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16 27歳の男性。大学卒業後、建設会社に就職し設計の仕事をしていた。新たなプロジェクトの責任者として仕事に追われるようになってから眠れない日が続き、急に怒り出すようになった。プレゼンテーションの日に昏迷状態となり、統合失調症と診断されて入院した。入院後1週で症状が徐々に落ち着いてきたため作業療法が開始された。
この時点での作業療法の目的で適切なのはどれか。
1.自信の回復
2.気分の安定
3.役割の遂行
4.社会資源の利用
5.対人関係の改善
解答2
解説
・27歳の男性(統合失調症)。
・仕事:建設会社の責任者
・仕事に追われるようになってから眠れない日が続き、急に怒り出すようになった。
・プレゼンテーションの日に昏迷状態となった。
・入院後1週:症状が徐々に落ち着いてきたため作業療法が開始。
→急性期の統合失調症の患者が少し落ち着いた時期(消耗期)である。統合失調症の消耗期は、①安心感、満足感の提供、②生活リズムの回復、③身体感覚の回復、④身辺処理能力の回復をはかる。
1.× 自信の回復は、回復期の目的である。回復期とは疲労感が軽減してこれから社会復帰の準備を始めようと、服薬や金銭の自己管理を支援し、学校や職場との連携を図る時期である。
2.〇 正しい。気分の安定は、消耗期の目的である。統合失調症の消耗期は、①安心感、満足感の提供、②生活リズムの回復、③身体感覚の回復、④身辺処理能力の回復をはかる。ただし、生活リズムの回復は、亜急性期と回復期に共通の作業療法の目的である。亜急性期は、幻聴・妄想などが活発な急性期を過ぎ、多少の精神症状は残存していても睡眠覚醒などの生活リズムが確立しているが、疲労感が強い時期である。一方、回復期は、疲労感が軽減してこれから社会復帰の準備を始めようとする時期であり、服薬や金銭の自己管理を支援し、学校や職場との連携を図る時期である。それぞれ亜急性期は睡眠リズムの確立、回復期は社会復帰を目指す日常生活リズムの獲得の意味合いに持つ。
3〜5.× 役割の遂行/社会資源の利用/対人関係の改善は、維持期の目的である。患者がより良い生活を獲得するほか、生活維持や再発防止が目的にあげられる。
統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。
(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)
次の文により17、18の問いに答えよ。
48歳の女性。うつ病。教育熱心な母親としてパート勤務をしながら2人の娘を育てた。娘達が家を離れたころから何もする気がなくなり、抑うつ状態となった。希死念慮がみられたため夫に付き添われて精神科を受診し入院となった。「何かしていないと落ち着かない」と訴えたため入院後5日目から作業療法が開始された。
17 作業療法開始時の評価項目で適切なのはどれか。
1.対人関係
2.作業経験
3.自己評価
4.知的機能
5.職業興味
解答2
解説
・48歳の女性(うつ病)。
・2人の娘の母親。
・娘達の家出を期に抑うつ状態。
・希死念慮がみられる。
・「何かしていないと落ち着かない」と訴えた。
・入院後5日目から作業療法が開始。
→本症例は、うつ病患者の急性期である。精神状態は不安定なことが多いため、自信を失う恐れや頑張りすぎてしまう作業は避けるべきである。
1.× 対人関係の優先度が低い。なぜなら、うつ病患者の急性期に対人関係の評価は、患者を対人関係の問題に直面させるだけでなく、心理的負担が大きいため。できないことに直面させることは、現段階では控えたほうが良い。ちなみに、うつ病にかかりやすい性格や状況として、①真面目、②転勤、③昇進、④几帳面、⑤人間関係などがあげられる。
2.〇 正しい。作業経験は作業療法開始時の評価項目である。本症例の病前の生活として、「教育熱心な母親としてパート勤務」をされていた。うつ病急性期において、病前の具体的作業を評価することで、患者のやりやすい種目を知れ、自信回復につなげる。
3.× 自己評価の優先度が低い。なぜなら、うつ病は、自分への過小評価に関連する微小妄想が主題となることが多いため。自己評価に関する話題は症状を悪化させる恐れがある。
