第47回(H24) 作業療法士国家試験 解説【午後問題11~15】

 

11 28歳の男性。交通事故で胸髄損傷(第7胸髄まで機能残存)を受傷後、2か月が経過した。受傷時には頭部外傷を認めなかった。現在は、全身状態は良好で、車椅子で院内の移動や身辺動作は自立しているが、自排尿と尿失禁とはみられない。
 この時点の排尿管理として適切なのはどれか。

1.膀胱留置カテーテル
2.膀胱瘻
3.コンドーム型収尿器
4.自己導尿
5.圧迫排尿

解答

解説

本症例のポイント

・28歳の男性。
・交通事故で胸髄損傷(第7胸髄まで機能残存)
・頭部外傷を認めない。
・現在:全身状態は良好、車椅子で身辺動作自立。
自排尿と尿失禁とはみられない

1.× 膀胱留置カテーテルは優先度が低い。なぜなら、膀胱留置カテーテルは、長期間の使用で感染リスクがあるため。本症例は受傷後、2か月経過しており、身辺動作が自立している。ちなみに、膀胱留置カテーテルとは、尿道に留置する方法である。長期の留置により、膀胱が膨らみにくくなるため、他の方法が選択できるのであれば、長期留置は避けるべきである。
2.× 膀胱瘻(ぼうこうろう)は優先度が低い。なぜなら、膀胱瘻は膀胱留置カテーテルを長期に渡って留置せざるを得ない場合に適応となるため。ちなみに、膀胱瘻とは、恥骨上部の下腹部から腹壁を通して膀胱との瘻孔をつくり、膀胱内にカテーテルを挿入し、永久もしくは一定期間尿を体外に排出する方法である。 通常、カテーテル排尿が必要な場合で、経尿道的な膀胱留置カテーテルによる排尿に問題がある場合(尿道皮膚瘻など)が膀胱瘻の適応である。
3.× コンドーム型収尿器は優先度が低い。なぜなら、本症例は自排尿と尿失禁とはみられないため。コンドーム型収尿器は、失禁があり尿閉がない場合に適応となる。装着・交換するが間欠的導尿用は楽である。代用としておむつである。
4.〇 正しい。自己導尿は、現時点の排尿管理では第一選択肢である。男性の場合C6レベル、 女性の場合C8レベルで可能である。自己導尿は、時間を決めて自分で導尿を行うものである。セルフカテーテルを尿道に入れるため、つかみ(ピンチ)動作ができること、両手動作ができること、清潔管理ができることが必要になる。
5.× 圧迫排尿は優先度が低い。なぜなら、圧迫排尿は自排尿がみられるが、残尿もある場合に適応となるため。完全尿閉では膀胱破裂の可能性がある。

 

 

 

 

 

 

 

12 図に示す斜線の部位にⅡ度深達性熱傷がある。
 急性期に安静を保つためのスプリント肢位で正しいのはどれか。

解答

解説

本症例のポイント

Ⅱ度深達性熱傷(【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行)

→熱傷の二次損傷として関節拘縮が伴い、熱傷部位に癒着・瘢痕拘縮が起きやすい。熱傷部位と近い関節は熱傷部位が伸展されるようポジショニングをする。手の熱傷では、手内在筋マイナスポジションになりやすい。手内在筋マイナスポジションとは、母指内転位、MP過伸展、PIP・DIP関節屈曲位のとなるものを指す。

1.× 手内在筋マイナスポジションである。この肢位にならないように、スプリント肢位を設定する。
2.× MP関節屈曲位にする。
3.〇 正しい。手内在筋マイナスポジションに拘縮することを防ぐことができている。瘢痕により主内在筋がMP伸展、PIP・DIP屈曲のようになることが想定されるため、MP関節屈曲、PIP・DIP関節伸展位が好ましい。
4.× 手関節は軽度背屈位にする。
5.× MP関節屈曲位にする。

