第46回(H23) 作業療法士国家試験 解説【午後問題36~40】

 

36 脊髄損傷の機能残存レベルと可能な動作との組合せで正しいのはどれか。
 ただし、機能残存レベルから下位は完全麻痺とする。

1.C4:万能カフを用いた食事
2.C5:標準型車椅子の操作
3.C6:腱固定効果を利用した把持
4.C7:橈側-手掌握り
5.C8:指尖つまみ

解答

解説

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

1.× 万能カフ(自助具など)を用いた食事は、C4ではなく「C5以上」で可能となる。
2.× C5は、標準型車椅子にハンドリムを工夫する必要がある。ちなみにC4は、チンコントロール電動車椅子の適応である。標準型車椅子を使用するのは、C6である。
3.〇 正しい。腱固定効果(テノデーシス作用)を利用した把持は、C6で可能である。手関節背屈による把持作用をテノデーシスアクション(腱固定作用)が可能である
4.× 橈側-手掌握りは、C7ではなく「C8」である。
5.× 指尖つまみは、C8ではなく「T1」である。指尖つまみは母指、示指の対立運動で成り立つ。ちなみに、C8は、①指屈筋により握り、②かぎかけ、③横つまみが可能である。Th1は、①指腹つまみ、②指尖つまみなど手の巧緻動作のつまみが可能である。

テノデーシスアクション(腱固定作用)とは?

前腕回内と同時に手関節の背屈が起きると、掌の腱が引っ張られ指の関節が屈曲すること。

 

 

 

 

 

 

37 Karvonen法で算出した目標心拍数はどれか。
 ただし、60歳、安静時心拍数70/分、係数0.5とする。

1.80
2.105
3.115
4.145
5.160

解答

解説

公式

Karvonen法(カルボーネン法)は、年齢や安静時心拍数から運動強度を算出するときに使用される。

Karvonen法(カルボーネン法)は「目標心拍数=(220-年齢)-安静時心拍数)×運動強度%(k:係数)+安静時心拍数」で求めることができる。
※予測最大心拍数=(220-年齢)
※kは年齢や傷病の状態に応じて0.3~0.7程度で設定する。

①Karvonen法による運動時の1分間の目標心拍数を出す計算式に当てはめる。

目標心拍数=〔(220-年齢)-安静時心拍数〕×運動強度%(k:係数)+安静時心拍数

目標心拍数=〔(220-60)-70〕×0.5(50%)+70

     =115

したがって選択肢3.115がKarvonen法による運動時の1分間の目標心拍数として正しい。

係数とは?

係数は、多項式の各項を構成する因子において、ある変数に着目した際の他の部分.3β+2においてβに着目した際、係数は3である。

Karvonenの式の係数kについては、健常者はk=0.6、心不全などによりk=0.2~0.6に設定するとされており、心不全やβ遮断薬投与例での検討が報告されているが、適切な値の決定には確立された方法はない。循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011 年度合同研究班報告)よると、Karvonen係数 (k値)は、①低強度負荷:0.3〜0.4未満、②中強度負荷:0.4〜0.6未満、③高強度負荷:0.6〜0.7ともある。ちなみに、本問題の場合、「係数は0.5」と記載されている。

 

 

 

 

 

 

38 吸引で正しいのはどれか。

1.患者の頸部は回旋させない。
2.目的は貯留物や分泌物の除去である。
3.吸引器のボトルは空であることを確認する。
4.カテーテルを挿入した刺激で排痰を誘発する。
5.口腔内吸引したカテーテルで気管内の吸引を行う。

解答

解説

口腔内・鼻腔内吸引の注意事項

【目的】口腔内・鼻腔内吸引は気道内の貯留物や異物を取り除くこと。

①実施者は必ずディスポーザブル手袋を着用する。
②カテーテル挿入時は陰圧をかけず、患者の吸気に合わせて挿入する。
③吸引中は無呼吸となるため1回の吸引時間は10秒以内とする。
④終了後は気道内の分泌物がきちんと吸引できたか、呼吸音等で確認する。

1.× 患者の頸部は、回旋(横向き)させる。なぜなら、吐物の誤嚥や窒息を予防するため。
2.〇 正しい。目的は貯留物分泌物の除去である。口腔内・鼻腔内吸引は気道内の貯留物や異物を取り除き、気道の閉塞を防ぐことである。
3.× 吸引器のボトルは空であることを確認する必要はない。必ずしも空でなくてもよいが適宜交換が必要である。最低1日1回は捨て消毒しておく。機器によってはボトルがいっぱいになると逆流防止のために自動的に停止するものもある。
4.× あえてカテーテルを挿入した刺激で排痰を誘発する必要はない。なぜなら、カテーテル挿入の目的は排痰誘発ではなく貯留物や分泌物の除去にあるため。カテーテル挿入時には刺激を最小限にするため、カテーテルを左手(右手で先端を持つ場合)でつぶして圧をかけずに静かに挿入し、吸引時に解放して陰圧をかける。
5.× 口腔内吸引したカテーテルで気管内の吸引を行ってはならない。なぜなら、口腔内吸引に使用した後のカテーテルを気管内吸引に使うことは感染の可能性があるため。気管内吸引は無菌操作で行う。

