第45回(H22) 作業療法士国家試験 解説【午後問題11~15】

 

次の文により10、11の問いに答えよ。
 25歳の男性。20日前にオートバイ事故で搬入され、びまん性軸索損傷と診断された。意識は清明。物事の優先順位をつけて行動できず、1つの事にこだわってしまう。

11 この患者に対する作業療法の活動内容で適切なのはどれか。

1.工程が反復する活動
2.他者と行う集団活動
3.工程が少なく展開が明確な活動
4.完成まで時間がかかる創作活動
5.多人数で役割を選択できる活動

解答

解説

遂行機能障害とは?

遂行機能障害とは、物事を計画し、順序立てて実行するという一連の作業が困難になる状態である。遂行機能障害に対する介入方法としては、解決方法や計画の立て方を一緒に考える問題解決・自己教示訓練が代表的である。

【前頭葉障害の主症状】
・遂行機能障害
・易疲労性
・意欲・発動性の低下
・脱抑制・易怒性
・注意障害
・非流暢性失語

1.4.× 工程が反復する活動/完成まで時間がかかる創作活動の優先度は低い。なぜなら、設問から本症例は「物事の優先順位をつけて行動できず、1つの事にこだわってしまう」。したがって、反復動作や時間を要する創作活動は、1つの事に対するこだわりを助長させてしまう可能性がある。また、遂行機能障害があると長時間にわたる作業を計画的・効率的に行っていくことは難しい。
2.5.× 他者と行う集団活動/多人数で役割を選択できる活動の優先度は低い。なぜなら、本症例は前頭葉障害をきたし、そのほかの症状(性格変容コミュニケーション障害)も考慮されるべきであるため。また、注意障害も考えられるため、集団活動は適応が難しく、実施したとしても本人への負担が大きい。
3.〇 正しい。工程が少なく展開が明確な活動を実施する。遂行機能障害に対する介入方法としては、解決方法や計画の立て方を一緒に考える問題解決・自己教示訓練が代表的である。

びまん性軸索損傷とは?

びまん性軸索損傷とは、頭部外傷後、意識障害を呈しているにもかかわらず、頭部CT、MRIで明らかな血腫、脳挫傷を認めない状態である。交通事故などで脳組織全体に回転加速度衝撃が加わり、神経線維が断裂することで生じる。頭部外傷は、前頭葉・側頭葉が損傷されやすい。びまん性軸索損傷の好発部位は、①脳梁、②中脳、③傍矢状部などである。症状として、①意識障害、②記銘・記憶障害、③性格変化、④情動障害、⑤認知障害、⑥行動障害などの高次脳機能障害がみられる。他にも、運動失調、バランス障害も特徴的である。

 

 

 

 

 

 

12 頸髄損傷の残存機能レベルと用いられる装具で適切なのはどれか。

解答

解説
1.× 図は、コックアップスプリントで橈骨神経麻痺に適応である。手関節を軽度背屈位にして、安定保持を目的とした装具である。C4まで残存に対しては、BFO(Balanced Forearm OrthosisまたはBall bearing Feeder Orthosis)やスプリングバランサーなどを使用する。患者の前腕を支えてごくわずかの力で上肢の有益な運動を行なわせようとする補装具の一種である。
2.× 図は、手関節駆動型把持装具(RIC型)C5まで残存に適応である。屈筋腱固定術の原理を利用して、手関節背屈によって示指・中指のMP関節を他動的に屈曲させ、対立位にある母指との間で把持を行わせるものである。
3.× 図は、長対立装具で正中神経麻痺に適応である。母指対立不能、母指・示指の屈曲障害を生じた際に用い、母指を対立位に保持する。C6まで残存は、正中神経麻痺低位型で適応となる短対立装具が適応となる。母指の掌側外転や対立運動の低下のため、第1,2中手骨間を一定に保つ役割を持つ装具である。つまり、母指を対立位に保持し、手関節を保持する。
4.〇 正しい。図は、ナックルベンダーで、主に尺骨神経麻痺に適応である。MP関節屈曲を補助し、鷲手変形を防止する。C7残存機能では、手指伸展が可能なレベルとなる。したがって、MP関節屈曲を補助するナックルベンダーを使用することにより、機能的な手指の使用が可能になる。
5.× 図は、指用スプリント(リングメイト)で関節リウマチの手指変形(スワンネック変形)に適応である。C8残存に対しては、短対立装具にて母指の対立運動を補助する。