熱傷の分類

Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

まとめたものはこちら↓↓

理学療法士国家試験 熱傷についての問題7選「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

次の文により13、14の問いに答えよ。
 70歳の女性。買い物での計算や自宅への道順を間違えるようになり、心配した家族に伴われて物忘れ外来を受診した。Alzheimer型認知症と診断され外来作業療法を開始した。患者は「どうして私がここへ来ないといけないの」、「だまされた。帰りたい」と訴えて興奮することが多い。

13 この時期の患者に対する作業療法の目的として適切なのはどれか。

1.食事動作の維持
2.精神的混乱の軽減
3.廃用症候群の予防
4.非言語的交流の活用
5.福祉用具の適用評価

解答

解説

本症例のポイント

・70歳の女性(Alzheimer型認知症)。
・買い物での計算や自宅への道順を間違える。
・患者は「どうして私がここへ来ないといけないの」、「だまされた。帰りたい」と訴えて興奮することが多い。

【Alzheimer型認知症とは?】
Alzheimer型認知症は、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。Alzheimer型認知症の患者では、現在でもできる動作を続けられるように支援する。ちなみに、休息をとることや記銘力を試すような質問は意味がない。

1.× 食事動作の維持は優先度が低い。なぜなら、本症例は「買い物での計算や自宅への道順を間違える」といった複雑な行動に支障を起こしている状態であるため。設問には記載はないが、食事動作の問題はないと考えられる。
2.〇 正しい。精神的混乱の軽減は、この時期の患者に対する作業療法の目的である。なぜなら、現時点はAlzheimer型認知症と診断され外来作業療法を開始した段階であるため。まずは見当識障害により興奮しているため、患者へ安心できる場の提供し信頼関係を築き、不安を軽減させることが重要である。
3.× 廃用症候群の予防は優先度が低い。なぜなら、本症例は「家族に伴われて物忘れ外来を受診できる」ほどの身体機能を有しているため。また「買い物での計算や自宅への道順を間違える」もののそれらを遂行する筋力や心身機能は有していると考えられる。
4.× 非言語的交流の活用は優先度が低い。なぜなら、本症例は現時点で精神的興奮が強い。この状態で、非言語的交流を用いても理解は難しいと考えられる。ただし、言語的コミュニケーション含め非言語的コミュニケーション(身振り・表情など)を用い交流することは、理解がしやすくなるため、精神的興奮がおさまったら用いると良い。
5.× 福祉用具の適用評価は優先度が低い。なぜなら、現時点では歩行障害のような身体機能障害はないため。ちなみに、福祉用具のレンタル・購入には介護保険が必要となる。

 

 

 

 

 

 

次の文により13、14の問いに答えよ。
 70歳の女性。買い物での計算や自宅への道順を間違えるようになり、心配した家族に伴われて物忘れ外来を受診した。Alzheimer型認知症と診断され外来作業療法を開始した。患者は「どうして私がここへ来ないといけないの」、「だまされた。帰りたい」と訴えて興奮することが多い。

14 その後、興奮が落ち着き、作業療法室に定期的に通うようになった。
 今後の作業療法の留意点で適切なのはどれか。

1.個室で作業を行う。
2.薬物の作用を学習させる。
3.病気の説明を繰り返し行う。
4.作業手順を1工程ずつ説明する。
5.長時間かけて仕上げる作業を課題に選ぶ。

解答

解説
1.× あえて個室で作業を行う必要はない。なぜなら、個室で作業を行うと周囲の状況がわからず、より不安が増強する可能性があるため。
2~3.× 薬物の作用を学習させる/病気の説明を繰り返し行う優先度低い。なぜなら、Alzheimer型認知症は、初期から病識の欠如がみられるため。また、本症例が外来に来た時「どうして私がここへ来ないといけないの」、「だまされた。帰りたい」と訴えて興奮することが多かった。薬物の作用を学習させる/病気の説明を繰り返し行うことは、精神的興奮を再燃したり、そもそも難易度が高い課題と考えられる。
4.〇 正しい。作業手順を1工程ずつ説明する。なぜなら、Alzheimer型認知症は新しいことを覚えるのは難しいため。
5.× 長時間かけて仕上げる作業を課題に選ぶ必要はない。なぜなら、Alzheimer型認知症には、抑うつもみられるため。うつ病の作業療法の選択基準として、①工程がはっきりしたもの、②短期間で完成できるもの、③安全で受け身的で非競争的なもの、④軽い運動があげられる。

Alzheimer型認知症とは?

