第45回(H22) 作業療法士国家試験 解説【午後問題6~10】

 

次の文により6、7の問いに答えよ。
 68歳の女性。関節リウマチ。右利き。夫との2人暮らし。肩関節と肘関節とに可動域制限はない。膝関節痛の鎮痛のために座薬を用いている。手関節痛が強いときには夫が家事を行っているが、できるだけ自分でやりたいという気持ちが強い。手指の写真(A)とエックス線写真(B)とを下図に示す。

6 この患者に対する作業療法で適切なのはどれか。

1.箸の使用を禁止する。
2.家事の量を減らすことを指導する。
3.上肢に対する筋力訓練は高負荷で行う。
4.左母指IP関節にサック型固定装具を作製する。
5.疼痛のある時期の手関節のROM訓練は他動で行う。

解答

解説

本症例のポイント

・68歳の女性(関節リウマチ)。
・夫との2人暮らし。
・肩関節と肘関節とに可動域制限はない。
・膝関節痛の鎮痛のために座薬を用いている。
・手関節痛が強いときには夫が家事を行っているが、できるだけ自分でやりたいという気持ちが強い。
・エックス線画像から、右はMP関節尺側偏位、母指のZ変形、示指のIP関節変形が認められる。一方、左は母指・示指・中指のIP関節変形がみられる。

→関節リウマチ患者に対する日常生活の指導は、関節保護の原則に基づき行う。関節保護の原則とは、疼痛を増強するものは避けること、安静と活動のバランスを考慮すること、人的・物的な環境を整備することがあげられる。変形の進みやすい向きでの荷重がかからないように手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具が求められる。

1.× 箸の使用を禁止するよりもほかの選択肢に優先度が高いものがある。箸の使用は手指巧緻性を要すが、できるだけ自分でやりたいという気持ちが強い。また、本症例は右利きで手指の変形も認められているため、箸に自助具をつけ「少しの力で上手に使えて、握っても使える箸」にしたり、状況に応じて太いグリップのスプーンやフォークに変更する。箸の使用を「禁止」にするまでの根拠は薄い。
2.× 家事の量を減らすことを指導するよりもほかの選択肢に優先度が高いものがある。家事の量を減らす場合、その分2人暮らしである旦那に負担がかかる。不慣れな家事や指導でより本症例や旦那のストレスとなる可能性も高い。また、設問から「できるだけ自分でやりたいという気持ちが強い」という記載もある。一方的に、家事の量を減らすことを目的とするのではなく、代替動作や手段を提案して本患者にできることを増やしていくべきである。
3.× 上肢に対する筋力訓練は高負荷で行う優先度は低い。なぜなら、高負荷での筋力トレーニングは関節に負担が大きいため。したがって、筋力強化は低負荷等尺性運動が望ましい。
4.〇 正しい。左母指IP関節にサック型固定装具を作製する。サック型固定装具は、母指Z変形に用いられる。
5.× 疼痛のある時期の手関節のROM訓練は、他動ではなく「行わない」方が良い。疼痛の強い関節へのROM訓練は「禁忌」とされているものもある。それでも実施する場合は、「自動運動」で痛みの増悪に注意を払う。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は7:3前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

 

次の文により6、7の問いに答えよ。
 68歳の女性。関節リウマチ。右利き。夫との2人暮らし。肩関節と肘関節とに可動域制限はない。膝関節痛の鎮痛のために座薬を用いている。手関節痛が強いときには夫が家事を行っているが、できるだけ自分でやりたいという気持ちが強い。手指の写真(A)とエックス線写真(B)とを下図に示す。

7 この患者に対する自助具で適切なのはどれか。2つ選べ。

解答3・5

解説

本症例のポイント

・68歳の女性(関節リウマチ)。
・夫との2人暮らし。
・肩関節と肘関節とに可動域制限はない(リーチ制限なし)。
・膝関節痛の鎮痛のために座薬を用いている。
・手関節痛が強いときには夫が家事を行っているが、できるだけ自分でやりたいという気持ちが強い。
・エックス線画像から、右はMP関節尺側偏位、母指のZ変形、示指のIP関節変形が認められる。一方、左は母指・示指・中指のIP関節変形がみられる。

→関節リウマチ患者に対する日常生活の指導は、関節保護の原則に基づき行う。関節保護の原則とは、疼痛を増強するものは避けること、安静と活動のバランスを考慮すること、人的・物的な環境を整備することがあげられる。手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具が求められる。

