第47回(H24) 作業療法士国家試験 解説【午前問題41~45】

 

41 Alzheimer型認知症でみられないのはどれか。

1.汚言症
2.観念失行
3.視空間失認
4.物盗られ妄想
5.遂行機能障害

解答

解説

Alzheimer型認知症とは?

Alzheimer型認知症は、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。Alzheimer型認知症の患者では、現在でもできる動作を続けられるように支援する。ちなみに、休息をとることや記銘力を試すような質問は意味がない。

1.× 汚言症は、Alzheimer型認知症でみられない。汚言症とは、卑猥語や罵倒語(汚言、醜語、糞語、猥言、猥語)を不随意的に発する症状である。Pick病(ピック病)やTourette症候群(トゥレット症候群)でみられる。

2.〇 観念失行は、Alzheimer型認知症でみられる。観念失行とは、複合的な運動の障害であり、日常使用する物品が正当に使用できない失行のことである。優位半球頭頂葉を中心とする広範囲な障害で生じる。例えば、タバコに火をつける、お茶を入れる、歯磨きをするなどの手順が困難になる。
3.〇 視空間失認は、Alzheimer型認知症でみられる。視空間失認とは、物が空間で占める位置を認知できない状態のことである。例えば、目の前にある小さなボールをつかめなくなるなど。頭頂葉および後頭葉の障害でみられる。
4.〇 物盗られ妄想は、Alzheimer型認知症でみられる。物盗られ妄想は、自分の持ち物、お金、大切な書類など、他人(身近な家族にが対象となることも多い)に盗られてしまうという妄想である。Alzheimer型認知症に典型的である。
5.〇 遂行機能障害は、Alzheimer型認知症でみられる。遂行機能障害とは、目的を持った一連の動作を有効に行う機能が障害されることである。前頭葉機能の障害である。

Tourette症候群(トゥレット障害)とは?

Tourette症候群(トゥレット障害)とは、複数の運動チックと音声チックが同時に存在し、1年以上継続する状態を指す。汚言症がみられることがある。汚言症とは、卑猥語や罵倒語(汚言、醜語、糞語、猥言、猥語)を不随意的に発する症状。一方、一過性チック障害は運動性チックおよび(または)音声チックが1日中頻繁に生じ、少なくとも4週間は持続するが、1年以上には至らないものをいう。

前頭側頭型認知症(Pick病)とは?

 認知症の一つである脳血流量の低下や脳萎縮により人格変化、精神荒廃が生じ、植物状態まで進行し、2~8年で衰弱して死亡することが多い。

【病理所見】
前頭葉と側頭葉が特異的に萎縮する。

【症状】
①初発症状は、人格障害・情緒障害など。
②病期前半:記憶障害・見当識障害はほとんどみられない。
③性的逸脱行為(見知らぬ異性に道で抱きつくなど)がみられる。
④滞続言語(何を聞いても自分の名前や生年月日など同じ語句を答える)

 

 

 

 

 

 

 

42 アルコール依存症患者の自助グループ活動で適切なのはどれか。

1.体験を共有する。
2.半年間で終了する。
3.身体機能訓練に主眼を置く。
4.医師の指導の下で行われる。
5.週1回の参加が決められている。

解答

解説

自助グループとは?

自助グループとは、共通の悩みを持つ当事者や家族が互いに支えあって、問題に向き合うことを目的に自主的に形成されたグループのことをいう。

1.〇 正しい。体験を共有することはアルコール依存症患者の自助グループ活動である。アルコール依存症によって生じた体験を共有したり、苦しみを分かち合うなどして、ともに依存症を克服することを目的とした取り組みである。参加者の相互交流、相互理解が進み、自助グループ活動が継続していく。
2.× 半年間で終了するという決まりはない。自助グループは各団体により多少異なるルールはあるが、アルコール依存症者は断酒の継続ができていても一度の飲酒で連続飲酒になってしまうことが多いため、長年(時には一生)の参加が普通である。
3.× 主眼は、身体機能訓練ではなく「断酒サポート」である。患者同士の体験の共有による断酒サポートがこの取り組みの主な目的である。
4.× 医師の指導の下で行われるわけではない。ただし、患者同士の自助グループのため、医師の指導はないが助言することはある。
5.× 週1回と参加回数が決められているわけではない。回数の決まりはなく、強制的な参加ではないが、ミーティングは連日行われることが多い。

 

 

 

 

 

 

 

