第45回(H22) 理学療法士国家試験 解説【午前問題11~15】

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11. 70歳の女性。ADLは一部介助でサークル型歩行器を用いて50mの移動ができる。頭部MRIを下図に示す。
 歩容としてみられるのはどれか。

1.はさみ足歩行
2.分回し歩行
3.中殿筋歩行
4.失調性歩行
5.鶏歩

解答4

解説

1.× はさみ足歩行は、痙性対麻痺(錐体路障害)などで認める。足尖で歩行し、両膝をするように歩く。
2.× 分回し歩行は、痙性片麻痺や脳血管障害(錐体路障害)などで認める。
3.× 中殿筋歩行(Trendelenburg歩行)は、中殿筋の筋力低下で認める。主な疾患として、変形性股関節症である。
4.〇 正しい。失調性歩行は、本症例の歩容としてみられる。失調性歩行は、小脳や脊髄後索の障害時にみられる。酩酊歩行、ワイドベース、よろめき歩行などともいう。
5.× 鶏歩(垂足歩行)は、腓骨神経麻痺や前脛骨筋の筋力低下で生じる。鶏歩(垂足歩行)とは、垂れ足になり、踵を高く上げつま先から投げ出すように歩くこと。

 

 

 

 

 

 

12. 68歳の男性。5年前に左手の振戦によって発症したParkinson病患者。1か月前に風邪をこじらせ、肺炎を併発したため入院した。歩行障害は3年前から出現し徐々に進行したが、転倒しながらも何とか自力で歩行していた。理学療法が開始され、立位を保持させたところ、図のような姿勢が見られた。
 この患者に認められるのはどれか。

1.骨盤は前傾している。
2.頸部の立ち直りは十分である。
3.立位時の踵接地は十分である。
4.重心線は踵よりも前方に落ちている。
5.膝関節伸展筋力はMMT3以上である。

解答5

解説

1.× 骨盤は、「前傾」ではなく後傾している。
2.× 頸部の立ち直りは、「十分」ではなく不十分である。なぜなら、頸部後屈位であるため。
3.× 立位時の踵接地は、「十分」ではなく不十分である。足底が全面接地していない。
4.× 重心線は踵よりも、「前方」ではなく後方に落ちている。介助者・患者がお互いに釣り合いを取るため支え合っている(引っ張り合っている)。
5.〇 正しい。膝関節伸展筋力はMMT3以上である。なぜなら、膝関節は重力以上の荷重がかかった状態で屈曲して立位を保持できているため。

 

 

 

 

13. 60歳の男性。50歳で筋萎縮性側索硬化症を発症し、自宅療養中である。舌を含めた全身に筋萎縮があり、上肢筋の萎縮は高度である。Danielsらの徒手筋力テストで肘・股・膝関節周囲筋3~4、他は頸部・体幹を含め2。起き上がり動作と歩行とに介助を必要としている。
 自宅内での適切な移動方法はどれか。

1.四つ這い移動
2.標準型車椅子での移動
3.肘をついてのいざり移動
4.ピックアップ歩行器歩行
5.杖と装具とを使用した歩行

解答2

解説

本症例のポイント

①上肢筋の萎縮は高度。
②頸部・体幹を含めMMT2。
③起き上がり動作と歩行に介助要す。

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1.3.× 四つ這い移動/肘をついてのいざり移動は優先度が低い。なぜなら、上肢筋の萎縮が高度であり、頸部・体幹を含めMMT2であるため。上肢の過負荷と前方が見えにくいことが予想される。
2.〇 正しい。標準型車椅子での移動は、自宅内での移動方法として優先度が高い。本症例は、自宅療養中で起き上がり動作と歩行に介助要していることからも、自宅に介助者がいることが考えられる。介助者の負担軽減・安全性確保のためにも車椅子の選択が望ましい。
4.× ピックアップ歩行器歩行は優先度が低い。なぜなら、上肢筋の萎縮が高度であり、頸部・体幹を含めMMT2であるため。ピックアップ歩行器は、主に体重の支持やバランスの確保のために使用する。
5.× 杖と装具とを使用した歩行は優先度が低い。なぜなら、体幹を含めMMT2であるため。杖と装具のみで四肢を補助しても、歩行自立とはなりにくく、装具の着脱などを加味すると介助者の負担軽減につながらない可能性が高い。

 

 

 

 

 