1.× リーチ制限に対応した座薬挿入器は、主に脊髄損傷患者に適応となる。本症例には肩関節と肘関節の可動域制限がないため、リーチ制限は生じていないと考えられる。
2.× キーボードカバーは、主に小脳障害者など運動失調に適応となる。振戦があっても他のキーに触れずに目的のキーだけを押すことを補助するものである。
3.〇 正しい。ドアオープナーはこの患者に対する自助具で適切である。手指および手関節の負担軽減のために用いられる。
4.× 長柄ブラシは、リーチ制限を代償するためも自助具である。
5.〇 正しい。柄に角度のついた包丁はこの患者に対する自助具で適切である。関節リウマチの生じる手の変形に対応する。

 

 

 

 

 

 

8 68歳の女性。2年前から左難聴を自覚していた。3か月前から歩行時のふらつきがあり、歩行困難となった。聴神経鞘腫と診断され作業療法を依頼された。頭部MRIを下図に示す。
 初回評価する症状で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.失調
2.発汗障害
3.視野障害
4.知能障害
5.ジストニア

解答1・4

解説

聴神経鞘腫とは?

聴神経鞘腫の約95%が内耳神経(特に下前庭神経)に好発する。聴神経鞘腫は神経鞘腫の90%を占める良性の腫瘍であり、女性にやや多い。症状として、一側の高音域難聴、耳鳴、健側に向かう水平注視眼振(Bruns眼振)、めまいなどがある。症状が進行すると、運動失調や歩行障害などの小脳症状や、水頭症による頭蓋内圧亢進症状を呈する。

1.〇 正しい。失調は、初回評価する症状で適切である。なぜなら、聴神経鞘腫による中小脳脚の圧排により、小脳失調がみられる可能性が高いため。小脳半球(中小脳脚)の病変により、左運動失調(同側に小脳性運動失調)が出現する。小脳は、3対の脳脚により脳幹と結合している。それぞれの小脳脚は上小脳脚・中小脳脚・下小脳脚と呼ばれる。結合は上小脳脚で中脳と、中小脳脚で橋と、下小脳脚で延髄と結合している。中小脳脚は、大脳新皮質の感覚野・運動野からの下降路が橋核を介して小脳へ入力する線維が大半を占めている。
2.× 発汗障害は、自律神経症状であり、多系統萎縮症のShy-Drager 症候群でみられやすい。
3.× 視野障害は、視神経、視放線、後頭葉などの障害でみられる。ちなみに、視覚伝導路は、「視神経―視交叉―視索―外側膝状体―視放線―視覚野」である。
4.〇 正しい。知能障害は、初回評価する症状で適切である。なぜなら、側脳室の拡大により水頭症の症状(①歩行障害、②認知障害、③尿失禁)がみられる可能性が高いため。
5.× ジストニアは、筋緊張の異常亢進による体幹・頚部の捻転などが起こる症状である。大脳基底核の障害でみられる。

多系統萎縮症とは?

 多系統萎縮症とは、神経系の複数の系統(小脳、大脳基底核、自律神経など)がおかされる疾患で、3つのタイプがある。

①オリーブ橋小脳萎縮症:小脳や脳幹が萎縮し、歩行時にふらついたり呂律がまわらなくなる小脳失調型
②線条体黒質変性症:大脳基底核が主に障害され、パーキンソン病と同じような動作緩慢、歩行障害を呈する大脳基底核型
③Shy-Drager 症候群:もうひとつは自律神経が主に障害され起立性低血圧や発汗障害、性機能障害などがみられる自律神経型

 

 

 

 

 

 

9 81歳の女性。多発性脳梗塞と心不全とを併発したため入院した。日中に家族がいるときはしっかりしているが、夜間には「大きな声を出す」、「窓から外に出ようとする」、「服を脱ぐ」などの行為が見られるようになった。
 この患者の病態で考えられるのはどれか。