 

 

 

 

 

 

39 神経症性障害患者の作業療法で正しいのはどれか。

1.心気症状への傾聴が重要となる。
2.転換症状がある場合は行わない。
3.強迫症状に対しては反復作業を用いる。
4.不安発作が完全に消失するまで行わない。
5.離人症状では自傷行為の可能性を考慮する。

解答

解説

MEMO

神経症性障害とは、心因性の機能障害であり、ストレスが原因になり、様々な症状をあらわれる。例えば、恐怖、不安、パニック発作、強迫観念、抑うつ、記憶の喪失などである。神経症性障害患者は、基本的な心身機能や身辺処理能力には問題のない場合が多い。作業療法導入時には、まずは症状に対しての対処法ができているかどうかを評価する。その後、就労の可能性や障害の根本的な原因となっている精神内界の評価を行う流れとなる。

1.× 必ずしも心気症状への傾聴が重要とはいえない。むしろ傾聴だけでは、疾患へのとらわれを助長するため、別のことに興味を引くよう話題を提供するなどして、症状からの距離を置くような対応を実施する。心気症は、自分が(そうでないのに)重篤な病気に罹患しているに違いないと確信しいている障害である。心気症の原因は不明であるが、ストレスや過労、または患者様自身や家族・知人の病気体験(病死も含め)をきっかけに起こることがある。
2.× 転換症状がある場合でも作業療法は行われる。体を動かすような作業療法は、身体症状の軽減に有効である。転換症状とは、欲求が抑圧されて無意識的な葛藤が生じ、それが感覚系あるいは随意運動系の身体症状(たとえば言や四肢の麻痺)などに置き換えられた(転換された) 症状をいう。解離性(転換性) 障害でみられる。
3.× 強迫症状に対しては、反復作業を用いる優先度は低い。強迫症状とは、不合理性の自覚はありながらもある考えが頭から消えず、それを打ち消すために同じ行為を繰り返し行ってしまうことである。反復作業では、症状が悪化する可能性がある。治療として、①SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、②森田療法、③認知行動療法などである。作業療法では、他のことに目を向けさせることによりこだわりを軽減することを目的とする。
4.× 不安発作が完全に消失するまで、作業療法を行わないということはない。不安発作を抱えながらも、作業に集中させることが、逆に不安の軽減につながる。
5.〇 正しい。離人症状では自傷行為の可能性を考慮する。離人症状とは、自己・外界について生き生きとした実感が持てず、現実感が失われた状態であり、統合失調症やうつ病でみられる。現実感を取り戻す手段として、痛みを感じる自傷行為を行うおそれがあるので注意が必要である。

 

 

 

 

 

 

40 摂食障害患者の特徴でないのはどれか。

1.失感情症
2.肥満恐怖
3.強迫的行動
4.認知の歪み
5.高い自己評価

解答

解説

摂食障害とは?

摂食障害には、①神経性無食症、②神経性大食症がある。共通して肥満恐怖、自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤の使用抑うつの症状がみられる。作業療法場面での特徴として、過活動、強迫的なこだわり、抑うつ、対人交流の希薄さ、表面的な対応がみられる。患者の性格として、細かい数値へのこだわり(①体重のグラム単位での増減、②この食べ物はあの食べ物より〇カロリー多いなど)がみられる。

【摂食障害の作業療法のポイント】
①ストレス解消、②食べ物以外へ関心を向ける、③自身の回復(自己表出、他者からの共感、自己管理)、④過度の活動をさせない、⑤身体症状、行動化に注意する。

1.〇 失感情症がみられる。失感情症(アレキシサイミア)とは、自分の感情(情動)への気づきや、その感情の言語化の障害、また内省の乏しさがみられる状態をいう。失感情症(アレキシサイミア)の性格傾向を持つ人は、感情がうまく認識できていない状態から、ストレスを溜め込みやすいため、時として身体に影響を及ぼし、心身症だけではなく、うつ病や依存症などにもなりやすいといわれている。 摂食障害の場合、異常なまでに痩せることで様々な身体的不調があるはずであるが、自分自身ではそれに気づかなくなってしまう。
2.〇 肥満恐怖がみられる。体重増加へ異常なまでの恐怖を抱く。肥満恐怖とボディイメージの歪みの矯正のために、認知行動療法が有効である。
3.〇 強迫的行動がみられる。痩せたいという思いが、強迫的な行動(過剰な運動や繰り返す自己誘発性嘔吐など)となり現れる。
4.〇 認知の歪み(ボディイメージの歪み)がみられる。摂食障害患者は痩せていても自分は太っていると思い込む。
5.× 高い自己評価は摂食障害患者の特徴でない。むしろ、自己評価は低い特徴にある。そのため、数字で表れる体重の減少で自己評価を高めようとする。

 

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