第47回(H24) 作業療法士国家試験 解説【午後問題6~10】

 

6 左肩関節脱臼骨折後3か月の患者の両手の写真を下図に示す。左手に、他動的に動かされると増強する強い疼痛がある。
 この患者への対応で適切でないのはどれか。

1.低出力レーザー照射
2.間欠的機械的圧迫
3.温冷交代浴
4.超短波照射
5.渦流浴

解答

解説

本症例のポイント

左肩関節脱臼骨折後3か月。
左手に、他動的に動かされると増強する強い疼痛。
→複合性局所疼痛症候群(CRPS)が疑われる。

【肩手症候群とは?】

肩手症候群は、複合性局所疼痛症候群(CRPS)の1つと考えられており、脳卒中後片麻痺に合併することが多い。他にも骨折や心臓発作などが誘因となる。症状は、肩の灼熱性疼痛と運動制限、腫脹などを来す。それら症状は、自律神経障害によるものであると考えられている。

第1期:症状が強い時期。
第2期:痛みや腫脹が消失し、皮膚や手の萎縮が著明になる時期。
第3期:手指の拘縮と骨粗懸症が著明になる時期の経過をとる。

治療目的は、①疼痛緩和、②拘縮予防・軽減である。
治療は、①星状神経節ブロック、②ステロイド治療、③アームスリング装着を行う。
リハビリは、①温熱療法、②マッサージ、③関節可動域訓練(自動他動運動)、④巧級動作練習を行う。
『脳卒中治療ガイドライン2009』では、「麻痺の疼痛・可動域制限に対し、可動域訓練は推奨される(グレードB:行うよう勧められる)」としている。

1.〇 正しい。低出力レーザー照射は、鎮痛作用がある。低出力レーザー照射は、熱作用を与えないレベルのレーザー光を照射することにより、レーザーの光作用を利用して神経伝導の抑制、血行改善、痛みを緩和する治療法である。
2.× 間欠的機械的圧迫は、この患者への対応で適切でない。なぜなら、本症例は複合性局所疼痛症候群(CRPS)による炎症が強い時期であるため。疼痛を更に助長する恐れがある。間欠的機械的圧迫は、足部や下腿を間欠的に圧迫することで、下腿の静脈血の還流を手助けする医療機器である。
3.〇 正しい。温冷交代浴は、交互に温水と冷水に患部を浸し、機能的末梢循環障害の改善を図ることを目的とする治療法である。ちなみに、閉塞性高度循環障害のある症例には血管が反応できず禁忌である。
4.〇 正しい。超短波照射は、温熱療法の1つである。身体の内部を温めることで、治療部位の血行を改善し、筋肉痛や神経痛の緩和や弱った胃腸の働きを活発にする治療法である。
5.〇 正しい。渦流浴は、温熱療法の1つである。患部を温水の入った浴槽につけ、浴水による静水圧、温熱効果に加えて、過流、気泡、動水圧によるマッサージ効果を局所に与える。これにより、麻痺した上下肢の血行障害、慢性炎症、関節リウマチ、慢性関節炎による疼痛、筋スパズム・痙性の緩和などを図る。

 

 

 

 

 

 

 

7 上腕切断者に対する義手操作の指導の様子を図に示す。
 操作内容として正しいのはどれか。

1.肘継手の屈曲―伸展動作
2.肘継手のロックの操作
3.手先具の交換操作
4.手先具の回旋操作
5.手先具の開閉動作

解答

解説


1.× 肘継手の屈曲―伸展動作は、肘継手を遊動にした状態で肘関節90°屈曲位に動かして義手の操作をする。前腕を前方に動かすと、ハーネスのハンガーより手先までケーブルの距離が短くなり、肘関節の屈曲が行われる。
2.〇 正しい。肘継手のロックの操作を行っている。断端を前に出した状態で肩を前方に出し、断端を後方に動かして肩関節を伸展させるようにすることで、肘継手ロックコントロールケーブルが引っ張られ肘継手がロックされる。図は肘継手を屈曲させ、肘関節を任意の角度に固定するための肩関節伸展の動きを指導しているところである。
3.× 手先具の交換操作は、手先具を手継手から外し、取り付ける訓練を行う。
4.× 手先具の回旋操作は、手継手のところで回旋させる。
5.× 手先具の開閉動作は、肩関節中間位、肘関節90°屈曲位で固定したまま行う。

 

 

 

 

 

 

 

8 関節リウマチ患者の日常生活で観察された動作を下図に示す。
 関節保護の視点で適切なのはどれか。

1.①
2.②
3.③
4.④
5.⑤

解答

解説

関節保護の原則とは?

