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16 6歳の女児。脳性麻痺痙直型両麻痺。手指の巧緻動作は拙劣だが上肢・体幹の機能障害は比較的軽度で、座位バランスは良好である。両手で平行棒につかまれば椅子から立ち上がることができ、平行棒内立位は片手支持でも安定して保持できる。歩き出そうとすると支持脚股関節・膝関節の屈曲が生じ、尻もちをつきそうになり歩けない。
この患者の歩き出しの問題への対処として行う理学療法で適切なのはどれか。
1.バルーン上座位保持練習
2.バルーン上腹臥位での体幹伸展練習
3.台上座位からの立ち上がり練習
4.壁にお尻で寄りかかった立位での風船遊び
5.低い台に片足を乗せるステップ動作の練習
解答5
解説
・6歳の女児(脳性麻痺痙直型両麻痺)
・手指の巧緻動作は拙劣だが上肢・体幹の機能障害は比較的軽度で、座位バランスは良好である。
・椅子から立ち上がり:両手で平行棒に把持して可能。
・平行棒内立位保持:片手支持で安定。
・歩行:歩き始めに支持脚股関節・膝関節の屈曲が生じ、尻もちをつきそうになり歩けない。
→本症例は、脳性麻痺痙直型両麻痺である。両麻痺とは、両下肢に重度の麻痺がある状態のこと。痙直型両麻痺の歩行(クラウチング歩行)は、股・膝とも屈曲位で伸びきらない歩行である。さらに、股関節は内転・内旋となるため内股での歩行が特徴的である。この患者の歩き出しの問題への対処を問われていることからも、悪い動作パターンの改善(歩行パターンの改善)をはかれるものを選択する。
1.× バルーン上座位保持練習は、優先度は低い。なぜなら、本症例の座位バランスは良好であるため。
2.× バルーン上腹臥位での体幹伸展練習は、優先度は低い。なぜなら本症例の立位は安定しており、痙直型両麻痺は下肢に麻痺が強く、下肢へのアプローチの方が優先度は高い。
3~4.× 台上座位からの立ち上がり練習/壁にお尻で寄りかかった立位での風船遊びは、優先度は低い。なぜなら、本症例の立ち上がり・立位は平行棒(手すり)把持にて安全に行えるため。壁にお尻で寄りかかった立位は、股関節・膝関節屈曲を生じさらに歩行パターンの悪化を助長する可能性が高い。
5.〇 正しい。低い台に片足を乗せるステップ動作の練習は、歩き出しの問題への対処として優先度が高い。ステップ動作の練習を行うことで、支持脚の伸展位の促通へとつながる。これにより、支持脚股関節・膝関節の屈曲で後方に重心がある悪い歩行パターンの脱却へとつながる可能性が高い。
苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓
17 脊髄完全損傷患者の移乗動作を図に示す。
この動作の獲得を目標とする機能残存レベルの上限で正しいのはどれか。
1.C5
2.C6
3.C7
4.T1
5.T10
解答3
解説
図は、車椅子からベッドへの側方移乗である。肘関節が屈曲位でありながらも、それに抗する上腕三頭筋の筋力が必要である。
主な動作筋は、上腕三頭筋と橈側手根屈筋である。移動は車椅子駆動で、自動車の運転も可能となる。プッシュアップとベッドの側方移動が可能となり、車椅子にて日常生活のほとんどが自立まで至る。
1.× C5の主な動作筋は、三角筋、上腕二頭筋である。移動は、ハンドリムに要工夫が必要であるが、平地での車椅子駆動可能である。
2.× C6の主な動作筋は、大胸筋、橈側手根伸筋である。移動は、実用的な車椅子移動が可能である。
3.〇 正しい。C7の主な動作筋は、上腕三頭筋、橈側手根屈筋である。車椅子駆動、移乗動作、自動車運転可能なレベルまで目指せる。
4.× T1の主な動作筋は指の屈筋群、手内在筋である。車椅子にて大部分の日常生活動作が自立する。
5.× T10は、ほとんど介助が必要なくなる。
(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)
類似問題です↓
【PT専門のみ】脊髄損傷についての問題「まとめ・解説」
18 80歳の男性。3年前に脳梗塞による右片麻痺を発症したが、独歩は可能であり、ADLは自立していた。肺炎のため1週間の安静臥床が続いた後、伝い歩きはできるものの独歩は困難となった。
最も考えられる原因はどれか。
1.褥瘡
2.脳梗塞の再発
3.下肢筋力低下
4.呼吸機能低下
5.精神機能低下
解答3
解説
・80歳の男性(3年前:脳梗塞による右片麻痺)
・ADL:自立(独歩可能)
・肺炎のため1週間の安静臥床が続いた後、伝い歩きはできるものの独歩は困難。
→本症例は、脳梗塞を3年前に発症しているため維持期と考えられる。したがって、1週間の臥床により、独歩→伝い歩きへと低下した原因を考える。筋力低下と筋萎縮が主にあげられ、最大筋力の20%未満の活動では筋萎縮や筋力低下が起こりやすい。また、安静臥床のままでは、約1〜3%/日、10〜15%/週の割合で筋力低下が起こり、3〜5週間で約50%に低下すると報告されている。
1.× 褥瘡が直接的に歩行能力低下には関与しにくい。褥瘡とは、局所の持続的な圧迫により組織に虚血が生じて発生する皮膚・皮下組織の損傷のことである。仙骨部、大転子部、足関節外果、踵部などの骨の突出している場所に好発する。頚髄完全損傷では、自分で除圧できないこと、感覚障害を合併していることより、褥瘡が生じやすい。
2.× 脳梗塞の再発は考えにくい。本症例が1週間の臥床により、独歩→伝い歩きへと低下しているが、麻痺の増悪や失語症、失行などの症状が設問には記載されていないため。
