第46回(H23) 作業療法士国家試験 解説【午後問題31~35】

 

31 脳卒中片麻痺患者のADL訓練で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.更衣動作の前開きシャツは、非麻痺側上肢から着る。
2.移動動作では、車椅子を麻痺側上下肢で操作する。
3.更衣動作訓練の導入時には、丸首シャツを用いる。
4.洗体動作では、長めのループ付きタオルで背中を洗う。
5.トイレ動作では、壁のL字型手すりを使って移乗する。

解答4・5

解説
1.× 更衣動作の前開きシャツは、「非麻痺側上肢から」ではなく「麻痺側上肢から」着る。ちなみに、脱衣は非麻痺側からである。
2.× 移動動作では、車椅子を「麻痺側上下肢」ではなく「非麻痺側上下肢」で操作する。
3.× 更衣動作訓練の導入時には、「丸首シャツ」ではなく「障害の状態や患者の能力に合わせて」選択する。①前開き、②肩や脇が開くもの、③ボタン部がマジックテープのものなどから選択する。
4.〇 正しい。洗体動作では、長めのループ付きタオルで背中を洗う。麻痺側上肢にループをかけ、非麻痺側上肢で洗体する。
5.〇 正しい。トイレ動作では、壁のL字型手すりを使って移乗する。トイレに限らず浴室などでもつかまって立ちあがる動作では、手すりは床面に並行であるより垂直の方が把持して安全に動作しやすい。

各手すりの働き

縦手すり:出入り口の動作安定などのその場での動作に使用。
横手すり:移動や座位安定に機能する。
L字手すり:縦・横手すりの機能を持つ。座位からの立ち上がりに機能する。

 

 

 

 

 

 

32 Parkinson病患者のADL指導で適切なのはどれか。

1.階段よりも傾斜路を利用する。
2.食事には手関節固定装具を用いる。
3.下衣の更衣はできるだけゆっくり行う。
4.浴槽のへりの高さは洗い場の高さに合わせる。
5.起き上がり動作の開始には視覚的外部刺激を利用する。

解答

解説
1.× 階段よりも傾斜路を利用する必要はない。なぜなら、階段の方が平地や傾斜路より歩きやすい場合があるため。Parkinson病には、矛盾性運動(逆説的運動)が特徴である。矛盾性運動(逆説的運動)とは、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができること、リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えさせたりすると、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。
2.× 食事には手関節固定装具を用いる必要ない。なぜなら、手関節固定装具(コックアップスプリント)の適応疾患は、関節炎・疼痛回避・橈骨神経麻痺の下垂手に用いるため。Parkinson病の場合、自助食器や自助スプーンを用いることが多い。
3.× あえて下衣の更衣はできるだけゆっくり行う必要ない。Parkinson病は、固縮や無動、姿勢反射障害といった症状があるため、そもそも動作緩慢で転倒の危険性もある。下衣は座って行うように指導する。
4.× あえて浴槽のへり(縁)の高さを洗い場の高さに合わせる必要ない。またいだ時の高低差を減らすため、「浴槽内の底」と「洗い場の高さ」を合わせる。
5.〇 正しい。起き上がり動作の開始には視覚的外部刺激を利用する。Parkinson病の起き上がりも歩行と同様に、外部刺激が大切である。起き上がりの際に用いる手すりを目標物としてリーチする。

 

 

 

 

 

 

33 運動失調症患者のADLの工夫で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.重たい靴を選ぶ。
2.靴下にループをつける。
3.机の角にクッション材をつける。
4.食事に長柄フォークを使用する。
5.上着の更衣にリーチャーを使用する。