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

 

 

 

 

 

 

13 1歳の男児。アテトーゼ型脳性麻痺。摂食機能評価では舌の軽度突出が見られる。スプーンを口腔内に入れると口唇の閉鎖とある程度の舌運動とが確認できる。母乳を哺乳瓶で与えているが飲むのに時間がかかる。
 離乳食を与えるときの姿勢確保に適切な肢位はどれか。
 ただし、食事を与える介助者は別にいるものとする。

解答

解説

アテトーゼ型脳性麻痺とは?

 アテトーゼ型は、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する。他にも、特徴として不随意運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。アテトーゼ型脳性麻痺の介助のポイントとして、体幹は包み込むようにして安定させ、四肢をフリーにしないことで安定させるとよい。また、上肢や体幹の極端な非対称性の体位は、体幹の側屈と短縮を引き起こすため避けるようにする。

1~2,4~5.× 上肢がフリーであるため不適切である。アテトーゼ型脳性麻痺では、下肢は伸展パターンの筋緊張亢進、上肢と頭部に強いアテトーゼを見ることが多いため、体幹及び四肢を安定させアテトーゼが出現しないようにすることが必要である。
3.〇 正しい。上・下肢、体幹ともに固定・安定している。上肢は両手によりアテトーゼが起こらないように固定されており、下肢は最大屈曲により固定されている。また、背後からの支持により、男児の体幹が安定している。

 

 

 

 

 

 

次の文により14、15の問いに答えよ。
 52歳の男性。アルコール依存症。7年前から飲酒量が増え、コントロールがつかず昼から飲むようになり、2年前に会社を辞めた。2か月前から連続飲酒の状態となったため、家族に付き添われて精神科を受診し入院した。離脱症状が改善されたため作業療法を開始した。

14 この時期にみられやすいのはどれか。2つ選べ。

1.過度な頑張り
2.感情の平板化
3.自己評価の低下
4.基礎体力の低下
5.主体的な役割行動

解答1・4

解説

本症例のポイント

・52歳の男性(アルコール依存症)
・7年前:飲酒量増えコントロール不良。
・2年前:退職。
・2か月前:家族に付き添われて精神科を受診し入院した。
・現在:離脱症状が改善されたため作業療法を開始。
→アルコール依存症の初期治療では、身体的治療・離脱症状の管理と治療が行われる。これらの治療が終わった後は、生活リズムをつくることや、体力作りが作業療法の中心となる。その後は、心理教育、内省などによって治療への動機づけを行いながら、仲間づくりや断酒会などの自助グループへの参加、生活設計の立て直しを行っていく。

アルコール依存症とは、少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことである。常にアルコールに酔った状態でないとすまなくなり、飲み始めると自分の意志で止めることができない状態である。

【合併しやすい病状】
①離脱症状
②アルコール幻覚症
③アルコール性妄想障害(アルコール性嫉妬妄想)
④健忘症候群(Korsakoff症候群)
⑤児遺性・遅発性精神病性障害 など

1.〇 正しい。過度な頑張りは、この時期にみられやすい。なぜなら、アルコール依存症者は、飲酒の際の汚名を挽回しようとふるまう傾向にあるため。
2.× 感情の平板化は、統合失調症の消耗期にみられやすい。アルコール依存症は、少量の飲酒でも自分の意志では止めることができないため、むしろ、情緒不安定となる場合がある。
3.× 自己評価の低下は、うつ病にみられやすい。アルコール依存症者にみられる自己評価は、飲酒時の万能感と、「飲酒さえしなければ何の問題もない」という否認が多い。
4.〇 正しい。基礎体力の低下は、この時期にみられやすい。なぜなら、アルコール依存により入院前の不規則な生活や低栄養により体力が低下している可能性が高いためである。また、肝機能障害や循環系の障害を合併している場合もある。
5.× 主体的な役割行動は時期尚早である。アルコール依存症者は、飲酒の際の汚名を挽回しようと頑張りすぎてしまう傾向にある。現段階では、生活リズムをつくることや、体力作りが作業療法の中心となる。その後は、心理教育、内省などによって治療への動機づけを行いながら、仲間づくりや断酒会などの自助グループへの参加、生活設計の立て直しを行っていく。