3.〇 正しい。下肢筋力低下が最も考えられる原因である。一週間の臥床により下肢筋力が低下し、独歩困難になったと考える。最大筋力の20%未満の活動では筋萎縮や筋力低下が起こりやすい。また、安静臥床のままでは、約1〜3%/日、10〜15%/週の割合で筋力低下が起こり、3〜5週間で約50%に低下すると報告されている。
4.× 呼吸機能低下は、肺炎と安静臥床により生じていると考えられるが、労作時呼吸困難頭の記載はない。また呼吸機能低下の場合、歩行距離などが障害されることが多い。
5.× 精神機能低下は、長期臥床により抑うつ傾向に陥りやすいが、歩行能力低下の直接的原因とは考えにくい。
19 46歳の男性。肺気腫。咳や痰が頻繁にあり、労作時の息切れもある。現在、外出はできるが、80mほど歩くと息切れのために休まなくてはならない。
この患者のMRC(呼吸困難を評価する質問票)によるグレードはどれか。
1.グレード0
2.グレード1
3.グレード2
4.グレード3
5.グレード4
解答4
解説
本症例は、「46歳の男性(肺気腫)。咳や痰が頻繁にあり、労作時の息切れもある。現在、外出はできるが、80mほど歩くと息切れのために休まなくてはならない。」
グレード0:激しい運動をしたときだけ息切れがする。
グレード1:平坦な道を早足で歩く,あるいは緩やかな上り坂を歩くときに息切れがある。
グレード2:息切れがあるので,同年代の人よりも平坦な道を歩くのが遅い,あるいは平坦な道を自分のペースで歩いているとき,息切れのために立ち止まることがある。
グレード3:平坦な道を約100m,あるいは数分歩くと息切れのために立ち止まる。
グレード4:息切れがひどく家から出られない,あるいは衣服の着替えをするときにも息切れがある。
(動画でわかる呼吸リハビリテーション第4版p137より引用)
1.× グレード0は、激しい運動をしたときだけ息切れがする。
2.× グレード1は、平坦な道を早足で歩く,あるいは緩やかな上り坂を歩くときに息切れがある。
3.× グレード2は、息切れがあるので,同年代の人よりも平坦な道を歩くのが遅い,あるいは平坦な道を自分のペースで歩いているとき,息切れのために立ち止まることがある。
4.〇 正しい。グレード3が、この患者のMRCによるグレードである。本症例は、「46歳の男性(肺気腫)。咳や痰が頻繁にあり、労作時の息切れもある。現在、外出はできるが、80mほど歩くと息切れのために休まなくてはならない」としている。グレード3の基準として、平坦な道を約100m,あるいは数分歩くと息切れのために立ち止まる必要がある。
5.× グレード4は、息切れがひどく家から出られない,あるいは衣服の着替えをするときにも息切れがある。
20 患者が床面から20cm鉛直挙上した位置で下肢を保持している状態を図に示す。Aの滑車は上下に移動するが、Bの滑車はフレームに固定され、滑車の位置は動かない。なお、保持する下肢の質量は8kgで、滑車と紐の重量および摩擦力は考えなくてよい。
床面から下肢を挙上するために、上肢で引き下げた紐の長さと保持に必要な力の組合せで正しいのはどれか。
1.10cm:8kg重
2.20cm:4kg重
3.20cm:8kg重
4.40cm:4kg重
5.40cm:8kg重
解答4
解説
A:動滑車は、上下移動可能な滑車のこと。引く力の2倍の質量を持ち上げることができる。
B:定滑車は、固定されている滑車のこと。物体を引く力もひく力も滑車を使わない場合と変わらない。
注意点として、A滑車を持ち上げるためには、A滑車の前後の紐を同じ長さだけひかなければならない(A滑車の片方の紐は固定されているため)。つまり、A滑車自体を持ち上げる2倍の長さの紐を引かなければならない。
以上の事から、持ち上げるのに必要な力は8㎏の半分の4㎏で済むが、引き下げる紐の長さは2倍の40cm必要になる。したがって、選択肢4.40cm:4kg重が正しい。
いつも解説用・訂正用として使って頂いており、感謝しております。
問19の件ですが、これはMRCを修正したmMRCをもとに問題を解く形になっていると思います。
↓↓↓
修正MRC(mMRC)質問票
グレード0···激しい運動をしたときだけ息切れがする。
グレード1···平坦な道を早足で歩く,あるいは緩やかな上り坂を歩くときに息切れがある。
グレード2···息切れがあるので,同年代の人よりも平坦な道を歩くのが遅い,あるいは平坦な道を自分のペースで歩いているとき,息切れのために立ち止まることがある。
グレード3···平坦な道を約100m,あるいは数分歩くと息切れのために立ち止まる。
グレード4···息切れがひどく家から出られない,あるいは衣服の着替えをするときにも息切れがある。
(動画でわかる呼吸リハビリテーション第4版p137より引用)
ということなので、グレード3が答えとなる結果だと思います。
いつもコメントありがとうございます。
教えていただきスムーズな解説となりました。
修正いたしましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。
解答は4のグレード3で適していますが、解説では5が〇になっています。
いつもわかりやすい解説ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。
コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。