第48回(H25) 理学療法士国家試験 解説【午後問題16~20】

 

16 6歳の女児。脳性麻痺痙直型両麻痺。手指の巧緻動作は拙劣だが上肢・体幹の機能障害は比較的軽度で、座位バランスは良好である。両手で平行棒につかまれば椅子から立ち上がることができ、平行棒内立位は片手支持でも安定して保持できる。歩き出そうとすると支持脚股関節・膝関節の屈曲が生じ、尻もちをつきそうになり歩けない。
 この患者の歩き出しの問題への対処として行う理学療法で適切なのはどれか。

1.バルーン上座位保持練習
2.バルーン上腹臥位での体幹伸展練習
3.台上座位からの立ち上がり練習
4.壁にお尻で寄りかかった立位での風船遊び
5.低い台に片足を乗せるステップ動作の練習

解答5

解説

 痙直型両麻痺は、上半身より下半身の方が強く痙縮があるタイプである。本症例は、①両手で平行棒につかまれば椅子から立ち上がることができる。②平行棒内立位は片手支持でも安定して保持できる。③歩き出そうとすると支持脚股関節・膝関節の屈曲が生じ、尻もちをつきそうになり歩けない。この患者の歩き出しの問題への対処を問われていることからも、悪い動作パターンの改善(歩行パターンの改善)をはかれるものを選択する。

 

1.× バルーン上座位保持練習は、優先度は低い。なぜなら、本症例の座位バランスは良好であるため。
2.× バルーン上腹臥位での体幹伸展練習は、優先度は低い。なぜなら本症例の立位は安定しており、痙直型両麻痺は下肢に麻痺が強く、下肢へのアプローチの方が優先度が高い。
3~4.× 台上座位からの立ち上がり練習/壁にお尻で寄りかかった立位での風船遊びは、優先度は低い。なぜなら、本症例の立ち上がり・立位は平行棒(手すり)把持にて安全に行えるため。壁にお尻で寄りかかった立位は、股関節・膝関節屈曲を生じさらに歩行パターンの悪化を助長する可能性が高い。
5.〇 正しい。低い台に片足を乗せるステップ動作の練習は、歩き出しの問題への対処として優先度が高い。ステップ動作の練習を行うことで、支持脚の伸展位の促通へとつながる。これにより、支持脚股関節・膝関節の屈曲で後方に重心がある悪い歩行パターンの脱却へとつながる可能性が高い。

 

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

理学療法士国家試験 脳性麻痺についての問題9選「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

17 脊髄完全損傷患者の移乗動作を図に示す。
 この動作の獲得を目標とする機能残存レベルの上限で正しいのはどれか。

1.C5
2.C6
3.C7
4.T1
5.T10

解答3

解説

 図は、車椅子からベッドへの側方移乗である。肘関節が屈曲位でありながらも、それに抗する上腕三頭筋の筋力が必要である。

 

1.× C5の主な動作筋は、三角筋、上腕二頭筋である。移動は、ハンドリムに要工夫が必要であるが、平地での車椅子駆動可能である。
2.× C6の主な動作筋は、大胸筋、橈側手根伸筋である。移動は、実用的な車椅子移動が可能である。
3.〇 正しい。C7の主な動作筋は、上腕三頭筋、橈側手根屈筋である。車椅子駆動、移乗動作、自動車運転可能なレベルまで目指せる。
4.× T1の主な動作筋は指の屈筋群、手内在筋である。車椅子にて大部分の日常生活動作が自立する。
5.× T10は、ほとんど介助が必要なくなる。

 

 

 

 

 

18 80歳の男性。3年前に脳梗塞による右片麻痺を発症したが、独歩は可能であり、ADLは自立していた。肺炎のため1週間の安静臥床が続いた後、伝い歩きはできるものの独歩は困難となった。
 最も考えられる原因はどれか。

1.褥瘡
2.脳梗塞の再発
3.下肢筋力低下
4.呼吸機能低下
5.精神機能低下

解答3

解説

 1週間の臥床により、独歩→伝い歩きへと低下した原因を考える。

1.× 褥瘡が直接的に歩行能力低下には関与しにくい。
2.× 脳梗塞の再発は考えにくい。本症例が一週間の安静臥床となった原因として、問題文は肺炎のためと記載されている。
3.〇 正しい。下肢筋力低下である。一週間の臥床により下肢筋力が低下し、独歩困難になったと考えるのが自然であろう。
4.× 呼吸機能低下は、肺炎と安静臥床により生じていると考えれるが、労作時呼吸困難頭の記載はない。また呼吸機能低下の場合、歩行距離などが障害されることが多い。
5.× 精神機能低下は、長期臥床により抑うつ傾向に陥りやすいが、歩行能力低下の直接的原因とは考えにくい。

 

 

 

 

 

19 46歳の男性。肺気腫。咳や痰が頻繁にあり、労作時の息切れもある。現在、外出はできるが、80mほど歩くと息切れのために休まなくてはならない。
 この患者のMRC(呼吸困難を評価する質問票)によるグレードはどれか。

1.グレード0
2.グレード1
3.グレード2
4.グレード3
5.グレード4

解答4?(厚生労働省は4を正解としているが、選択肢5の方が適切?)

解説

1.× グレード0は、息切れを感じないレベルである。
2.× グレード1は、強い労作で息切れを感じるレベルである。
3.× グレード2は、平地を急ぎ足で移動する、または緩やかな坂を歩いて上ると息切れを感じるレベルである。
4.△ 厚生労働省の解答では、正解としている。グレード3は、平地歩行でも同年齢の人より歩くのが遅い。または自分のペースで平地歩行をしていても息継ぎのため休むレベルである。
5.〇 正しい。グレード4は、約100m(91.4m)歩行した後、息継ぎのため休む、または数分間歩行した後息継ぎのため休むレベルである。本症例は、外出はできるが、80mほど歩くと息切れのために休まなくてはならないためこのレベルに当てはまる。

 

 欧米のMRC(呼吸困難を評価する質問票)によるグレードは0~4の5段階であり、日本はこれに「まったく息切れを感じない」グレードを追加して、グレードは0~5の6段階段階となっている。このズレから、厚生労働省の解答と差異が生じたと考えられる。

 

 

 

 

 

20 患者が床面から20cm鉛直挙上した位置で下肢を保持している状態を図に示す。Aの滑車は上下に移動するが、Bの滑車はフレームに固定され、滑車の位置は動かない。なお、保持する下肢の質量は8kgで、滑車と紐の重量および摩擦力は考えなくてよい。
 床面から下肢を挙上するために、上肢で引き下げた紐の長さと保持に必要な力の組合せで正しいのはどれか。

 

1.10cm:8kg重
2.20cm:4kg重
3.20cm:8kg重
4.40cm:4kg重
5.40cm:8kg重

解答4

解説

A:動滑車は、上下移動可能な滑車のこと。引く力の2倍の質量を持ち上げることができる。
B:定滑車は、固定されている滑車のこと。物体を引く力もひく力も滑車を使わない場合と変わらない。

注意点として、A滑車を持ち上げるためには、A滑車の前後の紐を同じ長さだけひかなければならない(A滑車の片方の紐は固定されているため)。つまり、A滑車自体を持ち上げる2倍の長さの紐を引かなければならない。

 以上の事から、持ち上げるのに必要な力は8㎏の半分の4㎏で済むが、引き下げる紐の長さは2倍の40cm必要になる。したがって、選択肢4.40cm:4kg重が正しい。

 

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