 

 

 

 

 

 

次の文により14、15の問いに答えよ。
 52歳の男性。アルコール依存症。7年前から飲酒量が増え、コントロールがつかず昼から飲むようになり、2年前に会社を辞めた。2か月前から連続飲酒の状態となったため、家族に付き添われて精神科を受診し入院した。離脱症状が改善されたため作業療法を開始した。

15 この患者の退院に向けた支援で適切でないのはどれか。

1.心理教育を行う。
2.作業時間を増やす。
3.家族会を紹介する。
4.デイケアの利用を検討する。
5.自助グループへの参加を促す。

解答

解説

本症例のポイント

・52歳の男性(アルコール依存症)
・7年前:飲酒量増えコントロール不良。
・2年前:退職。
・2か月前:家族に付き添われて精神科を受診し入院した。
・現在:離脱症状が改善されたため作業療法を開始。
→アルコール依存症の初期治療では、身体的治療・離脱症状の管理と治療が行われる。これらの治療が終わった後は、生活リズムをつくることや、体力作りが作業療法の中心となる。その後は、心理教育、内省などによって治療への動機づけを行いながら、仲間づくりや断酒会などの自助グループへの参加、生活設計の立て直しを行っていく。

アルコール依存症とは、少量の飲酒でも、自分の意志では止めることができず、連続飲酒状態のことである。常にアルコールに酔った状態でないとすまなくなり、飲み始めると自分の意志で止めることができない状態である。

【合併しやすい病状】
①離脱症状
②アルコール幻覚症
③アルコール性妄想障害(アルコール性嫉妬妄想)
④健忘症候群(Korsakoff症候群)
⑤児遺性・遅発性精神病性障害 など

1.〇 心理教育を行う。なぜなら、心理教育を行うことで再発率が低下するため。家族心理教育とは、家族が病気を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身につけることを目的とする。病気による行動特性を理解し、症状に対する適切な対応と接し方を学ぶことができ、治療効果の増進・再発防止にもつながる。
2.× 作業時間を増やす優先度は低い。なぜなら、治療者への依存を促進してしまう恐れがあるため。この患者の退院に向けた支援にならない。
3.〇 家族会を紹介する。家族会とは、アルコール依存症者の家族のための自助グループである。本症例の家族は、入院に付き添ってきており、本人のアルコール問題に悩んでいると考えられる。したがって、家族会を紹介して家族を支援していく。
4.〇 デイケアの利用を検討する。デイケアへの参加は、現在就業していない患者の生活リズムを維持するだけでなく、集団との関わりのなかで自己洞察をしたり、対人行動について見つめ直したりする機会になる。ちなみに、アルコール科デイケアというものもあり、①生活習慣の立て直しを行う、②飲まない時間を増やし、お酒の影響から回復していく為の方法を学び、身に付けていく、③お酒にまつわる困り事・心配事を、スタッフのサポートを受けながら解決に向けて取り組む、④同じようなお悩みや経験のある方との交流が持てる。
5.〇 自助グループへの参加を促す。アルコール依存症の集団精神療法では、自己の飲酒問題を認め、断酒の継続を行うことが治療上極めて有効である。

アルコール依存症の治療

 アルコール依存症の集団精神療法では、自己の飲酒問題を認め、断酒の継続を行うことが治療上極めて有効である。自助グループ(セルフヘルプグループ、当事者グループ)に、同じ問題や悩みを抱える者同士が集まり、自分の苦しみを訴えたり、仲間の体験談を聞いたりすることで問題を乗り越える力を養っていく。断酒継続のための自助グループ(当事者グループ)としてよく知られているものに、断酒会とAA(Alcoholics Anonymous:アルコール依存症者匿名の会)がある。断酒会は日本独自のもので、参加者は実名を名乗り、家族の参加も可能である。AAはアメリカで始まり、世界各地にある。匿名で参加し、家族は原則として同席しない。

 

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