43 薬物依存の患者に対する作業療法の目的でないのはどれか。

1.退行の促進
2.身体機能の改善
3.衝動のコントロール
4.日常生活能力の改善
5.心理的耐久力の向上

解答

解説

薬物依存の作業療法

①身体機能の回復
②欲求不満耐性の向上
③自助グループへの方向づけなど。

1.× 退行の促進は薬物依存の患者に対する作業療法の目的でない。退行とは、防衛機制のひとつである。ある程度の発達を遂げた者が、危機に際してより低い発達段階に「子どもがえり」して、未熟な行動により当面の困難を回避しようとするものである。例えば、弟や妹が生まれたとき、両親の愛情が自分から弟妹に移ってしまうことをおそれて、おねしょをして両親の手を煩わせることである。したがって、薬物依存症者には欲求不満耐性を低下させることになるので逆効果である。
2.〇 正しい。身体機能の改善は、薬物依存の患者に対する作業療法の目的である。身体機能の改善、基礎体力の回復は作業療法における初期目標である。
3.〇 正しい。衝動のコントロールは、薬物依存の患者に対する作業療法の目的である。衝動のコントロールは再発防止につながる。ちなみに、薬物依存症者は衝動のコントロールができないことが多く、社会的問題行動や薬物使用をする要因となっている。
4.〇 正しい。日常生活能力の改善は、薬物依存の患者に対する作業療法の目的である。規則正しいせい生活リズムの獲得など、生活全体に対する現実的な自己点検機能の改善は長期目標として重要である。
5.〇 正しい。心理的耐久力の向上は、薬物依存の患者に対する作業療法の目的である。ストレス耐性をつけることも再発防止につながる。

 

 

 

 

 

 

 

44 統合失調症患者の退院時指導で適切でないのはどれか。

1.再入院しないよう約束する。
2.ストレスへの対処法を再確認する。
3.利用する施設の担当者に情報を提供する。
4.困ったときの援助の求め方について確認する。
5.再燃のサインを見つけたときの行動について確認する。

解答

解説

統合失調症患者の退院時指導

①病識をしっかりと持つこと。
②退院後の生活をイメージし、その状態に向かって生活環境を整えること。
③困ったときに相談する人や機関を決めておくことである。

1.× 再入院しないよう約束する優先度は低い。なぜなら、再入院をしないように約束することは、患者に無理をさせ負担につながるため。統合失調症患者が退院し、社会復帰するために向けて必要なことは、①病識をしっかりと持つこと、②退院後の生活をイメージし、その状態に向かって生活環境を整えること、③困ったときに相談する人や機関を決めておくことである。
2.〇 正しい。ストレスへの対処法を再確認する。退院後に予想されるストレスも含め、退院時に再確認することで、退院後の生活をイメージし、その状態に向かって生活環境を整えることができる。
3~4.〇 正しい。利用する施設の担当者に情報提供する/困ったときの援助の求め方について確認する。退院後の関係者に、情報を提供することで、困ったときに相談する人機関を決めておくことができる。症状の悪化を未然に防ぐことが可能となる。
5.〇 正しい。再燃のサインを見つけたときの行動について確認する。なぜなら、まずは病識をしっかりと持つことが大切であるため。再燃した場合、早期よりその傾向を見逃さず、本人と関係者が情報を共有して症状の悪化を未然に防ぐことが重要である。

 

 

 

 

 

 

 

45 認知機能障害の強い統合失調症患者に対する作業指導で工夫する点はどれか。

1.言語説明を増やす。
2.工程見本を増やす。
3.作業工程を増やす。
4.作業時間を増やす。
5.道具の種類を増やす。

解答

解説

統合失調症とは?

統合失調症は、思考・知覚・感情・意欲・自我意識の障害が起こる。
作業療法場面では、①柔軟性がない、②計画性がない、③慣れがない、④同時並行できない、⑤作業量に変動がある。

1.× 言語説明を増やす優先度は低い。なぜなら、統合失調症は、思考・知覚・感情・意欲・自我意識の障害が起こるため。言葉での説明よりも身振り手振りを交えての説明や、見本を示した方が理解しやすいことが多い。
2.〇 正しい。工程見本を増やす。なぜなら、手順や見本は具体的に示した方が理解しやすいため。
3.× 作業工程を増やす優先度は低い。なぜなら、認知機能障害の強い統合失調症患者であるため。新しいことを覚えることが苦手であり、作業工程を増やすと対応しきれずそれがストレスにつながる場合がある。
4.× 作業時間を増やす優先度は低い。なぜなら、統合失調症は、思考・知覚・感情・意欲・自我意識の障害が起こるため。長時間の作業には耐えられないことが多い。
5.× 道具の種類を増やす優先度は低い。なぜなら、認知機能障害の強い統合失調症患者であるため。道具の種類が増えると作業が複雑化するため、混乱しやすく、対応できない場合がある。認知症の作業療法は、①自信や安心感を取り戻せる、②リハビリと感じにくいもの、③馴染みの作業(混乱・困惑を防ぐ)ことが望ましい。

 

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