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16 17歳の男子。自閉症。自分なりの特定のやり方にこだわり融通が利かず、臨機応変に振る舞えずに失敗体験を積み重ね、自尊感情が著しく低下している。
この常同性に関わる特性を踏まえた上での作業療法上の配慮として、最も重要なのはどれか。
1. 静かな環境で作業する。
2. 用件は具体的に伝える。
3. 図や表を用いた説明を行う。
4. 1つずつ段階を踏んで作業する。
5. 予定変更がある時は前もって伝える。
解答5
解説
・17歳の男子(自閉症)
・自分なりの特定のやり方にこだわり融通が利かず、臨機応変に振る舞えずに失敗体験を積み重ね、自尊感情が著しく低下している。
→自閉症とは(小児自閉症障害とは)、3歳以前に現れる発達の以上または障害である。対人関係を築けない、活動や興味の極端な限定がみられる、男児に多いなどのAsperger症候群に類似した特徴を持つが、言語発達の遅れ、知能低下がみられる点でAsperger症候群区別される。特徴として、対人関係が困難、常同的な反復行動、意思伝達の障害などがみられる。
1.× 静かな環境で作業することは、常同性に関わる特性を踏まえた上での作業療法上の配慮にはつながらない。常同行動とは、①ぴょんぴょん飛び跳ねたり、②手で何かをたたき続けたり、③手をひらひらとしたりすることである。変化に戸惑うので新しい作業の導入は慎重に行う必要がある。
2~4.× 用件は具体的に伝える/図や表を用いた説明を行う/1つずつ段階を踏んで作業することは、自閉症に対した方法で適切であるが、「常同性」に関わる特性を踏まえた上での作業療法上の配慮にはつながらない。あいまいな表現が伝わらなかったり、変化を好まなかったりするため、部屋ごとに課題を決めて戸惑いを起こさない工夫が必要である。
5.〇 正しい。予定変更がある時は前もって伝える。常同性の対処法として、「無理にやめさせるより、することを与える」ことが多い。つまり、急な予定変更は混乱を招くことになり、療法士の提供したいことができなくなる可能性が高くなる。また、自閉症児の特徴として、変更への臨機応変な対応は困難である。したがって、予定変更があるときは前もって伝えておく必要がある。
17 35歳の男性。交通事故による外傷性脳損傷で入院となった。受傷10日後から作業療法が開始された。運動麻痺や感覚障害はみられなかった。些細なことで怒りをあらわにし、作業療法中も大きな声をあげ、急に立ち上がってその場を去る、というような行動がしばしばみられた。患者はこの易怒性についてほとんど自覚しておらず病識はない。
この患者の怒りへの対応で最も適切なのはどれか。
1. 原因について自己洞察を促す。
2. 感情をコントロールするよう指導する。
3. 周囲に与える影響を書き出してもらう。
4. よく観察し誘発されるパターンを把握する。
5. 脳損傷との関係について理解が得られるまで説明する。
解答4
解説
・35歳の男性(交通事故による外傷性脳損傷)。
・受傷10日後:作業療法が開始。
・運動麻痺や感覚障害はみられなかった。
・些細なことで怒りをあらわにし、作業療法中も大きな声をあげ、急に立ち上がってその場を去る、というような行動がしばしばみられた。
・患者はこの易怒性についてほとんど自覚しておらず病識はない(病識の欠如)。
→外傷性脳損傷により前頭葉が障害されていると考えられる。病識が欠如している状態であるため、言動に対する本人の気づきや理解を求めることは難しく、どのような場面や周囲からの刺激が言動を誘発するか注意深く観察して対策を講じる必要がある。
①覚醒度低下、②脱抑制、③自発性の低下、④注意力の低下、⑤記憶障害、⑥遂行機能障害、⑦病識の欠如がある。他にも、失調や振戦、排尿障害などもみられやすい。
1.5.× 原因について自己洞察を促す/脳損傷との関係について理解が得られるまで説明する優先度は低い。なぜなら、病識が欠如している状態であるため。言動に対する本人の気づきや理解を求めることは難しく、どのような場面や周囲からの刺激が言動を誘発するか注意深く観察して対策を講じる必要がある。
2~3.× 感情をコントロールするよう指導する/周囲に与える影響を書き出してもらう優先度は低い。なぜなら、患者はこの易怒性についてほとんど自覚していないため。脱抑制(易怒性)に対する対応としては、リラックスする方法を教えたり、不適切な行動は指摘するが責めてはいけないようにする。
4.〇 正しい。よく観察し誘発されるパターンを把握する。社会的行動障害に対し、環境設定(静かな場所であまり人に囲まれず、疲れさせない)が大切になる。また、易疲労性・易怒性に対しても神経披露しやすいため起こるので、作業の分割化や興味のある作業を提供する。
18 50歳の女性。10年前に義母の介護に際して突然の視力障害を訴えたが、眼科的異常はみられなかった。1か月前に夫の単身赴任が決まってから、下肢の冷感、疼痛を主訴として、整形外科、血管外科などを受診するも異常所見は指摘されなかった。次第に食事もとれなくなり、心配した夫が精神科外来を受診させ、本人はしぶしぶ同意して任意入院となった。主治医が、身体以外のことに目を向けるようにと作業療法導入を検討し、作業療法士が病室にいる本人を訪問することになった。本人は着座すると疼痛が増強するからと立位のままベッドの傍らに立ち続けて、他科受診できるよう主治医に伝えてほしいと同じ発言を繰り返す。