Alzheimer型認知症は、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。Alzheimer型認知症の患者では、現在でもできる動作を続けられるように支援する。ちなみに、休息をとることや記銘力を試すような質問は意味がない。

 

 

 

 

 

 

 

15 46歳の男性。アルコール依存症。以前から大酒家で、糖尿病、高脂血症(脂質異常症)及び肝機能障害を指摘されていた。出張先で連続飲酒状態になり、家族と会社嘱託医師の勧めでアルコール専門病棟に初めて入院した。離脱症状が治まって1週後、作業療法を開始することになった。
 作業療法参加時の観察事項として適切でないのはどれか。

1.飲酒要求による無断外出
2.睡眠不足による注意力散漫
3.肝機能障害による易疲労感
4.フラッシュバックによる幻覚
5.末梢神経障害による歩行障害

解答

解説

本症例のポイント

・46歳の男性(アルコール依存症)
・糖尿病、高脂血症(脂質異常症)、肝機能障害。
・家族と会社嘱託医師の勧めでアルコール専門病棟に初めて入院。
・離脱症状が治まって1週後、作業療法を開始。

アルコール依存症の初期治療では、身体的治療・離脱症状の管理と治療が行われる。これらの治療が終わった後は、生活リズムをつくることや、体力作りが作業療法の中心となる。その後は、心理教育、内省などによって治療への動機づけを行いながら、仲間づくりや断酒会などの自助グループへの参加、生活設計の立て直しを行っていく。

1.〇 正しい。飲酒要求による無断外出(行動化)は、作業療法参加時の観察事項である。行動化とは、情緒的葛藤やストレス因子に対して内省することによってではなく、行為によって対処するもので、不適切な形で現れた防衛機制の1つである。具体例として、診察室から出ていってしまったり、診察の場で沈黙を続けたりするなどである。
2.〇 正しい。睡眠不足による注意力散漫は、作業療法参加時の観察事項である。なぜなら、本症例は断酒から1週間しかたっておらず、睡眠障害が十分に改善していない可能性があるため。
3.〇 正しい。肝機能障害による易疲労感は、作業療法参加時の観察事項である。なぜなら、本症例は、設問より「糖尿病、高脂血症(脂質異常症)及び肝機能障害を指摘されている」ため。また、飲酒により慢性的な肝機能障害を合併していることが多い。
4.× フラッシュバックによる幻覚は、作業療法参加時の観察事項として適切でない。なぜなら、飲酒の場合は、離脱症状の1つとして幻覚が出現する可能性もあるが、フラッシュバックによる幻覚は出現しないため。フラッシュバックはPTSD〈外傷後ストレス障害〉に特徴的なものである。また、フラッシュバックによる幻覚は、精神作用物質(覚せい剤など)の常用者が睡眠不足などのストレスがかかると、薬物を使用していなくても使用した時と同様の精神症状を呈することをいう。
5.〇 正しい。末梢神経障害による歩行障害は、作業療法参加時の観察事項である。ぜなら、本症例は、設問より「糖尿病、高脂血症(脂質異常症)及び肝機能障害を指摘されている」ため。糖尿病の3大合併症として、①網膜症、②腎症、③神経障害であるがみられる。

アルコール依存症とは?

アルコール依存症とは、少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことである。常にアルコールに酔った状態でないとすまなくなり、飲み始めると自分の意志で止めることができない状態である。

【合併しやすい病状】
①離脱症状
②アルコール幻覚症
③アルコール性妄想障害(アルコール性嫉妬妄想)
④健忘症候群(Korsakoff症候群)
⑤児遺性・遅発性精神病性障害 など

 

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