第47回(H24) 作業療法士国家試験 解説【午前問題36~40】

 

36 神経・筋疾患の患者のリハビリテーションで優先度が低いのはどれか。

1.Parkinson病では視覚刺激を運動発動に利用する。
2.筋ジストロフィーの運動訓練では過負荷に注意する。
3.筋萎縮性側索硬化症では発症早期から褥瘡に注意する。
4.Guillain-Barré 症候群では訓練中の不整脈に注意する。
5.脊髄小脳変性症では早期から転倒に注意する。

解答

解説
1.〇 正しい。Parkinson病では視覚刺激を運動発動に利用する。逆説運動を利用した訓練法である。聴覚刺激(かけ声や、メトロノームを用いたリズム音)や視覚刺激(床の上の横棒を踏み越える)歩行訓練は、すくみ足の改善に有効である。
2.〇 正しい。筋ジストロフィーの運動訓練では過負荷に注意する。なぜなら、筋ジストロフィーの患者の骨格筋は、脆弱性があり過用性筋力低下が起こる可能性があるため。したがって、過用による筋のダメージを避ける配慮が必要である。筋力維持目的の運動訓練は、過用性筋力低下と廃用性筋力低下を起こさないよう行う。
3.× 筋萎縮性側索硬化症では、発症早期から褥瘡に注意する優先度が低い。なぜなら、一般的に筋萎縮性側索硬化症(ALS)の陰性症状として、①感覚障害、②眼球運動障害、③膀胱直腸障害、④褥瘡(①~④は4大陰性徴候)、⑤小脳症状、⑥錐体外路症状があげられるため。
4.〇 正しい。Guillain-Barré 症候群では訓練中の不整脈に注意する。なぜなら、Guillain-Barré 症候群では自律神経症状をきたすこともまれではないため。自律神経障害(頻脈高血圧起立性低血圧など)が生じる。
5.〇 正しい。脊髄小脳変性症では早期から転倒に注意する。なぜなら、脊髄小脳変性症の初期症状から、起立時のめまいやふらつきやすく転倒のリスクは高いため。脊髄小脳変性症とは、小脳を中心とした神経の変性により生じる疾患を総称して呼ぶ。歩行時のふらつきや、手の震え、呂律が回らない等を症状とする神経疾患である。主な症状として、①自律神経症状、②小脳失調、③パーキンソニズムである。

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

 

 

37 5歳の脳性麻痺児が、手の支持なしに椅子に座り、物につかまらずに床から立ち上がることができる。
 粗大運動能力分類システム(Gross Motor Function Classification System:GMFCS)のレベルはどれか。

1.レベルⅠ
2.レベルⅡ
3.レベルⅢ
4.レベルⅣ
5.レベルⅤ

解答

解説

1.〇 正しい。レベルⅠは、制限なしに歩く。本症例の5歳の脳性麻痺児が、手の支持なしに椅子に座り、物につかまらずに床から立ち上がることができるレベルに相当する。他にも、手での支持なしに椅子に座り、また椅子から立ちあがる、床上あるいは椅子上の座位から物につかまらずに立ち上がることができるレベルとなる。
2.× レベルⅡは、歩行補助具なしに歩く。
3.× レベルⅢは、歩行補助具を使って歩く。
4.× レベルⅣは、自力移動が制限。
5.× レベルⅤは、電動車いすや環境制御装置を使っても自動移動が非常に制限されている。

「GMFCS」とは?

粗大運動能力分類システム(gross motor function classification system:GMFCS)は、判別的な目的で使われる尺度である。子どもの座位能力、および移動能力を中心とした粗大運動能力をもとにして、6歳以降の年齢で最終的に到達するという以下5段階の機能レベルに重症度を分類している。

・レベルⅠ:制限なしに歩く。
・レベルⅡ:歩行補助具なしに歩く。
・レベルⅢ:歩行補助具を使って歩く。
・レベルⅣ:自力移動が制限。
・レベルⅤ:電動車いすや環境制御装置を使っても自動移動が非常に制限されている。

参考にどうぞ↓

理学療法士国家試験 GMFCSについての問題4選「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

38 上肢にリンパ浮腫がある乳癌術後患者に対するADL指導として最も適切なのはどれか。

1.日光浴をする。
2.三角巾で保護する。
3.自動介助運動をする。
4.患肢の挙上を避ける。
5.高い温度で温浴をする。

解答

解説

乳癌について

乳癌は乳管や小葉上皮から発生する悪性腫瘍である。乳管起源のものを乳管癌といい、小葉上皮由来のものを小葉癌という。年々増加しており、女性のがんで罹患率第1位、死亡率は第2位である。40~60歳代の閉経期前後の女性に多い。

【乳房切除術後の注意事項】

①患側上肢での血圧測定、採血、注射などは避ける。
②袖口のきつい服や腋窩を締め付ける服は避ける。
③スキンケア、虫刺されに注意する。
④患側上肢では重いものを持たないようにする。
⑤患側上肢の過度の負荷や外傷を避ける。