4.× 知的機能の優先度が低い。なぜなら、うつ病は知的障害を起こさないため。知的障害とは、「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の支援を必要とする状態にあるもの」と定義されている。
5.× 職業興味の優先度が低い。なぜなら、本症例は現在うつ病の急性期であるため。復職への焦りも増すことになりかねない。
①貧困妄想:お金がない、自分は貧乏だと思い込む妄想。
②心気妄想:自分が病気にかかっているのではないかと強く思い込む妄想。
③罪業妄想:自分が取り返しのつかない罪を犯してしまった、自分は罪深い存在であると思い込む妄想。
次の文により17、18の問いに答えよ。
48歳の女性。うつ病。教育熱心な母親としてパート勤務をしながら2人の娘を育てた。娘達が家を離れたころから何もする気がなくなり、抑うつ状態となった。希死念慮がみられたため夫に付き添われて精神科を受診し入院となった。「何かしていないと落ち着かない」と訴えたため入院後5日目から作業療法が開始された。
18 入院1か月後に退院が決まった。本人は「日中、一人でどう過ごせばよいかわからない」と不安を訴えている。
この時点の対応で適切でないのはどれか。
1.退院前訪問指導を行い生活の場を把握する。
2.ハローワークに同伴し求職者登録をする。
3.1週間の生活スケジュールを立てる。
4.家族心理教育の機会を取り入れる。
5.外来作業療法の利用を検討する。
解答2
解説
退院:入院1か月後。
本人:「日中、一人でどう過ごせばよいかわからない」と不安。
→退院に向けた作業療法を選択する。1ヶ月後の退院が決定したが、患者の訴えを聞くと、漠然と日中の過ごし方がイメージできず不安と受け取れる。この不安を作業療法士側が一方的に原因を決めつけないことが大切である。治療者は患者の状態を正しく把握し、無理のない作業療法を提供する。
1.〇 退院前訪問指導を行い生活の場を把握する。なぜなら、退院前に訪問することによって、患者の退院後の生活がイメージできるため。残り1ヶ月のリハビリで、退院後の生活に必要な作業療法にも変更でき、患者の不安軽減につながる。
2.× ハローワークに同伴し求職者登録をする優先度は低い。なぜなら、公共職業安定所(ハローワーク)は、仕事関係に関する業務をしているところであるため。設問から、本人は「日中、一人でどう過ごせばよいかわからない」と不安を訴えていると記載があるが、それが「仕事がないから」なのか他の理由かは書かれていないため、一方的な印象を受ける。
3.〇 1週間の生活スケジュールを立てる。なぜなら、生活スケジュールを作成することで、具体的に日中のどの時間が空いているのか分かるため。
4.〇 家族心理教育の機会を取り入れる。再発防止のため、家族にうつ病を理解してもらうことは重要である。家族心理教育とは、家族が病気を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身につけることを目的とする。病気による行動特性を理解し、症状に対する適切な対応と接し方を学ぶことができ、治療効果の増進・再発防止にもつながる。
5.〇 外来作業療法の利用を検討する。外来作業療法は、「日中、一人でどう過ごせばよいかわからない」という患者に、居場所を提供するという点で有用である。また、作業療法士は定期的に患者の様子や病状を確認できる。
①職業相談
②職業紹介
③求人確保
④事業主に対する助言・窓口業務
⑤就職後の障害者に対する助言・指導 など。
次の文により19、20の問いに答えよ。
20歳の女性。大学生。友人に「最近、太ったね」と言われたことをきっかけにダイエットを始めた。身長158㎝。体重は54kgから37kgに減少したが、期末試験のストレスから過食と嘔吐とが始まり、緩下剤や利尿薬を乱用するようになった。抑うつ傾向もみられたため、母親に付き添われて精神科を受診し入院となった。
19 この疾患にみられやすい特徴はどれか。
1.不安発作
2.過活動
3.身体感覚の失調
4.高い自己評価
5.被害関係念慮
解答2
解説
・20歳の女性(大学生)。
・身長158㎝。体重は54kgから37kgに減少した。
・期末試験のストレスから過食と嘔吐とが始まり、緩下剤や利尿薬を乱用するようになった。
・抑うつ傾向もみられた。
