第47回(H24) 作業療法士国家試験 解説【午前問題46~50】

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46 統合失調症の亜急性期と回復期とに共通する作業療法の目的はどれか。

1.役割行動
2.欲求の充足
3.自信の回復
4.達成感の獲得
5.生活リズムの回復

解答

解説

1.× 役割行動の獲得は、社会復帰における作業療法の目的である。したがって、回復期以降の作業療法の目的となる。ちなみに、役割行動とは、学業、就労、家事など、社会人としての役割の行動のことである。
2.× 欲求の充足は、亜急性期における作業療法の目的である。睡眠覚醒などの生活リズムが確立しているが、疲労感が強い時期である。
3~4.× 自信の回復/達成感の獲得は、回復期における作業療法の目的である。自信の回復/達成感の獲得がやがて社会復帰へとつながり、社会での役割行動ができるようになる。
5.〇 正しい。生活リズムの回復は、亜急性期と回復期に共通の作業療法の目的である。亜急性期は、幻聴・妄想などが活発な急性期を過ぎ、多少の精神症状は残存していても睡眠覚醒などの生活リズムが確立しているが、疲労感が強い時期である。一方、回復期は、疲労感が軽減してこれから社会復帰の準備を始めようとする時期であり、服薬や金銭の自己管理を支援し、学校や職場との連携を図る時期である。それぞれ亜急性期は睡眠リズムの確立、回復期は社会復帰を目指す日常生活リズムの獲得の意味合いに持つ。

”統合失調症とは?”

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。
(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

 

 

 

 

 

 

 

47 うつ病の作業療法として適切なのはどれか。

1.活発な言語的交流を促す。
2.作品を完成させるよう励ます。
3.自己判断が多い種目を選択する。
4.休憩を取りやすいよう配慮する。
5.病前の状態と比較しやすくする。

解答

解説

うつ病の作業療法について、うつ病では意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。そのため、負荷が小さく、自信を回復させるような作業が適切である。病前のようには作業ができないことから自責や自信を無くしてしまうことがあるため配慮が必要である。

1.× 活発な言語的交流を促す必要はない。なぜなら、活発な言語的交流はうつ病患者の負担となりうるため。
2.× 作品を完成させるよう励ます必要はない。なぜなら、うつ病にかかる特徴として完璧主義があげられる。また、励ますことでさらにうつ病患者の焦り、無力感を引き出す可能性もある。
3.× 自己判断が多い種目を選択する必要はない。なぜなら、精神運動の抑制により、自己判断が必要になるものはさらに心理的負担を招く恐れがあるため。したがって、作業は工程がはっきりしたものがよい。
4.〇 正しい。休憩を取りやすいよう配慮する。なぜなら、うつ病患者は疲労感を強く感じていることが多く、長時間の作業は負担になるため。こまめに休憩をとり、安全で受け身的で非競争的なものが望ましい。
5.× 病前の状態と比較しやすくする必要はない。なぜなら、病前の自分と比較することは、自身の喪失感無力感自責を助長する恐れがあるため。

 

 

 

 

 

 

48 気分障害について正しいのはどれか。

1.うつ病は男性に多い。
2.うつ病の生涯有病率は3%である。
3.気分変調性障害はうつ病よりも短期間で治癒する。
4.季節性感情障害は日照時間が短くなると再燃しやすい。
5.脳内セロトニンの増加がうつ病の発症に関係している。

解答

解説

気分障害とは?

気分障害とは、気分の変動によって日常生活に支障をきたす病気の総称である。うつ状態だけが続くものを「うつ病」、躁状態とうつ状態をくり返すものを「双極性障害」などと分類される。気分障害におけるうつ病(単極性)と双極性障害について、双極性障害は障害有病率約1%で、うつ病よりも若い時期に発症しやすく、性差は認められていない。遺伝素因はうつ病よりも2倍以上の関与が考えられている。