14. 24歳の男性。5日前に交通事故で第4、5頸椎脱臼骨折となった。整復固定術を行って、頸椎の安定性は確保され、現在ICUで治療中である。意識は清明で人工呼吸器から離脱し、Frankel分類Bのレベルである。
 この時期における理学療法で適切でないのはどれか。

1.呼吸訓練
2.座位訓練
3.下肢筋力増強訓練
4.四肢関節可動域訓練
5.下肢への間欠的空気加圧

解答3

解説

Frankel分類

 Frankel分類とは、脊髄損傷の評価尺度の1つである。運動と知覚機能の回復の程度をA~Eの5段階で評価するものである。Aが最も重症(損傷高位以下の完全運動・知覚麻痺)で、Eが正常(反射の異常はあってもよい)である。

A 運動・知覚喪失:損傷部以下の運動・知覚機能が失われているもの。
B 運動喪失・知覚残存:損傷部以下の運動機能は完全に失われているが、仙髄域などに知覚が残存するもの。
C 運動残存(非実用的):損傷部以下にわずかな随意運動機能が残存しているが、実用的運動は不能なもの。
D 運動残存(実用的):損傷部以下にかなりの随意運動機能が残されており、下肢を動かしたり、あるいは歩行などもできるもの
E 回復:神経学的症状、すなわち運動・知覚麻痺や膀胱・直腸障害を認めないもの。

1.〇 呼吸訓練は優先度が高い。なぜなら、低換気・無気肺予防に対して呼吸訓練が必要であるため。ちなみに、第4、5頸椎脱臼骨折の場合は、肋間筋は機能消失しているが、横隔膜・呼吸補助筋が残存していることが多い。
2.〇 座位訓練は優先度が高い。なぜなら、起立性低血圧の予防や座位保持の獲得につながるため。本症例は、意識は清明で人工呼吸器から離脱していることから実施可能と考えられる。
3.× 下肢筋力増強訓練は選択肢の中で最も優先度が低い。なぜなら、本症例は第4、5頸椎脱臼骨折でFrankel分類B(運動喪失・知覚残存:損傷部以下の運動機能は完全に失われているが、仙髄域などに知覚が残存するもの)のレベルであるため。下肢の筋力は残存していないため、残存筋(頸部・一部上肢)の筋力増強訓練を行う。
4.〇 四肢関節可動域訓練は優先度が高い。なぜなら、関節拘縮の予防のため。
5.〇 下肢への間欠的空気加圧は優先度が高い。なぜなら、血栓形成予防のため。

 

 

 

 

 

15. 4歳の脳性麻痺児。抱っこでは常に図のような姿勢を示す。

遊びの姿勢で適切でないのはどれか。

解答3

解説

本症例のポイント

上肢は屈曲優位:肘関節屈曲位
下肢は伸筋優位:股関節伸展・内転位、膝関節伸展位、足関節底屈位。
→下肢が屈曲位となる遊びを優先する。
ちなみに、痙直型両麻痺児の抱き方として、股関節開排位を保つように抱く。

1.〇 遊びの姿勢として適切である。ストレッチポールを抱きかかえることにより、骨盤が中間位~前傾位に保たれ、股関節屈曲を促すことができる。またストレッチポールが前方に転がらないように、膝関節屈曲位も促すことができている。股関節・膝関節にアプローチできている。
2.〇 遊びの姿勢として適切である。ストレッチポールを膝窩に置くことにより、股関節・膝関節が屈曲位となる。股関節・膝関節にアプローチできている。
3.× 遊びの姿勢として改善する点が多い。椅子座位で三角マットを股関節に挟むことで、下肢伸展優位のうち股関節内転に対応できているが、他の部位(膝関節・足関節)がおろそかになっている。また、股関節に至っても、骨盤の後傾を防止できずに、股関節伸展位に近い状態となっている。ちなみに、膝関節は伸展位、足関節は底屈位(尖足の状態)のままである。そのほかの選択肢は、2関節以上の対応はできているが、選択肢3のみ股関節も含め改善点が多くあるため不適切と考えられる。
4.〇 遊びの姿勢として適切である。座椅子を前方に置いた膝立ち位は、股関節中間位の保持(股関節伸展位の防止)、膝関節屈曲位を保つことができる。股関節・膝関節にアプローチできている。
5.〇 遊びの姿勢として適切である。座椅子を前方に置いた立位は、股関節中間位の保持(股関節伸展位の防止)と足関節中間位(全面接地)できる。荷重により尖足を抑制できている。股関節・足関節にアプローチできている。

 

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