対的禁忌に該当していたが、治療により運動を開始できるようになっている。

1.× HbA1c値は、およそ一か月前の平均血糖レベルを反映しているため、日々の理学療法の指標するのは不適切である。HbA1Cは、ヘモグロビンのアミノ基とブドウ糖が結合したものである。HbA1Cは、ヘモグロビンの生体内における平均寿命(約120日)の半分程度、すなわち、過去1〜2ヶ月の血糖状態を表すため、血糖値よりも正確な血糖状態を評価することができる。
2.× 運動は、インスリン投与後「30分以内」ではなく一時間以上経ってから開始する。なぜなら、インスリン投与後すぐの運動は、インスリンの吸収をさらに高めることになり、低血糖を引き起こす可能性が高まるため。
3.× 運動強度は、Borg指数で「17(かなりきつい)」ではなく13(ややきつい)程度が望ましい。本症例は、急激な視力低下があることから、網膜症が疑われる。
4.× 短時間1回最大等尺性訓練による筋力増強を行うより、比較的軽い運動を反復する(有酸素運動)が望ましい。
5.〇 正しい。1日200kcalを消費させる有酸素運動を指導した。消費カロリーの目安としては1日80〜200kcalであるが、8歳の男性ということもあり200kcalが望ましいと考えられる。

2型糖尿病の理学療法

 1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。

①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。

【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)

【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。

(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)

 

 

 

 

 

 

20 20歳の男性。膝関節伸展運動を等速性に行った。角速度30°/sで設定したとき、最大トルク値は150Nmを示した。
 この時の最大パワー(W)はどれか。
 ただし、πは180°とする。

1.5π
2.20π
3.25π
4.30π
5.35π

解答3

解説

πは180°である。角速度30°/sで設定しているため、角速度30°/s(=π/6/s)である。(※π/6/sは1/6)

回転運動の仕事率(パワー)は、トルク × 角速度である。

したがって、W=F×角速度である。

この公式に当てはめると、150Nm × π/6/s=25π Nm/sである。

よって、選択肢3.25πが正しい。

 

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