第47回(H24) 理学療法士国家試験 解説【午前問題41~45】

 

41 片麻痺患者がエスカレーターを利用するときの方法で最も適切なのはどれか。

1.上りは、患側から乗って患側から降りる。
2.上りは、健側から乗って患側から降りる。
3.下りは、健側から乗って健側から降りる。
4.下りは、患側から乗って患側から降りる。
5.下りは、患側から乗って健側から降りる。

解答3

解説

エスカレーターの乗降

【重度麻痺の場合】
上り:非麻痺側から乗って非麻痺側から降りる。
下り:上り同様、非麻痺側から乗って非麻痺側から降りる。

したがって、選択肢3.下りは、健側から乗って健側から降りるが正しい。

 

 

 

 

 

 

42 中等度の片麻痺を生じた脳梗塞患者に対する急性期の理学療法で正しいのはどれか。

1.良肢位保持のため、麻痺側の股関節を外旋位とする。
2.麻痺側の肩関節に対する関節可動域運動は、早期から全可動範囲で行う。
3.他動的関節可動域運動では、素早く麻痺肢を動かして伸張反射を誘発する。
4.覚醒した患者では、麻痺の進行が止まっていれば座位訓練を開始する。
5.非麻痺側の筋力増強訓練は、麻痺の回復を阻害する。

解答4

解説

離床開始基準(座位訓練、立位訓練など)

・JCS:1桁であること
・運動の禁忌となる心疾患や全身合併症がないこと
・主幹動脈閉塞および脳出血では神経症像の増悪がないことなど。

1.× 良肢位保持のため、麻痺側の股関節を外旋位とするより、拘縮予防のため股関節内・外旋中間位にする。ただし、ポジショニングを意識するあまり、クッションなどをたくさん置き、体位変換や麻痺の改善の阻害にならないよう気を付ける。
2.× 麻痺側の肩関節に対する関節可動域運動は、早期から全可動範囲をいきなり行う必要はない。なぜなら、本症例は急性期であるため。肩回りの筋肉は弛緩し、脱臼のリスクが高いため、肩関節90°程度から徐々に拡大していくのが望ましい。
3.× 他動的関節可動域運動では、素早く麻痺肢を動かして伸張反射を誘発する必要はない。伸張反射とは、単シナプス性で、筋紡錘に存在する一次終末から、Ⅰa群神経線維を介して、α運動神経にシナプスを形成する。他動関節可動域運動は、筋が収縮(関節運動の阻害)しないようゆっくり動かすのが基本である。
4.〇 正しい。覚醒した患者では、麻痺の進行が止まっていれば座位訓練を開始する。ちなみに、頭蓋内圧亢進症状がなければ発症当日から
でも座位、立位を開始できることが多い。
5.× 非麻痺側の筋力増強訓練は、麻痺の回復を阻害するのではなく、促進する。非麻痺側の筋力増強訓練は、グレードB(行うように勧められる科学的根拠がある)である。

 

 

 

 

 

43 頭部外傷によるびまん性軸索損傷で誤っているのはどれか。

1.バランスの障害がみられる。
2.四肢の外傷が理学療法の阻害因子になる。
3.記憶障害のため復学が困難になる。
4.認知障害の回復は良好である。
5.行動障害が社会生活上の問題となる。

解答4

解説

びまん性軸索損傷とは?

びまん性軸索損傷とは、頭部外傷後、意識障害を呈しているにもかかわらず、頭部CT、MRIで明らかな血腫、脳挫傷を認めない状態である。交通事故などで脳組織全体に回転加速度衝撃が加わり、神経線維が断裂することで生じる。頭部外傷は、前頭葉・側頭葉が損傷されやすい。びまん性軸索損傷の好発部位は、①脳梁、②中脳、③傍矢状部などである。症状として、①意識障害、②記銘・記憶障害、③性格変化、④情動障害、⑤認知障害、⑥行動障害などの高次脳機能障害がみられる。他にも、運動失調、バランス障害も特徴的である。