1.昏迷
2.せん妄
3.多幸症
4.不安発作
5.抑うつ状態

解答

解説
1.× 昏迷とは、意識清明であるが、表出や行動などの意思活動がまったく行われなくなった状態である。つまり、身動きもせず横たわっていたり、話しかけても反応のない状態である。激しい物理的な刺激によってのみ覚醒させることができる状態である。うつ病性昏迷、緊張病性昏迷、ヒステリー性昏迷など、いくつかの疾患でみられる。
2.〇 正しい。せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。意識が変容した状態で、思考と記憶の障害、錯覚や幻覚、著しい過活動、不穏などを特徴とする。高齢者は薬剤よってせん妄が引き起こされる場合も多い。
3.× 多幸症とは、状況に関係なくにこにこして楽天的であるが、内容がなく空虚で深刻味がない状態をいう。原因疾患として、脳器質性障害(前頭葉の障害、進行麻痺など)や中毒性精神障害(アルコール、モルヒネなど)の場合に出現する。
4.× 不安発作とは、急激に訪れる不安、動悸、冷や汗などの症状である。パニック障害でみられる。
5.× 抑うつ状態とは、気分の落ち込みや何をしても晴れない気分や空虚感や悲しさを感じている状態である。「気分が落ち込んで何にもする気になれない」、「憂鬱な気分」などの不快感なこころの症状が強くなり、うつ病のいくつかの症状が持続している状態である。

せん妄とは?

せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤よってせん妄が引き起こされる場合も多い。
【原因】脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術などに伴って起こることが多い。他にも、心理的因子、薬物、環境にも起因する。

【症状】
①意識がぼんやりする。
②その場にそぐわない行動をする。
③夜間に起こることが多い。 (夜間せん妄)
④通常は数日から1週間でよくなる。

【主な予防方法】
①術前の十分な説明や家族との面会などで手術の不安を取り除く。
②昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をする。
③術後早期からの離床を促し、リハビリテーションを行う。

 

 

 

 

 

 

次の文により10、11の問いに答えよ。
 25歳の男性。20日前にオートバイ事故で搬入され、びまん性軸索損傷と診断された。意識は清明。物事の優先順位をつけて行動できず、1つの事にこだわってしまう。

10 この患者の状態を適切に評価できるのはどれか。

1.標準高次視知覚検査(VPTA)
2.BIT(Behavioral Inattention Test)
3.改訂版標準高次動作性検査(SPTA-R)
4.WCST(Wisconsin Card Sorting Test)
5.AMPS(Assessment of Motor and Process Skills)

解答

解説

びまん性軸索損傷とは?

びまん性軸索損傷とは、頭部外傷後、意識障害を呈しているにもかかわらず、頭部CT、MRIで明らかな血腫、脳挫傷を認めない状態である。交通事故などで脳組織全体に回転加速度衝撃が加わり、神経線維が断裂することで生じる。頭部外傷は、前頭葉・側頭葉が損傷されやすい。びまん性軸索損傷の好発部位は、①脳梁、②中脳、③傍矢状部などである。症状として、①意識障害、②記銘・記憶障害、③性格変化、④情動障害、⑤認知障害、⑥行動障害などの高次脳機能障害がみられる。他にも、運動失調、バランス障害も特徴的である。

1.× 標準高次視知覚検査(VPTA:Visual Perception Test for Agnosia)は、視知覚機能(物体・画像の認知・相貌認知・色彩認知・視空間の認知など)について評価する。ちなみに、視知覚障害は、後頭葉を中心とした部位の損傷により出現する。
2.× BIT(Behavioral Inattention Test:行動性無視検査)は、通常検査と行動検査の2つに分類され、半側空間無視の検査として用いられている。
3.× 改訂版標準高次動作性検査(SPTA-R:Standard Performance Test for Apraxia)は、失行症および行為障害を系統的に評価する検査である。
4.〇 正しい。WCST(Wisconsin Card Sorting Test)はこの患者の状態(遂行機能障害)を適切に評価できる。本症例は設問から①びまん性軸索損傷で②「物事の優先順位をつけて行動できず、1つの事にこだわってしまう」と記載があるため、遂行機能障害を指定していると考えられる。WCST(Wisconsin Card Sorting Test)は、前頭葉の実行機能(高次脳機能障害)の検査である。①計画を立てること、②計画を達成するためにとるべき行動を決めること、③状況の変化に対応すること、④衝動的に行動することを抑えることなどの前頭葉の実行機能を調べる検査である。提示されたトランプのようなカードを、色・数・形のどれに基づいて分類するかを判断する。
5.× AMPS(Assessment of Motor and Process Skills:運動技能とプロセス技能の評価)は、日常生活動作の検査の1つで、観察により評価する。対象者自身が自分の興味や必要性によって日常生活動作を選んで実行し、その遂行度合いを作業療法士が評価する。ADLとIADLに関わる16の運動技能と20の遂行技能を観察する。

 

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