第45回(H22) 作業療法士国家試験 解説【午後問題31~35】

 

31 Brunnstrom法ステージ上肢Ⅲ、手指Ⅳの片麻痺患者に対する上肢Ⅳを目指した座位での訓練課題はどれか。2つ選べ。

1.腹部の前から非麻痺側大腿を触る。
2.大腿上に置いた布をひっくり返す。
3.大腿上に置いたお手玉を口元に近づける。
4.机上のお手玉を肘伸展位で前方の肩の高さに移動する。
5.机上のお手玉を肘伸展位で麻痺側側方の肩の高さに移動する。

解答2・4

解説


1.× 腹部の前から非麻痺側大腿を触る/大腿上に置いたお手玉を口元に近づけることは、ステージ上肢Ⅲで可能レベルである。つまり、本症例は獲得済みである。上肢Ⅳを目指した座位での訓練課題としてあてはまらない。
2.〇 正しい。大腿上に置いた布をひっくり返すのは、上肢Ⅳを目指した座位での訓練課題である。なぜなら、肘関節 90°屈曲位で前腕を回内・回外する動作が要求されるため。
4.〇 正しい。机上のお手玉を肘伸展位で前方の肩の高さに移動するのは、上肢Ⅳを目指した座位での訓練課題である。なぜなら、肘を伸展させて上肢を前方水平へ挙上する動作が要求されるため。
5.× 机上のお手玉を肘伸展位で麻痺側側方の肩の高さに移動することは、ステージ上肢Ⅴで可能レベルである。上肢Ⅳを目指した座位での訓練課題としてあてはまらない。

 

 

 

 

 

 

32 症状と治療法との組合せで正しいのはどれか。

1.失行症:自己教示法
2.半側無視:間隔伸長法
3.記憶障害:誤りなし学習
4.注意障害:観察学習
5.遂行機能障害:プリズム適応療法

解答

解説
1.× 自己教示法とは、認知行動療法の一つで、遂行機能障害にも適応となる。恐怖やネガティブな感情が湧出した際に、実際に声を出して、あるいは心の中で「リラックスしよう」「心配ない」などの言葉を自分自身にかける。自らの言葉で教示を与え、それが刺激となって自らの行動を変容させる方法である。
2.× 間隔伸長法は、記憶の改善テクニックで認知症などに適応となる。間隔伸長法とは、記憶したい事柄に対する質問をするまでの時間を次第に長くして、記憶を保持する期間を延ばしていくことを目的とする手法である。
3.〇 正しい。誤りなし学習は、記憶障害に適応となる。誤りなし学習(エラーレス学習)とは、誤りを経験させないように初めから正解を提示して正反応を反復することにより学習を成立させる方法である。記憶障害や認知症に対して有効性が報告されている。できない課題を助けてできるように促していくよりも、できる課題を数多く行い、少しずつレベルアップしていく方が効果的とされる。
4.× 観察学習とは、直接経験を通しての学習ではなく、他者(モデル)の行動を観察するだけで代理強化となり行動変容を引き起こす学習のこと。カナダ人心理学者のBandura(バンデューラ)が提唱した。
5.× プリズム適応療法は、半側空間無視に適応となる。視野を右にずらすプリズム眼鏡をかけ、目標物を指さす課題を繰り返すと、最初は正確な位置を指すのが難しいが、次第にプリズムによる視覚情報に適応し、正確な位置を指せるようになる。そして、プリズム眼鏡をはずすと、今度は逆に目標物よりも左側を指すようになる。この現象が、左半側空間無視の治療に応用される。ただし、脳卒中治療ガイドラインでは、プリズム適応療法は、グレードC1(十分な科学的根拠がないが、行うことを考慮しても良い。有効性が期待できる可能性がある。)である。

 

 

 

 

 

 

33 脊髄小脳変性症患者に対する作業療法で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.彫刻
2.木工作業
3.マクラメ
4.金工作業
5.張り子細工

解答3・5

解説

”脊髄小脳変性症とは?多系統萎縮症とは?”

脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)

多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)

1~2.4.× 彫刻/木工作業/金工作業の優先度は低い。なぜなら、脊髄小脳変性症の症状の一つとして小脳失調が認められ、工具などの作業はけがをしやすいため。鋭利な工具を用いる彫刻、 木工、 金工作業は危険である。
3.〇 正しい。マクラメを実施する。マクラメは、紐を交差させて結び、結び目で模様を作り装飾品などに細工する作業である。危険を伴わず、重錘バンドをつけるなど工夫することによって可能である。
5.〇 正しい。張り子細工を実施する。張り子細工(デコパージュ)は、枠や型に紙などを張り付け、成型する造形技法のひとつである。危険を伴わず、重錘バンドをつけるなど工夫することによって可能である。

 

 

 

 

 

 

34 脊髄損傷残存機能レベルと装具・自助具との組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
 ただし、残存機能レベルから下位は完全麻痺とする。

1.C4:マウススティック
2.C5:太柄のスプーン
3.C7:ホルダー付きスプーン
4.L4:長下肢装具
5.S1:短下肢装具

解答1・3

解説

(※マウススティック参考例:写真引用【福祉用具アモレヘルスケア様HPより】)

1.〇 正しい。C4は、マウススティックが適応となる。手指を使ってパソコンなどの操作ができない場合に、マウススティック(写真参照)を口でくわえキーボードなどを操作する。
2.× C5は、太柄のスプーンではなく「万能カフ」を用いて食事を行う。太柄スプーンは、筋萎縮性側索硬化症で適応となる。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症は、下位運動ニューロン障害による筋力低下を来すため。ちなみに、軽量太柄スプーンとは、柄の部分が太くて握りやすく軽量であり、力の弱い人でも食事ができるものである。
3.〇 正しい。C7は、ホルダー付きスプーンが適応となる。手指が機能していなくても肘屈曲作用で口元に食物を運ぶことができる。
4.× L4は、長下肢装具ではなく「短下肢装具 (SLBとロフストランドもしくは松葉杖)」の2点交互杖歩行が可能である。なぜなら、大腿四頭筋や下腿三頭筋などが機能するため。
5.× S1は、短下肢装具ではなく「装具なし」で歩行可能である。なぜなら、前脛骨筋や長・短腓骨筋が機能するため。

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

 

 

 

 

 

 

35 筋萎縮性側索硬化症で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.うつ症状はまれである。
2.眼球運動が障害されやすい。
3.食事動作にBFOが用いられる。
4.漸増抵抗訓練によって筋力を維持する。
5.食塊の咽頭への送り込みが障害されやすい。

解答3・5

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1.× うつ症状は、「まれ」ではなく「合併」する。なぜなら、体の自由が効かないことや、病気に対する不安等から不眠、うつ、よだれが出るなどの症状があらわれる。
2.× 眼球運動が障害「されやすい」のではなく「されにくい」。4大陰性徴候として、①眼球運動、②膀胱直腸障害、③感覚障害、④褥瘡があげられる。
3.〇 正しい。食事動作にBFOが用いられる。BFO(Balanced Forearm OrthosisまたはBall bearing Feeder Orthosis)は、患者の前腕を支えてごくわずかの力で上肢の有益な運動を行なわせようとする補装具の一種である。食事・机上の動作において、上肢のリーチ機能を補うため、第4,5頸髄損傷者にも用いられる。
4.× 筋力を維持するには、「漸増抵抗訓練」ではなく「自動運動自動介助運動」を主に行う。なぜなら、病気の進行により筋萎縮や筋線維束攣縮(下位運動ニューロンの障害)が起こるため。筋疲労は避け、少なくとも攣縮が起きたらすぐに休息をとる必要がある。
5.〇 正しい。食塊の咽頭への送り込みが障害されやすい。球麻痺症状が認められ、①構音障害、②嚥下障害、③舌の萎縮などがみられる。

 

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