→神経性無食欲症と疑える。摂食障害には、①神経性無食症、②神経性大食症がある。共通して肥満恐怖、自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤の使用抑うつの症状がみられる。作業療法場面での特徴として、過活動、強迫的なこだわり、抑うつ、対人交流の希薄さ、表面的な対応がみられる。患者の性格として、細かい数値へのこだわり(①体重のグラム単位での増減、②この食べ物はあの食べ物より〇カロリー多いなど)がみられる。
【摂食障害の作業療法のポイント】
①ストレス解消、②食べ物以外へ関心を向ける、③自信の回復(自己表出、他者からの共感、自己管理)、④過度の活動をさせない、⑤身体症状、行動化に注意する。
1.× 不安発作は、パニック障害などにみられる。
2.〇 正しい。過活動がみられやすい。なぜなら、体重減少を目的に過度の運動を行うため。摂食障害には、①神経性無食症、②神経性大食症がある。共通して肥満恐怖、自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤の使用抑うつの症状がみられる。作業療法場面での特徴として、過活動、強迫的なこだわり、抑うつ、対人交流の希薄さ、表面的な対応がみられる。患者の性格として、細かい数値へのこだわり(①体重のグラム単位での増減、②この食べ物はあの食べ物より〇カロリー多いなど)がみられる。
3.× 「身体感覚の失調」ではなく、ボディイメージのゆがみ(身体像の障害)がみられる。ちなみに、身体感覚の失調の症状として、身体的違和感、曖昧な身体感覚、だるさ、身体バランスの悪さがあげられる。主に解離性障害でみられる。
4.× 自己評価は、「高い」のではなく「低い」。そのため、数字で表れる体重の減少で自己評価を高めようとする。
5.× 被害関係念慮・妄想といった思考の異常は、統合失調症でみられる。被害妄想とは、他人から被害を受けているという妄想である。
次の文により19、20の問いに答えよ。
20歳の女性。大学生。友人に「最近、太ったね」と言われたことをきっかけにダイエットを始めた。身長158㎝。体重は54kgから37kgに減少したが、期末試験のストレスから過食と嘔吐とが始まり、緩下剤や利尿薬を乱用するようになった。抑うつ傾向もみられたため、母親に付き添われて精神科を受診し入院となった。
20 この患者に対する作業療法で適切なのはどれか。
1.自己表現を促す。
2.調理実習を行う。
3.体力の向上を促す。
4.課題集団への参加を促す。
5.食べ吐きの理由を話し合う。
解答1
解説
摂食障害には、①神経性無食症、②神経性大食症がある。共通して肥満恐怖、自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤の使用抑うつの症状がみられる。作業療法場面での特徴として、過活動、強迫的なこだわり、抑うつ、対人交流の希薄さ、表面的な対応がみられる。患者の性格として、細かい数値へのこだわり(①体重のグラム単位での増減、②この食べ物はあの食べ物より〇カロリー多いなど)がみられる。
【摂食障害の作業療法のポイント】
①ストレス解消、②食べ物以外へ関心を向ける、③自信の回復(自己表出、他者からの共感、自己管理)、④過度の活動をさせない、⑤身体症状、行動化に注意する。
1.〇 正しい。自己表現を促す。自信の回復(自己表出、他者からの共感、自己管理)や自己肯定感を高めるにつながる。
2.× 調理実習を行う必要はない。なぜなら、摂食障害患者は、食べ物への強い執着があり、食べ物のことが頭から離れなくなってしまうため。この症状を和らげるような作業療法を選択する必要がある。
3.× 体力の向上を促す優先度は低い。なぜなら、もともと体重減少のため過活動傾向がみられるため。有酸素運動は、摂食障害ではやりすぎて体力を消耗する可能性が高い。
4.× 課題集団への参加を促す優先度は低い。なぜなら、摂食障害の患者は、導入時にグループ活動を行うと、より痩せているメンバーと競って痩せようとする可能性が高いため。
5.× 食べ吐きの理由を話し合う優先度は低い。なぜなら、摂食障害患者の食べ吐きの理由は、「痩せるため」であり、食べ物への話題提供は食べ物への強い執着があり、食べ物のことが頭から離れなくなってしまうため。この症状を和らげるような作業療法を選択する必要がある。