1.〇 正しい。バランスの障害がみられる。他にも、高次脳機能障害・運動失調なども特徴的である。
2.〇 正しい。四肢の外傷が理学療法の阻害因子になる。なぜなら、びまん性軸索損傷に加え、四肢の外傷の重症度が高いほど、免荷期間があったりや歩行練習が実施できないため。びまん性軸索損傷とは、頭部外傷後、意識障害を呈しているにもかかわらず、頭部CT、MRIで明らかな血腫、脳挫傷を認めない状態である。原因としては、バイク事故や交通事故などの頭部の揺れによるものが多い。
3.〇 正しい。記憶障害のため復学が困難になる。神経線維が断裂することで生じる。頭部外傷は、前頭葉・側頭葉が損傷され、症状として、①意識障害、②記銘・記憶障害、③性格変化、④情動障害、⑤認知障害、⑥行動障害などの高次脳機能障害がみられる。
4.× 認知障害の回復は悪い。なぜなら、脳組織全体に回転加速度衝撃が加わり、神経線維が断裂することで生じるため。死亡率も高く、高次脳機能障害などの後遺症が残ることが多い。
5.〇 正しい。行動障害が社会生活上の問題となる。頭部外傷は、前頭葉・側頭葉が損傷され、症状として、①意識障害、②記銘・記憶障害、③性格変化、④情動障害、⑤認知障害、⑥行動障害などの高次脳機能障害がみられる。

 

 

 

 

 

 

44 Parkinson病患者では、すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことは円滑にできる。
 この現象と同じ機序を利用した訓練法はどれか。

1.水中での歩行訓練
2.重りを用いた筋力増強訓練
3.リズム音に合わせた歩行訓練
4.バランスボードを用いた立位訓練
5.自転車エルゴメーターによる有酸素運動

解答3

解説

矛盾性運動(逆説的運動)とは?

設問のようにすくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができることをいう。リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えさせたりすると、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。

1.× 水中での歩行訓練は、主に免荷期間の歩行練習体重減少目的に実施する。また、バランス能力が低下している者(片麻痺患者)でも水中では転倒のリスクが低く比較的安全に歩行動作の訓練を行うことができる。
2.× 重りを用いた筋力増強訓練は、筋力低下のある患者に実施する。ちなみに、足に重りをつけた歩行練習は、小脳障害に適応となる。
3.〇 正しい。リズム音に合わせた歩行訓練は、逆説運動を利用した訓練法である。聴覚刺激(かけ声や、メトロノームを用いたリズム音)や視覚刺激(床の上の横棒を踏み越える)歩行訓練は、すくみ足の改善に有効である。
4.× バランスボードを用いた立位訓練は、バランス障害のある患者に実施する。
5.× 自転車エルゴメーターによる有酸素運動は、運動対応能の向上有酸素運動目的に実施する。

Parkinson病の4大症状

静止時振戦
寡動(無動)
筋強剛(固縮)
姿勢反射障害

 

 

 

 

 

 

 

45 呼吸機能が低下してきた筋萎縮性側索硬化症患者に対する呼吸理学療法で適切なのはどれか。

1.口すぼめ呼吸の指導
2.胸郭のストレッチ
3.呼気時の胸郭圧迫
4.腹式呼吸の指導
5.有酸素運動

解答2

解説

筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは、

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位運動ニューロン障害と下位運動ニューロン障害が同時にみられ、進行する原因不明の疾患である。全身に筋萎縮・運動麻痺が進行する。四大陰性徴候(眼球運動障害、感覚障害、膀胱直腸障害、褥瘡)は、末期まで現れにくい。呼吸筋麻痺により拘束性換気障害が著明になり、誤嚥性肺炎などの呼吸器感染症を併発し、閉塞性換気障害も出現してくる。胸郭の可動域の維持を目的に深呼吸や体幹・上肢筋のROM訓練を行う。肺痰法の指導も重要である。

1.× 口すぼめ呼吸の指導は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)に有効である。
2.〇 正しい。胸郭のストレッチは、呼吸機能が低下してきた筋萎縮性側索硬化症患者に対する呼吸理学療法である。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症では、拘束性換気障害(呼吸筋の萎縮に伴い、胸郭の可動性低下)がみられるため。
3.× 呼気時の胸郭圧迫(患者の胸郭に手掌面を当てて、呼気に合わせて胸郭を生理的な運動方向に合わせて圧迫し、次の吸気時には圧迫を開放することを繰り返すもの)は、呼吸介助や排痰援助の際に行う。ただし、呼吸介助目的に実施する際は深呼吸が十分できるレベルで行う。排痰援助目的に実施する際も、エビデンスが少ないこと、セラピストの腕により効果が異なるなどといった理由で第一選択とされるべき手技ではない。本症例は、呼吸機能が低下してきた筋萎縮性側索硬化症患者(進行期)であるため、優先度は低い
4.× 腹式呼吸の指導は優先度が低い。なぜなら、呼吸筋麻痺(横隔膜も含めて)されるため。
5.× 有酸素運動は、全身に筋萎縮運動麻痺が進行するため困難である。

 

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