この患者に対する病室での作業療法士の対応で最も適切なのはどれか。
1. 他科受診できるよう約束する。
2. 夫の単身赴任をどのように感じているか尋ねる。
3. 痛みが軽減することを約束して作業療法への参加を促す。
4. 身体的には問題がなく、心の問題であることを繰り返し伝える。
5. 他のスタッフの発言との食い違いが生じないよう、聞き役に徹する。
解答5
解説
本症例のように、異常な検査結果などがみつからないのに、下肢の冷感や疼痛などの身体症状が続き、異常所見がないことを受け入れられず医療機関を転々と求めるような発言から、身体表現性障害であると考えられる。身体表現性障害とは、ストレスが原因となって身体症状にあらわれる病気である。その特徴は、症状に身体的問題はないといわれても、執拗に検査を求め、繰り返し身体症状を訴えるものである。自分に注意を引こうとする行動がみられることもあるが、原因となるストレスについては無関心であることが多い。
1.× 他科受診できるよう約束するのは直接的解決にならない。なぜなら、身体表現性障害では器質的な障害はないため。他科受診に関しては主治医と相談するように改めて伝え、なぜ患者は「他科受診できるよう主治医に伝えてほしいと同じ発言を繰り返す」のか傾聴する。
2.× 夫の単身赴任をどのように感じているか尋ねる優先度は低い。なぜなら、現段階では身体的症状に関心が向けられているため。夫の単身赴任をどのように感じているかを尋ねてもそれには本人の関心は向かず、治療にはつながらない可能性が高い。
3.× 痛みが軽減することを「約束して」作業療法への参加を促してはならない。なぜなら、痛みが軽減すると断定できないため。また、さらに、痛みに固執することもあり得る。主治医の指示通り、身体症状以外のことに関心を向けるアプローチが必要である。
4.× 身体的には問題がなく、心の問題であることを繰り返し伝える優先度は低い。なぜなら、現段階では身体的症状に関心が向けられているため。繰り返し「心の問題である」と伝えても、患者は「自分の主張を否定」されている気持ちになりかねない。
5.〇 正しい。他のスタッフの発言との食い違いが生じないよう、聞き役に徹する。本症例は、異常な検査結果などがみつからないのに、下肢の冷感や疼痛などの身体症状が続き、異常所見がないことを受け入れられず医療機関を転々と求めるような発言をしている。先生や療法士からの助言・アドバイス・指摘などまだ受け入れられない段階であるため、まずは聞き役に徹することが大切である。
19 9歳の男児。注意欠如・多動性障害。放課後デイサービスに通所している。鼻歌を唄ったり足を動かしたりとじっとしていることが苦手で、勉強の時間に立ち歩いたり他児にちょっかいを出したりすることでトラブルになった。指導員から注意されると感情的になり、暴れる行動が頻回にみられた。教科書や提出物の忘れ物も多い。
この児に対する治療的な対応で適切なのはどれか。
1. トラブルの原因を考えさせる。
2. 運動を取り入れて体を動かす。
3. 他児との交流は最小限に留める。
4. じっとしておく取り決めをする。
5. 感情的になっても介入しないでおく。
解答2
解説
・9歳の男児(注意欠如・多動性障害)
・鼻歌を唄ったり足を動かしたりとじっとしていることが苦手(多動性)
・勉強の時間に立ち歩いたり他児にちょっかいを出したりする(衝動性)
・指導員から注意されると感情的になり、暴れる行動が頻回にみられた(衝動性)
・教科書や提出物の忘れ物も多い(注意欠如)
→注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、発達障害の一つであり、脳の発達に偏りが生じ年齢に見合わない①注意欠如、②多動性、③衝動性が見られ、その状態が6ヵ月以上持続したものを指す。その行動によって生活や学業に支障が生じるケースが多い。治療として、①まず、行動療法を行う。②改善しない場合は、中枢神経刺激薬による薬物療法を用いる。中枢を刺激して、注意力・集中力を上げる。※依存・乱用防止のため、徐放薬が用いられる。対人関係面で周囲との軋轢を生じやすく、大人からの叱責や子どもからのいじめにあうことがある。このため、二次障害として、自信喪失、自己嫌悪、自己評価の低下がみられることがある。そのため、患児の行動特徴を周囲が理解し、適切に支援をしていくことが重要である。 サポートが良ければ、成長とともに過半数は改善していく。放置すると、思春期に感情障害、行為障害、精神病様状態に陥りやすい。
1.× トラブルの原因を考えさせる優先度が低い。なぜなら、本人はトラプルを起こそうと思って起こしているわけではないため。強い口調での指示(強制して考えさせることなど)は、叱責と受け止められやすく、自信喪失や自尊心の低下につながるため適切でない。問題行動はその場で指摘し、改善を図る。