【リンパ浮腫の治療】
リンパ浮腫の治療は、複合的理学療法といわれ、以下の4つの治療を組み合わせながら行う。①リンパドレナージ、②圧迫療法、③圧迫下における運動療法、④スキンケアである。リンパ液を流してあげることで突っ張った皮膚を緩め、硬くなった皮膚を柔らかくする。この状態で弾性包帯を巻いたり、スリーブといわれるサポーターのようなものや、弾性ストッキングを着用し、リンパの流れの良い状態を保ち、さらにむくみを引かせて腕や脚の細くなった状態を保つ。そして、圧迫した状態でむくんだ腕や脚を挙上する、動かすことでさらにむくみを軽減・改善をはかる。

1.× 日光浴をする優先度は低い。むしろ日光浴は避けるべきである。なぜなら、日光による炎症で皮膚障害が起こりえるためである。リンパ浮腫は、感染を契機に増悪しやすく、感染のリスクを上げる行動となる。
2.× 三角巾で保護する必要はない。むしろ、三角巾やアームスリングなどで固定すると不動により浮腫が悪化してしまう可能性がある。
3.〇 正しい。自動介助運動をする。なぜなら、リンパ還流の改善、浮腫の軽減に効果的であるため。ちなみに、自動介助運動とは、障害があったり筋力が低下している部位を自身や医療者など他人の助けを借りて運動させる方法を指す。
4.× 患肢の挙上を避けるのではなく「促す」。なぜなら、自動運動やポジショニングにより、リンパ還流が改善し、浮腫が軽減するため。
5.× 高い温度で温浴をする必要はない。むしろ避けるべきである。なぜなら、浮腫の悪化を招くため。また、表在感覚が障害されている場合、熱傷を負うリスクが高い。炎症がある場合には入浴やプールなどは控える。

 

 

 

 

 

 

 

39 Alzheimer型認知症とLewy小体型認知症とに共通する初期症状はどれか。

1.見当識障害
2.小刻み歩行
3.嚥下障害
4.尿失禁
5.幻視

解答

解説

Lewy小体型認知症とは?

Lewy小体型認知症とは、Lewy小体が広範な大脳皮質領域で出現することによって、①進行性認知症と②パーキンソニズムを呈する病態である。認知機能の変動・動揺、反復する幻視(人、小動物、虫)、パーキンソニズム、精神症状、REM睡眠型行動異自律神経障害などが特徴である。

1.〇 正しい。見当識障害は、Alzheimer型認知症とLewy小体型認知症とに共通する初期症状である。見当識障害とは、「今がいつか(時間)」「ここがどこか(場所)」がわからなくなる状態である。自分の周囲の状況や、 自分が置かれている状況(人や時間、 場所)が正しく理解できなくなる。
2.× 小刻み歩行や動作緩慢など(パーキンソニズム)は、Lewy小体型認知症に特徴的な症状である。
3.× 嚥下障害は、Alzheimer型認知症とLewy小体型認知症とに共通するが、初期症状ではなく進行が高度になるにつれ起きやすくなる
4.× 尿失禁は、Alzheimer型認知症に特徴的な症状である。初期症状ではなく進行が高度になるにつれ起きやすくなる。
5.× 幻視は、Lewy小体型認知症の初期症状に特徴的である。

 

 

 

 

 

 

 

40 MMSE(Mini Mental State Examination)10点の認知症患者の作業療法の目的で正しいのはどれか。

1.聴覚の刺激
2.生活習慣の形成
3.抽象概念の形成
4.新しい課題の提供
5.記憶のトレーニング

解答

解説

MMSE(Mini-Mental State Examination)とは?

MMSE(Mini-Mental State Examination)は、認知障害(認知症・せん妄・健忘性障害)のスクリーニングとして国際的によく用いられている検査である。内容は、見当識・記銘力・注意と計算・想起・言語・組み立ての各項目があり、30点満点で評価する。26点以下で軽度認知障害の疑いを示し、23点以下では認知障害の可能性が高いことを示す。

→本症例の場合、10点(認知症が中等度以上進行)である。作業療法では、日常生活能力の維持が主目的になる。

1.× 聴覚の刺激の優先度は低い。なぜなら、聴覚を刺激することは、何か目的に応じた「手段」であるため。つまり、認知症予防や認知機能改善するための、聴覚の刺激(音楽やカラオケなど)である。聴覚刺激を与えるは作業療法士が一方的に行うことで目的達成となるため作業療法の目的にはなりにくい
2.〇 正しい。生活習慣の形成は、MMSE10点の認知症患者の作業療法の目的である。中等度以上の進行した認知症患者の作業療法の目的は、①心身機能を維持すること、②日中活動することで生活リズムをつけること、③患者の不安や混乱を軽減することなどにある。
3.× 抽象概念を形成することの優先度は低い。なぜなら、中等度以上に進んだ認知症の患者には難易度が高すぎるため。「抽象概念」とは、直接的に認識できないものである。例えば、意識、心の中、頭の中でつくられた概念(イメージ)である。一方、抽象の対義である「具体」は、「直接的に認識できるもの」である。
4.× 新しい課題を提供することは優先度が低い。なぜなら、新しい課題は、中等度以上に進んだ認知症の患者には不安と混乱を招き難易度が高すぎるため。
5.× 記憶のトレーニングの優先度は低い。なぜなら、中等度以上に進んだ認知症の患者には難易度が高すぎるため。

中等度以上の進行した認知症患者の作業療法の目的

①心身機能を維持すること
②日中活動することで生活リズムをつけること
③患者の不安や混乱を軽減することなど

 

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