解答1・3

解説
1.〇 正しい。重たい靴を選ぶ。小脳失調患者の上肢の協調性向上を目的とした方法である。これを重り負荷法(重錘負荷法)という。重り負荷法(重錘負荷法)とは、上下肢に重りを着用させることで運動学習を進め、運動・動作の改善を図る方法である。脊髄小脳変性症(運動失調)に適応となり、上肢では 200g~400g、下肢では 300g~600g 程度のおもりや重錘バンドを巻く。ほかのアプローチとして、弾性緊縛帯を装着することもある。
2.× 靴下にループをつけることの優先度は低い。なぜなら、靴下のループは片麻痺に適応となるため。ちなみに、靴下のループとは、踵部分に輪を取り付けたもので足先を入れてループを指先で引っ張り上げるだけで履くことができる。運動失調の場合、その操作自体が困難であることが多い。
3.〇 正しい。机の角にクッション材をつける。なぜなら、運動失調症患者は転倒しないまでもふらつきやすく家具の角にあたりやすいため。怪我をしないようにクッション材をつける。
4.× 食事は、「長柄フォーク」ではなく「短柄フォーク」を使用する。なぜなら、長柄フォークの場合、手の振戦が遠位に伝わるにつれ、物体にかかる振動が増強し食器や口元への誘導が難しくなるため。
5.× 上着の更衣にリーチャーを使用することの優先度は低い。なぜなら、リーチャーは脱臼の恐れのある人工股関節や車いす患者が、床のものや遠くのものを拾ったり操作したりするときに使用するものであるため。リーチャーは、長柄のフォーク同様に難しい。

 

 

 

 

 

 

34 片麻痺、感覚鈍麻および異常感覚で発症した多発性硬化症患者の急性増悪期から回復段階初期にかけての対応で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.感覚障害への再教育
2.運動麻痺に対するPNF
3.起き上がり動作時の介助
4.疼痛緩和のための温熱療法
5.筋力低下に対する漸増抵抗訓練

解答1・3

解説

多発性硬化症とは?

 多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。

(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

1.〇 正しい。感覚障害への再教育を実施する。なぜなら、本症例は、設問から「片麻痺、感覚鈍麻および異常感覚」を呈しているため。知覚再教育では、過誤神経支配に対する局在の修正と物体の識別、知覚-運動学習を行う。知覚再教育を実施する際には、触覚閾値、局在能、支配密度を調べ、末梢神経の回復を予測しながら実施する。知覚再教育の効果は、より高いレベルの知覚機能を、より短時間に獲得できることである。
2.× 運動麻痺に対するPNF(固有受容性神経筋促通法)は、現時点では負荷量が強すぎる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。負荷のかかる運動は、症状の悪化を招く可能性があるので禁忌である。
3.〇 正しい。起き上がり動作時の介助を実施する。なぜなら、多発性硬化症は脱力・筋力低下を呈し、さらに起き上がり動作時に、有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)が生じる可能性も高いため。
4.× 疼痛緩和のための温熱療法は禁忌である。なぜなら、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)が特徴としてあげられるため。
5.× 筋力低下に対する漸増抵抗訓練は禁忌である。なぜなら、漸増抵抗訓練は負荷量が強く、易疲労性を考慮しにくいため。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。

 

 

 

 

 

 

35 頸髄完全損傷患者(第5頸髄節まで機能残存)が可能な動作はどれか。(※不適切問題:解2つ)

1.便器上での自己導尿
2.車椅子上での食事動作
3.ベッド上でのズボン着脱
4.車椅子上での殿部除圧動作
5.床から車椅子への移乗動作

解答2・4

解説

第5頚髄節の機能残存レベル

第5頚髄節の機能残存レベルは、三角筋と上腕二頭筋が残存しており、肩関節運動、肘関節屈伸・回外が可能である。プッシュアップ動作はできないため、平地では車椅子や電動車椅子を使用する。

1.× 便器上での自己導尿は、男性の場合C6レベル、 女性の場合C8レベルで可能である。
2.〇 正しい。車椅子上での食事動作は、自助具(万能カフ)などを用いればC5レベル以上で行える。
3.× ベッド上でのズボン着脱は、C6レベル以上で可能になる。
4.〇 正しい。車椅子上での殿部除圧動作は、C5レベル以上で行える。両上肢を伸展させることにより、体幹を伸展、殿部を前にずらして行う。
5.× 床から車椅子への移乗動作は、C8レベルで可能である。

 

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