2.〇 正しい。運動を取り入れて体を動かす。注意欠如・多動障害児では、不適切行動を注意しても自ら改善することはできないことが多い。そのため、過度の行動欲求を発散させるような対応をし、他児に対する迷惑行為については制止する必要がある。運動を行うことで、ストレス発放や爽快感につながったり、達成感が得られたりする。また、感覚統合を促進することができる。
3.× 他児との交流は最小限に留める必要はない。ただ、他児の迷惑になる場合は介入して制止したり、個別に近い対応が可能な小集団で対応したりする必要はある。
4.× じっとしておく取り決めをすることは困難である。注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、発達障害の一つであり、脳の発達に偏りが生じ年齢に見合わない①注意欠如、②多動性、③衝動性が見られ、その状態が6ヵ月以上持続したものを指す。強い口調での指示(強制して考えさせることなど)は、叱責と受け止められやすく、自信喪失や自尊心の低下につながるため適切でない。問題行動はその場で指摘し、改善を図る。この積み重ねが適応的な行動パターンの獲得につながる。褒めることで自信をつけさせ、自尊心の回復を図ることが大切となる。
5.× 感情的になっても「介入しない」のではなく他児に対する迷惑行為については制止する必要がある。その場から本人を離して1対1で対応する。
20 30歳の男性。統合失調症で5年前に幻覚妄想状態で家族に対する興奮があり、医療保護入院となった既往がある。退院後はほぼ規則的に通院し、毎食後服薬していたが、3か月前から治療を中断し、幻聴や被害関係妄想が悪化し、両親を自宅から閉め出して引きこもってしまった。注察妄想もあり本人も自宅から外出できない状況である。多職種訪問支援チームが1年前から関わっており、訪問は受け入れてもらえている。
この患者への今後の介入で最も適切なのはどれか。
1. 本人の意思に関わらず、繰り返し服薬を強く促す。
2. 両親を自宅に同行させ、その場で本人に両親への謝罪を促す。
3. 民間救急を利用し、中断していた精神科病院の救急外来に搬送する。
4. 本人の希望や生活上の困り事を根気よく引き出し、関係を深める努力をする。
5. 訪問頻度を減らし、本人が助けを求めるのを待って精神科外来に結びつける。
解答4
解説
・30歳の男性(統合失調症)
・5年前:幻覚妄想状態で医療保護入院。
・退院後:ほぼ規則的に通院。
・3か月前:治療中断、幻聴や被害関係妄想が悪化、引きこもり、注察妄想あり。多職種訪問支援チームの訪問は受け入れてもらえている。
※注察妄想とは、被害妄想の一種で、自宅にいても、いつも誰かに監視をされていると思い込んでしまう妄想のことである。
→本症例は、維持期であったが急性期に移行傾向のある統合失調症患者である。現在、「多職種訪問支援チームが1年前から関わっており、訪問は受け入れてもらえている」ことから、この支援チームとの関わりを手がかりとしたり強化することで治療につなげていく。
1.× 本人の意思に「関わらず」、繰り返し服薬を「強く促す」ことの優先度は低い。本症例は、自己判断で治療を中断しているようであり、現在も治療は必要であると考えられるが、まずは本人の意向を十分に聴き、その上で服薬の必要性を本人と共有することが重要である。服薬を中断している原因といて、「副作用や病気の理解」が不十分なことがある。一方的に説得するのでは反感を生みやすい。
2.× 両親を自宅に同行させ、その場で本人に「両親への謝罪」を促すことの優先度は低い。問題文から、両親が謝るようなことをしたのか?は書かれていない。幻聴や妄想が悪化した結果、両親を閉め出しているので、両親へ謝罪しても症状の改善は期待できない。
3.× 民間救急を利用し、中断していた精神科病院の「救急外来」に搬送することの優先度は低い。民間救急とは、「119番消防救急」と違い民間の事業者が搬送用自動車を用いて緊急を要しない患者を搬送する事業のことである。引きこもりの独居生活に入ったが、「多職種訪問支援チームが1年前から関わっており、訪問は受け入れてもらえている」ことから直ちに入院が必要なほどの緊急性の高い状態ではない。まずは、多職種訪問支援チームが訪問頼度を増やすなどして、本人との関わりを強化することが必要である。
4.〇 正しい。本人の希望や生活上の困り事を根気よく引き出し、関係を深める努力をする。本症例は、維持期であったが急性期に移行傾向のある統合失調症患者である。現在、「多職種訪問支援チームが1年前から関わっており、訪問は受け入れてもらえている」ことから、この支援チームとの関わりを手がかりとしたり強化することで治療につなげていく。
5.× 訪問頻度を「減らし」、本人が助けを求めるのを待って精神科外来に結びつける優先度は低い。なぜなら、訪問頻度を減らし、本人の助けの意思もなかった場合、 症状の悪化や治療の中断につながるおそれがあるため。
統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。
(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)