1.× うつ病は、「男性」ではなく「女性」に多い。ちなみに、男女比は1:2程度である。
2.× うつ病の生涯有病率は、「3%」ではなく「約15%」である。ちなみに、生涯有病率とは全生涯に関連した健康事象の症例数である。
3.× 気分変調性障害は、うつ病よりも「短期間」ではなく「長期間」で治癒する。気分変調性障害とは、少なくとも2年間(小児や青年では1年間)持続する慢性的で軽度な抑うつを主体とする気分障害である。うつ病の判断基準を満たさない程度のごく軽い抑うつ症状が数年にわたって続く状態である。
4.〇 正しい。季節性感情障害(季節性うつ病)は日照時間が短くなると再燃しやすい。日照時間が短くなる冬に抑うつ状態が悪化し、翌年の春に回復するのは特徴的である。
5.× 脳内セロトニンの「増加」ではなく「低下」が、うつ病の発症に関係している。ちなみに、セロトニンは、中枢神経系の縫線核群において産生される神経伝達物質である。脳内で働く神経伝達物質のひとつで、感情や気分のコントロール、精神の安定に深く関わっている。また、消化管では腸蠕動運動の促進に作用する。

 

 

 

 

 

 

 

49 気分障害でみられやすい妄想はどれか。2つ選べ。

1.心気妄想
2.誇大妄想
3.被害妄想
4.嫉妬妄想
5.追跡妄想

解答1・2

解説

気分障害とは?

気分障害とは、気分の変動によって日常生活に支障をきたす病気の総称である。うつ状態だけが続くものを「うつ病」、躁状態とうつ状態をくり返すものを「双極性障害」などと分類される。気分障害におけるうつ病(単極性)と双極性障害について、双極性障害は障害有病率約1%で、うつ病よりも若い時期に発症しやすく、性差は認められていない。遺伝素因はうつ病よりも2倍以上の関与が考えられている。

1.〇 正しい。心気妄想は、気分障害(うつ病)でみられやすい妄想である。心気妄想とは、自分は重い病気にかかっていると思い込む妄想である。
2.〇 正しい。誇大妄想は、気分障害(躁病)でみられやすい妄想である。誇大妄想とは、自己を過大に評価する妄想である。
3.× 被害妄想は、統合失調症にみられやすい妄想である。被害妄想とは、他人から被害を受けているという妄想である。
4.× 嫉妬妄想は、アルコール依存症統合失調症認知症などにみられやすい妄想である。嫉妬妄想は、配偶者やパートナーが浮気をしているなどといった考えにとらわれる妄想である。
5.× 追跡妄想は、統合失調症にみられやすい妄想である。追跡妄想とは、他人に追跡、監視されるという妄想である。

うつ病にみられる主な微小妄想

①貧困妄想:お金がない、自分は貧乏だと思い込む妄想。
②心気妄想:自分が病気にかかっているのではないかと強く思い込む妄想。
③罪業妄想:自分が取り返しのつかない罪を犯してしまった、自分は罪深い存在であると思い込む妄想。

 

 

 

 

 

 

 

50 うつ病患者の作業療法において病状の悪化を示唆する所見はどれか。2つ選べ。

1.作業の停滞
2.作業時間の遵守
3.新しい課題の要求
4.身体症状への高い関心
5.他の患者とのトラブルの増加

解答1・4

解説

うつ病の作業療法について、うつ病では意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。そのため、負荷が小さく、自信を回復させるような作業が適切である。病前のようには作業ができないことから自責や自信を無くしてしまうことがあるため配慮が必要である。

1.〇 正しい。作業の停滞は、うつ病患者の作業療法において病状の悪化を示唆する所見である。なぜなら、作業の停滞はうつ病の症状でもある意欲低下、精神運動抑制、疲労などが原因で起こった可能性が高いため。作業量の軽減やいったん作業を中止するなどの配慮が必要である。
2.× 作業時間の遵守は、病状の回復を示唆する。なぜなら、作業耐容性の向上や生活リズムが確立したため。
3.× 新しい課題の要求は、病状の回復を示唆する。なぜなら、意欲が向上したため。
4.〇 正しい。身体症状への高い関心は、うつ病患者の作業療法において病状の悪化を示唆する所見である。なぜなら、身体症状への高い関心は、うつ病にみられる心気妄想が出現した可能性があるため。
5.× 他の患者とのトラブルの増加は、一概にうつ病の症状悪化と断定できない。なぜなら、他の患者にもトラブルの原因があるため。一般的に他の患者にもトラブルの増加は、うつ病患者の特徴ではなく、「双極性障害」である。双極性障害の場合、他の患者の過干渉となりトラブルの増加が考えられる。

うつ病にみられる主な微小妄想

①貧困妄想:お金がない、自分は貧乏だと思い込む妄想。
②心気妄想:自分が病気にかかっているのではないかと強く思い込む妄想。
③罪業妄想:自分が取り返しのつかない罪を犯してしまった、自分は罪深い存在であると思い込む妄想。

 

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