第45回(H22) 理学療法士国家試験 解説【午前問題6~10】

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次の文により6、7の問いに答えよ。
 64歳の女性。10年前から歩行時に右股関節痛を生じ、徐々に増悪して歩行が困難となったため後外側アプローチによる人工股関節置換手術を受けた。術前の股関節部エックス線写真(2A)、骨盤部CT(2B)および術後の股関節部エックス線写真(右図)を別に示す。

6.術前に認められないのはどれか。

1.骨嚢胞
2.骨棘形成
3.臼蓋底の肥厚
4.特発性骨壊死
5.関節裂隙狭小化

解答4

解説

1.〇 骨嚢胞は、大腿骨頭の上部にみられる。ちなみに、骨嚢胞とは、骨の内部に嚢胞(分泌物が袋状に貯まる病態)ができる病気である。原因は明らかにされてはいないが、血流が障害され骨が吸収されることで起こるとされている。
2.〇 骨棘形成は、寛骨臼の外側部にみられる。骨棘とは、骨同士の摩擦や変形によって発生する骨のトゲのことである。変形性膝関節症などでよく見られるが、変形性股関節症でもみられる。レントゲンによって判断が可能で、変形性関節症の進行度合いの確認指標となる。
3.5.〇 臼蓋底の肥厚/関節裂隙狭小化がみられる。解説の写真参照。
4.× 特発性骨壊死はみられない。突発性骨壊死とは、診断名であり、大腿骨頭の一部が、血流の低下により壊死(骨が腐った状態ではなく、血が通わなくなって骨組織が死んだ状態)に陥った状態である。レントゲンによる所見では、骨頭内に帯状硬化像、MRIによる所見では、壊死部と健常部を分けるように黒い帯状が認められる。

 

 

 

 

 

次の文により6、7の問いに答えよ。
 64歳の女性。10年前から歩行時に右股関節痛を生じ、徐々に増悪して歩行が困難となったため後外側アプローチによる人工股関節置換手術を受けた。術前の股関節部エックス線写真(2A)、骨盤部CT(2B)および術後の股関節部エックス線写真(2C)を別に示す。

7.術後の理学療法で誤っているのはどれか。

1.術後2日の大腿四頭筋の筋力強化
2.術後3日の中殿筋の筋力強化
3.術後7日の股関節内旋可動域訓練
4.術後10日の荷重歩行訓練
5.手術創治癒後の水中歩行訓練

解答3

解説

禁忌肢位

・後方アプローチ:股関節の過屈曲 + 内転 + 内旋である。
・前方アプローチ:股関節の伸展 + 内転 + 外旋である。

1〜2.〇 術後2日の大腿四頭筋の筋力強化/術後3日の中殿筋の筋力強化を実施する。なぜなら、術後は侵襲により股関節周囲の筋力が低下するため。廃用性の筋力低下を防ぐ。ただし収縮様式に意識して運動を提供する。
3.× 術後7日の股関節内旋可動域訓練は、術後の理学療法で誤っている。なぜなら、本症例は後外側アプローチによる人工股関節置換手術を受けているため。股関節の過屈曲 + 内転 + 内旋が脱臼の恐れがあるため禁忌である。
4.〇 術後10日の荷重歩行訓練を実施する。術後1週目程度から、徐々に荷重歩行訓練を行っていく。
5.〇 手術創治癒後の水中歩行訓練を実施する。水中歩行訓練は、術側下肢への荷重量を軽減した上で運動を行うことができる。

 

 

 

 

8. 55歳の男性。脳出血よる右片麻痺。単極式電気刺激法を適用することとした。
 足関節の外がえしと背屈とを誘発する筋として適切なのはどれか。

解答3

解説
1.× 前脛骨筋である。足関節背屈、内返しに作用する。
2.× 長腓骨筋である。足関節底屈、外返しに作用する。
3.〇 正しい。長趾伸筋である。第2~5趾の伸展、足関節背屈、外返しに作用する。
4.× 短腓骨筋である。足関節底屈、外返しに作用する。
5.× 長母趾伸筋である。足関節背屈、母趾の伸展に作用する。

 

 

 

 

 

9. 60歳の男性。来院時のMRAを下図に示す。
 このMRAで病的所見を呈するのはどれか。

1.内頸動脈
2.前大脳動脈
3.前交通動脈
4.中大脳動脈
5.脳底動脈

解答4

解説

画像所見

MRA(磁気共鳴血管造影)では、血管内の血流を選択して画像化するものである。
この画像は、前額面像である。
→大脳半球の外側面の大部分が描出されていないことがわかる。

1.× 内頸動脈は、病的所見を呈していない。内頸動脈は、外頸動脈とともに左右の総頸動脈から分枝している。
2.× 前大脳動脈は、病的所見を呈していない。前大脳動脈は、頭蓋の底部で内頸動脈から分かれ、前頭葉や頭頂葉など大脳の前部に血液を供給する。 左右一対あり、前交通動脈によって連結している。
3.× 前交通動脈は、病的所見を呈していない。前交通動脈は、左右の前大脳動脈をつなぐ動脈である。
4.〇 正しい。中大脳動脈は、病的所見を呈する。右中大脳動脈の血流の遠位部が描出されていない。
5.× 脳底動脈は、病的所見を呈していない。脳底動脈は、左右の椎骨動脈が合流している。

(※図引用:慶應義塾大学医学部 解剖学教室様HP)

 

 

 

 

 

10.脳卒中右片麻痺患者に対する訓練を図に示す。患者はボールに右足を乗せ、ボールを前後に転がしている。
 訓練目的として誤っているのはどれか。

1.立位バランス改善
2.腹筋・背筋の協調運動
3.麻痺側下肢の支持性向上
4.麻痺側下肢の屈筋強化
5.非麻痺側下肢の伸筋強化

解答3

解説
1.〇 立位バランス改善を望める。なぜなら、支持基底面が不定であるため。非麻痺側での片足立位、麻痺側でのボール操作を行っている。
2.〇 腹筋・背筋の協調運動を望める。協調運動とは、相互に調整を保って活動する複数の筋によって遂行される滑らかで正確な運動である。腹筋・背筋が協調して働くことにより、立位を保つことが可能となる。また、脳卒中後の体幹には、随伴性姿勢制御(上肢のリーチ前に体幹が安定する働き)や姿勢の釣り合い(麻痺側上肢の弛緩・緊張による左右差)による問題が生じる。それらを改善するために、バランスボード、リーチ練習などを実施する。
3.× 麻痺側下肢の支持性向上は訓練目的として誤っている。なぜなら、麻痺側の下肢はボール操作を行っているため。設問文の「ボールを前後に転がしている」ということや、麻痺側下肢のみ裸足で行っていることから、押しつぶして荷重を加えたい(麻痺側下肢の支持性向上)という目的は考えにくい。
4.〇 麻痺側下肢の(膝関節)屈筋強化を望める。なぜなら、麻痺側でボールを前後に転がしているため。
5.〇 非麻痺側下肢の(股関節)伸筋強化を望める。なぜなら、非麻痺側は片足立位であるため。股関節伸筋(殿筋など)が働き、骨盤の安定に寄与している。

 

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