関節保護の原則とは、①疼痛を増強するものは避けること、②安静と活動のバランスを考慮すること、③人的・物的な環境を整備することがあげられる。手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具が求められる。

1.× ①矢印の方向にふきんで拭く動作は、尺側方向ではなく「橈側方向」へ拭くように指導する。
2.4.× ②コップを持つ動作/④フライパンを持つ動作は、片手ではなく「両手」で持つように指導する。なぜなら、片手では関節の負担がかかりやすいため。
3.〇 正しい。③やかんを持つ動作は、選択肢の中ではもっとも関節保護の観点が行えているといえる。なぜなら、やかんの取っ手を手掌で持ち、また手関節は掌屈位で尺側偏位を防いでいるため。できれば、両手で持つとなお望ましい。
5.× ⑤矢印の方向に水栓を回す動作は、尺側方向ではなく「橈側方向」へ拭くように指導する。また、水道栓は手首に負担がかかるため、レバーハンドルが望ましい。

 

 

 

 

 

 

 

9 63歳の男性。脳出血による左片麻痺。Brunnstrom法ステージは左上肢Ⅲ、左手指Ⅲ及び左下肢Ⅳ。
 上肢の分離運動促通を目的とした自主訓練として適切なのはどれか。

解答

解説

(※引用:脳卒中治療ガイドライン2009

1.× 患側のペン操作は、Brunnstrom法ステージ上肢・手指Ⅴに相当し本症例には難易度が高い。図では、書かれた線の列もほぼ平行で手指の巧緻性が認められる。
2.〇 正しい。前方の手すりを握る練習は、本症例の上肢の分離運動促通を目的とした自主訓練に適している。患側上肢を肩関節屈曲90°に挙上する動作も行え、これはBrunnstrom法ステージ上肢Ⅳに相当する。
3.× 新聞紙を破る動作は、Brunnstrom法ステージ上肢Ⅴに相当し本症例には難易度が高い。図では、両側肘関節を伸展位で肩関節外転している。
4.× 窓拭き動作は、Brunnstrom法ステージ上肢Ⅴに相当し本症例には難易度が高い。図では、患側肩関節を90°以上に挙上している。
5.× ボールをバウンドする動作は、Brunnstrom法ステージ上肢Ⅴに相当し本症例には難易度が高い。図では、肘関節伸展位のまま、前腕回内している。

 

 

 

 

 

 

10 頸髄損傷患者が自助具を装着した様子を図に示す。
 この患者のZancolli の頸髄損傷分類はどれか。

1.C5A
2.C6A
3.C6B1
4.C6B3
5.C8A

解答

解説

(Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

1.× C5Aは、自助具を用いても歯磨きはできない。なぜなら、腕橈骨筋が機能しないため。ちなみに、C5B残存の場合は、腕橈骨筋が残存しているため、コックアップ・スプリントに歯ブラシを固定すれば可能である。
2〜3.× C6A/C6B1は、コックアップ・スプリントに歯ブラシを固定すれば可能である。設問は、万能カフを用いている。C6B1は手関節の背屈は強いが、円回内筋、橈側手根屈筋の機能は残存していない。そのため、手関節の固定制が不十分であり、前腕にまで及ぶ固定用装具でないと歯磨きは困難である。
4.〇 正しい。C6B3は、万能カフを用いて歯磨きが行える。C6B3は円回内筋、橈側手根屈筋、上腕三頭筋の機能が残存しているため、手関節の固定性が十分である。
5.× C8Aは、万能カフがなくても歯磨きが行える。C8Aは深指屈筋、示指伸筋、長母指伸筋、尺側手根屈筋が機能しており、尺側の指の完全屈曲が可能である。

 

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